つまり、一つの物語。
僕は「片説家」。「小説」と違って、個人のリクエストで、その人のためだけに物語を書くのが仕事だ。
いや「片説家」だった。昨日、解雇されたのだ。
途方に暮れる僕の前に、自分のために「小説」を書いて欲しいという女性が現れた。
しかも、失踪しているという彼女の妹は、かつて僕がいた会社が、片説を渡した相手だという。
これが21世紀型「悩める作家」。日本文学一千年が、今夜新宿でビッグバン!

***
ある特定の個人に向けて書かれた小説を〝片説(へんせつ)〟と呼ぶのだとすれば、
本作はある意味〝小説家を志す人〟に向けて書かれた〝片説〟なんでしょう。
ありきたりな感想だけどほんとそう思う。
サラリーマンにとっての〝およげ!たいやきくん〟、
主婦にとっての〝韓流ドラマ〟、
そして〝作家志望者〟にとっての〝1000の小説とバックベアード〟。
一人の人間が作家になるまでの、そして一つの物語ができあがるまでの
苦悩と葛藤と憤りと開き直りと達観と混迷と絶望と狂気と狂喜、
そういった諸々の感情を疑似体験(もしくは追体験)することができます。
主人公を自分と比べることで、作家志望者としての現時点での己を客観的に見ることにも使える。
もちろんこれは小説指南書なんかじゃなくれっきとした小説(片説?)ですが。
ちなみに本作は三島由紀夫賞受賞作なのですが、
まあ設定の斬新さ等を見れば納得いかないこともないですが、
後半の展開が以前の同賞受賞作である舞城王太郎氏の〝阿修羅ガール〟とかぶり気味なのが
若干気になった(前半は多少現実離れしていながらも違和感なく読める世界観、ところが
半ばを過ぎたあたりで唐突にシュールかつファンタジックな物語運びに豹変、といった点)。
文体(というかところどころに出てくる言葉遊び)が西尾維新氏にかなり似ているのも少しあれ? と。
あくまで本作を、私が作家志望であることを抜きにして見た場合、
著者が一番言いたかったことが何だったのか、テーマも登場人物のキャラ立ちもおぼろげで
いまいち判然としないし。
これなら著者の前著〝子供たち怒る怒る怒る〟のほうがよっぽど面白かったし物語から伝わってくる
メッセージも明確だった。
まあでもプロの小説家を目指す人(もしくは既にプロの人でも)は読んでみて損はないです。
私もいろいろと気づかされたり感銘を受ける部分が多かった(納得いかないとこもあったけど、
それはそれで(心の中で)意見を戦わせるのが楽しかった)。
あ、あと二十代後半あたりの人にもいいかな。大人とも子供とも言えない、そんな中途半端な
年代についての同世代の主人公の語りにも、大いに共鳴できるところがあるので(ちなみに私は
著者の佐藤氏と生まれ年も出身地も同じなので、かなり感性や物の感じ方が近く読んでいて楽しい)。
最後に。〝バックベアード〟ってこんなやつです(手前は鬼太郎)↓
今気づいたけど白黒だあ~!
そういや鬼太郎の身体つきも自分が子供のころ観てたのと
微妙に違う。。。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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