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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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お前を満たしてやりたい。
この憂鬱を消すために。



全てに無気力な私が拾った小さな蟹。
何でも食べるそれは、頭が良く、人語も解する。
食事を与え、蟹と喋る日常。そんなある日、
私は恋人の女を殺してしまうが……。
私と不思議な蟹との、奇妙で切ない泣けるホラー。

★収録作品★

 かにみそ
 百合の火葬

***

著者の倉狩氏は本作がデビュー作なのですが、
新人とは思えないほど文章がうまい。
安定感があって物語の軸もブレず、最後まで安心して読むことが出来た。
「流星群の翌朝、ごみと海藻が散乱する浜辺で蟹を見つけた」
という書き出しにも詩的で非凡なものを感じる。
そしてまたこの喋る蟹が可愛くて可愛くて。人間臭くて魅力的で。
人を食らう異形の蟹と主人公とのやり取りは興味深く、
かの名作゛寄生獣〟の真一とミギーのよう。
蟹の人間に対する洞察の鋭さもミギーと共通しているし。
あの作品が好きなひとには是非読んでほしいところ。

タイトルからオチは早々にわかってしまったけれど、
それでもラストは切なくて、でも蟹の生き様はどこまでも潔くて恰好よくて、
そんな蟹と暮らした数ヶ月から「生き物」の真理を悟る主人公の語りも
哲学的で共感出来て、単なるホラーと呼ぶのはもったいない
深みのある作品に出会えたと思えた。
本作は小学生のころに読んだ゛ジャンボコッコの伝記〟という名作児童文学と
ラストが似ていて、「ああ、やっぱり、相手を理解したいと思ったら
こうするに限るんだよなあ。。。」とひとつの解答を得た気がした。
まあ実際やったら捕まるけど。でも主人公たちの気持ちはわかる。

あとどうでもいいけど、契約社員として働く主人公の仕事の描写が
やたらリアルだったのは、著者が実際同じように働いてたのかも知れないな。
でも今後は是非プロ作家としてがんばってほしい。
これからに期待出来る作家さんです。
次回作が楽しみ。

併録の゛百合の火葬〟は、ちょっと抽象的すぎて
あまり面白いとは思えなかったな。文章はやはり抜群にうまいですが。

でも何だかんだでおすすめ。
是非一読を。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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