あなたたちは、わたしの物語から決して出られない。
聖母女子高等学院で、一番美しく一番カリスマ性のある女生徒が死んだ。
今晩学校に集められたのは、彼女を殺したと噂される、
同じ文学サークルの「容疑者」たち。
彼女たちは一人ずつ、自分が推理した彼女の死の真相を発表することに。
会は「告発」の場となり、うら若き容疑者たちの
「信じられない姿」が明かされていき――。
全ての予想を裏切る黒い結末まで、一気読み必至!
***
ジャンルとしてはイヤミスに入るのだろうけど、
私が真っ先に受けた印象は「瑞々しい」。
女子高生の、それもクリスチャン系の女子高という閉鎖世界ならではの
彼女たちの心理をとても巧みに描き出している。
闇鍋パーティーをしながら一人ずつ自作の小説(テーマは皆、死んでしまった
いつみについて)を朗読していく、というスタンスで始まる本作ですが、
皆が皆都合よく同じ趣旨(「私は悪くないの、悪いのはあいつなのよ!」的な)の
文章書くかー?という疑問は残るものの、
登場人物ごとに文体も作風も巧妙に変えられていて著者の筆力が伺えます。
結局いつみを殺した犯人は誰なんだ?とドキドキさせられて
ページを繰る手を止めさせない、そのリーダビリティはさすがのひと言。
オチはかなり強引でしたが(あの件について警察の発表はなかったのか、とか
死体の処理はどうしたんだ、とか突っ込みポイントが多々あった)
上述のとおり心理描写が巧みで筆力もかなりハイレベルなので、
眼をつぶろうと思えばつぶれます。
昔仲のいい女の子が結婚したとき、
「結婚式楽しかったよ。だって平凡な自分が唯一主役になれる日なんだよ」
と言っていたのですが、本作を読了後その言葉を思い出してしまった。
確かに女性ってそんな風に「主役」になることを夢見てしまうものですが、
そうだよね。。。自分が主役になるってことはつまりはそういうことだよね。。。
と本作を読んで痛感した。
私は一番大切なたったひとりの人間にとってのヒロインであれればいいけれど、
そうじゃなくもっと大きい単位でヒロインになりたい人間だっているはずで、
そして自分がヒロインであるということは自分を中心に据えた「物語」を取り囲む
ほかの出演者がいるはずで、その出演者たちにもそれなりのクオリティを求めて
しまう。三流役者は許さない。つまらない、イケてない人間は要らない。
そういうことを描いたのがつまりは本作なんでしょう。
つまりは女の、言い方は悪いけれど「いやらしい」本能を描いたのが。
スクールカーストなんかその最たるものだしな。
でもそれぞれの自作小説を朗読している間(読者がその朗読パートを読んでいる間)は
登場人物の少女たち一人ひとりもこの「暗黒女子」という作品の「主人公」であるわけで、
そしてどの少女の物語に一番惹かれるか、どの少女が一番印象に残ったかは
読者によって違うから、結局誰が本当の「主役」だったのかには
明確な結論は永遠に出せないのでしょうが。
何はともあれ、最近読んだミステリの中ではダントツに面白かったです。
おすすめ。
この著者のデビュー作も近々読んでみる予定です。
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