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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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いつかは、とどく。



神父や修導士の厳しい監督のもと、社会から完全に隔離した集団生活――
修道院とは名ばかりの教護施設で、混血児イグナシオは友人を事故に見せかけ殺害した。
修道女・文子は偶然現場を目撃するが、沈黙することをイグナシオと約束する。
“人を裁けるのは、神だけです。”
静謐に言い放つ文子にイグナシオは強く女性を意識し、施設を脱走する最後の晩、
初めて文子と結ばれる。
そして、己の居場所を探して彷徨い新宿歌舞伎町に辿り着いたイグナシオは、
新たな生活を始めるが…。
芥川賞受賞作と対なす記念碑的名作、待望の文庫化。

***

私のバイブルであり、小説を書く上で一番影響を受けているであろう
花村萬月氏の著作〝王国記〟シリーズの原点ともいうべき作品。
確かに上記の一連のシリーズのプロトタイプであることを感じさせる内容でした。

ただ、萬月氏の初期の作品であるためか、シリーズに比べると多少
ストーリー展開や登場人物たちの挙動がオーバーで鼻白む部分もあったり。
それとは逆に、荒削りなぶんシリーズよりずっと生々しい表現が随所に見られて
何度もどきりとさせられるのですが。

本作で頻繁に言及される〝そうである人間と、そうでない人間〟、
これは〝そうである人間〟には読み終えたときに深い共感を覚えさせ、対して
〝そうでない人間〟には、賢すぎるが故に不器用で、一片の曇りもない愚かさを持った
イグナシオという一人の少年の哀しい物語、としか感じられないだろうと思う。
私は〝そうである人間〟なので、この物語の言わんとしていることが読み取れてしまった。
本当は読み取れないほうが幸せなことであるはずなんだけど。
読後「結局著者は何が言いたかったんだろう? イグナシオは何がしたかったんだろう?」
そう思って首をひねることができる人間でいたかった。

それにしても。。。
相手の哀しみを絶妙のタイミングで癒す能力、
危険の只中にあってもぴくりとも揺らぐことのない精神力、
イグナシオはやっぱり神だったのだな、と思う。
本当の神は彼のように、どこか突き抜けた存在ながらも
欠点も弱さも卑怯さも人間と同じように併せ持っているものだと思うから。

ちなみに本作は重松清氏の〝疾走〟と非常によく似ています。
なので片方が肌に合った人はもう片方もどうぞ。

a5b3cd83.jpg











聖イグナシオ教会。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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