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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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そして過去は現在となり、現在は未だ見ぬ時となる。



ドイツ現代史の権威、ホーエンハイム教授の邸宅・蝙蝠館に招待されたゼミ生たち。
住民たちが先祖返りして獣同然の姿になったと伝えられる狗神窪にひっそりと佇むこの館が
吹雪に降り込められた夜、恐怖の殺人劇が幕を開ける――。
心理学やナチズム、中世の魔女裁判などにまつわる豊富な知識と、
鮮やかな仕掛けでミステリ・シーンに殴り込みをかける驚異の新人のデビュー作。

***

こう言っちゃ作者に失礼なのですが、ネット上のレビューサイトでの評価が
あまりに酷評なので逆に読みたくなって手にとった一作。

結論から言えば、そこまで言うほどひどくなかった。
突っ込みどころは異様に多かったけど、眼を覆いたくなるほどではまったくなかった。
むしろ楽しめた。

心理学うんちくを登場人物たちが語る部分も、大部分は(私は心理学オタクなので)
既に何かの文献で読んだことのあるものばかりだったけど、
異系交配が天才を生み出す、なんてくだりは初耳で興味深かったし、
探偵役が心理学の知識で犯人を追い詰めていくというのも斬新でよかったと思う。

ただ、どうしても眼を潰れない点はやはりあるので、以下に列記。

★フリッツの強迫神経症の原因を読者が推理するのはあれだけの材料じゃ到底無理。
せめて杏子のディナーのメニューだけソーセージにするとかしてくれないと(シモネタで
すいませんが本心です)。
★あの喋り方でホーエンハイム教授が女だと気づくのもやはり絶対無理。ていうか
アンフェア。もう片方は気づいた、というか最初からそうだと思っていたので別段驚くに
値しませんでしたが(むしろ「え、著者この人を女に見せかけてるつもりだったの?!」
と別の意味で驚いた)。
★根津が序盤で教授に取り入ろうと画策していたのが、途中からまったくなかったことに
なっていたのは一体何だったんだ? 伏線でもなんでもなくストーリーにも直接絡まないなら
別に描写する必要はなかったのでは?
★いろんなものを詰め込みすぎ。吹雪の山荘、過去の因縁、
精神病理学に臨床心理学に悪魔学にナチズム、叙述トリック。。。
本格推理によくある要素を手当たり次第ぶち込みすぎでまるで闇鍋のようだった。
★秀美の性格がありえない。精神病や虐待、そういった重い要素を軽く語るKYキャラ(ていうか
ただのバカ?)。そういう性格設定だとしてもありえない。こいつ物語が終わるまでに殺されろ、と
思わず願ってしまった。
★被害者が殺される際の描写が稚拙。まったく緊迫感がなく、〝小学○年生〟
とかの付録でついてくる『犯人を当ててみよう!』的な子供向け推理マンガでも読んでいるような
気持ちになった。
★中盤で探偵役が〝植物〟と言い出したときから嫌な予感はしてたんですが。。。
まさかあの植物は出てこないよな、まさか出てこないよなあんなベタな植物、と思っていたら
ほんとに出てきた。。。
ミステリではあまりにも使い古されたネタですよ、倉野先生。。。
有名作家でいったら乙一氏のこの本に入ってる短編とか。

〝スノウブラインド〟というタイトルが本筋にどう絡んでくるのかと思ったら
ラストに無理やり持ってきただけ、って感じなのもどうかなと。。。
そしてメフィスト作家でもそうそうやらないあのSF展開は何だったのかと。。。

でも本当に、皆が酷評するようなものではなかったと思う。
面白かったです。

ちなみに冒頭に出てくる曲はこれ↓ですね。
BGMにどうぞ(全然内容に合わないけどな。。。)。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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