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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「これが神様に見放される、ということよ……」

 

人口千三百余、三方を山に囲まれ樅を育てて生きてきた外場村。
猛暑に見舞われたある夏、村人たちが謎の死をとげていく。
増えつづける死者は、未知の病によるものか、それとも、
ある一家が越してきたからなのか…。

***

上下二段組&トータル1271Pを読破する余裕と情熱と根性がある方には
ぜひおすすめしたい一作。

化け物vs人間、というとどうも子供っぽく稚拙に感じてしまうものですが、
本作にはそういった印象はまったく受けず。これもひとえに著者の圧倒的なまでの
筆力があってこそ。
人が化け物に変異していく過程を医学的見地から描いているのも功を奏しているし、
人間一人ひとりの心理描写が非常に巧みで、一歩間違えば子供騙し的になりかねない物語に
実際にあったことを目の当たりにするようなリアリティを与えている。
ただしその〝キャラ立ち〟があまりに素晴らし過ぎるせいで、誰がどう動くか
多少読めてしまう部分もあるにはあるのですが。
あ、でもそれとは反対に、「この人は終盤で絶対に活躍するな」と確信していた人が
いつの間にかフェードアウトしていて「あれ? 結局最後まで出てこなかった。。。」と
拍子抜けするという逆現象もありましたが(まあ、でも絶対起き上がると思っていた
夏野が起き上がらなかった
のは、一番正しい〝人としての生〟を全うしたのだ、と
今となっては思っていますが)。

改めて、戦っているのは正義と悪、なんて単純な図式はこの世にないよな。
終盤に差し掛かるころにはもう、自分が誰を憎んでいるのか、誰の死を悲しんでいるのか、
自分自身わからなくなってきていたし。
まあ、本作が屍鬼という存在を通して人間の〝習性〟〝性(さが)〟といったものを
巧妙に描き出し皮肉ってみせていることは確かです。

怖さと切なさが同時に漂ってくるようなラストはすごく好き。
複雑な精神の持ち主は、自分を一番理解してくれる、そして自分と一番近い人間と
共鳴してしまうものなんだな、やっぱり。。。

映画化してほしいな。変にCGとか使わず、それぞれのキャラの内面を深く掘り下げる形で。

ちなみに本作を読んだ人には、新井素子さんの著作〝グリーン・レクイエム〟に
収録されている〝週に一度のお食事を〟もぜひ読んでほしいところ。



蛇足:
それにしてもこれだけ長い物語を読んでいると、その作家のよく使う単語がわかってくる。
本作は
〝瞬く〟
〝呻く〟
〝摂理〟
だった。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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