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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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それはたぶん永遠に終わることのない美しい耳鳴りのような。



五分のずれで現われた、もうひとつの日本は人口126万に激減していた。
国連軍との本土決戦のさ中で、アンダーグラウンド兵士の思いは…。
自分の中の情報を自覚を持って言葉にしたという著者の、472枚の力作。

***

北野武監督の〝キッズ・リターン〟がラストのあの会話のために創られた映画だとしたら、
本作はラスト一行のために書かれた小説なのだと思う。
〝ここで生きる〟、そんなテーマが、これでもかと伝わってくる。
この場所で、この生き方で、たとえ過酷でも自分自身の生を歩もう。
そう決意した人間の、そこに至るまでの過程を〝戦争〟というモチーフに絡めて表現したもの、
本作の内容をひと言で言うならこうだ。

浅倉卓弥氏の〝君の名残を〟が、序盤だけSFという疑似餌をばら撒いておいて
その実完全な大河小説で、SF・ファンタジー好きの読者に肩透かしを食らわせたのと似て、
本作も「何これ、SF小説かと思ったら戦闘描写ばっかりじゃん」と思わないでもないのだけど、
要所要所に差し挟まれたエピソードが、SFだの戦争小説だのといった垣根を越えた
〝純文学〟としての感銘を読む者にちゃんと与えてくれる。

正直著者があとがきで言うほど傑作とは思わないけど、
音楽家のワカマツのキャラや音楽描写を初めとしてとても楽しませてもらった。
村上氏は音楽を文章に変換するのが本当にうまく、
音楽ミステリを書く身としては心から尊敬してやまない。

ある種村上春樹氏の〝1Q84〟と通じる部分があるので、
二つ併せて読んでみるのもまた一興です。Wムラカミ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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