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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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まるで滅びのための進化のような。



ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病
異形性変異症候群」。政府はこの病に罹患した者を法的に死亡したものとして扱い、
人権の一切を適用外とすることを決めた。
十代から二十代の若者、なかでも社会的に弱い立場の人たちばかりに発症する病が
蔓延する日本で、異形の「虫」に変わり果てた息子を持つ一人の母親がいた。
あなたの子どもが虫になったら。それでも子どもを愛せますか? 
メフィスト賞受賞作!

***
 
プロローグを読んだ人は誰もがカフカの「変身」が頭に浮かぶと思う。
でもまったくそういう話ではなく、強いて言うなら、
もしもカフカのあの小説に続きがあったなら、という想像を膨らませて
書かれたものなのかも知れない。

これがデビュー作とは思えないほどこなれた文章、扱っているテーマ、
年輩の女のリアリティのある描写に、
著者はある程度年齢を重ねた女性なのではないかと思った。

SF的ホラー的な設定は本作のテーマをより強調して書くための舞台装置に過ぎず、
書かれているのはあくまで「家族とはどうあるべきか」ということ。
先が気になってひと晩で読破してしまったけれど、
読み進めていくに従って著者が本作を通して言いたいことが理解出来てきて、
ミステリではないので別にいいのだけどラストがある程度予測出来てしまったのが
残念といえば残念かな。

序盤でクソ野郎として描かれている主人公の夫も実は「本当にほしかったもの」に
飢えていたんだな、とわかるラストには、陳腐な言い方だけど
人間という生き物の抱える宿命というか悲哀のようなものを感じた。
ラストといえば、本作に出てくる病気「異形性変異症候群」のことを、
「神が人間に与えた試練」とわざわざ文章で書いてしまったのは蛇足だったと思う。
読者はそんなこと書かれなくても物語の内容からそのことは読み取れると思うから。

「一作家一ジャンル」と言われているメフィスト賞受賞作ですが、
本作には目新しいものは感じなかったのも残念な点のひとつ。
だってこれ、映画なら「美女と野獣」、漫画なら「フルーツバスケット」と
テーマもオチもまったく同じだから。
要するに、「醜い外見に惑わされずに相手のことを想えますか?」ということ。
もうちょっと深みと斬新さが欲しかったというのが正直なところ。

というか飼ってる犬捨てられたら自分ならその時点でその旦那とは離婚するわ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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