突然幽霊が見えるようになり日常を失った夫婦、
首を失いながらも生き続ける奇妙な鶏、
記憶を失くすことで未来予知をするカップル、
書きたいものを失くしてしまった小説家、
娘に対する愛情を失った母親、
家族との思い出を失うことを恐れる男、
元夫によって目の前で愛娘を亡くした女、
そして事故で自らの命を失ってしまった少女。
暗闇のなかにそっと灯りがともるような、おそろしくもうつくしい
八つの“喪失”の物語。
***
乙一(と敢えて呼ばせてもらいます)さん、変わっちゃったなー。。。
というのが最大の感想。
「山白朝子」でも「中田永一」でもなく「乙一」だったころは、いい意味で
「この人どういう頭してたらこんな話が書けるんだろう」と
驚かされたものですが、本作にはその驚きがない。
ありがちな話に毛がはえたぐらいの短編が八つ。
題名とあらすじに惹かれて読みましたが、完全に肩透かしでした。
どこが「喪失」をテーマにした「切ない」物語なのか。
そもそも物語がどうこう以前に、作中で一回説明したことを間を置かずまた
説明したりと、文章力にも首を捻らざるを得ないものがあった。
大震災で妻子を失った主人公がよくわからん女とすぐに再婚するとか、
「乙一」だったら絶対書かないだろうに。。。と何だか悲しくなってしまった。
「親と子」を扱った話が多いのも、恐らくは著者が父親になったからでしょうが、
辻村深月然り、金原ひとみ然り、本谷有希子然り、結婚して子供が出来たら
その手のネタばっかり書くようになった作家たちと同じ感じがして
「いいから昔のあなたに戻ってあのころみたいな傑作を書いてくれよ」と
思ってしまった。家庭を持って孤独から逃れると途端に才能が劣化するのは
女性作家によく見られる傾向だけど、まさか「乙一」さんもそうだとは。
「子どもを沈める」という話は、一見いい話風にまとめているけど
主人公とそのかつての友人たちがゴミすぎるので、何でこんなゴミたちが
その最低な過去を含めて夫に受け入れられてるんだよ、と胸糞悪くなった。
大丈夫かこの人、と心配になるほどに孤独ばかりをテーマに物語を書いていたころの
この著者のほうが圧倒的に才能があった。
あのころの乙一さんを返してほしい。
「GOTH」「ZOO」「失はれる物語」のころの乙一さんをもう一度。。。って
無理だろうなあ。。。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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