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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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しかしそれは、わたし自身には触れることも登ることもできないガラスの塔なのだ。



20年前に起きた通り魔事件の犯人が刺殺された。
警察に「殺した」と通報したのは、その通り魔に愛する両親を殺された柏原麻由子。
だが、麻由子は当時現場から逃げる途中で交通事故に遭い、脳に障害を負っていた。
警察の調べに対し、麻由子による通り魔殺害の記憶は定かでない。
はたして復讐は成し遂げられたのか――?

***

ちょっとライトな感はあるけど、いいものを持っているなあと思い、
前から注目している作家さんの作品。

登場人物が少ないので真相はすぐに読めますが、ホワイダニットが
どんどん移り変わっていくのが面白く、あっという間に読めた。

高次機能障害で記憶を長時間保っていられない麻由子と
事件の真相を追う女刑事の視点が交互に入れ替わって話が進みますが、
障害を持つ麻由子と認知症の母親を持つ女刑事の共通項が
徐々に見えてくるなどテーマがはっきりしていてとても読みやすい。
麻由子パートでは、麻由子が仕方ないとはいえ起きたことをぽんぽん
忘れるので文章の繰り返しが多く若干イラつきますが、
そのぶん本人やその介護者の気持ちがわかる。
女刑事の母親の描写も、生々しいほどで認知症の家族を持つ人間の心情が
リアルに伝わってくる。まあ、刑事なんて職に就いてる人が母親をひとりで
介護した経験があるって設定にかなり無理があるとは思うけど。

クライマックスの格闘シーンは90年代のB級サスペンスみたいだし、
作中にクサい台詞が出てきたりもするけど、決して駄作ではありません。
この著者に対していつも思うことだけど、もうひと捻りすれば傑作になるのにと
思うような作品だった。楽しませてはもらったけど。

ラストは切ないです。切ない系が好きな人は是非。
本作はミステリですが、ある意味真実の「恋愛」が描かれています。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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