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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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そして、おそらく、それでいい。



美術教師の美穂には、有名人になった教え子がいる。
彼の名は高輪佑。国民的アイドルグループの一員だ。
しかし、美穂が覚えている小学校時代の彼は、おとなしくて地味な生徒だった――
ある特別な思い出を除いて。今日、TV番組の収録で佑が美穂の働く小学校を訪れる。
久しぶりの再会が彼女にもたらすものとは。

★収録作品★

 ナベちゃんのヨメ
 パッとしない子
 ママ・はは
 早穂とゆかり

***

タイトル通り、ふたりの人間がどこか噛み合わない過去の記憶について
会話でやり取りする、ということがテーマになった短編集。
私としては最初の二編がとても面白く読むことが出来た。

「ナベちゃんのヨメ」は、女子たちに仲間としては受け容れられるけれど
異性としては見てもらえないナベちゃんがその仲間たちに婚約者を紹介するという
話。婚約者のウザさ、怖さに読んでいる間はイラつくものの、
ラストはそうか、これでいいんだなと思わされるという、
才能ある作家さんに特有の「読者の価値観を覆す」という手法に見事にやられた。
「受け容れられるということを経験したことがない」人間の切なさを
これでもかと見せつけられる思いがした。

「パッとしない子」は、私自身が「先生」と呼ばれる職業に就いているぶん余計に
主人公に向けてかつての教え子・佑が放つ言葉の一つひとつが
抉るように胸に響いた。教え子に、いやそうじゃなくても誰かに
こんな言葉を言われたら、私だったら高い確率で当分の間寝込む。
そして一生その言われた言葉に呪縛されて二度と心から笑うことは出来ないと思う。
恐ろしい話だった。
やっぱり人間にとって一番怖いのは、肉体的に傷付けられることじゃなく、
言葉という凶器で精神を殺されることなんだなと改めて思った。

あとの二編はまあまあといったところ。
けれど最近「パッとしない」なと思っていた辻村さんの作品を見直す
きっかけになった作品だった。

おすすめです。
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