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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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自分は客人なのだ。
期間限定の人間なのだ。




私は人を殺した。そのことが私の人生にこれほどのものをもたらすとは知らずに……。
死と悪をテーマに、現代の青年の心理を克明に描ききった衝撃の問題作。

***

「どうして人を殺しちゃいけないの?」とほざくガキどもに突きつけたい一冊です。
とのっけからものすごい紹介の仕方ですが、ここまで殺人を犯した者の抱えることになる
葛藤を描いた物語はほかにないと思うから。
人間(特に子供や若者)に何かよくないことをやめさせたければ、くどくどしく道徳を説くよりも
それが〝格好悪いもの〟であることを刷り込むのが一番、とはよく言うけれど、
本作を読むと本当に〝殺人〟という行為、そしてそれを犯した人間が、
いかに(言い方は悪いですが)マヌケで見てくれの悪いものであるかが嫌というほどわかる。
かっこいい殺人鬼なんてフィクションの世界のキャラだけ。
「いや、現実にもいるし」と言う人は、その〝英雄的殺人者〟の末路までちゃんと調べてから
言ってほしいと思う。彼らのほとんどは、大抵が誰も信じられなくなって精神に異常を来し、
そんな姿を周囲に嗤われながら屈辱と恐怖のうちに無様に死んでいくか、
法の手で惨めに裁かれている。いや、フィクションですら、〝デスノート〟のあの
夜神月の末路は悲惨なものだった。
私は決して「殺人反対!」などという考えの持ち主ではないですが(ミステリ書いてるぐらいだし)、
自分が人を殺すことは生涯誓ってないと思う。
マヌケなピエロになりたくないし。全国ネットで小学校時代の作文読まれたくないし。
何も知らない昔の同級生や近所のおばさんに無責任な自分の人間像語られたくないし。
知った風なコメンテーターたちにどうでもいい心理分析とかされたくないし。
本作にはそんな無様な殺人者の姿があまりにもリアルに書かれているので、
普通ならば忌むべき、恐れるべきであるはずの〝殺人を犯した人間〟が
滑稽に思えてきてむしろ吹き出したくなる。そんな殺人犯に対して催すのは、
恐怖ではなく生理的嫌悪感。
人を殺したいと心から思ったことのある人は、手にとって読んでみることをおすすめします。

でも正直。。。〝殺人を犯したくなる心理〟というものも同じぐらいリアルに描かれているので、
殺人者である主人公には嫌悪感と同時に共感もおぼえてしまうわけですが。。。
あまりにその描写が的を射ているので。。。
このままでは精神が死んでしまう、と思ったときに突発的な行動をとってそうなるのを無意識に
回避する、というのは私も経験があることだけに痛かった。
狂気めいた言動はときにそれをした本人を救う。そんなことで救われている自分が嫌で、
けれどそんな自分を文章を通して突きつけられているようで、まるで文章が鏡のようで、
読んでいてつらかった。
逆に本作を読んでも共感をおぼえず、心がうずかないのは、精神が健康な証拠だから
喜んでいいと思います。

繰り返しになりますが、他人か自分を殺したくなったら、その前に本作を読んでみてください。
自分の中で何かしら考えが変わるかもしれません(たぶんいいほうに。万が一悪いほうにいっても
責任は持てませんが。。。)。

ところで、作中に出てきた「何故自分は他人の子供の敵を討とうとしているのか」という疑問に対して
主人公が自ら打ち出したいくつかの答えのうち、ついに最後まで言及されなかった最後のひとつ。
それは結局何だったんだろう? 私なりに考えてみた答えはふたつ。
〝負のエネルギーを蓄えてもいずれそれは底を尽きる。そうなる前にまた補充したかった〟
〝殺人を犯す少年を自分の分身と捉え、自らを殺すつもりで殺したかった〟
このどちらかだと思うのですが、本当のところはどうなんでしょう?
本作を読んだほかの誰かと意見を突き合わせてみたいところです。

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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