ここにはすべてがあるし、本当は何もない。
正直に言うと、僕にも忘れられない人が一人だけいる――15年前の夏、中学生だった僕は
“ひなた”と名づけた虎猫と柚原という少女にまつわる忘れられない体験をした。
29歳、料理人をやめてフードライターとして日銭を稼ぎ、夫のいる女性と続けている関係が
危うくなってきた今、僕は当時の夢を繰り返し見るようになる。
柚原とその兄の秘密、彼女の祖父と隕石の不思議な話、二人で見た奇跡のような流星群…。
時を経て、偶然にも再び訪れることになった思い出の地で、僕が出会ったのは――。
猫と料理と流れ星がつなぐ、“夢と現実”“過去と現在”のあわいに命の希望を描いた
気鋭作家の書下ろし長編小説。
***
精神的に追い込まれていく主人公の心理がそのまま伝わってくるような鬼気迫る描写、そして
自分を取り巻く世界がどんどんと遠ざかっていくような疎外感・寂寥感を怖いほどに感じさせた
氏のデビュー作〝さよならアメリカ〟と比べるとどうもインパクトに欠け、
甘ったるいファンタジックさも鼻につく本作ですが、まあたまにはゆったり読める、
それでいて読後に静かで心地いい孤独感と小さな爽快感を残してくれるようなこういう物語も
いいかもしれないな、と思った。
ただ、気になった点がいくつか。
★言葉の表現がおかしいところがままある(例:〝細いタイトジーンズ〟。細いからタイトジーンズ
なのでは?)。
★陳腐な表現が目立つ。
ネット小説に出てくるような、到底プロが書いたとは思えない稚拙な単語で組み立てられた文章が
かなり多い。その合間合間にはっとさせられるような表現が出てくるからどうにか最後まで
読めたけど、読んでいて結構きつかった。
★余計な雑学の羅列。
〝スノウドロップ〟という花の名前の由来とか、荘子の〝胡蝶の夢〟についてとか、
無駄な雑学を登場人物たちが頻繁に口にするので読んでいて気恥ずかしくなった。
著者が過去に齧った知識の中で気に入ったネタを単に盛り込んでいるだけとしか思えない。
本作にわざわざ組み込む必然性を感じない内容ばかりだし。
しかも普通の人ならまず知らないようなことを披露するならまだしも、
ちょっと本を読む人なら大抵知っていることばかりだし。
そして一番突っ込みたいのが〝ナルコレプシー〟という病気について。
ノゾミさん、普通あんな簡単に相手を「あなたナルコレプシーじゃない?」なんて思いません。
症状だって全然違うし。
そしてナルコレプシーの病識間違ってます。あれはそんな簡単な病気じゃありません。
★料理の描写が下手。
著者が元料理人だからといって、料理の描写が必ずしも美味しそうとは限らないんだなー。
実際に作るのとそれを文章で表現するのは別物。
私ももう何年も歌をやっていて時々仕事にもしていますが、それでも音楽ミステリ書いて
新人賞に送った際、選考委員の先生に「音楽の表現が陳腐」って言われたしな。。。
以前読んだ某女性作家の料理描写のほうがよっぽど美味しそうだった。やはり女性強し。
(でも故・藤原伊織氏のホットドッグの描写がミステリ読みの間では「美味しそう」と評判
なんだよな。。。今度読んでみよう)
★主人公の女性との絡みが劣化村上春樹。
会話も女性たちのキャラクターも。そこまで顕著ではないけど気になった。
というかこの著者に限った話じゃないけど、なんで男性作家って女キャラにやたらワンピース
着せたがるんだろう? それも避暑地で見かけそうな清楚系ばっか。
そして男と話すときにいちいち相手の顔を覗き込む女なんてよっぽどの自信家かぶりっ子だけ
だよ。
全体で見ればほんのりと暖かくそれでいてときに切ない、素朴ながらに素敵な物語でしたが、
柚原のお兄ちゃんへの気持ちが今ひとつわかりにくかったのでもうちょっとそのへんを書き込んで
ほしかったな。そうすればラストがもっと活きた気がする(まあ、主人公と二度目にホテルに
泊まった際に柚原が異様にフェラチオが巧かった、というのが、兄にも同じことを何度もしてきた、
つまり兄を拒否せず倫理の許すギリギリの範囲で受け入れていた、という伏線になっているのかも
しれないけれど←ネタバレにつき薄字で)
星のきれいなこの季節に読むにはいい小説なのではと思います。
BGMはやっぱりこれ↓かな。
ちなみに私は今から七年前に来た流星群を一晩中眺めていたとき、
ひと際大きい流れ星が横切って消える瞬間〝ジュッ〟と音を立てるのを確かに聴いた。
これだけは断言できる。
正直に言うと、僕にも忘れられない人が一人だけいる――15年前の夏、中学生だった僕は
“ひなた”と名づけた虎猫と柚原という少女にまつわる忘れられない体験をした。
29歳、料理人をやめてフードライターとして日銭を稼ぎ、夫のいる女性と続けている関係が
危うくなってきた今、僕は当時の夢を繰り返し見るようになる。
柚原とその兄の秘密、彼女の祖父と隕石の不思議な話、二人で見た奇跡のような流星群…。
時を経て、偶然にも再び訪れることになった思い出の地で、僕が出会ったのは――。
猫と料理と流れ星がつなぐ、“夢と現実”“過去と現在”のあわいに命の希望を描いた
気鋭作家の書下ろし長編小説。
***
精神的に追い込まれていく主人公の心理がそのまま伝わってくるような鬼気迫る描写、そして
自分を取り巻く世界がどんどんと遠ざかっていくような疎外感・寂寥感を怖いほどに感じさせた
氏のデビュー作〝さよならアメリカ〟と比べるとどうもインパクトに欠け、
甘ったるいファンタジックさも鼻につく本作ですが、まあたまにはゆったり読める、
それでいて読後に静かで心地いい孤独感と小さな爽快感を残してくれるようなこういう物語も
いいかもしれないな、と思った。
ただ、気になった点がいくつか。
★言葉の表現がおかしいところがままある(例:〝細いタイトジーンズ〟。細いからタイトジーンズ
なのでは?)。
★陳腐な表現が目立つ。
ネット小説に出てくるような、到底プロが書いたとは思えない稚拙な単語で組み立てられた文章が
かなり多い。その合間合間にはっとさせられるような表現が出てくるからどうにか最後まで
読めたけど、読んでいて結構きつかった。
★余計な雑学の羅列。
〝スノウドロップ〟という花の名前の由来とか、荘子の〝胡蝶の夢〟についてとか、
無駄な雑学を登場人物たちが頻繁に口にするので読んでいて気恥ずかしくなった。
著者が過去に齧った知識の中で気に入ったネタを単に盛り込んでいるだけとしか思えない。
本作にわざわざ組み込む必然性を感じない内容ばかりだし。
しかも普通の人ならまず知らないようなことを披露するならまだしも、
ちょっと本を読む人なら大抵知っていることばかりだし。
そして一番突っ込みたいのが〝ナルコレプシー〟という病気について。
ノゾミさん、普通あんな簡単に相手を「あなたナルコレプシーじゃない?」なんて思いません。
症状だって全然違うし。
そしてナルコレプシーの病識間違ってます。あれはそんな簡単な病気じゃありません。
★料理の描写が下手。
著者が元料理人だからといって、料理の描写が必ずしも美味しそうとは限らないんだなー。
実際に作るのとそれを文章で表現するのは別物。
私ももう何年も歌をやっていて時々仕事にもしていますが、それでも音楽ミステリ書いて
新人賞に送った際、選考委員の先生に「音楽の表現が陳腐」って言われたしな。。。
以前読んだ某女性作家の料理描写のほうがよっぽど美味しそうだった。やはり女性強し。
(でも故・藤原伊織氏のホットドッグの描写がミステリ読みの間では「美味しそう」と評判
なんだよな。。。今度読んでみよう)
★主人公の女性との絡みが劣化村上春樹。
会話も女性たちのキャラクターも。そこまで顕著ではないけど気になった。
というかこの著者に限った話じゃないけど、なんで男性作家って女キャラにやたらワンピース
着せたがるんだろう? それも避暑地で見かけそうな清楚系ばっか。
そして男と話すときにいちいち相手の顔を覗き込む女なんてよっぽどの自信家かぶりっ子だけ
だよ。
全体で見ればほんのりと暖かくそれでいてときに切ない、素朴ながらに素敵な物語でしたが、
柚原のお兄ちゃんへの気持ちが今ひとつわかりにくかったのでもうちょっとそのへんを書き込んで
ほしかったな。そうすればラストがもっと活きた気がする(まあ、主人公と二度目にホテルに
泊まった際に柚原が異様にフェラチオが巧かった、というのが、兄にも同じことを何度もしてきた、
つまり兄を拒否せず倫理の許すギリギリの範囲で受け入れていた、という伏線になっているのかも
しれないけれど←ネタバレにつき薄字で)
星のきれいなこの季節に読むにはいい小説なのではと思います。
BGMはやっぱりこれ↓かな。
ちなみに私は今から七年前に来た流星群を一晩中眺めていたとき、
ひと際大きい流れ星が横切って消える瞬間〝ジュッ〟と音を立てるのを確かに聴いた。
これだけは断言できる。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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