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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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それを希望と呼んで何が悪い。



あと一年。死ぬ日を待ち続ける。それだけが私の希望――。

誰にも求められず、愛されず、歯車以下の会社での日々。
簡単に想像できる定年までの生活は、絶望的な未来そのものだった。
死への憧れを募らせる孤独な女性にかけられた、謎の人物からのささやき。
「本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか? 一年頑張ったご褒美を差し上げます」
それは決して悪い取り引きではないように思われた――。

***

本多作品にしては珍しく恋愛ものじゃないまっとうな(って言い方は誤解を招きそうですが)
ミステリ。。。かと思いきや、中盤を越したあたりから本多氏特有の甘ったるい恋愛臭が
ほんの薄っすらとですが漂いだして、「やっぱり嗜好っていうのは変えられないものだな」と
ちょっと苦笑いしてしまった本作。

ドラマ部分はまあまあよく描かれてはいるものの、これまでの氏の著作に共通してあった
神秘性が、前作〝正義のミカタ〟あたりから消えてしまっていて、全体にベタに感じられた。
終わり方も教訓めいていてちょっとクサいし。
ミステリ部分は。。。テーマや構成的には本格ものっぽいのに、やはり
本物の本格推理作家と比べると足元にも及ばない感じ。
犯人の動機もインパクトがないし真相が明かされるタイミングも後出しジャンケン的&
読者が推理するには伏線が少なすぎだし(その割に本作最大の〝仕掛け〟は
描写があからさますぎてすぐに「あ、そういうことか」と気づいてしまうし)。
というかこの手の仕掛けが施されたミステリはもういい加減食傷気味。
同じ系統のミステリなら、断然これこれをおすすめします(ネタバレかもなので閲覧注意)。

文章は相変わらず非常に読みやすく物語自体は決してつまらないものではないので
一気に読んでしまいましたが、特に印象に残る部分なし。
電車の中でサクっと読むぶんにはいいかもしれない(でもあまりに適当に読み流していると
〝仕掛け〟に気づかないまま読み終えるはめになるかもなので注意が必要)。

これが発表されたのが20年ぐらい前だったら革新的だったかもしれないんだけどな。
本多氏に限らずミステリ作家さんには、そろそろこの手のトリックに頼らず次のサプライズを
考え出してほしいものです(ってミステリ作家志望のおまえもな、という感じなのですが)。

何より、本書を読んで伝わってくるものが「結局運と精神が強いやつが勝つ」ということだけ
だったのがやたら虚しい。それぐらいならいっそベタ中のベタでいいから
「あきらめないものに光は射す」みたいなことをテーマにしてくれたほうがよっぽどよかった。

最近の本多作品は正直あまり好きじゃないです。
まあ、次回に期待。



おまけ:
これ↓がゲルセミウム・エレガンス(ヤカツ)の花らしい。
見てるだけのぶんには奇麗なのになー

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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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