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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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さいごにもう一回ゆっくりはなしをしよう。



幼い「わたし」の視点で、父の恋人の「あなた」を語っていく物語。

***

ここ最近の芥川賞受賞作(チェックしてないものもあるけど)の中ではダントツ。
読んでよかった。感動と興奮でぞくぞくした。
死んだ母親の代わりに来た新しい若い母親、
というものに普通の人間が抱くテンプレートなイメージを
本作の三歳の語り部「わたし」が語る「あなた」が見事に打ち壊してくれる。
ともすれば俗っぽい、不倫なんかしちゃう凡庸な女性なのに、
妙に魅力的に描かれているのはひとえに著者の手腕だと思う。
ミステリ小説並に作中に張られた伏線がラストできれいに回収されていることにも
美しさを感じてぞくりときた。
でも個人的に一番印象的だったのは、
若く将来もあってすぐにでも「わたし」の父親と「わたし」から離れていくと思われた
「あなた」が、「わたし」が大きくなってからもずっとそばにいるのだとわかる
中盤の一文かな。何故かそこの描写にいい意味で全身が総毛だった。
とりたてて派手なシーンじゃないのに。
むしろ著者が見せ場として書いただろう最後の〝格闘〟のシーンが
芝居がかっていてあまり好きになれなかった。うまいな、とは思ったけど。

三歳の少女が父親の恋人を語る、という視点には
どこか切なさのようなものが漂っていてとにかくやられた。
昨今の芥川賞受賞作にありがちな、セックス描写に逃げるところも
本作にはなく満足した。

非常におすすめです。
書籍化が俟たれるところ。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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