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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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君はいなくなったけれど、君はいつもそこにいた。



良いニュースと悪いニュースがある。
多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。
あるポイントまでは…。

***

ひと言で言えば、親友4人に急に絶縁された主人公が、
好きな女のすすめでその4人に何で自分が縁を切られたのか訊きにいく物語。

耳慣れないカタカナ語の連発とか「それはまるで~のように」みたいな
比喩表現のくささとか著者の過剰にフェミニストな部分が透けて見えたりの部分とか
鬱陶しいところはいっぱいあるのだけれど、
村上春樹という名前を抜きにニュートラルに読めばまあそこそこの出来。
個人的な話になるけれど、私も高校時代・大学時代を通して
「彼らだけは失いたくない」と、本作の主人公・つくるほど緊密な結びつきではないにせよ
思えるグループに属していたことがあり、それを失くすことを想像するたび
恐怖して「どうか彼らを私の元から去らせないでください」と祈ったことすらあるので、
村上春樹氏が本作で言いたいことはよくわかった。
むしろ失くしたくないが故にそこまで思いつめることが出来るのかと
切なさを通り越して空恐ろしささえ覚えた。
何か大切なものに対する混じりけのない純粋な気持ちというのは、
取り換えや誤魔化しがきかないぶん失うかも知れない危機に瀕したときに
心を守る術がなく、下手をすると、いや高確率で精神の破綻を招く。
それほどにかけがえのないものに出会えたことをそれでも喜び共存するか、
失っても致命的な痛手にはならないそこそこ好きなものだけに囲まれて生きていくか。
どちらを幸せに思うかは人間の永遠の命題だと思う。

傑作というほどではないけどまあ楽しめました。
あとは、敢えてぼかされたラストがつくるのハッピーエンドで終わるよう祈るだけ。
いや、「エンド」じゃなく、彼がこれから新たに始まっていくことを。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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