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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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心を形にするために。



玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、
新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。
個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。
言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。
しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。
言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる
三浦しをんの最新長編小説。

***

極めて良質な物語。
中高生にも勧められる内容。

だからこその本屋大賞なのかな、と思った。

本屋大賞って基本的に、悪くいえば「教科書」的な
毒を含まない小説を受賞させることが多いように感じるから。

でも、いくら小説家という肩書を持っているにしたって、
「言葉」という非常に難しい題材をここまで見事に書き上げた三浦しをんさんは
すごいなと思った。
「言葉」が主軸の物語で、著者の文章に瑕疵や間違いがあろうものなら
読者に徹底的に叩かれるのは目に見えているのに、
それを恐れずひとつの物語にしてしまう。
直木賞まで受賞した彼女ならではの自信がきっと
この物語を彼女に書かせたのだろうなと思った(もちろん本作執筆にあたって
彼女は様々なひとに取材をし、たくさんの文献を読んだりと
たゆまない努力はしているけれど)。

本作の主人公は辞典の編纂を生業としているけれど、
川上未映子さんは〝すべて真夜中の恋人たち〟で校閲者を主人公にしていて、
でもその割に地の文に間違いが頻発したりと完成度がいまいちだったのに対して、
本作は日本語としておかしい部分は私の気付く限りまったくなく、
改めて著者の力量を感じた。

私は子供のころ辞書が大好きで、
毎日一つひとつの単語を貪るように読んでいたりしたものだけど、
作家なだけあって著者もきっと昔そういうことをしていたのだろうなと思った。
でなきゃちょっと取材したり文献を読んだぐらいでこんな物語は書けない。

淡々と進むので刺激はあまりなく地味ではあるけど、おすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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