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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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わたしは、軽薄の上に築き上げたすべてを差し出すだろう。



十代の終わりにストーカーと化した元恋人に刺された過去をもつカナ。
だが二十九歳のいま、裕福な夫と幼い息子、充実した仕事を手にし、
満たされた暮らしを送っていた。
そこにアメリカから姉一家が帰国。すっかり大人びた未成年の甥に
思いを寄せられる――。
危うい甥との破滅的な関係。
空虚の果てにある一筋の希望を描く渾身の長篇小説。

***

前作に比べて金原ひとみさんのいい意味での下品さが戻ってきていて
ちょっと嬉しくなった。
かつて好きだった男を裏切ったから似たような男とやり直す。
ひと言で言ってしまえばそれだけの話だけど、
若いころ遊び回っていたという著者と同じ、この主人公も、
堅実で有能な男より危ういダメ男に惹かれるんだろうなというのがわかる。
まあ、著者噂によると大手出版社の編集と結婚してるらしいけど、
そういうのより本作に出てくるような男が本質的には好きなんだろうな。
でも十代でここまで荒れてた、おそらくは下品さや負のオーラが
滲み出ているだろう、言ってしまえば「事故物件」な主人公の女を、
あんな有能で真面目な男が嫁に選ぶはずなくてそこはちょっとファンタジー
だけど。

文中やたら「嫌悪感」という言葉が出てくることからしても、
著者はこの世の中と人間とひょっとしたら自分自身にも
嫌悪感を持っているのかも知れない。
我が子が「ぎゅってして」って言ってきたら愛しくてしょうがないだろうに
そこでも「嫌悪感を抱いた」って書いちゃうしな。
普通のひとが幸せだと感じることすべてを馬鹿にして嫌悪してるしな。
その気持ちはわからないでもないけど気の毒な価値観だ。
ひとのこと言えないけど。私も自分の子供をSNSのアイコンにしてたりする
知人を見ると馬鹿じゃねーのと思うクチだし、
あまりにテンプレな言動をする人間を軽蔑もしてるし。

ひとつウザかったのは、この著者外国で暮らすようになってから
やたら外国と日本を比較する描写が多いこと。
国際結婚してからやたらアメリカと日本を比較する言動をする
リアル叔母を思い出したよ。
知ったこっちゃねーよいやなら住むなと言いたくなる。
まあ純文学なんて自分のことを書くものだから仕方ないっちゃ仕方ないんだろうけど。

この著者は不安定な人間を書くのが本当にうまいので、
久しぶりに虚無感を抱えた不安定な女が主人公で
「金原ひとみ戻ってきた!」と嬉しくなったのは事実ですが。
ていうか金原さんかなりの確率でパーティ嫌いだよな。
大勢の人間が上っ面の笑顔で上っ面の会話を交わすあの場が。
今までの作品にもパーティに異様にストレス感じてる主人公がけっこう出てきたし。

まあ佳作です。
30過ぎると若いのに惹かれちゃうよね、金原さん。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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