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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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そしてあたしは今、その留め金をはずそうとしている。



東京に今年三度目の雪が降った夜、長女の艶子は出て行った。
意味不明の小さなメモを残して。
四姉妹の語りと日記から浮かび上がってくる、それぞれの息苦しさと生きにくさ。
第4回新潮エンターテインメント大賞受賞作。

***

久々のブックレビュー。
というわけで、最近お話する機会のあった中島桃果子さんの
デビュー作を紹介します。

ひと言で家族小説と言っても、そこからイメージされる温かさよりも
ひりひりと痛く切ない空気が押し寄せてくる物語。
失踪した艶子のモノローグを挟んで、四女の語りが交互に繰り広げられます。

私の知人にも兄弟が全員女性、というひとは何人かいるけれど、
彼女たちもこういう女きょうだいならではの絆で結ばれて生きているのかと思うと
何だか羨ましい気持ちになったり。

艶子の心情をもうちょっと描写してくれるともっとよかった気もするけれど、
なかなかに良作です。

おすすめ。
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知ってるよ。



何時だって何歳だって女の友情はめんどくさくって、あやうくって、美しい。
OL、ママ友、中高生…。さまざまな年代、立場の女性の友情に隠された想いを
情感あふれる筆致で描ききる!
注目度ナンバーワンの新鋭が贈る連作ミステリ。

***

女の友情云々、みたいな小説は
恋愛が絡んでどうのこうの、みたいなワンパターンが多いけれど、
本作はまさに「女の友情」を描ききった名作です。
女の友情を書かせたら辻村深月さんが一番だと思ってたけど、
ここまで書けるひといたんだなあ。。。と唸らされた。
ミステリとしても面白くて一気読み。非常におすすめです。
この著者の著作を読んだのは初めてだけど、一発でファンになりました。
デビュー作も読んでみよっと。
あの夏を。



僕たちは、あの夏から出られない――。
人生を賭けた少年たちの計画が、変わりゆく街と許されざる罪に鉄槌を下す。
少年たちのひと夏。青春と断罪のミステリー!

***

「襲名犯」で乱歩賞を受賞した作者の受賞第一作。
正直本作で投稿してたら受賞はしてなかっただろうな。。。

どうなるんだろうどうなるんだろう。。。→真相わかる、解決
どうなるんだろうどうなるんだろう。。。→真相わかる、解決

この「真相」に至るまでが長すぎて何のヒントもなさすぎて、
「真相」から「解決」に至るまでがあまりにもあっさりしすぎてて、
ミステリとして魅力を感じなかった。
序盤の描写は「何が始まるんだろう」と引き込まれるものがあるだけに
残念。

でもとてもいいものを持っている作家さんだと思うので
次回作に期待します。
この作者地元で働いてるんだよな。
今度会いにいってみようかな。
あなたが救われる道は一つしかないーー。



別れた妻が殺された。
もし、あのとき離婚していなければ、私はまた遺族になるところだった。
東野圭吾にしか書けない圧倒的な密度と、深い思索に裏付けられた
予想もつかない展開。
私たちはまた、答えの出ない問いに立ち尽くす。

***

久々のレビュー。
数多の本を手に取ってはつまらなくて途中で投げ出す、ということを
繰り返してきましたが、東野作品はさすがというべきか
安定して最後まで読めました。

大作ではないけれどきれいにまとまったミステリ。
死刑制度の是非について書かれた作品ですが、
その制度そのものをうんぬんといった重い描写はなく、
登場人物たちの心情を通して「あなたはどう思う?」と訴えかけてきます。

ただ。。。
「罪を犯した自分なんてもんは盗んだものを食うのがふさわしい」
って考えはどうしても腑に落ちなかった。
罪を償いたいならせめて金払えよ、と。
罪人である自分が「食べる」なんて行為をして生き長らえるのは
許せない、とガリッガリに痩せてるとかならまだ納得がいったのですが。

あと後半、主人公の影が薄くなるのがちょっと。
物語の進展のために動かされているコマの印象が拭えなかったな。

でもそれなりに面白く、相変わらず文章も読みやすいので
あっという間に読み終えました。

結局罪人を罰するにはその人物の一番大切なものを奪う、生きがいを奪う、
というのが私的には最大の方法だと思うのですが、
そんなのはその人物を死刑にするより難しいよな。

ちなみに本作が面白かったひとは、中村文則氏の
「何もかも憂鬱な夜に」がおすすめです。
それでも精子は卵子に届いてヒトの形に膨らんでいく。



「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい――。
そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、
「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。
育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。
素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。
それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない…。
三人での交際が流行する、奇妙な世界を描いた「トリプル」など、
短篇3作も併録。
普遍の価値観を揺さぶる挑戦的作品集。

★収録作品★

 殺人出産
 トリプル
 清潔な結婚
 余命
 
***

ホラーっぽいタイトルですがれっきとした純文学です。
性の価値がずれたパラレルワールド(もしくは近未来)の男女を描いた
作品。

どの話もインパクトが強くグロい描写もあいまって
非常に頭に残るのですが、
こう言っちゃなんだけどかの「リアル鬼ごっこ」を書いた
山田悠介の作品を読んでいるような壮大なバカバカしさも感じた。
着眼点はいいし発想も面白いんだけど、筆力と感性がそれに
追いついていないような。
おかしな価値観を描いていても、その価値観に読者を引き込んでしまうのが
プロの作家というものだと思うのですが、
本作はどこまでも客観視で読めてしまい入り込めないというか、
あくまで「あーこういう世界をこの作者は書きたかったのね」と
第三者的目線で読んでしまうというか。
ちょっと世界観の設定や心理描写の詰めが甘いところもあったりしたしな。
「清潔な結婚」では思わず大爆笑してしまいました。
ラストシーンに空恐ろしさを感じたりもしたけれど。
まあ、「性的に興奮する相手が必ずしも結婚相手としてふさわしいとは
限らない」という論には一理あると思わされましたが。

純文学を多少読んでいるひとにはまあまあおすすめかな。
あくまでネタとして読むことを推奨しますが。
何かを見ている。――何かを見ている。



真実は「悪夢」の中に隠されている――。
幻惑の極致が待ち受ける道尾ミステリーの頂点!
あの女が、私の眼前で死んだ。かつて父親が犯した殺人に関わり、
行方不明だった女が、今になってなぜ……
真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を次々に襲う異様な出来事。
はたして、誰が誰を殺したのか?
薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックで
驚愕の世界に誘う、待望の書下ろし超本格ミステリー!

***

最近文学作品的なものばかり書いていた道尾氏が
やっと氏の本領であるミステリを書いてくれた!
と喜び勇んで読み始めたものの。。。

結論から言うと、二時間ドラマでした。
いかにも深みがありそうな描写が続くけど、
冷静に読めばまったくそうじゃない。
人間の心理描写も浅い上に納得のいかないものばかり。
作者が作中に散りばめたガジェットがうまく絡み合っていなくて
ちぐはぐな印象も受けた。

よかったのはラストシーンだけですが、
それもよくよく考えれば取ってつけたような印象。

もうこのひとにはミステリは書けないのかな。。。と
落胆する一作でした。
大好きな作家のひとりである辻村深月さんもここのところ
文学的になりすぎてミステリは全然だし、
直木賞をとってダメになっていく作家が多い。
それとも受賞するとその手の作風を求められてしまうんだろうか。
昔から好きな作家で唯一今でも期待出来るのは、
直木賞を辞退し未だに文学的作品とミステリを両立して書いている
伊坂幸太郎氏だけになってしまいました。

おすすめしません。
去年の冬、君と別れ、僕は化物になることに決めた。



ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。
彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。
調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。
そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?
それは本当に殺人だったのか?
何かを隠し続ける被告、
男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、
大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。
それぞれの狂気が暴走し、真相は迷宮入りするかに思われた。だが――。
日本と世界を震撼させた著者が紡ぐ、戦慄のミステリー!

***

なんというか、もう。。。
どういう精神を持っていたら、どういう生き方をしたら、
こんなすごいものが書けるんだろう。
読んだあと微動だに出来ませんでした。すごすぎて。

最愛の相手に死を与えてしまうことと、
最も憎むべき相手に喜びを与えてしまうこと。
対局にあるその苦しみがどちらも描かれていて、
そのコントラストが圧巻で美しいのなんの。

特に、個人的な話になりますが、
いま温めている自分の長編のプロットに出てくる猟奇殺人犯の
殺人の動機が「天才を殺せば世界にとってその存在はより天才に、
神に近い存在になるから」である我が身にとっては、
似た動機が出てくる本作は恐れ多くもいたく共感してしまった。
共鳴する部分が多いからこそ私はこの作家さんを敬愛しているのだけれど。

雪絵との関係がちょっとぼんやりしていることが気になったのと、
ミステリとして捉えるとトリックが使い古された手法であることは
少し気になりましたが、そんなものはあくまで表現の一手段に過ぎず
深すぎる精神世界を描いている本作は名作だと自信を持って言える。

非常におすすめです。

余談ですが今月29日の代官山での著者のトーク&サイン会に行きます。
氏は私を憶えていてくれてるでしょうか。不安ですが
この作品の素晴らしさはどうしても伝えたいので手紙をしたためて
しっかり持っていきます。
誰なの――?
 


行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。
あなたの「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎。
私だけが、間違っているの?
13年前に起こった姉の失踪事件。
大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。
押さえつけても亀裂から溢れ出てくる記憶。
そして、訊ねられない問い――戻ってきてくれて、とてもうれしい。
だけど――ねえ、お姉ちゃん。あなたは本当に、本物の、万佑子ちゃんですか?

***

「告白」以来、初めて面白いと思えた湊さん作品。
謎を秘めたままどうなるんだろうどうなるんだろうと
どんどん読み進ませるリーダビリティはすごい。
真相に至るまでの家族のやり取りも細やかで丁寧に描かれている。
真相は一見陳腐なんだけど、それを陳腐と思わせず
素直に「そうだったのか!」と思わせる筆力はさすが。
過去と現在のパートの区切り目が曖昧でちょっと読みにくかったのは
あるし、瑕疵もないわけではないのだけれど、
そういうのを全部差し引いても純粋に面白かった。
特に「豆の上に寝たお姫さま」の童話は小さいころ読んで知っていたので
それを主人公のもやもやした気持ちと絡めて物語として
発展させてしまう著者の想像力にも感嘆した。
おすすめです。
真実の世界が姿を見せる。



小規模なテロが頻発するようになった日本。
ひとつひとつの事件は単なる無差別殺人のようだが、
実行犯たちは一様に、
自らの命をなげうって冷たい社会に抵抗する
《レジスタント》と称していた。
彼らはいわゆる貧困層に属しており、
職場や地域に居場所を見つけられないという
共通点が見出せるものの、実生活における接点はなく、
特定の組織が関与している形跡もなかった。
いつしか人々は、犯行の方法が稚拙で計画性もなく、
その規模も小さいことから、一連の事件を《小口テロ》と
呼びはじめる――。
テロに走る者、テロリストを追う者、実行犯を見下す者、
テロリストを憎悪する者……
彼らの心象と日常のドラマを精巧に描いた、
前人未到のエンターテインメント。

***

あらすじだけ読むとちょっと壮大ですが、
数年前にあった秋葉原襲撃事件みたいな事件が多発する、
所謂「通り魔殺人」の犯人たちが「自分をこんな貧しくした社会に
抗議する」という主張をこぞってしている、という世界観です。
というかあの秋葉原襲撃事件にヒントを得て書かれているんだろうなと
読んでいる間中思った。
物語は「○○の場合」と立場の違う一人ひとりの人間ごとに
章だてて展開されますが、オチが被っているものやオチが読めてしまうものが
多くてあまり新鮮味はなかった。ひどいものになると
ラストがちゃんとオチてない、曖昧なまま終わる章もあったし。
貫井氏は大好きな作家さんで、今回本作で直木賞候補に挙がったことも
喜ばしいことだけど、正直この作品で受賞してほしくなかったので
落選しても別に残念には思わなかった。
それにしても、めちゃくちゃ手垢のついた浅い「トベ」(作中の人物)の
ある言葉に「深いことを言うものだ」と感心するある章の主人公、
まさか貫井氏、本当に深いことを書いたつもりなんじゃないよね?
そんなつまらない言葉に感銘を受けてしまう主人公の浅はかさを
書きたかっただけだよね?と心配してしまうシーンもあったりして、
自分は貫井氏の感性を心から信頼してないんだなと思ってしまった。
なんせあの「ドミノ倒し」を書いちゃったひとだからね。。。

「慟哭」「乱反射」みたいな、ページを繰る手が止まらない傑作を
また読んでみたいものです。
次回作に期待。
「仮面舞踏会ならぬ、『仮面同窓会』ってどうだ」



高校の同窓会で、久しぶりに再会した旧友4人。
かつて生徒を囚人扱いしていた教師・樫村の変わらぬ姿を見た彼らは、
恨みを晴らそうと仕返しを計画。予定通り、暴行して置き去りにするも、
翌日なぜか樫村は暴行現場から2km離れた溜め池で溺死体となって発見された。
いったいなぜ? そして、4人のうち誰が彼を殺害したのか?
それぞれが疑心暗鬼に陥る中、新たな犠牲者を出した殺人事件が、
高校時代の衝撃的な秘密を浮き彫りにさせる。
過去と決別できない者たちを巧妙に追い詰めていく悪魔の正体とは?

***

こんなB級ミステリも書くひとだったのねー。。。
正直肩透かし。
まっとうなミステリを期待して読んでいたら、後半最初の
あのギャグ展開、そしてご都合主義オチ。
犯人もほかに候補がいないからすぐに誰かわかるし。
雫井氏のセンスは信頼していたので面白く読み進めましたが、
だんだん雲行きが怪しくなってきて、最後はもう。。。
こんな脱力感を味わったのは、貫井徳郎氏の「ドミノ倒し」を
読んだとき以来だった(あそこまでひどくはないけど)。
「いたずらっぽい」という表現が出まくることにも
語彙の貧弱さ(というか著者のやる気のなさ?)を感じたし。
おすすめしません。
途中までは面白かっただけに残念。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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