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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ああ、でも、もう間に合わない。



高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。
娘は、なぜ死んだのか。自分を責める日々を送っていた安藤の前に、
加奈のクラスメートだった少女が現れる。彼女の協力で娘の悩みを知ったとき、
待っていた現実とは――。
大切な人の命を奪われたとき、あなたはどんな償いを求めますか。
第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作。

***

お久しぶりの更新。
最近眼が越え過ぎて新しい本を読み始めても展開が読めて
最後まで読了できずにいて、小説というものに幻滅すら感じていたのですが。。。

本作は久々のヒットだった。

どんどん読み進められる魅力的で読みやすい文章、
先が気になってページを繰る手を止められないリーダビリティある内容、
細かく書かれた登場人物の心理描写。
ちょっと先がわかってしまうところもあったけれど、それでも
本作の持つ魅力に取りつかれて一気に読みきってしまった。
終わり方も「ああ、あの台詞はここに至るための伏線だったのか」
と唸らされるし切ない。

芦沢さんの著作を読むのはこれで二作目ですが、
残る一作も早速図書館で予約しました。
本があまり好きでない母親に勧めたらガンガン読み進めていて
面白い面白いと喜んでいます。

かなりおすすめ。
小説の面白さを久々に思い出させてくれた本作に感謝します。
芦沢さん、ありがとう。
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田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。
彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。
周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。
思い悩んだ末にある事件を起こし、町を追われた未帆は、
整形手術に目覚め、莫大な金額をかけ完璧な美人に変身を遂げる。
そのとき亡霊のように甦ってきたのは、ひとりの男への、
狂おしいまでの情念だった――。

***

タイトル負け。
モンスターと呼ばれるほど主人公がモンスターじみた行動を
していない。
まあこれだけ整形すれば整形モンスターではあるけれど。
中盤は、
整形→風俗の仕事→整形→風俗の仕事
と淡々と進むので中だるみ。
でも、醜いが故にたったひとりの男性に何十年も固執してしまうのは
何となくわかるような気がした。
子供は二歳ぐらいから人間の顔の美醜がわかるというから、
醜かった主人公を守ってくれた幼稚園児のナイトをずっとずっと
忘れられないことは十分に理解出来る。
普通なら自分が美しくなったことで振り向かれても
どこか虚しいだけだと思うけれど、あまりの醜さに辛酸を舐めてきた
主人公にとってみれば美こそが最大の価値観であり、
それを認めてくれた長年の想い人に幻滅することはなかったんだろうな。
もうちょっとドラマチックな展開を期待していたけれど、
まあこれはこれでよかったんじゃないかと。

百田氏の著作はあらすじが面白そうな上に文章が魅力的なので
つい手に取ってしまうけれど、いつも思ったより薄っぺらいのが難点。
でもそこそこ楽しめました。

両思いの絶頂期にある男の言葉は信用してはいけないことも
本作で学んだ。
燃えるようなものじゃなくていいから静かな愛情をずっと注いでくれる
相手と出会いたいものだなと思わせられる一作です。
それでも、たしかにそこにある。



ラジオのパーソナリティの恭太郎は、冴えない容姿と“特殊”な声の持ち主。
今夜も、いきつけのバー「if」で仲間たちと過ごすだけの毎日を、
楽しくて面白おかしい話につくり変えてリスナーに届ける。
恭太郎が「if」で不審な音を耳にしたある雨の日、びしょ濡れの美女が
店に迷い込んできた。
ひょんなことから彼女の企てた殺害計画に参加することになる彼らだが――。
陽気な物語に隠された、優しい嘘。驚きと感動のラストが心ふるわす――。

***
 
道尾さんが久々帰ってきた!
と思えた一作。

物語運びはありがちですが、扱っているテーマが秀逸。
道尾さんならではの人間ドラマに、心が震える思いがした。
作中に出てくる、登場人物たちが集まる店「if」の店名も、
オチがわかってから考えてみるとひどく暗示的。

久しぶりに「救われる物語」というものに出会った気がする。
私も最近ひどくつらいことがあったけれど、心の中に、
過ごす世界の端々に、「透明なカメレオン」を飼って今をしのいで
来るべき新しい未来に備えようと思えた。

非常におすすめです。


クリスマスにもたらされるささやかな奇跡の連鎖――。
有川浩が贈るハートフル・クリスマス。

***

文章の軽快さ、独特さは相変わらずでうまい。
でも内容がよくある話だった。
人間一人ひとりのキャラがよく書き込まれているところはよかったけど。
360Pとけっこう長いのに、一気に読ませる力もある。
この作家は「物語」を大事にしているんだなあということが
著作からも伝わってくる。
本当に書くこと、読むことが好きなんだろうな。

傑作とまではいかないけれどなかなか好感の持てる作品だった。
生きろ。



高校2年の優香は乗り込んだ飛行機で、謎のガスにより
乗客が大量死する事件に巻き込まれる。
生き残ったのはわずか5人。
地獄と化した機内に現れた4人の美青年たちは「NJ」という研究のデータを奪うため、
秘密に触れた優香たちをも葬り去ろうとする。
4人と対峙するうち、生きることに無気力だった優香は変わり始めるが――。
閉ざされた飛行機で、凍えるアラスカの地で、少女は“生”を見つめ直す。
名もなき花が導く、美しきサバイバル・ロマン。

***

タイトルからするとラブストーリーとでも思いがちですが、
内容は少しラノベがかったサスペンス&ヒューマンドラマ。
主人公の乗る飛行機をハイジャックする四人の外見描写が
お耽美すぎるきらいはありますが(しかもそれがくどい)、
一つひとつのエピソードが面白く一気に読むことができた。
突っ込みポイントはたくさんあるものの話の整合性は取れているし。

ハイジャック犯の一人であるゼタが何故に仲間の双子を
溺愛するのかという理由が「美しいものが好きだから」というのは
ちょっと薄っぺらい気もしたけど。
もっと深い理由が欲しかった。

乾ルカさんの小説は私の中では「夏光」を超すものは未だないけど、
乾作品で久々に楽しませてもらいました。

主人公だって、ハイジャック犯たちに「生きてても意味はない。
歴史に君の名前は残っていない」と言われまくっているけれど、
もしかしたら結婚して名字が変わってその名前で活躍してるかも
知れないしね。
これだけ根性のある子ならそれが大きなものじゃなくても
将来的に何かを成し遂げているはず。

まあおすすめです。
助けたい。



その若者には、見たくないものが視えた。他人の「死」が。「運命」が――。
本屋大賞受賞後初の長編小説、遂に刊行!
幼い頃に両親と妹を亡くした木山慎一郎には、友人も恋人もいない。
一日中働き夜寝るだけの日々。夢も自信も持てない孤独な人生だった。
その日までは――。
ミリオンセラーを連発する著者が、満を持して選んだテーマは
「愛」と「死」と「選択」を巡る、人間の「運命」の物語。
大切な人の「死」が見えたとき、あなたなら、どうしますか?

***

文章はシンプルでうまくリーダビリティもあるのでぐいぐい読める。
ただ、作品としては駄作。
同じようなことで悶々とする主人公。素朴で純情で好感は持てるのだけど、
その喜びを同じように喜んだり悲しみを共有したりするほどの
キャラクター性がない。
オチも簡単に読めてしまう。
クライマックスも、結局付き合っている女性と幸せになりたかったのか
死んだ妹のような子供を出したくなかったのかどっちつかずでぼんやりした印象。
付き合っている女性に至っては、男が考える理想の女性のステロタイプ
丸出しで「こんな女いねーよ」と心中で突っ込んでしまった。
妙に性に対して狡猾で積極的なのもリアリティがなかったし。
「あなたの寝室が見たーい」なんて下世話な女だなと思った。

以下ネタバレ含む

葵が本当に主人公を愛しているのなら、
列車事故は彼女が止めればよかったのでは?
これまで大して他人を救っていないようだし、一回ぐらい他人の死を
止めたぐらいで死にはしなかっただろ。
主人公も葵と付き合ってほんのちょっとだし、お互いがお互いを思う気持ちが
ほとんど伝わってこなかった。
しかも付き合って二日目に70万の指輪をプレゼントしようとするなんて。。。
モテない男丸出しでちょっと引く。まあそういうキャラ設定なんだけど。
主人公の同僚の金田も都合よくいいひとになりすぎ。

しかも疑問なのだけど、金田だけを救おうとした場合と
列車事故で死ぬ大勢の人間を助けようとした場合で
主人公の身体にくる負担はどれぐらい違ったんだろう。
前者だったら主人公死ななかったかもな。

百田尚樹は「永遠の0」以外面白くないけど、
あれもフィクションとは言い難いしなー。
100%虚構の世界を描かせたら百田氏はこんなものか。

それにしても、見るからに健康そうと描写されている葵は
ひとの死を救ったことが一度もないんだろうか。
だったらやっぱり列車事故は彼女が止めるべきだったな。
それだったらハッピーエンドになったのに。

あまりおすすめしません。
おはよう、アリス。



“不思議の国”の住人たちが、殺されていく。
どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない。
10万部突破『大きな森の小さな密室』の鬼才が放つ
現実と悪夢を往還する“アリス”の奇怪な冒険譚。

***

夢の中ではルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の住人、
けれど現実では理系大学の大学生の栗栖川亜理。
夢の国で殺されたアバターを持つ現実世界の住人が
夢と酷似したやり方で殺されていく。

という話。

本格ミステリと銘打っているから期待して読み進めたものの。。。
本格ミステリじゃないじゃん!
このオチじゃ何でもありのファンタジーじゃん!
論理的オチを期待していたぶん読後の虚脱感がひどかった。
「このオチは誰にも読めない」って、そりゃこんなぶっとんだオチじゃ
見抜けないに決まってる。
繰り返すけど何でもありの世界ならオチが読めないのも当然で。

また、冒頭のアリスと蜥蜴のビルの会話がまどろっこしいのは
アリスの原作って確かにそんな感じだし後の伏線にもなっているから
まだいいものの、現実世界のキャラたちの会話もくどい。
物語の大半を会話が占めているからまだ読みやすかったけど、
その会話のテンポの悪さに苛々した。

おすすめしません。
あと、アニメでアリスを観た程度のひとが読んでも
いまいちピンと来ない気がする。
原作にしか登場しないキャラがたくさん出てくるので。

あー面白い本が読みたい。
「遥……」



医大生・糸永遥は交通事故で大怪我をし、一過性全健忘により記憶を失った。
治療の結果、記憶は回復していくが、事故当時の状況だけがどうしても思い出せない。
不安と焦燥で鬱病を発症し自殺未遂を起こした遥は、治療のためTMSを受けるが、
治療直後から恋人・雅人の幻を見るようになり…。

***

腕や足を失ったひとが、そのショックに耐えるために
あたかもまだ手足があるように錯覚するのが幻肢。
その原理で、失った大切な恋人をまだ存在するかのように
側にリアルに感じる、これが本作の趣旨。

というのは斬新でいいのですが。。。
遥、自分のせいで恋人が死んだと思うなら、何故真実を究明しようとしない?
幻肢の恋人にかまけていて、その考えがすっぽ抜けている。
まずそこに違和感を抱いた。
優秀な医大生の癖に「医原病」という言葉を知らないのもは?だったし。
島田荘司氏の「てにをは」抜きの文章も慣れていたはずなのに
無性に鬱陶しかったし。

島田氏にしてはなんだかな、という作品だった。
ラストの幻肢の雅人の呟きが切なくて胸が締め付けられそうになったので
うっかりそれまでの瑕疵を相殺したくなってしまいますが、
やはり傑作とは言い難い。

読んだことのないラブストーリーを読んでみたいひとにはおすすめかな。
「何ならここで、昔の探偵小説ばりに例の『読者への挑戦』でも
挿入してみようか?」



新興宗教団体の教主が殺された。
儀式のために篭もっていた神殿から姿を消し、
頭部と左腕を切断された死体となって発見されたのだ。
厳重な監視の目をかいくぐり、いかにして不可能犯罪は行われたのか。
二ヵ月前、前教主が遂げた奇怪な死との関連は?
真っ向勝負で読者に挑戦する、本格ミステリの会心作。

***

25年前の作品とはいえ。。。
トリックしょぼっ!
散々じらしておいてオチがこれとは。。。
犯人も、「このひとだろうなあ」とすぐ見当がつくひとだったし。。。
冒頭の、教主・光子が何故線路に放置されていたかという謎も
最後にわかるのですが、第一のトリックがしょぼかったぶん
そちらに期待していたのに「何だ、こんなことか」と肩透かし。

叶のキャラがつまらなかったぶん、双子の兄・響の名探偵ぶりだけは
爽快だったけれど、印象に残るほどの名探偵ではなかったな。
そこまで個性もないし。

綾辻氏は好きな作家さんだけど、読んだことを後悔しました。
おすすめしません。
 
約束の場所を守りたい。



諦める前に、踏み出せ。
思い込みの壁を打ち砕け!
児童養護施設に転職した元営業マンの三田村慎平はやる気は人一倍ある新任職員。
愛想はないが涙もろい三年目の和泉和恵や、理論派の熱血ベテラン猪俣吉行、
“問題のない子供"谷村奏子、大人より大人びている17歳の平田久志に囲まれて
繰り広げられるドラマティック長篇。

***

本が大切だということや自衛隊の話が出てくるところは
有川浩節。
固い言葉とフランクな言葉が見事に融合して読みやすいのも
まさに有川浩節。

児童養護施設のことは私が興味のある分野のひとつで、
だから施設について綿密に取材された上で書かれたであろう本作も
非常に興味深く読むことが出来た。
もちろんそれがすべてではないのだろうけれど、「ああ、施設の中の子供たちは
こういう風に考えているんだ、生きているんだ」と
わかったのは大きな収穫だった。

ひとつ疑問に思ったのは、本作に登場する施設の入所者の子供たちのように
過去の親によるつらい体験を自分の中でうまく消化出来ている子供たち
ばっかりなのかな?ということ。
皆年齢の割に大人びているというか、達観しているようなところがあって
本当か?と訝ってしまった。
まあ子供のトラウマまで描いていたらページ数がいくらあっても足りないだろうし
有川さんは基本「希望」について書く作家さんだから
敢えてその点をフィーチャーしなかったんだろうけど。

なかなか面白く読めました。
余談ですが私も以前からボランティアで児童養護施設に行きたいと
思っており、そのうち実行する予定。

そしてどんなときにも恋愛マインドを忘れない、
それもやっぱり有川浩節。
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自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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