「いや、もっと深遠な物語だ」
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。
紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…。
しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
***
これは演出の勝利だな~。
8人の人間が主人公の短編集と言ってしまえばそれまでなのだけど、
その全員がゲリラに巻き込まれ人質にとられ、日本から遠く離れた土地で命を落としてしまう、
そんな彼らが死ぬ直前にそれぞれの過去の体験をほかの人質に語って聞かせていた。。。
という設定が否応なしに読み手を物語世界に引き込んでしまう。
8人が語ることはどれも些細なことなのだけど、
その些細な話を見事輝かせてしまうのはさすが小川洋子さんといったところ。
それらが彼らの最後にして唯一の物語だという切なさを差し引いてもぐいぐい読ませてしまう。
そして〝9人目〟の語り部である、唯一人質ではないある人物の語りが、
いいアクセントになって淡々とした人質たちの物語をきゅっと引き締めている。
人質の彼らをハキリアリに例えるのはいかにも「勤勉実直な日本人」って感じがして
「人質たちの崇高な、祈りにも似た行為」である朗読会の比喩としてはどうかともちょっと思ったけど、
まあ悪くもないんじゃないかな。もうちょっと的確な例えが探せばあったようにも思うんだけど。
自分の生を形として遺すことは、たとえその人間が芸術家じゃなくても大切なことなんだと、
改めて思わせてくれた作品。
おすすめです。
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。
紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…。
しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。
***
これは演出の勝利だな~。
8人の人間が主人公の短編集と言ってしまえばそれまでなのだけど、
その全員がゲリラに巻き込まれ人質にとられ、日本から遠く離れた土地で命を落としてしまう、
そんな彼らが死ぬ直前にそれぞれの過去の体験をほかの人質に語って聞かせていた。。。
という設定が否応なしに読み手を物語世界に引き込んでしまう。
8人が語ることはどれも些細なことなのだけど、
その些細な話を見事輝かせてしまうのはさすが小川洋子さんといったところ。
それらが彼らの最後にして唯一の物語だという切なさを差し引いてもぐいぐい読ませてしまう。
そして〝9人目〟の語り部である、唯一人質ではないある人物の語りが、
いいアクセントになって淡々とした人質たちの物語をきゅっと引き締めている。
人質の彼らをハキリアリに例えるのはいかにも「勤勉実直な日本人」って感じがして
「人質たちの崇高な、祈りにも似た行為」である朗読会の比喩としてはどうかともちょっと思ったけど、
まあ悪くもないんじゃないかな。もうちょっと的確な例えが探せばあったようにも思うんだけど。
自分の生を形として遺すことは、たとえその人間が芸術家じゃなくても大切なことなんだと、
改めて思わせてくれた作品。
おすすめです。
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生きててどうもすいません。
≪家族って一体なんだろう?≫2020年、65歳以上の高齢者が国民の3割を超えた日本。
社会保障費は過去最高を更新し続け、国家財政は破綻寸前まで追い詰められていた。
そこでついに政府は大きな決断を下す。
「日本国籍を有する七十歳以上の国民は誕生日から30日以内に死ななければならない」
という七十歳死亡法案を可決したのだ。
2年後に法律の施行を控えたある日、ごくありふれた家庭の宝田家にも
小さな変化が起こり始めていた。
義母の介護から解放されようとしている妻、
家のことはすべて妻に任せきりの能天気な夫、
超一流大学を卒業しながら就職に失敗し引きこもっている息子、
ひび割れかけた家族から逃げ出した娘、
寝たきりでわがまま放題の祖母。
一番身近で誰よりも分かってほしい家族なのに、どうして誰もこの痛みを分かってくれないんだろう。
究極の法律が、浮びあがらせた本当の「家族」とは?
大注目の作家が、生々しくリアルに描き出す、新・家族小説。
***
70歳を超した人間は国家の安定のために安楽死しなければならない、というのが
メインテーマにも関わらずそれに絡んだエピソードがほとんど出て来ない。
その法律がなくてもこの物語は成り立ってしまうのだからせっかくそんな設定にした意味がない。
単なる家族小説にして各キャラクターをもっと掘り下げて書いたほうがいいものになったんじゃ
ないかと思う。
ていうかラストの首相の発言。。。物語としては大胆で面白いと思うけど
あまりに非現実的でイメージが湧きづらかった。
終盤がとんとん拍子に行きすぎな気もするし。
まあまあ面白かったけどおすすめするほどではないです。
≪家族って一体なんだろう?≫2020年、65歳以上の高齢者が国民の3割を超えた日本。
社会保障費は過去最高を更新し続け、国家財政は破綻寸前まで追い詰められていた。
そこでついに政府は大きな決断を下す。
「日本国籍を有する七十歳以上の国民は誕生日から30日以内に死ななければならない」
という七十歳死亡法案を可決したのだ。
2年後に法律の施行を控えたある日、ごくありふれた家庭の宝田家にも
小さな変化が起こり始めていた。
義母の介護から解放されようとしている妻、
家のことはすべて妻に任せきりの能天気な夫、
超一流大学を卒業しながら就職に失敗し引きこもっている息子、
ひび割れかけた家族から逃げ出した娘、
寝たきりでわがまま放題の祖母。
一番身近で誰よりも分かってほしい家族なのに、どうして誰もこの痛みを分かってくれないんだろう。
究極の法律が、浮びあがらせた本当の「家族」とは?
大注目の作家が、生々しくリアルに描き出す、新・家族小説。
***
70歳を超した人間は国家の安定のために安楽死しなければならない、というのが
メインテーマにも関わらずそれに絡んだエピソードがほとんど出て来ない。
その法律がなくてもこの物語は成り立ってしまうのだからせっかくそんな設定にした意味がない。
単なる家族小説にして各キャラクターをもっと掘り下げて書いたほうがいいものになったんじゃ
ないかと思う。
ていうかラストの首相の発言。。。物語としては大胆で面白いと思うけど
あまりに非現実的でイメージが湧きづらかった。
終盤がとんとん拍子に行きすぎな気もするし。
まあまあ面白かったけどおすすめするほどではないです。
おかえり。
高学歴、高年齢、高層マンション住まいの3K女・二宮咲子は、
元彼の御厨に未練たらたらの日々を送っていた。
週末の友人の結婚式で御厨と奥さんに再会することを悩む咲子は、
占い師に一週間で出会いがないと一生独身と宣言されてしまい…。
そんな彼女には、誰にも言えない楽しみがあった。
それは、年下青年の住むぼろアパートを中古の天体望遠鏡で覗くこと。
今の彼女の心を暖めてくれるのは、月夜に望遠鏡を通して知り合った
青年・瑞樹との交流しかなくて――。
第18回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。
***
図書館で借りた膨大な量の本を返却期日までに読まなければと思いつつ、
書店で購入した本作に手が伸びてしまうことがしばしば。。。一度開けばページを繰る手が止まらず、
ついさっき(現在AM2時前)とうとう読破してしまった。
結論から言うと非常に面白かった。
最近読んでいて面白い本、読み終えて「よかった」と思える本にまったく出会えていなかったので、
「文壇のレベルが落ちてるんだろうか。。。」と危惧していたのだけれど、
まったくそんなことはなかった。
主人公と世代や境遇が近いせいか、最初から最後まで主人公の咲子に完全にシンクロして、
一緒に泣いて笑って怒って、それがとても心地よかった。
物語の内容はオーソドックスとでも呼ぶべきもので正直目新しさはないのだけど、
その悪く言えば使い古されたモチーフでここまで独自の世界を展開出来ることは称賛に値する。
本作を読んでいる間中常に感じていた切なさの正体がわかったときには
「ああそうだったのか」と更に込み上げる切なさとやるせなさに
涙ぐみ口もへの字になってしまっていたけど、それでも本作は幸福感に包まれた
優しいハッピーエンドの物語だと思う。
一方的に「してもらう」だけじゃなく、自分から大切な人間のために行動する主人公の姿は、
ありがちなラブストーリーの受け身系ヒロインの典型から心地よく外れていて好感が持てた。
本作の登場人物・友引さんの言葉を借りるなら、やっぱり彼女は「凛として」いて素敵だ。
本作は友人である成田名璃子さんのデビュー作なのですが、
彼女の紡ぐ文章・物語はもうずっと大好きだったので、
こうして彼女の作品が世に出たことは非常に誇らしく喜ばしい限り。
いかにも彼女のキャラクターらしいあとがきにもちょっと感動してしまった。
名璃子さん、素晴らしい物語をありがとう。
このレビューを見た皆さんも、よかったら彼女の透明で優しい世界に是非一度触れてみてください。
高学歴、高年齢、高層マンション住まいの3K女・二宮咲子は、
元彼の御厨に未練たらたらの日々を送っていた。
週末の友人の結婚式で御厨と奥さんに再会することを悩む咲子は、
占い師に一週間で出会いがないと一生独身と宣言されてしまい…。
そんな彼女には、誰にも言えない楽しみがあった。
それは、年下青年の住むぼろアパートを中古の天体望遠鏡で覗くこと。
今の彼女の心を暖めてくれるのは、月夜に望遠鏡を通して知り合った
青年・瑞樹との交流しかなくて――。
第18回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。
***
図書館で借りた膨大な量の本を返却期日までに読まなければと思いつつ、
書店で購入した本作に手が伸びてしまうことがしばしば。。。一度開けばページを繰る手が止まらず、
ついさっき(現在AM2時前)とうとう読破してしまった。
結論から言うと非常に面白かった。
最近読んでいて面白い本、読み終えて「よかった」と思える本にまったく出会えていなかったので、
「文壇のレベルが落ちてるんだろうか。。。」と危惧していたのだけれど、
まったくそんなことはなかった。
主人公と世代や境遇が近いせいか、最初から最後まで主人公の咲子に完全にシンクロして、
一緒に泣いて笑って怒って、それがとても心地よかった。
物語の内容はオーソドックスとでも呼ぶべきもので正直目新しさはないのだけど、
その悪く言えば使い古されたモチーフでここまで独自の世界を展開出来ることは称賛に値する。
本作を読んでいる間中常に感じていた切なさの正体がわかったときには
「ああそうだったのか」と更に込み上げる切なさとやるせなさに
涙ぐみ口もへの字になってしまっていたけど、それでも本作は幸福感に包まれた
優しいハッピーエンドの物語だと思う。
一方的に「してもらう」だけじゃなく、自分から大切な人間のために行動する主人公の姿は、
ありがちなラブストーリーの受け身系ヒロインの典型から心地よく外れていて好感が持てた。
本作の登場人物・友引さんの言葉を借りるなら、やっぱり彼女は「凛として」いて素敵だ。
本作は友人である成田名璃子さんのデビュー作なのですが、
彼女の紡ぐ文章・物語はもうずっと大好きだったので、
こうして彼女の作品が世に出たことは非常に誇らしく喜ばしい限り。
いかにも彼女のキャラクターらしいあとがきにもちょっと感動してしまった。
名璃子さん、素晴らしい物語をありがとう。
このレビューを見た皆さんも、よかったら彼女の透明で優しい世界に是非一度触れてみてください。
「キスして」
兄/信彦――「しばらく家に泊めてよ」「無理」突然上京してきた妹のお願いを、俺は瞬殺するしかない。
なぜならウチには…透明人間の恋人が住んでいるから。
妹/琴里――隣を歩いていた彼氏が忽然と消えた。見つけ出して殴らなきゃ、私の初恋は終われない!
…でも、どうやってアイツは“消失”したんだろう?
兄妹の恋路はいつしか重なり、新たな謎を孕んでいく。
疾走! 迷走! 先の見えない恋と人生の行方は。
***
本作を読んで自信がついた。
これほどつまらない内容でも本にして出せるなら自分もプロ作家になれると。
読み終えるまでに数カ月かかった。
あまりにつまらなくて、それどころか読むこと自体が苦痛で、なかなか読み進められなかった。
正直これなら、筆力は劣るけど山田○介の本読んだほうが面白いんじゃないかと思ったぐらい。
内容以前に文章が退屈で、キャラも生理的に受け付けない連中ばかりで、
読書という行為にこれほどまでに苦行を強いられたのはこれが初めてかも知れない。
清涼院流水、読んだことないけど、氏の〝コズミック〟を読んだひとなら
この気持ちを共有し合えるかも知れない。
大げさでなく、本作を面白いと思えるひととは私は友達になれない自信がある。
いったい何が言いたくて著者はこの話を書いたんだろう?
だらだらだらだらどうでもいい記述の垂れ流し。金と時間を返せと言いたい。
このレビューを読んで言い過ぎだと思うひとも少なからずいると思うけど、
私は体力精神力総動員で全力で小説を読むタイプなので
それがあまりに期待外れだと本気でキレてしまう性癖があるのでご容赦を。
それにしても、同著者のデビュー作〝プールの底に沈む〟は
かなりの傑作だったのに何故本作はこうなってしまったんだ?
とても同じ人間が書いたものだとは思えない。
デビュー作は偶然小説の神が降りたのか、それとも。。。?
その答えはこの著者が三作目を出したときにわかることでしょう。
とりあえずは次回作に期待。
兄/信彦――「しばらく家に泊めてよ」「無理」突然上京してきた妹のお願いを、俺は瞬殺するしかない。
なぜならウチには…透明人間の恋人が住んでいるから。
妹/琴里――隣を歩いていた彼氏が忽然と消えた。見つけ出して殴らなきゃ、私の初恋は終われない!
…でも、どうやってアイツは“消失”したんだろう?
兄妹の恋路はいつしか重なり、新たな謎を孕んでいく。
疾走! 迷走! 先の見えない恋と人生の行方は。
***
本作を読んで自信がついた。
これほどつまらない内容でも本にして出せるなら自分もプロ作家になれると。
読み終えるまでに数カ月かかった。
あまりにつまらなくて、それどころか読むこと自体が苦痛で、なかなか読み進められなかった。
正直これなら、筆力は劣るけど山田○介の本読んだほうが面白いんじゃないかと思ったぐらい。
内容以前に文章が退屈で、キャラも生理的に受け付けない連中ばかりで、
読書という行為にこれほどまでに苦行を強いられたのはこれが初めてかも知れない。
清涼院流水、読んだことないけど、氏の〝コズミック〟を読んだひとなら
この気持ちを共有し合えるかも知れない。
大げさでなく、本作を面白いと思えるひととは私は友達になれない自信がある。
いったい何が言いたくて著者はこの話を書いたんだろう?
だらだらだらだらどうでもいい記述の垂れ流し。金と時間を返せと言いたい。
このレビューを読んで言い過ぎだと思うひとも少なからずいると思うけど、
私は体力精神力総動員で全力で小説を読むタイプなので
それがあまりに期待外れだと本気でキレてしまう性癖があるのでご容赦を。
それにしても、同著者のデビュー作〝プールの底に沈む〟は
かなりの傑作だったのに何故本作はこうなってしまったんだ?
とても同じ人間が書いたものだとは思えない。
デビュー作は偶然小説の神が降りたのか、それとも。。。?
その答えはこの著者が三作目を出したときにわかることでしょう。
とりあえずは次回作に期待。
君は、炎上している。
私たちは足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて…。
何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちに訪れる、小さいけれど大きな変化。
奔放な想像力がつむぎだす不穏で愛らしい物語。
★収録作品★
太陽の上
空を待つ
甘い果実
炎上する君
トロフィーワイフ
私のお尻
舟の街
ある風船の落下
***
物語そのものより言葉の美しさに重点を置いた短編集。
句読点一つひとつまでが完璧で、ひとつの詩を読んでいるような気分にさせられる。
でも小説として読んでももちろん面白い。
ラストが曖昧に過ぎてちゃんとオチてない印象の話もいくつかあったけど、
全体にとても好きです。
ファンタジーを装った寓話なので、かつて子供時代にそういうものを読んできた
すべての世代におすすめ出来る作品。
個人的には〝甘い果実〟がインパクト強くて好きだったな。
著者の西加奈子さんは以前某誌で山崎ナオコーラさんと対談しているのを見たことがあるので、
この短編にナオコーラさんが実名で出てきたときは
「ああやっぱり仲いいんだな」と微笑ましくなってしまった。
けれど内容は作家を目指す主人公がひたすらナオコーラさんを羨みコンプレックスに陥る話なので
似た経験のある作家志望の私には共感の嵐だった。
〝太陽の上〟は短編としてのクオリティがべらぼうに高いしラスト一行がとても好き。
〝ある風船の落下〟は一番(いい意味で)教訓めいていて素敵な寓話に仕上がっている。
そして、ああ私も〝舟の街〟の老紳士に
「どうです? エクレアでもすごく見つめませんか?」と誘われたい。。。
この街の住人の喋り口調大好きだ。
。。。というわけでおすすめです。
ちなみに本書の表紙は著者本人が書いているのですが、
う ま い。。。
やっぱり芸術畑のひとは多才なひとが多いようです。
私たちは足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて…。
何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちに訪れる、小さいけれど大きな変化。
奔放な想像力がつむぎだす不穏で愛らしい物語。
★収録作品★
太陽の上
空を待つ
甘い果実
炎上する君
トロフィーワイフ
私のお尻
舟の街
ある風船の落下
***
物語そのものより言葉の美しさに重点を置いた短編集。
句読点一つひとつまでが完璧で、ひとつの詩を読んでいるような気分にさせられる。
でも小説として読んでももちろん面白い。
ラストが曖昧に過ぎてちゃんとオチてない印象の話もいくつかあったけど、
全体にとても好きです。
ファンタジーを装った寓話なので、かつて子供時代にそういうものを読んできた
すべての世代におすすめ出来る作品。
個人的には〝甘い果実〟がインパクト強くて好きだったな。
著者の西加奈子さんは以前某誌で山崎ナオコーラさんと対談しているのを見たことがあるので、
この短編にナオコーラさんが実名で出てきたときは
「ああやっぱり仲いいんだな」と微笑ましくなってしまった。
けれど内容は作家を目指す主人公がひたすらナオコーラさんを羨みコンプレックスに陥る話なので
似た経験のある作家志望の私には共感の嵐だった。
〝太陽の上〟は短編としてのクオリティがべらぼうに高いしラスト一行がとても好き。
〝ある風船の落下〟は一番(いい意味で)教訓めいていて素敵な寓話に仕上がっている。
そして、ああ私も〝舟の街〟の老紳士に
「どうです? エクレアでもすごく見つめませんか?」と誘われたい。。。
この街の住人の喋り口調大好きだ。
。。。というわけでおすすめです。
ちなみに本書の表紙は著者本人が書いているのですが、
う ま い。。。
やっぱり芸術畑のひとは多才なひとが多いようです。
「私たち、どこへ行くのでしょうね」
メフィスト賞受賞シリーズ最新刊!
探偵助手の望は、名探偵・御堂八雲から、怪盗・無貌に関する情報交換の会に招かれる。
そこに集った人々によって語られた事件には、望の人生を揺さぶる秘密が!?
***
奇譚会に招かれた主人公と得体の知れない列車の乗客たちが
ひとりずつ自分の経験した物語を語っていく(もしくは他人の物語を朗読する)、という、
言わば短編集の体裁をとった小説。
が、その短編がいやにつまらない。簡単に先が読めるし、起伏に乏しく先を読みたいという気に
させない。読破するまでに何度もページを繰る手が止まり大変だった。
ラストも、著者は読者を驚かせるつもりだったのかも知れないけど、
突飛に過ぎてこちらは置いてけぼり。
ヒトデナシたちの名前のセンスはいいけど、藤京(とうきょう)とか翠玉(すいたま→さいたま)とか
新台(しんだい→せんだい)とかのネーミングは寒くてどうかとも思うし。
シリーズ四作中で一番つまらなかった。
出てくるキャラや舞台設定は好きなので次回に期待。
メフィスト賞受賞シリーズ最新刊!
探偵助手の望は、名探偵・御堂八雲から、怪盗・無貌に関する情報交換の会に招かれる。
そこに集った人々によって語られた事件には、望の人生を揺さぶる秘密が!?
***
奇譚会に招かれた主人公と得体の知れない列車の乗客たちが
ひとりずつ自分の経験した物語を語っていく(もしくは他人の物語を朗読する)、という、
言わば短編集の体裁をとった小説。
が、その短編がいやにつまらない。簡単に先が読めるし、起伏に乏しく先を読みたいという気に
させない。読破するまでに何度もページを繰る手が止まり大変だった。
ラストも、著者は読者を驚かせるつもりだったのかも知れないけど、
突飛に過ぎてこちらは置いてけぼり。
ヒトデナシたちの名前のセンスはいいけど、藤京(とうきょう)とか翠玉(すいたま→さいたま)とか
新台(しんだい→せんだい)とかのネーミングは寒くてどうかとも思うし。
シリーズ四作中で一番つまらなかった。
出てくるキャラや舞台設定は好きなので次回に期待。
他ならぬあなたになりたいのだ、と思った。
樹海に抱かれた村で暮らす大輝は、ある日、金色の毛をした不思議な生き物と出合う。
ルークと名付けて飼い始めるが、次第に大輝の体に異変が起きてきて……。
「樹海」と「サンカ」をテーマに、鬼才が読者を神々の世界に誘う、表題作を含む4編を収録。
★収録作品★
異神千夜
風天孔参り
森の神、夢に還る
金色の獣、彼方に向かう
***
恒川光太郎氏は本を出すたびに文章がうまくなっている。
が、それと比例して内容がつまらなくなっている。
少なくとも私にはそう思える。本作も、彼が何を言いたいのかさっぱりわからないまま
最後まで読み終えてしまった。
一応は第一話〝異神千夜〟がすべての発端となる、舞台を大昔に設定した話で、
それ以降は第一話を踏まえた現代で物語が展開する。
でも正直それらの話の間に繋がりらしき繋がりが感じられない。
せいぜいの共通点が〝鼬(いたち)〟が話の中心になっているということぐらい。
じゃあそれぞれを独立した物語として楽しめるのかというとそういうわけじゃなく、
多少幻想的で独特な設定に引き込まれはするものの感動を得るというほどでもない。
〝夜市〟〝秋の牢獄〟なんかはすごくよかっただけに残念。
あのころに戻ってほしいです。
樹海に抱かれた村で暮らす大輝は、ある日、金色の毛をした不思議な生き物と出合う。
ルークと名付けて飼い始めるが、次第に大輝の体に異変が起きてきて……。
「樹海」と「サンカ」をテーマに、鬼才が読者を神々の世界に誘う、表題作を含む4編を収録。
★収録作品★
異神千夜
風天孔参り
森の神、夢に還る
金色の獣、彼方に向かう
***
恒川光太郎氏は本を出すたびに文章がうまくなっている。
が、それと比例して内容がつまらなくなっている。
少なくとも私にはそう思える。本作も、彼が何を言いたいのかさっぱりわからないまま
最後まで読み終えてしまった。
一応は第一話〝異神千夜〟がすべての発端となる、舞台を大昔に設定した話で、
それ以降は第一話を踏まえた現代で物語が展開する。
でも正直それらの話の間に繋がりらしき繋がりが感じられない。
せいぜいの共通点が〝鼬(いたち)〟が話の中心になっているということぐらい。
じゃあそれぞれを独立した物語として楽しめるのかというとそういうわけじゃなく、
多少幻想的で独特な設定に引き込まれはするものの感動を得るというほどでもない。
〝夜市〟〝秋の牢獄〟なんかはすごくよかっただけに残念。
あのころに戻ってほしいです。
いざ発進!
ショウタの親友トモヤは学校にはほとんど行かず本ばかり読んでいる。
そのせいか途方もないつくり話をよくする。
この団地の外側には何もない、現に団地の案内図には外側なんて描いてないじゃないかという。
今日も学校はあったよとショウタがいうと、昨晩大急ぎで造ったのさ、といった調子だ。
他にも団地に住む西の良い魔女と東の悪い魔女の話とか、
残虐非道な子どもの王様の話とか……。
だがある日、ショウタはトモヤがいうとおりの姿かたちをした男を目撃する。
もしかしてあれが子どもを穴蔵に閉じ込め、召し使いとしてこきつかうという子どもの王様?
***
主人公の好きな特撮テレビ番組、淡々としたその日常。。。
が延々描かれていたと思ったらそのまま終わってしまった。
子供向けのミステリを発信する〝ミステリーランド〟シリーズから出版されているにも関わらず
そこにミステリの要素ひとつもなし。
普通に物語として読んでも面白くない。
鬼の撹乱? どうしたんだ殊能氏。
〝子どもの王様〟なんてタイトルだから「それって何なんだろう」といたく期待してたのに
それが単なるDV男のことだとわかったときには脱力しかけた。
おすすめしません。
ミステリーランドは麻耶雄嵩氏の〝神様ゲーム〟が最強だなあ、やっぱり。
ショウタの親友トモヤは学校にはほとんど行かず本ばかり読んでいる。
そのせいか途方もないつくり話をよくする。
この団地の外側には何もない、現に団地の案内図には外側なんて描いてないじゃないかという。
今日も学校はあったよとショウタがいうと、昨晩大急ぎで造ったのさ、といった調子だ。
他にも団地に住む西の良い魔女と東の悪い魔女の話とか、
残虐非道な子どもの王様の話とか……。
だがある日、ショウタはトモヤがいうとおりの姿かたちをした男を目撃する。
もしかしてあれが子どもを穴蔵に閉じ込め、召し使いとしてこきつかうという子どもの王様?
***
主人公の好きな特撮テレビ番組、淡々としたその日常。。。
が延々描かれていたと思ったらそのまま終わってしまった。
子供向けのミステリを発信する〝ミステリーランド〟シリーズから出版されているにも関わらず
そこにミステリの要素ひとつもなし。
普通に物語として読んでも面白くない。
鬼の撹乱? どうしたんだ殊能氏。
〝子どもの王様〟なんてタイトルだから「それって何なんだろう」といたく期待してたのに
それが単なるDV男のことだとわかったときには脱力しかけた。
おすすめしません。
ミステリーランドは麻耶雄嵩氏の〝神様ゲーム〟が最強だなあ、やっぱり。
扉を開く。
奇怪な迷路の館に集合した4人の作家が、館を舞台にした推理小説の競作を始めたとたん、
惨劇が現実に起きた!
完全な密室と化した地下の館で発生する連続殺人の不可解さと恐怖。
逆転また逆転のスリルを味わった末に読者が到達する驚愕の結末は?
気鋭が異色の構成で挑む野心的な長編本格ミステリー。
***
あとがきで著者の綾辻氏が
「解決編の手前で真相を見抜ける人は、恐らくいないでしょう」
と言っているのですが。。。
見抜けてしまった。
だってあのひと以外意外性のある犯人いないんだもん。。。
「でもあのひとじゃちょっと簡単すぎるからやっぱ別のひとかなあ。。。」
と思っていたのに、案の定。
本作が発表された1988年代には見破ることの難しいトリックだったのかも知れないけど、
今は真相を看破してしまえる読者はたくさんいるのではないかと思う。
本作の続編〝時計館の殺人〟を先に読んでいたせいで
鹿谷角美の正体も最初からわかってしまっていたし、
そういうこともあって全体に面白いとは言えない一作だった。
やっぱりシリーズものは順番に読まなきゃ駄目だな。。。
作中で何度もその存在を仄めかしてはいたけれど、
隠し通路が出てくるのも正直アンフェアだと思うし。
時計館を超す館シリーズにはこれから先めぐり合うことが出来るんだろうか。
ちょっと不安、そしてかなり期待しながら今後もシリーズを追っていこうと思います。
奇怪な迷路の館に集合した4人の作家が、館を舞台にした推理小説の競作を始めたとたん、
惨劇が現実に起きた!
完全な密室と化した地下の館で発生する連続殺人の不可解さと恐怖。
逆転また逆転のスリルを味わった末に読者が到達する驚愕の結末は?
気鋭が異色の構成で挑む野心的な長編本格ミステリー。
***
あとがきで著者の綾辻氏が
「解決編の手前で真相を見抜ける人は、恐らくいないでしょう」
と言っているのですが。。。
見抜けてしまった。
だってあのひと以外意外性のある犯人いないんだもん。。。
「でもあのひとじゃちょっと簡単すぎるからやっぱ別のひとかなあ。。。」
と思っていたのに、案の定。
本作が発表された1988年代には見破ることの難しいトリックだったのかも知れないけど、
今は真相を看破してしまえる読者はたくさんいるのではないかと思う。
本作の続編〝時計館の殺人〟を先に読んでいたせいで
鹿谷角美の正体も最初からわかってしまっていたし、
そういうこともあって全体に面白いとは言えない一作だった。
やっぱりシリーズものは順番に読まなきゃ駄目だな。。。
作中で何度もその存在を仄めかしてはいたけれど、
隠し通路が出てくるのも正直アンフェアだと思うし。
時計館を超す館シリーズにはこれから先めぐり合うことが出来るんだろうか。
ちょっと不安、そしてかなり期待しながら今後もシリーズを追っていこうと思います。
僕が彼女にしてやれること。
園児探偵白畠リサ登場!
人気ゲームのコミカライズ『逆転裁判』も大ブレイクの著者が贈る
謎と笑いのハートウォーミング・ミステリー。
幼稚園には危険がいっぱい!?
ひきこもりニートの僕が、姪っ子の世話をするハメに。。。
***
ただひと言。「つまらない」。
タイトルにもあるとおり主人公はニートでひきこもりという設定なのだけど、
正直ただのオタク。
私はニート経験も引きこもり経験もあるけれど、こんな甘いものじゃなかった。
何このとってつけたようなニート&ひきこもりっぷり。ホンモノが読んだら怒るぞこれ。
本作はニートだった主人公が姪の幼女のお陰でそこから脱していくというコンセプトなのに、
そこのところがちゃんと書かれてないから全体に薄っぺらく感動もくそもない。
書かれてないといえば主人公と姪の絆もほとんど描かれてないから
たまにいいシーンがあっても無理やりハートフルにしようとしている感が拭えない。
しかも、主人公がスーパーで買い物をするも
エコバッグを忘れて焦る、というシーンがあるのだけど、
「だからといってレジ袋を買うためにもう一回あの行列にふたたび並ぶのは自殺行為だ」
って、何が自殺行為なの? 大げさすぎる。こういう表現があちらこちらにあってイライラする。
そしてイラつくと言えば主人公の妄想癖がまたうざい。
「自分の姉は実はスパイ」という面白くも何ともない妄想に何十行も延々付き合わされたときは
さすがに読むのをやめようかとさえ思った(好きな作家じゃなければ本当にやめていた)。
著者の黒田氏、今回はどうしたんだ?
いつも楽しく読んでいるのに。
単に調子が悪いだけ? それともこの手の話が向いてないとか。
とにかくおすすめしません。
楽しみにしてたのに、読むだけ時間の無駄だった。。。
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***
ただひと言。「つまらない」。
タイトルにもあるとおり主人公はニートでひきこもりという設定なのだけど、
正直ただのオタク。
私はニート経験も引きこもり経験もあるけれど、こんな甘いものじゃなかった。
何このとってつけたようなニート&ひきこもりっぷり。ホンモノが読んだら怒るぞこれ。
本作はニートだった主人公が姪の幼女のお陰でそこから脱していくというコンセプトなのに、
そこのところがちゃんと書かれてないから全体に薄っぺらく感動もくそもない。
書かれてないといえば主人公と姪の絆もほとんど描かれてないから
たまにいいシーンがあっても無理やりハートフルにしようとしている感が拭えない。
しかも、主人公がスーパーで買い物をするも
エコバッグを忘れて焦る、というシーンがあるのだけど、
「だからといってレジ袋を買うためにもう一回あの行列にふたたび並ぶのは自殺行為だ」
って、何が自殺行為なの? 大げさすぎる。こういう表現があちらこちらにあってイライラする。
そしてイラつくと言えば主人公の妄想癖がまたうざい。
「自分の姉は実はスパイ」という面白くも何ともない妄想に何十行も延々付き合わされたときは
さすがに読むのをやめようかとさえ思った(好きな作家じゃなければ本当にやめていた)。
著者の黒田氏、今回はどうしたんだ?
いつも楽しく読んでいるのに。
単に調子が悪いだけ? それともこの手の話が向いてないとか。
とにかくおすすめしません。
楽しみにしてたのに、読むだけ時間の無駄だった。。。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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