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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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撃て。



あたしの夢には死神が降臨する――ボロのジーンズに出刃包丁をもって夢に現れる男。
あたしはそいつが差し出すマシンガンを撃っては、頭を撫でられていた。
言葉という武器で世界と対峙する史上最年少15歳による第42回文藝賞受賞作。

***

15歳(当時)という著者の年齢どおり幼い表現(特に難しい漢字を使った表現なんかが)も
散見されるけど、それは気にならない程度で、
終始年齢にはそぐわない、というか読んでいるうちに年齢など忘れてしまう筆力に
圧倒されっぱなしだった。

ただ、タイトルに冠されているにも関わらず
〝マシンガン〟そしてそれを夢の中で「撃て」と手渡してくる〝死神〟の印象があまりに弱く、
内容にうまく反映されていない。
作品にインパクト・個性を与えるために無理やり出した感が拭えず
それも中途半端に終わっていてそれだけが残念だった。
ラストも転校なんてせずにクラスメイトに向かって連射しまくるぐらいのシーンがあったほうが
タイトルとも合うしよかったのに。

これからどんどんうまくなってどんどん活躍するだろう。。。と思って経歴を調べたら、
2005年以来本出してないのね。。。
雑誌にはぽつぽつ書いているみたいだけど。
今後はちゃんとチェックしよう。
どんな風に成長しているか楽しみだ。

おすすめです。
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あの瞬間の思いは褪せない。



一世一代のたくらみを胸に秘める美人双子姉妹、
クレーマー新婦に振り回されっぱなしのウェディングプランナー、
大好きな叔母の結婚にフクザツな心境の男子小学生、
誰にも言えない重大な秘密を抱えたまま当日を迎えてしまった新郎。
憧れの高級結婚式場で、同日に行われる4つの結婚式。
それぞれの思惑と事情が臨界点に達した、そのとき――。
世界一幸せな一日を舞台にした、パニック・エンターテインメント長編の大傑作。

***

複数の人間の物語が同時進行して、最後にひとつになる。。。という手法、
そしてキャラクターや物語の雰囲気は伊坂幸太郎氏の著作に共通するものがある。
ただいかんせん終わり方がぬるい。甘い。言いたくないけど女性作家の書く話には
総じてそういうのが多い。
「ああやっぱりな」的なオチの着き方に、途中までは面白く読めたのに
「うわ温(ぬる)っ!」と肩透かしを食らった気がして残念だった。

私自身が冷めた性格をしているせいか、要所要所の感動シーンも、
これのどこに感動しろと?とまるで琴線に触れなかった。
友達の結婚とかにも微塵も心を動かされたことのない私なので、
ほかのひとが読めば(特に結婚に憧れているような世代が読めば)「いいなあ。。。」と
しみじみうっとり出来るのかも知れないけど。

まあ普通にエンタメとしてはまあまあ面白かったかな。

ちなみに本作を読むひとは、同著者の〝子どもたちは夜と遊ぶ〟を先に読んでおくと
より楽しめます。





「いかがでございますか、お嬢様」



令嬢刑事麗子と風祭警部の前に立ちはだかる事件の数々。
執事の影山は、どんな推理で真相に迫るのか。そして、
「影山は麗子に毒舌をいつ吐くの?」
「二人の仲は、ひょっとして進展するのでは?」
「風祭警部は、活躍できるのか?」
など、読みどころ満載な上に、ラストにはとんでもない展開が待っていた!?――。

★収録作品★

 アリバイをご所望でございますか
 殺しの際は帽子をお忘れなく 
 殺意のパーティにようこそ
 聖なる夜に密室はいかが
 髪は殺人犯の命でございます
 完全な密室などございません

***

シリーズ一作目と比べて、ということじゃなく、
単体としてつまらない。
読後改めて振り返ってみると、印象に残る事件やトリックがひとつもないことに気付いて
びっくりした。
著者の、読者を笑わせよう笑わせようという気迫が伝わってきて逆に白けるし、
登場人物の挙動がいちいちオーバーでイラつきもする。
主人公の麗子、何で執事影山が無礼な口をきくたびにいちいち派手に椅子から転げおちるわけ?
それも毎回。正直ウザい。
麗子の上司・風祭のキャラだけは好きだし彼の言動にはところどころでくすりと笑えるけど
それも前作ほどじゃなかった。

おすすめしません。
麗子の「大事な人」発言もあざとくて何かいやだったし。
3が出てももう読まないかも。
だいじょうぶよ、こわくない。



逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか――。
理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。

***

正直、本作を読むんだったら、
服部まゆみさんの〝この闇と光〟のほうが数百倍おすすめ。
テーマはかなり近くても比べものにならない。
本作は、確かに映画化しやすい話ではあると思うけど、内容的には凡庸で薄っぺらく
個人的な感想としては一読に堪えるものではなかった。

一章の、主人公が他人の子供を連れて逃げ惑うパートでは、
ひたすら主人公のポエムが炸裂して内容も変化のない描写の連続で
読み進めるのが苦痛だったし、
二章になってからはちょっと面白くなるもののラストがありがちすぎて失笑レベル。
全体に二時間ドラマであるような展開。
主人公が捕まるときに言う台詞も「あー著者これが一番書きたかったんだろうなー」と
簡単にわかるぐらい狙いすぎで鼻白んだし。

駄作ではないんだろうけれど私には受け付けなかった。
繰り返しますが〝この闇と光〟のほうがずっといい。
まああれも、途中までは描写がだるくて読み進めるのがつらいという難点はあるけれど
転換点から畳み込むような怒涛の描写とラストの美しさは傑作の名にふさわしい。

。。。何だか〝この闇と光〟のレビューみたいになってしまいましたが
以上が正直な感想。

映画観ようと思ってたけどたぶん観ないな。
「そうですよ」
「そうですか」




大学の探偵助手学部に通う君橋と月々の気分はどん底だった。
名門ゼミ入り審査に落ち、悪ふざけで希望を出した知名度ゼロの猫柳ゼミ行きが決まったから。
そう、指導教官は功績不明かつ頼りなさげな女探偵・猫柳十一弦。
彼女の下では立派な探偵助手になれないのか(涙)?
だが名門ゼミとの合同研修が決まり、人生大逆転をめざし孤島の館へ。
その合宿中、奇怪な殺人事件が発生する。
“波乱万丈”大学生活、青春“北山猛邦”ミステリ。

***

北山氏のミステリとしてはおとなしめ。
今回は、いかに驚愕のトリックをしかけるか、ということよりも、
〝名探偵とは何か〟を証明したくて北山氏は本作を書いたのではと思う。
本作を読むと確かに、
「あー確かにこれこそが本当の名探偵だわ」
と思える。そして本作の妙なタイトルにも頷ける。

見立て殺人がわらべ歌などではなくアレだったことも、
さすが理系の北山氏、とは思ったけど感銘を受けるほどではなく、むしろこじつけに感じた。
ラストのほのかな恋愛エピソードも蛇足に感じたし。
何よりキャラがキャラを「危ない!」と突き飛ばすシーンが多くて
そのワンパターンさにちょっと眠くなった。

北山作品は全部読んでるけど、本作が一番楽しめなかった。
残念。
殺すために。



10年前、遠足で女子高生30名と教員を乗せたバスが、忽然と姿を消した。
「某国による拉致」「UFOの仕業」など様々な噂も流れたが、結局手がかりも見つからないまま
「平成最大のミステリー」として現在に至っている。
この怪事件によって姪を失った刑事・奈良橋は、独自に調査を続けていた。
そんな彼は、管轄内で起きた「作家宅放火殺人事件」を担当することになり……。

***

これまでの七尾作品を読んでいても思うことだけど、
これだけ大人数が出てくる物語をきれいにまとめてしまえる手腕には脱帽。
一つひとつのエピソードが興味深くて印象に残るので混乱するということがないし。
一歩間違えばギャグになってしまう物語を、(いい意味での)バカミスに昇華し得る筆力にも感嘆。

ただひとつ不満を言うなら、〝殺戮ガール〟が悪に徹し切れてなかったことかな。
寝言の内容で「あれ、彼女そこまで悪いひとでもないんじゃ。。。?」と思えてしまうのですが
彼女にはもっと徹底した悪役を貫いてほしかった。だって絶対悪ってぐらいだし。
そしたら「誰もが爆笑する漫才が出来る」という設定とのギャップがもっと映えるのではと
個人的には思った。

後味はあまりよくないですが、面白かった。
七尾氏は小説教室の先輩でもあるのですが本当に文章や構成がうまくて(プロなんだから
当たり前だと言われてしまうかも知れませんが)学ぶところが多いです。
これからも活躍してほしい。

おすすめ。
一年後におはようって言って。



「僕」が敬愛してやまないクリエイター、ジスカルドこと「じすさん」が死んだ。
死に向かってひた走る彼と僕の、最後の交流。
なぜ彼は死を選ぶのか? 
ものをつくること(クリエイション)とは、いったい何なのか? 
現実と非現実が交錯する、新鋭・泉和良の反(アンチ)自伝的フィクション。

***

じすさんことジスカルドというのは、アンディー・メンテというゲームサークル(実在します)における
著者・泉氏のハンドルネーム。
泉氏の著作は本作以外にも、主人公の名前がまんま泉和良だったりと
かなり著者と距離の近い作風だったりします。
それが今回は当の本人が死んでしまう。
著者も実際体調を崩しているようだしサイトは閉鎖されてしまうしで
「大丈夫なのか、泉氏。。。?」と本当に心配になってしまった。

でも(作中の)じすさんが死ぬ理由が
たかが女のことだなんて!
いや、もちろん恋愛は大事だけど。。。でも創作(クリエイト)に携わる人間の死因としては
あまりにあたりまえに過ぎてショボい気がするんだけど。。。
泉氏本人も恋愛に挫折してものづくりの情熱が失せてしまったんだろうか?
恋愛の傷は数多ある苦しみの中でも一番回復しやすいものだと思うからぜひ立ち直ってほしい。

まめちしきですが本作が初泉和良という方は
是非本作の前に〝エレGY〟と〝ヘドロ宇宙モデル〟を読みましょう。
そのほうがより本作を楽しむことが出来ます。

それにしても、〝エレGY〟のヒロインのエリ、じすさんが死んでどうなっちゃったんだろ。。。
そもそもじすさんの死の原因が彼女にあるってこと、だよなあ。。。?
あれだけインパクトの強い彼女を失ってしまったら、じすさんそりゃ死にたくもなるよな。。。
んーむ悩む。
そしてかなり切ない。
(うーんでもパラレル設定っぽい気もするからじすさんはじすさんでも
違うじすさんと捉えればいいのかな? んーむ難しい)
死の国へ。



大阪のしがない短大助教授・桑潟のもとに、ある童話作家の遺稿が持ち込まれた。
出版されるや瞬く間にベストセラーとなるが、関わった編集者たちは次々殺される。
遺稿の謎を追う北川アキは「アトランチィスのコイン」と呼ばれる超物質の存在に行き着く…。
ミステリをこよなく愛する芥川賞作家渾身の大作。

***

本作の続編である〝桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活〟から私は読んだのですが、
正直そっちのほうが面白かった。
奥泉氏の癖のある文体をこれほどの長編(字ーみっちりで500P)で読むのはきつい。
続編のほうは中編が何本か入っているという形だからほどよかった。

それに本シリーズは桑潟幸一・通称クワコーの挙動が面白いから楽しく読めるのであり、
その点W主人公のクワコーに続く二人目の主人公である北川エリの活躍ばかりが目立つ本作は
あまり楽しめなかった。
エリなんかどうでもいいからクワコーをもっと出せよと。

ミステリとしてもあまり秀作とは言い難い。
だらだら引き延ばしてぽっと終わった、そんな退屈であっけない印象を受けた。

本作、出版されたのが七年前なのにもかかわらず、私の近所の図書館では
常に予約待ちが入っているという不思議な本なのですが、
これ読むなら続編読んだほうが面白いですよと進言してまわりたい。
それとも続編を読んで気に入ったひとがこっちを借りてるのかな?

あまりおすすめしません。
クワコーのキャラは好きだけど。
それだけが私を生かす。



激臭を放つ粘液に覆われた醜悪な生物ヌメリヒトモドキ。
日本中に蔓延するその生物を研究している私は、
それが人間の記憶や感情を習得する能力を持つことを知る。
他人とうまく関われない私にとって、世界とつながる唯一の窓口は死んだ妻だった。
私は最愛の妻を蘇らせるため、ヌメリヒトモドキの密かな飼育に熱中していく。
悲劇的な結末に向かって…。
選考委員絶賛、若き鬼才の誕生!第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。

***

まず驚いたのはとにかく文章がうまいこと。
純文学顔負けの心理描写力・表現力に舌を巻く思いがした。
これを二十代半ばの青年が書いているというのだから恐ろしい。

オチは早い段階で予想がついてしまったけど、
それでもぞくりとくる話運びには一切の無駄がなく、最後まで一定のテンションを保って
読破することが出来た。

本作は〝日本ホラー小説大賞〟の受賞作だけれど、私はこれを
あるひとりの人間の心の深淵を微に入り細に穿って描き上げた伝記としておすすめしたい。

最愛のひと以上に誰かを愛してしまうとき、
それは最愛のひと以上の存在が現れたときではなく、むしろ。。。
そんな人間の描写が圧倒的説得力を持って迫ってくるこの凄まじさ。ただ圧巻のひと言。

再読に値する一作。
非常におすすめです。
あぁ……。



穴、穴、穴。
なぜか穴に入る魅力に目覚めた僕は、ホースや同僚の口を手始めに、
どんな穴でも入りたくなるようになった。その欲望の果てにあるものは――? 
奇妙な味わいが癖になる日本ホラー小説大賞短編賞受賞作!

★収録作品★

 穴らしきものに入る
 金骨
 よだれが出そうなほどいい日陰
 エムエーエスケー
 赤子が一本

***

素っ頓狂なホラー短編集。
どれもが異様な世界観なのに、そこに息づく登場人物たちはそのことにさして疑問も持たず
活動しているものだから、読むうちにこちらもその独特な価値観の中に引き込まれてしまう。
それがなかなかに楽しい。味のある物語を書く個性的な作家さんだと思う。
表題作以外には、〝よだれが出そうなほどいい日陰〟〝エムケーエスケー〟が
純文学の味わいすら感じさせる意外と深みのあるいい物語だった。
「日陰に恋をする」なんて奇抜で斬新なアイデアだと思うし、
脱いでも脱いでもマスクを被ったまま、という奇病にかかった男が
ラストではマスクを被っていない自分に違和感を感じるところなど、
大衆に染まりやすく型にハマりやすい日本人の性質を風刺していて楽しかった。

「○曜日」。
「よく晴れた○曜日」。
から始まってばっかりの文章は、狙ってやってるにしても単調すぎて少しは変えてくれよと
思ったけど。
あと、歌の歌詞みたいに同じ表現を反復するのも、話ごとに繰り返されると
「もういいよ。しつこいよ」と思ってしまう。
次回作でもやったとしたらいよいよ鬱陶しいので著者は自粛すべきだと思う。

なかなかおすすめです。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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