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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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恥ずかしいな。でも、消さない。



いっそ命に関わる病気だったらよかったのに――
6年前に別れた恋人・静佳にはある事情があった。
彼女を一度は受け入れると決めたのに、突き放す形になってしまった過去。
ユキヒロはその謝罪をしたいと思っているが、なかなか一歩を踏み出せないでいる。
そんなユキヒロのところに、父親を雪山の事故で亡くした甥っ子の葎が預けられることに。
葎との生活のなかで、少しずつ前へ進み始めたユキヒロは、静佳に手紙を書こうとするが――。
2008年『空で歌う』が芥川賞候補となった期待の新鋭、初の書き下ろし長編。

***

デビュー作〝さりぎわの歩き方〟では〝青春の終わり〟が描かれていたのに対し、
本作は〝青春の終わり、そしてそれから〟が前向きな視点で描かれている。
大人に踏み出すのも悪いものじゃない。
幻想から逃れて現実と向き合うのは厳しくて寂しいことだけれど、
あらゆることに責任を負うぶん、ほんの少しのことも子供だったときに比べてより輝いて見える。
「大人になるのも悪くないな」と思わせてくれる物語だった。

〝ナルニア国物語〟を彷彿とさせる設定や、
どこかで読んだ感が否めない描写もいくつかあったし、
病気の元彼女とそれを忘れられない主人公、というのもありふれているけれど、
どのエピソードも最後には納得できる場所に着地しているので読後はとてもさわやかだった。

個人的に一番好きなのは、主人公の友人が元恋人に宛てて書いた手紙。
それと最初の導入部だけで、本編より感動してしまった(中山氏には失礼ですが。。。)。
案外この作家さんはコピーライターとか向いてるのかもしれない(一つ一つの文章がすごく
きれいだし、後半のスノードームの描写はそれだけで一本の物語になりそうなほど
印象的だったので)。

静かで優しい物語です。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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