忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[555]  [566]  [557]  [551]  [553]  [542]  [552]  [543]  [559]  [547]  [539
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

あり得たはずの未来。



ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。
街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、
職務怠慢なアルバイト医、
救急外来の常習者、
事なかれ主義の市役所職員、
尊大な定年退職者……
複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。
残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。
遺族は、ただ慟哭するしかないのか?
モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!

***

導入部から惹き込まれ510Pを一気読み。
最後まで退屈するということがまったくなかった。
一日中手放せないぐらい面白い本に出会ったのは久しぶり。

本当に貫井氏は、〝悪人というほどではないけど小憎たらしいバカ人間〟を書くのがうまい。
特に本作のようなテーマの話を書くのに一番ふさわしい人が筆をとったのだから、
これはもう面白くないわけがない。
まあ、序盤でバラバラに散っているパズルのピースの、模様は一つ一つ見えているわけだから
それを組み立てるとどういう絵になるのかはすぐに予想できてしまうのですが、
それでも面白いんだからすごい。

〝乱反射〟というよりはプリズムのように、いろいろな人間が出した様々な色の光が
一つの色(結末)に収斂していく、その様が絶妙な小説だった(貫井氏がこのタイトルにしたのは
登場人物たちそれぞれの行動が物語に書かれていないところでも第三者に何らかの影響を
及ぼしている可能性を示唆してのことだと思う。「悲劇はこれだけじゃないんだよ」的な)。

ただ。。。本作のケースではあらゆる小さなことが積み重なって惨事を招いてしまったわけだけど、
場合によってはそのモラルのなさが誰かを救っている場合もなきにしもあらず、ということ。
人の善意が誰かを殺すこともあれば、悪事が誰かを救うこともある。
私はモラルのない人間は大嫌いだけど、本作を読んで「もっとモラルに気をつけないと」と
単純に思うのは難しいな。。。
四年前の脱線事故で亡くなった男の人がぜんそくを克服して退院したばかりだったのも、
もし医者の腕がもっと悪ければ死なないで済んだのにと思うとどうにもやるせない。

でもラストは涙が出ました。
ほんの少しずつでいいからこの二人が立ち直っていってくれることを願う。
終盤に出てきたあの手紙、読者が物語という垣根を越えて彼ら夫婦に送ったものだと思いたい。
PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
この記事へのトラックバック
TrackbackURL:
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]