俺はここに居つづける。
住人たちを立ち退かせるため、八木沢省三郎は管理人として骸骨ビルに着任する。
そこは、戦後、二人の青年が子供たちを育てた場所だった。
食料にも事欠き、庭で野菜を作りながら、彼らは命を賭して子供たちと生きた。
成人してもなおビルに住み続けるかつての子供たちと、老いた育ての親、
それぞれの人生の軌跡と断ち切れぬ絆が八木沢の心を動かす。
すべての日本人が忘れられない記憶。
現代人が失った純粋な生き方が、今、鮮やかに甦る。
***
半分フィクション、もう半分は輝さんの日記といった感じの小説だった。
何々をした、どこそこの料理はうまい、何時に寝た。。。こういう表記の羅列には
正直ちょっと寝そうになったり。
個人的な感想としては本編があらすじに負けているようにも思えた。
子供たちを育てた二人の青年の素晴らしさを、もっと強く伝える術が輝氏にはあったと思うのに。
これだったら〝窓際のトットちゃん〟や〝兎の眼〟のほうが主人公を支える大人の魅力が
よほどよく伝わってくる。
主人公がしょっぱなから骸骨ビルの面々に好かれるのにも違和感を感じた。
主人公の奥さんが、新婚でもないのに夫の長い単身赴任を寂しがって泣いたりするのも(正直
自分の知り合いの既婚者は旦那さんがいないと大喜びしてたりします)。
ていうか自分の息子がこれから人生の再スタートを切るってときに
単身赴任先で料理屋を開きたいってそりゃないだろ父ちゃん、と。
唯一いいなと思えたのは、サイコロ寿命占い。これを読んだあとに本作の冒頭を読むと
〝爽快な悲しみ〟という滅多に味わえない感情を味わうことができます。
尊敬できるような大人がいない昨今、本作を子供や若い子に読ませるのはありだと思う。
Vサイン。
PR