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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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心から、そう、望む。



学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、
ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、
城のような不思議な建物。
そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、
驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。

***

漫画家・松井優征氏の「暗殺教室」を読んだとき、
ボロ泣きしつつもデビュー作の「魔人探偵脳噛ネウロ」のほうが
個性が爆発していて好きだな、と思い、でも万人受けするのは
暗殺のほうだろうな、そういう風に書かれてるし、と思ったことを思い出した。

本作も、とても読みやすい文体で書かれていて、万人受けする内容だけど、
著者の全盛期を知っている身からすれば、
「このひとはもっと個性的で胸に刺さるものを書けるひとなんだけどな」と
少し物足りなく思った。
特に、この世で一番好きなミステリが、彼女の著書「子どもたちは夜と遊ぶ」
である私としては、どうしてもそっちと比べてしまって
「これぐらいわかりやすく書かないと、今の時代ベストセラーにはならないのかな」と
悲しくも思ったり。

良書ではあると思う。
本作を読んで励まされる十代の子供もきっと少なくないと思う。
けれど大人が読むにはやや幼かった。
本作は雑誌「yom yom」で途中まで読んでいたけれど、いつの間にか
定期購読をやめていたぐらいだし。
クライマックス間近で明かされるある真相も、だいたい読めていたので
驚きはなかった。
ラストは読めず、「ああ、そうだったのか。。。」とはっとさせられたけど。
本作のキーパーソン・喜多嶋先生が、あまり深く描かれていないなと思ったら
そういうことだったのか、と。

私の教え子の中学生にもとても繊細で感じやすい子がいて、
大きな苦しみを抱えていたり、それを募らせて冬のプールに飛び込んでしまうぐらい
あやうい子がいたりするけど、そういう子たちに読ませてあげたいなとは思った。
学校なんて数ある居場所のうちのほんのひとつに過ぎないし、
その場所に息苦しさを感じたからといって決して駄目な子というわけじゃない、
いやなら別の居心地のいい場所を見付ければいい、と常々思っている身としては。
心を通わせられる相手は必ずしも「学校」という場所で見付けなければいけないって
わけじゃないんだよ、と本作を通して教えてあげたくなった。

作中に、
「闘わなくてもいいんだよ」
「逃げないで」
という対比する台詞が出てくるけれど、闘うだけ無益なときと、
どうしても自分に打ち克たなければいけないときとの、その境を
大人が子供に教えてあげなきゃならないんだということなんだなと
本作を読んで胸に刻み付けた。

小学校のとき、途中で不登校になってフリースクールに通うようになった
仲のいい男友達がいたのですが、その子のことを思い出しました。
元気にしているといいなと心から思う。

未来で待っているに違いない、自分を救ってくれる誰かのために、
生きてみよう。そう思わせてくれる物語だった。

ある言動をきっかけに、この著者の人間性が嫌いになり、
以来かなり色眼鏡で彼女の著作を読んでいた私ですが、
本作を読んで久々に「やっぱりいい作家だな」と思った。
前述の「子どもたちは夜と遊ぶ」みたいな物語をまた書いてほしいなとは
相変わらず思うものの。

児童文学として読むぶんにはおすすめです。
余談ですが、カバー下の装丁が子供のころ枕元に置いて眠るぐらい好きだった
ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」と似ていて何だか嬉しかった。
アル・ツァヒール!
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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