“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん―。
幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。
それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。
一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。
愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?
全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞”受賞作。
***
結局、一番怖いのは「人間」なのだなと。
自分がそこそこ幸せだから他人もそうに違いないと思い込む
人間の図々しさ、傲慢さこそが最も恐れるべきものなのだなと、
そう思わされた本作。
第一部を読んだときはありがちな化け物ホラーとしか
思わず、それでも主人公の男の「イクメンブログ」に気味悪さを感じ、
第二部である真相が明かされたときは「ぼぎわん」という化け物より
人間のほうが怖くなった。
第三部冒頭の、主人公のひとり・野崎の友人たちの
浅はかなノリの軽さにも軽蔑の念を抱かずにいられず。
人間って本当に苦しい何かを抱えてない限り、自分の幸せでいっぱいになって
どうしようもなく無神経になるものなのだな、と戦慄が走った。
私もSNSに「パパやってまーす家族愛してまーす」というノリの
男「友達」がいるけど、そのひとに対するのと同じ不気味さを感じた。
それと、昔二人目を妊娠中の友人を見舞ったとき、
「●●ちゃん(私)も35までには子供生みなよーダウン症の確率
一気に上がるよー」とグラフまで書いて説明されたときに感じた
薄気味悪さも思い出した。
もちろん人間の出来た素晴らしいひともいることは知ってるけど、
本作を読んで、繰り返しになるけど人間の傲慢さを再確認。
私が敬愛するある作家さんの作品で、家族写真付きの年賀状を
送ってくる友人に対して主人公が、
「彼に悪気はない。彼は何も悪くない。ただ、幸福な人間は、
時に暴力的で恐ろしい」と思うシーンがあるのだけど、
まさしくそれだな、と思った。
ホラーとしてはあまり怖くないです。というかありがち。
化け物VS霊媒師、とか正直手垢が付いてると思うし、
読んだのが十代のときだったせいもあると思うけど
「リング」や「パラサイト・イヴ」を読んだときほどの恐怖は
まったくといっていいほど感じなかった。
かといって「黒い家」ほどエンタメに徹しているわけでもなく、
「かにみそ」「夜市」「白い部屋で月の歌を」みたいな独創性・文学性が
あるわけでもない。
著者のあとがきから感じ取れる人間性から察せる限りの、軽いノリのホラー。
余談だけど、この作者、長年プロ作家を目指していたわけでもないのに、
「受賞の知らせをしたら友人が泣いた」と書いていて、
その「友人」にも失礼ながら不気味さを感じてしまった。
基本人間は怖い。
そんな物語でした。
「ぼぎわん」という化け物の正体を知ったときは切なくなったけど。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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