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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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お願いだから静かに逝かせて――。



田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、
彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。
産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら
彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、
そしてあまりにも哀しい真実。
幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…
筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。
日本推理作家協会賞受賞。

***

あっという間に読み終えた。
ページを繰る手が止まらなかった。
そういう本に出会えたのは本当に久しぶり。
そして読後一日が経過した今でも、胸が痛い。
大袈裟でなく苦しさが治まらない。

ひとは絶望したときに死にたいと思うものだけど、
絶望を伴う希死念慮ではなく、「死」というものを
唯一の希望と捉えるヒロインの姿が苦しくて仕方なかった。

人間はたったひとりにでも必要とされれば生きていける。
でもそういう存在がいても、彼女は駄目だった。
自分を必要としてくれる相手との、哀しい「その先」を見てしまった。
ここまで混じりっけのない、純粋な「絶望」を見たのは初めてだった。

実際に本人に会ったわけでも、話をしてその人となりを知ったわけでもないのに、
与えられた情報だけで相手の人間性を断じてしまう人間の浅はかさにも
哀しみを覚えた。自分にも少なからずそういう部分があるので、
陳腐な言い方だけど本作を読んで反省した。
相手をろくに知らずに糾弾したり「このひとはこういうひとだ」と
決めつけて憤ったり馬鹿にしたりする、そんな自分を恥じた。

年上の知人が、あるとき「人間の愛情というものは必ず冷める」と
言っていて、確かにそのとおりだと思ったものですが、
本作の「幸乃」を必要としてきた人間たちも、結局は彼女を忘れ、
それぞれの人生を生きている。幸乃に感情移入してしまうから
それを薄情だと思ってしまったけれど、人間なんて結局はそういうものだ。
でも、それでもそんな彼らに幻滅を感じずにはいられない。
人間の薄情さを、一度は大切に思った相手を切り捨てて
ひとりで自分の道を行ってしまう傲慢さを、
責めずにはいられなかった。
仕方ないこと、当然のことだとわかってはいても。

幸乃の持病(恐らくナルコレプシー?)は、そんな薄情な人間たちから
眼を背けるための、必死の抵抗だったのではと思う。
神様のように人間の罪を許し、受け容れてきた彼女が持ち得た、
唯一の武器だったのではと。

エピローグの女刑務官の台詞はちょっと腑に落ちませんでしたが。
あれ? 幸乃には「あなたを必要としてるひとがいる」って言ってたのに
恋人には言ってること違くないか?と。
あと幸乃がどうして「彼」を好きだったのか、その描写が弱いなとも。
「ハッキリ」とか「キレイ」とか、カタカナにしなければ
もっと美しい描写になるのに、と思うこともたびたび。
 
でも細かいことは気にしないことにします。
これほど心を引っ掻いてくる作品に出会えたんだから。

ミステリ要素はかなり弱いけど、ある孤独な人間の抱えた、
希望という名の闇、絶望という名の光を描き出すことには見事成功しているので、
非常に読みごたえがあります。

とてもおすすめ。

それにしても、読み終えたあとに表紙を見ると、
何でこういう絵なのかがわかってやっぱりどうしようもなく
胸が痛くなるな。。。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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