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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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私は月島の彼女になりたいと望む一方で、女になることを見下していた。
見つめ合いたいと思う一方で、同じ方向を見据えて肩を並べたいと思っていた。



SEKAI NO OWARI Saoriによる初小説、ついに刊行。第158回直木賞候補作。

大切な人を大切にすることが、こんなに苦しいなんて――。

彼は私の人生の破壊者であり想造者だった。
異彩の少年に導かれた少女。その苦悩の先に見つけた確かな光。

***

セカオワのSaoriの自伝的小説。
芸能人の書いた小説を読むとき、どうしても偏見から
構えてしまうことがあるのですが、本作は当たりだった。

まずは恋愛的要素から。
恋をしたことがある人間(特に女性)なら誰しもが共感するような
苦しみがこれでもかと伝わってくる。
恐らくはSaoriが実体験から書いているのだろう内容だから、
リアルであるのは当たり前なのかも知れないけど、
自分の気持ちをうまく文章化することに見事成功している。

どうしてもセカオワのFUKASE(Vo.)とSaoriを
主人公ふたりに当てはめて読んでしまうので
彼らの顔が浮かんでしまって完全に物語として読むことは難しかったけど、
内容が面白く、また文体もセンスがあって読みやすく、
あっという間に読んでしまった。

主人公であるSaoriの分身は、よく言えば繊細で真面目、
悪く言えば考えすぎで神経質な部分があるのだけど、
恐らくはそういう部分を月島(FUKASE)が
「何言ってるの。いいから行こうよ」と背中を(ちょっと強めに)
押していたのだろうな、と感じられた。いいコンビだと思う。
セカオワのバンド名の由来は、「自分の世界の終わりに唯一残った仲間と組んだ
バンドだから」というものだと前に何かで読んだことがあるけれど、
本作を読んで「なるほどこういうことだったんだな」と納得がいった。

友達でも恋人でもない、けれどそういう肩書きを超越した
絶対的な絆もあるのだということが、本作には書かれている。
もし自分がFUKASEの恋人だったら、「ああ、このふたりの結び付きには
敵わないな」と白旗をあげていたかも知れない。いや確実にあげている。

個人的な話をすると、私も昔別れて尚、心の病気を抱えた元恋人を
「介護」した経験があるので、主人公の女の子の気持ちはとてもよくわかった。
私の場合は自分も相手と同じ病気に罹ったことがあったので
相手の病状を理解することが出来たけど、心が健康な人間にとって
心の病を持つ人間を理解し、受け止めるのは相当に難しいことだっただろうし、
それでも月島から離れなかった、そして共依存になってしまわずに
自分の意見をはっきりと言い、自分の生き方を出来る限り崩さないようにした
彼女はとても大人びていて偉いと思った。
目指すもののために女として自分を繕うことを放棄した彼女が、
この上なく格好よく見えた。

ラスト一行には鳥肌が立った。

又吉直樹氏然り、自分の世界のことを書く芸能人作家は
二作目の完全なフィクションから面白くなくなっていくという法則みたいな
ものがあるけど(加藤シゲアキ氏は面白いけれど)、
彼女にはまた感動出来る二作目を書いてほしいと思う。

非常におすすめです。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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