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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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日本推理作家協会が厳選。
至高のミステリー作品、夢の共演!

過去1年間に発表されたすべての短篇推理小説の中から、
日本推理作家協会が選び抜いた至高の作品だけを収録。
新鋭からベテランまでキャリアに関係なく、
とにかく面白くて優れた短篇ばかりを集めました。
巻末には「推理小説・二〇一六年」に加え、推理小説関係の受賞作を網羅した
リストも掲載。

★収録作品★

 黄昏/薬丸岳
 影/池田久輝
 言の葉の子ら/井上真偽
 陰獣幻戯/歌野昌午
 都忘れの理由/大崎梢
 みぎわ/今野敏
 旅は道連れ世は情け/白河三兎
 留守番/曽根圭介
 鼠でも天才でもなく/似鳥鶏
 ロングターム・サバイバー/南杏子
 きれいごとじゃない/若竹七海

***

 ◆黄昏◆

嫌いな作家さんじゃないけれど、本編は楽しめなかった。
どうしてこれが日本推理小説大賞受賞作?と首を捻った。
事件の真相も、「知られるのがいやなら単に言わなきゃいいだけじゃん」としか
思えなかったし、犯人が母親を慕っている描写もほぼ皆無なので
そこまでする理由がわからない。というか、慕ってるならトランク詰めに
するなよと。
細かい部分を言うと、主人公の刑事が聴き込みの際、
「どうして彼女が最近亡くなったと知ってるんですか」みたいに訊くシーンが
あるのだけど、「先日〇〇さんがな遺体で発見されて捜査をしてます」って
言われりゃ誰だって最近死んだんだろうなと思うだろと。
何だか微妙な作品でした。

 ◆影◆

速攻オチ読めた。なので途中からはダラダラ読み。
これが日本推理作家協会賞最終候補作だと思うと何とも言えない気持ちになった。
そして主人公がヘタレのくせにかっこつけで好きになれなかった。
ラストはクサい。まあそう来るだろうなとは思ってたけど。
赤の他人の些細な行動から「待てよ、もしかしたら。。。!」と
真相に気付くのも、コナンか二時間ドラマか!と突っ込みたくなった。
あと普通に星型のピアスを男がしてたらダサい。
ダサいと言えば、主人公が尾行する女、そのファッションに運動靴は
ないだろうと細かいとこまで気になった。現実でも実際大人っぽくキメてるのに
足元はスニーカーという女性が多くて「何でそのファッションでスニーカー?」
と内心で突っ込むことが多い日常、些細なことだけど気になってしまった。
面白くなかった。
というかタイトル、「影」なんかじゃなくて「三枚目の皿」とかにしたほうが
よかったのでは?と勝手に思った。
 
 ◆言の葉の子ら◆

謎そのものは、頭の体操的なクイズ本に載っていそうな感じのものだけど、
著者独自の世界観でそれを個性的な短編ミステリに仕上げている。
物語の要となる幼稚園児の不自然な話し方、何か困ったことがあると
何かと舌を出す癖のある主人公の描写が、ラストで真相に収束していく様は、
華麗とまではいかなくてもそれなりに「なるほどな」と思った。
主人公の生徒・福嗣の母親の「私は母親として完璧であろうと、私は、私は」
という、息子のことではなく自分のことしか考えていない様には
かなり苛々させられたけど、こういう母親実際にいるんだろうな。
ラストはちょっと説教臭い気がした。
子供を教える仕事に携わっている身としてはまあまあ面白く読めたけど、
やはりこれも日本推理作家協会賞最終候補作に選ばれるほどのものではない気が。
似た設定の話なら、太朗想士郎氏の「機巧のイヴ」のほうが
遥かに面白かった。
 
 ◆陰獣幻戯◆

主人公の変態描写が面白く、序盤から引き込まれた。
ストーカー被害に遭っている主人公の想い人が、変質者を怖がってる割には
主人公に簡単に好意を持つという展開には疑問を感じたけれど、
そして後半ふたりがセックスしたことを匂わせる描写があったのに
何で主人公何も気付かないんだ?とも思ったけれど、
そういう細かい突っ込みを抜きにすれば面白かった。
ちなみに三人称で書かれた本編、主人公のことが名前ではなく
「彼」と書かれていたので何かの伏線かと思っていたら何もなかったので肩透かし。
あと、殺人の動機は良いものの犯行の発覚に至った理由が唐突でご都合主義にも
感じた。
でも繰り返すけど面白いのでスイスイ読めた。
 
 ◆都忘れの理由◆

ほっこり話。
主人公の老人の心理が、ちょっとお茶目に丁寧に描写されている。
ただ、謎の真相を中盤で主人公がすべて頭の中で推理してしまい、
まさかそのとおりってことはなくて途中でどんでん返しがあるのだろうと
思っていたら本当にそのまんまだったので、構成に勿体なさを感じた。
「まさか、理由はあれじゃ。。。!」とぼかしておいて、
ラストの会話で真相を明かす、という構成にしたほうがいいのではと
思ってしまった。
このままではミステリとは呼べないと思うので。
 
 ◆みぎわ◆

警察小説が苦手なので、読むのに苦労した。
真相がわかっても、「あーまあ、そういうこともあるよね」としか思えず。
というか被害者に連れがいたかどうかなんて、被害者の携帯のメールのやり取りとか
見たらすぐにわかるんじゃないか?と。
同じ警察小説でも、横山秀夫氏のだったら割と面白く読めるのにな。
この作家さんの書く話はあまり好きじゃないみたいです。
 
 ◆旅は道連れ世は情け◆

メフィスト賞出身の作家さんはたまにとんでもないトリックを使ってくるので、
本編もそうなのではないかといろいろ考えを巡らせながら読んでいたものの、
ラストは予想外で「そう来たか」と驚かされた。すぐに読み返して、
散りばめられていた数々の伏線になるほどと感心した。
面白く読めたけれど、主人公と旅を共にする男が主人公に話した自分の過去と、
主人公が好きになる女性の夫がアニメ制作会社に勤めているということが
重要な伏線になっているのかと思いきや見事に本筋に関係なかったので、
そのふたつを物語に絡めればもっと面白くなったのにと個人的には思う。
あと、タイトルにしては、「世は情け」を思わせる描写がなかったので
そのあたりも何かしらのエピソードを入れればよかったのにとも思った。
 
 ◆留守番◆

読み始めてすぐオチがわかったので面白くなかった。
疑問だったのは、何故主人公は「彼女」が未だに女優になりたいと思っていたのかと
いうこと。そんな描写は皆無だったので。まあ単なる彼の妄執だったのかも
知れないけれど、そのあたりが描写不足に感じた。
有名女優を目指す女があんな場所で働いていることにも疑問を感じた。
あと警察無能過ぎ。

 ◆鼠でも天才でもなく◆

短編にしては長め。そしてそんな長さは必要ないのではと思った。
犯人は物語的に「このひとしかいないだろ」と読めてしまうので、
フーダニットは楽しめない。
あと、ある絵画を見て探偵役が事件の真相に気付くのだけど、
この絵で真相がわかるか?と思うほど事件との関連性を感じられなかった。
トリックにも無理があったし。
そして探偵役のヒロインの描写があざとくてちょっと鼻白んだ。
主人公のほかの登場人物への心の突っ込みがちょっと面白かった、
でもそれだけ。
この作家さんの作品で面白かったのは、短編「美しき余命」だけだな。
 
 ◆ロングターム・サバイバー◆

ミステリというにはミステリ要素が弱過ぎた。
そして何より突っ込みたいのは、末期癌にかかった名誉教授が手術を手掛けた
という患者の中にMM(多発性骨髄腫)のひとがいたこと。
私の身内がこれを患っているのだけど、MMは消化器系の癌じゃないので
消化器系癌の権威が手術を手掛けるのはおかしいし、そもそも
外科手術が出来る病気じゃないので。出来て自家移植がせいぜい。
現役医師であるひとが書いた話であるだけに、リアリティのなさを感じた。
ちなみに私事ですが、前述の身内は症状が軽くロングターム・サバイバーなので
安心しています。
 
 ◆きれいごとじゃない◆

好きな作家さんだけど、本編は楽しめなかった。
掃除とおせちに関する蘊蓄を読むのがただひたすらしんどかった。
伏線も、「散りばめられてる」というより「とっ散らかってる」という感じで
雑駁に感じた。物語に起伏もないし。
ラストは同氏の傑作「クール・キャンデー」を思い出してちょっとにやっと
なったけど。
それにしても女性の作家さんって、文体が男性に比べて軽いというか
バリバリの口語体って感じでそういうところはあまり受け付けない(もちろん
そうじゃない女性作家さんもいるけど)。

***

総評としては、どの作品もいまいち。
私の中では、
芹葉大学の夢と殺人(辻村深月)
透明ポーラーベア(伊坂幸太郎)
を超える短編は未だありません。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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