東京・豊島区で猟奇的な夫婦殺害事件が発生する。
現場には夫と腹部を裂かれた妊娠中の妻が息絶えていた。
警察は僅かな手掛りから劇団員の柴田真樹を犯人と断定し、逮捕する。
初公判当日、入廷した柴田が突然大声を発する。
国選弁護人はこの行為から柴田の司法精神鑑定を請求。
鑑定書には被告人は多重人格、つまり刑事責任能力はなしと記されていた。
そして捜査が打ち切られようとした時、精神鑑定人・小川香深が
被告人の鑑定結果に異を立てる―。
***
相当久しぶりに読み返しました。
当時はワクワクハラハラしながら読んでいた記憶があるけど、
改めて読むと謎とか真相がぼんやりしているというか、説明不足というか、
何か物足りなさを感じてしまった。
主人公・香深が真相を暴くラストシーンも、「え? それだけで?」という
感が否めず。
ただ、私も昔ロールシャッハとかSCTをカウンセリングで受けたことが
あるのですが、「こんなのそのときの気分次第で結果は変わるよなー。。。」と
懐疑的になってしまい、しかも多少それらのテストに対する知識があったので、
純粋に取り組むことが出来なかったこともあって、カウンセリングに対する
猜疑心を本作を読んで改めて思い起こさせられた。
繰り返しになりますが、事件の真相解明に至るまでの経緯も
輪郭が曖昧でぼやっとした印象を受けるので、ミステリとしては
どうだろうか、といったところです。
出版された当時は斬新な物語だったのかも知れないけど。
目が多少肥えた今となってはあまり楽しめなかった。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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