神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、
曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、
剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。
合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、
想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。
しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!!
究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する第27回鮎川哲也賞受賞作!
***
本格ミステリをよくわかってる作者だな、と思う。
その上で、普通なら思い付いても馬鹿らしくて書かないだろう
「●●●」をクローズドサークルを作るため、そしてホワイダニットのために
使うという発想、実行力がすごい。
ちょっとラノベっぽい表現もあったりするし、
探偵役・比留子のキャラが一貫してない(慎み深いと主人公が言う割に
ちゅーだの膝枕だの言ってきたり自分の胸を仕方ないとは言え平気で
男に押し当てたり。あと「はわっ」とか言ってたかと思えば
「君は~~かい?」とか喋り口調が不安定だったり)ところはあったものの、
犯人もオチも読めず、先が気になり一気に読まされてしまった。
重要だと思われたあのキャラが早々に退場したのも、残念な気はするけど、
「ナナシノゲエム」というDSのゲームをやったときに
このひとだけは大丈夫だろうと思ってたひとがやはり異形と化してしまう展開に
「嘘だろ」と思わず叫んでしまったときと同じ、ある種の悲壮な痛快さを味わった。
比留子と主人公でシリーズ化するのかな、それは何かな。。。と思っていたら、
あのラスト。とても綺麗に纏まっていて、納得のいく終わり方だった。
伏線が「これは伏線ですよー」と主張するかのように散りばめられているのが
ちょっと気にはなったけど、何のための伏線なのかまではわからず、
事態が収束したときに「ああなるほど!」と唸らされた。
気になったことといえば、結局マダラメ機関は何がしたかったのかということ。
まあ、あえて詳細を書かないことで逆に存在を大きくしたかったのだとは
思うのですが(漫画「いぬやしき」の宇宙人のように)。
綾辻氏や島田荘司氏のような壮大なスケールの本格物ではないけれど、
これはこれでしっかりと著者特有のジャンルを確立しているな、と思う。
最近ベテラン本格作家さんが不作で本格ミステリに飢えていたので、
こういう新人さんが出てきたことは素直に嬉しい。
また読んでみたい作家さんです。
余談ですが、本作、「キノベス!」の二位に選ばれていて、
私は別の作家さん目当てで授賞式兼サイン会に足を運んだのですが、
ファンに並ばれるベテラン作家さんたちの間に著者の今村氏がぽつんと座り、
スタッフの方が「今村先生のサインご希望の方、いらっしゃいますかー」と
声をあげていたのが記憶に残っている。
あの時点ではまだ本作を読んでいなかったのでそのまま帰ってきてしまったけど、
サインもらっとけばよかったなあと今更ながら思う。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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