過去1年間に発表されたすべての短編推理小説の中から、
日本推理作家協会が選び抜いた作品を収録。
新鋭からベテランまでキャリアは関係なく、
とにかく面白くて優れた短編ばかりを集めました。
巻末には福井健太氏による「推理小説・二〇一四年」に加え、
推理小説関係の受賞作リストを掲載。
ミステリーファンのみならず、入門書にもぴったりな、
究極のミステリー・アンソロジー決定版。
◆収録作品◆
許されようとは思いません/芦沢央
散る花、咲く花/歌野晶午
座敷童と兎と亀と/加納朋子
死は朝、羽ばたく/下村敦史
自作自演のミルフィーユ/白河三兎
雨上がりに傘を差すように/瀬那和章
カレーの女神様/葉真中顕
ゆるキャラはなぜ殺される/東川篤哉
十年目のバレンタインデー/東野圭吾
ドールズ密室ハウス/堀燐太郎
不可触/両角長彦
ゴブリンシャークの目/若竹七海
***
◆許されようとは思いません◆
本編を読んで「村八分」の本当の意味を初めて知った。
極めて短い物語だけど、深みがあってさすがうまいなのひと言。
彼氏にプロポーズしてほしいことをありがちに遠まわしじゃなく
直球で言う彼女にも好感を持った。
◆散る花、咲く花◆
辰雄の腕の傷の理由には速攻気付いた。これでミスリードを
狙ってるんだとしたらちょっと読者をナメすぎ。
あとラスト、花がそんなにあるはずないだろって感じ。
そして主人公気持ちの切り替え早すぎ。
美由紀も本当に旦那が好きで辰雄の面倒見てたのかどうか
怪しいし。
叙述トリックには気付かなかった。この著者に叙述トリック書かせたら
うまいな。
でも最後の数行、何か物語というよりはエッセイみたいで
こんな直球じゃなかくあくまで物語の中に溶かす形で
言いたいことを言ってほしいと思った。
◆座敷童と兎と亀と◆
いくらなんでも無理があるんじゃ。。。と思った。
こういう脳機能障害をモチーフにするならもうちょっとうまい見せ方が
あるんじゃないかと。
あとおばさんが主人公だからってだけじゃなく文章がおばんくさいのが
どうにも気になった。
あまり面白いとは思えなかったな。
◆死は朝、羽ばたく◆
死刑制度の是非をこういう短編でも深く問うことが出来るんだなと感心。
主人公の正体にも最後まで気付かなかった。うまい。
この著者の乱歩賞デビュー作は未読だけど読んでみたくなった。
面白い。
◆自作自演のミルフィーユ◆
ここまでオチが簡単に見えてしまうミステリも珍しいんじゃないかってぐらい
即真実に気付いた。ありがちにもほどがある。
この著者は好きな作家さんだけど本編はと訊かれると唸らざるを得ない。
「プールの底に沈む」と「私を知らないで」はよかったんだけどなー。
長編向きの作家さんなのかも。
◆雨上がりに傘を差すように◆
これはカテゴリ的にミステリに入るのか?
正直ミステリじゃないような。。。
でもラストにはちょっと涙出そうになった。
じいさんが若い子に最後にメッセージを送るっていうのはありがちだけど
どうもこういうのって泣かされるんだよな。
普通にいい話だった。
◆カレーの女神様◆
長編ではあんなにシリアスな話を書くひとが
こんなはっちゃけた物語も書くんだとびっくり。
あまりの超展開ぶりに驚きを通り越して笑いが出た。
ショートショートにありそうな話だったな。
ちなみに余談ですがいま同著者の「絶叫」を読んでいるのですが
この短編を思い出して真面目に読めなくなりそう笑
◆ゆるキャラはなぜ殺される◆
この著者苦手なんだよなー。
読者を笑わせよう笑わせようとしてるのが伝わって来て
逆に寒いし。作風が軽すぎるのも性に合わない。
ところでラスト、もしかして犯人はあのひとだったのか。。。?
そして動機はやっぱり。。。
まあご想像におまかせしますってところなんだろうけど。
あんまり面白くなかった。
◆十年目のバレンタインデー◆
非常に短い物語だけど、さすが東野氏、
読みやすいし流れるように話が進むので非常に面白く読める。
ありがちな話だけどラストの大掛かりっぷりに東野節を感じた。
ヒロインかっこいい。
◆ドールズ密室ハウス◆
短編に薀蓄を詰め込むとうざくなる典型。
薀蓄だらけでしかもそれが興味を持てる書き方をしていない、
物語に溶け込んでいないので読んでいて苦痛だった。
トリックも殺人動機もありがちで二時間ドラマ以下だし。
時系列もわかりにくく書かれているので混乱する。
更に言うなら登場人物のネーミングセンスが古い。
何だよピーカンて。シンモンて。シュガリィソルトに至ってはもう。
◆不可触◆
登場人物の「少年」かっこいい。
トリックはありがちだけどあの人物の真意までは見抜けなくて驚いた。
ラストは苦いです。
ちなみにこの著者のデビュー作「ラガド」が好きでひとに勧めると
パラパラ中身を見たあと「。。。いい」と返されるのですが
面白いから興味があるひとは是非。
◆ゴブリンシャークの目◆
主人公、本気で捜査しろよ!と言いたくなるぐらい
ダラダラと捜査が進む。
敢えてシリアスにならないように書いているのかもしれないけれど
起伏に乏しい、盛り上がりに欠ける物語にしか感じられなかった。
やっぱり小説には起承転結がないと。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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