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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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できることなど、なにもない。



「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。

日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心の内は、
衰えゆく生の隣で次第に変化して……。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!

***

ニートですることがない自分と、要介護で何もできないおじいちゃん。
そんなふたりの間にマイナスの共通点を見つけて焦る主人公の気持ちは
よくわかった。
けれど、私事になるけど私の父も要介護(といってもまだ60代
なのですが)で介護施設に入っているけれど、本作のおじいちゃんより
全然ヤバく、自分のことがほとんど出来ない状態なので
「この話のおじいちゃん元気じゃないか」と思った。
自分でトイレ行けるし洗濯物もたためるし。
でも自分が情けなくて歳をとったせいで心が弱っていて
過剰に寂しがりになったり家族に甘えてくるところは共通点があって
著者よくわかってるなと思わされた。
こう言っちゃなんだけど老人の同じ話を何度もするところとか
苛つくポイントをよく押さえていてうんうん、わかるわかると同調した。
主人公の恋人の亜美は「だからといって若者が素晴らしいかというと
そんなことないんだよ」というガジェットとして使われていてそれはうまいと思うけど
途中でフェードアウトして「で、結局彼女どうなったの?」と
尻切れトンボな感じ。まあ別れたんだろうけど。
主人公の筋トレは何となく中途半端な感じだった。
おじいちゃんに出来ないことをやる、と言うならジムぐらい通わないと。
。。。ってそこまでやるとこの話の場合逆にリアリティがなくなるってことは
一応わかるんだけど、なんかね。
ラストの風呂場でのおじいちゃんのひと言には打ちのめされた。
結局人間はどんなに精神的につらくても本能には勝てないんだな、と。
おじいちゃんのこのひと言が書きたいがための物語だったんだんだなと
思わされた。

まあでも比べちゃいけないけど、介護小説ならモブノリオ氏の
「介護入門」の方が圧巻だったな。
最近の羽田圭介氏は、前作「メタモルフォシス」もそうだけど
終わり方が中途半端な作品が多くて本作も例に漏れずだったから、
その点キャリアは違っても芥川賞を同時受賞した又吉直樹さんのほうが
作品としては上だったと思う。

あまりガツンとくる作品ではなかったというのが実際のところです。
介護に携わっていないひとが読んでも共感は出来ないんじゃないかな。
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