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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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一度だけでいいから。



もしも「記憶屋」が、つらくて忘れたい記憶を消してくれるなら、
あなたはどうする――?

夕暮れ時、公園の緑色のベンチに座っていると現われ、
忘れたい記憶を消してくれるという怪人、「記憶屋」――。
大学生の遼一は、そんなものはただの都市伝説だと思っていた。
だが互いにほのかな想いを寄せ、一緒に夜道恐怖症を乗り越えようとしていた
先輩・杏子が「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも
忘れ去ってしまう。まさかと思う遼一だが、他にも周囲で
不自然に記憶を無くした人物を知り、真相を探り始める。
遼一は、“大切なものを守るために記憶を消したい"と願う人々に出逢うのだが……。

「記憶」を消せることは、果たして救いなのだろうか――?
そして、都市伝説の怪人「記憶屋」の正体とは――?

衝撃的で切ない結末に、きっと涙こぼれる。
二度読み必至の青春ノスタルジックホラー!

***

同年の日本ホラー小説大賞の大賞受賞作「ぼぎわんが、来る」
より面白かった。
ホラーというよりミステリなのだけど(何故著者はミステリ系の賞に
投稿しなかったのかと思うほど)、登場人物の描写と彼らのエピソードが
とにかく魅力的で、面白く最後まで一気に読めてしまった(文章が若干くどく、
ラノベっぽいきらいはあるけれど)。
特に弁護士・高原のキャラが抜群にいい。こういうひとが実在したらな、と
心から思うような素敵なひとだった。
中学生の少女・操の、自分の記憶を消したい理由も切なくてよかった。

「記憶屋」の正体には早い段階で気付いたので真相が明かされても
驚きはなかったけれど、ラストシーンはどうしようもなく胸が苦しくなった。
ああ、「記憶屋」は、これまでにも何度もこの台詞を
 口にしてきたのだろうなと思うと。

ひとが忘れたつらい記憶を、ひとりだけ憶えていて、それを抱え続けていく。
「記憶屋」のその在りようは、都市伝説の怪人というより「神」に近いと思う。

主人公・遼一の「ひとの記憶は消すべきではない。苦しい過去を持っていても、
それを抱えて生きていくことこそが人間の本当にあるべき姿だ」というスタンスは、
やはり綺麗ごとだと思ったけれど。
消してしまいたいほどつらい記憶を引き摺っていることで、逆にそのひと本来の
人間性や魅力が発揮出来なくなるということは絶対にあると思うから。
つらい過去を抱えていれば人間性に深みが増すというものでもないし。
私にも、消してもらえたらもっと人間らしく生きていけるのにと思える過去があるし、
大切なひとが抱えている故苦しんでいる過去を消してあげたいと思うこともあるし。

とにかくいい作品でした。おすすめ。
いい監督、脚本家、演出家、役者で映画化されればいいなと思う。

ちなみに本作、3まで続編が出ているようなので、そっちも読んでみようと
思います。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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