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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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忘れない。



その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。
見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。
あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、
一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。
そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。
嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。
だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。
直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

***

黒人の歌うブルースに似た話だと思う。
恵まれない境遇の自分を慰めるために、
「母親は美人で父親は金持ち」と歌うブルース。

物語の冒頭にはバラバラ死体で発見された海野藻屑の新聞記事が
提示され、
物語はその結末に向けて淡々と、けれど確実に進行していく。
苦しい境遇に立ち向かうために、藻屑は自分の痛ましい環境を
「自分は人魚だ」と言い張ることでかろうじて乗り越えていく。

藻屑が最後になぎさと出会えてよかったのだとは思えても、
結末はやはり、やるせない。
自分が過去に出したヒット曲に縛られた父親による虐待から、
どうしても逃げ切ることが出来ない。

私は小学生の塾の講師をしているけれど、中には
どこかまっとうでない母親の配下で怯えている子もいたりして、
どうにかして救えないものかとせめて目いっぱい愛情を注ぐように
しているけれど、私の手の届かないところでこういう目に遭い
それでも生き抜くために藻屑のような悲しい想像をして自分の世界を
誤魔化している子がいるかと思うと胸が痛かった。

起伏のほとんどない物語だけど、読んでよかったと思えた。
こういう子が少しでも救われればいいと思う。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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