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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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「残念ながら、ぼくは口が軽くてね」
 


六つの箱に分けられた男。
七つの首が順繰りにすげ替えられた連続殺人。
エレベーターで16秒間に解体されたOL。
34個に切り刻まれた主婦。
トリックのかぎりを尽くした九つのバラバラ殺人事件に
ニューヒーロー・匠千暁が挑む傑作短編集。
新本格推理に大きな衝撃を与えた西沢ミステリー、待望の文庫化第一弾。

★収録作品★

 解体迅速
 解体信条
 解体昇降
 解体譲渡
 解体守護
 解体出途
 解体肖像
 解体照応 推理劇 『スライド殺人事件』
 解体順路

***

どの話もそれなりに面白く、文章・構成共にしっかりしているので
どんどん読み進めることができるのですが。。。
どうにもトリックのインパクトが弱く、また、登場人物たちの挙動ひとつをとっても
それが最善の方法だとはどうしても思えないものが多いので、
真相がわかったときの爽快感がほとんどなく、読み終えてしばらくすると
トリックも真相も忘れてしまっているものばかり(単に私があほなだけかもしれないですが。
唯一印象に残っている(というか記憶に残っている)のが〝解体守護〟だけだったりする)。
なので最終章〝解体順路〟で、それまでに展開してきた複数の物語が
ひとつに収束する段になっても、
「あれ? この人誰だっけ? ……え? そんなエピソードあったっけ?」
と頭の中が薄ぼんやりというかごちゃごちゃのまま、
特にこれといった感情も抱けないまま、
気づいたら何だか勝手に終わっていた、といった感じ。

探偵役の匠千暁のキャラもあまりに凡庸で惹きつけられるものがなく、
「この探偵すごい!」とときめくことも叶わず(でも探偵・匠千暁シリーズは本書を皮切りに
今でも脈々と続いているので、これから面白くなっていくのかな。それともはじめから
探偵萌えを期待するなということでしょうか。それはミステリ読みとしてあまりに寂しい。。。)。

あとがきで著者の西澤氏が「執筆時は真剣に書いたつもりだったが
今改めて読み返すとこれは完全にギャグミステリだ」的なことを書いていますが、
ギャグならギャグでもっと突飛である必要があるわけで(たとえば島田荘司氏や麻耶雄嵩氏の
一部の著作のように)、けれど本書にはそこまでのブラックユーモア的〝濃さ〟もなかったので
繰り返しになるけど読み終えたばかりの今でも既に内容を忘れかけてしまっている。

電車の中や寝る前等に一話ずつ読み進める、程度が一番いいミステリだと思った。



註:
本作はどの話もほぼ探偵役とその話し相手が二人で延々一つの謎について語り
真相を導き出していく、というつくりになっているので(所謂パズラー小説)、
主人公があっちこっち行って謎解きのためのキーを集めていく、という
フィールドワーク系ミステリが好きな人には向きません。あしからず。
逆にこういう系が好きな人は石持浅海氏の〝心臓と左手 座間味くんの推理〟が
おすすめ。ミステリレベル的にはこっちのほうが高め。
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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