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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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かつて祖母が暮らしていた村を訪ねた「私」。祖母は、
同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。
彼女は何故、余命わずかだったはずの曾祖父を殺さねばならなかったのか…
究極の選択を迫られた女たちの悲劇を、端正な筆致と鮮やかなレトリックで
描き出す、ミステリ短篇集の新たなるマスターピース!
磨き抜かれたプロットが、日常に潜む狂気をあぶりだす全5篇。

***

かなり久しぶりの更新になってしまいました。
元旦からダイエットを始め(23キロ痩せました)、
四月からヴァイオリンを習い始め、
それらに躍起になっていたら時間だけが経ってしまった。

というのはさておき、最近レビューを書かなかったのは
あまりにつまらない本が多かったからなのですが。
なんとか荘がどうのとかなんとか理髪店がどうのとか
なんとか工務店がどうのとか本屋パン屋メシ屋がどうのとか
所帯じみたちっさそうなスケールの本ばかりが眼について、
とてもじゃないけど読む気がしなかった。

そんな中で唯一見付けたここ最近のヒットが本作。
本作収録の短編は既にいくつかアンソロジーで読んではいたのですが、
好きな作家さんの新作ということで手に取ってみた次第。

結論から言うと、かなり面白かった。
「そう来るか!」と純粋に騙され、ミステリならではの快感を
久々に味わうことが出来た。
「ありがとう、ばあば」は純粋に動機に驚いたし、
「姉のように」は端々に違和感を抱いたもののオチは読めず
ラスト1ページで驚愕。
中でも特に「絵の中の男」はトリを飾るだけあって、短編にも関わらず
壮大な読後感を残してくれる。

かなりおすすめです。
是非一読を。

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児童向け雑誌の担当を外された編集者の楓は、娘のコスプレ衣装を自作する
〈ソラパパ〉のブログに批判的なコメントを残したことから、
過去のブログを匿名掲示板で晒され、陰湿なストーカー被害に遭うようになった。
一方、〈ソラパパ〉こと棚島は、家庭や職場でのストレスを解消するため、
ブログで粘着してきた〈色葉〉を破滅に追い込もうとする――。
匿名の二人が交叉したとき、驚愕の真実が浮かび上がる!

***

デビュー作「少女はかえらない」が傑作B級(いい意味で)ミステリだったので、
作風ががらりと違うものを書けるのはすごいと思いつつもインパクトには
欠けていた印象。
ですが相変わらず文章力はかなりあり、事の真相が明らかになったときには
普通に驚かされた。
「何かあるだろ、これ」とあからさまに思わせた前作よりも、
ミスリードが巧みになっている印象を受けた。
ラストの主人公ふたりの対話は、「相手のことをすべて理解することは出来ない」
という哀しい現実を突き付けられているようで何ともやるせない気持ちにも
なった。
ネットが当たり前に普及した今、こういうことって必ずしもないとは言えないから
怖いよな。

割とおすすめです。

でも、「春夏冬」と書いて「あきなし」と読ませる登場人物が出てきたのは
読みにくいよ、ちょっと凝りすぎだよと思ったけど。
まあ「上下右左」って書いて「なかぬき」ってひともいるぐらいだしなあ。。。


都内のある中学校の給食時間。突然、複数の生徒が苦しみ出し、
五人が病院へと搬送、うち二人が死亡した。
デザートのフルーツみつ豆に毒物が混入されていたのだ。
捜査を担当することになった刑事の岩崎尚子は、給食時の座席表を見て、
被害者のひとり宮内祐里の席のまわりだけが、ぽっかりと空いていることに
違和感を覚える。さらに生徒が撮影したスマホ動画を調べていると、
皆が混乱しているなか、奇妙な動きをする男子生徒を発見し…

***

両角氏のデビュー作「ラガド」を思い出させる、
学校を舞台にしたミステリ。
相変わらず、「教室のどの場所に生徒がいたか」の詳細から
物語を展開させる手腕は見事。
こいつが犯人だろ、と思わせるミスリードには引っかかりませんでしたが、
真犯人がわかったときには思わずおおっと声が出てしまった。
犯人の動機も目新しく、人間の執着心というものの怖さを
的確に描写しています。

「結界」という、給食の際にターゲットの周りだけを無人にするという
ある種の虐めも、子供ならこういうことやりそうだよなと
リアリティがあって複雑な思いで読んだ。
そしてターゲットにされていた少女の最後の言葉、これにも
「ああ、今時の子供ならこういう考えをする子もいるかもな」
と妙に納得。

最近読んだミステリの中では飛び抜けて面白かった。
おすすめです。

でもこれ、わかるひとには一発で犯人がわかるんだろうなあ。。。


人気アイドルグループのメンバー・亜希子は、世代交代の現実に思い悩み
大物俳優と不倫を続けている。最愛の妻を亡くし、ゴシップカメラマンとして
生計を立てる巧はそのスクープを狙っていた。
2人はある事件を機に出会い、思いがけない逃避行が始まる。
瞬く光の渦の中で本当の自分を見つけられるのか。
渋谷スクランブル交差点で激しく交錯するパパラッチと女性アイドルの人生――
愛と再生を描く疾走感あふれるエンタメ小説。

***

友人に借りた一冊。
正直最初は「ジャニーズが書いた小説だしなあ。。。」と
偏見を持ち友人への体面のためだけに読み始めたのですが。。。

面白い。
多少若書きのところはあるけれど、表現力・構成力共にしっかりしていて
安心して読める。
正直そのへんの職業小説家の作品より面白かった。
登場する人間が皆繊細で、優しくて、それぞれが痛みを抱えているのに
とても温かい気持ちで読むことが出来た。

一気にファンになりました。
この著者何か賞獲ってもおかしくないんじゃないかと本気で思える。
アイドルだからってよく知りもしないでなめてかかってた自分を恥じた。
この著者の作品を全部読んでみたくなりました。
「また会える?」
「また会えるよ」



京都の美大に通うぼくが一目惚れした女の子。
高嶺の花に見えた彼女に意を決して声をかけ、交際にこぎつけた。
気配り上手でさびしがりやな彼女には、ぼくが想像もできなかった
大きな秘密が隠されていて──。

「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」

奇跡の運命で結ばれた二人を描く、甘くせつない恋愛小説。

彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。

***

悔しいんですわ。
10年ぐらい前に自分が考えて立てたプロットと設定が一緒で。
やっぱり早く世に出したもん勝ちなんだな、と。
まあ私が書いてもこの著者ほどうまく書けなかったと思うけど。

読書ホリックの知人が読んだという話を聞き、
そのプロットが先述のとおり私の過去のプロットと丸かぶりだったので、
気になって読んでみた一作。

まあクサいところもありますが、
ヒロインは魅力的だし、文章も表現豊かで非常に読みやすい。
こんなに切ない恋物語は映画「バタフライ・エフェクト」以来かも知れないです。

ラストの主人公の青年の「また会えるよ」という台詞、
あれはいったいどんな気持ちで言ったのか、
考えるだけで胸が苦しくなる。

いい年した私が読んでも迫ってくるものがあったから
十代の子とかが読んだら泣いちゃったりとかするんだろうなあ。
私も十代のころに読みたかった。
そしたら「いや、クセえよ」とか突っ込み入れずに済んだのに。

映画化されているのを最近知りましたが、原作を壊さないものに
仕上がってくれているといいなと思う。

おすすめです。
私にはコンビニの「声」が聞こえていた。



36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、
毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。
「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う衝撃作。
第155回芥川賞受賞。

***

前から「このひとに芥川賞獲ってほしいな」と思っていた作家さん。
今まで一度もノミネートされていないことに驚いた。
これだけ個性的なものを書くひとはもっと早く獲ってしかるべき。

個性的なあまりパラレルワールドの出来事のような著書が多い
村田さんですが、今回はお馴染み「コンビニ」がテーマ。
著者も実際18歳のときから今に至るまでコンビニのバイトを続けていて、
現在は週3で働いているそうですが、バイトがある日のほうが
執筆もはかどるんだとか。
「コンビニがない日はダラダラしちゃって筆が進まない。
担当編集にも『コンビニのバイト増やしてください』と言われている」
とテレビで言っていました。

感想は。。。とにかく爆笑。
途中で主人公がバイトしているコンビニに入ってくる白羽という男に
「36で処女でアルバイトで未婚って、三重苦じゃないか」と言われるシーンは、
私自身もほぼ丸かぶりの設定なのに面白すぎて大笑いしてしまった。
この作品、いかにも主人公の女性が変わり者のように描かれているけど、
真におかしいのは「普通であること」を無意識的に押し付けてくる
周りの人間なんだよな。
ネットとかを見ていても「25までに彼女が出来たことないやつはおかしい」
とかいらん定義付け、レッテル貼りがよく眼につくけど、
そういうものに縛られないこの主人公こそがまっとうなのだと思わされる。
「え~!? まだ〇〇してないの? それっておかしくない!?」
とひとは基準から外れたひとを異物を見るような眼で見たり非難したりするけど、
それを「どこが?」と心底不思議がれる主人公。今という社会を痛快なまでに
皮肉っていてそれでいてイヤミがない。とてもテーマがしっかりしていて
楽しめる小説だった。

金原ひとみ然り、本谷有希子然り、辻村深月然り、
結婚と出産を経てからそれしか書けなくなった作家は多いけど
(どの作家さんも大好きだったので本当に悲しいのですが)
本作の著者には結婚しようが出産しようがこのいい意味でマイペースで
独特の世界観を保ち続けてほしいと思う。

非常におすすめです。
追いついた、そのときは――。



大学生の詠彦は、天才数理論理学者の叔母、硯さんを訪ねる。
アラサー独身美女の彼女に、名探偵が解決したはずの、
殺人事件の真相を証明してもらうために。
詠彦が次々と持ち込む事件―
「手料理は殺意か祝福か?」
「『幽霊の証明』で絞殺犯を特定できるか?」
「双子の『どちらが』殺したのか?」
―と、個性豊かすぎる名探偵たち。
すべての人間の思索活動の頂点に立つ、という数理論理学で、
硯さんはすべての謎を、証明できるのか!?
第51回メフィスト賞受賞作!!

***

あらすじにもあるとおり、
天才数理論理学者の主人公の叔母が、
既に名探偵と称する人間たちが解き明かした謎を
更に数理論理学を使って解き明かす、という内容の連作短編集。
そういう二重構成をとっているせいか、謎自体はそれ単体で新人賞にでも
応募しようものなら一次にも通らないだろう平凡極まりないものばかり。
思わず「くっだらな!」と突っ込んでしまった。
けれど本作のキモは一度解決された事件を数学を使って検証する、という
点にあるので、眼をつぶることにします。

大オチは無理やり感があったけれどまあうまくまとめてるかな、という印象。
文章はここ最近のメフィスト賞受賞作のテンプレどおりで、
ちょっと大げさなラノベ的文章。水を撒く音が「しぴぴ」とかだし。
もうちょっと大人な文章を書くメフィスト賞作家が出てきてもいいものだと
思うのだけどそれはまあ次回に期待するとします。

最後にひとつ突っ込む。
主人公の詠彦、叔母さんに追いつくからそれまで待っててくれってスタンス
なんでしょうが、アラサー女はそんなに時間がないから待ってられないよ。
急いで追いついてください。

ミステリに数理論理学を使うってところは斬新だったかな。
まあ普通でした。
わたしは、軽薄の上に築き上げたすべてを差し出すだろう。



十代の終わりにストーカーと化した元恋人に刺された過去をもつカナ。
だが二十九歳のいま、裕福な夫と幼い息子、充実した仕事を手にし、
満たされた暮らしを送っていた。
そこにアメリカから姉一家が帰国。すっかり大人びた未成年の甥に
思いを寄せられる――。
危うい甥との破滅的な関係。
空虚の果てにある一筋の希望を描く渾身の長篇小説。

***

前作に比べて金原ひとみさんのいい意味での下品さが戻ってきていて
ちょっと嬉しくなった。
かつて好きだった男を裏切ったから似たような男とやり直す。
ひと言で言ってしまえばそれだけの話だけど、
若いころ遊び回っていたという著者と同じ、この主人公も、
堅実で有能な男より危ういダメ男に惹かれるんだろうなというのがわかる。
まあ、著者噂によると大手出版社の編集と結婚してるらしいけど、
そういうのより本作に出てくるような男が本質的には好きなんだろうな。
でも十代でここまで荒れてた、おそらくは下品さや負のオーラが
滲み出ているだろう、言ってしまえば「事故物件」な主人公の女を、
あんな有能で真面目な男が嫁に選ぶはずなくてそこはちょっとファンタジー
だけど。

文中やたら「嫌悪感」という言葉が出てくることからしても、
著者はこの世の中と人間とひょっとしたら自分自身にも
嫌悪感を持っているのかも知れない。
我が子が「ぎゅってして」って言ってきたら愛しくてしょうがないだろうに
そこでも「嫌悪感を抱いた」って書いちゃうしな。
普通のひとが幸せだと感じることすべてを馬鹿にして嫌悪してるしな。
その気持ちはわからないでもないけど気の毒な価値観だ。
ひとのこと言えないけど。私も自分の子供をSNSのアイコンにしてたりする
知人を見ると馬鹿じゃねーのと思うクチだし、
あまりにテンプレな言動をする人間を軽蔑もしてるし。

ひとつウザかったのは、この著者外国で暮らすようになってから
やたら外国と日本を比較する描写が多いこと。
国際結婚してからやたらアメリカと日本を比較する言動をする
リアル叔母を思い出したよ。
知ったこっちゃねーよいやなら住むなと言いたくなる。
まあ純文学なんて自分のことを書くものだから仕方ないっちゃ仕方ないんだろうけど。

この著者は不安定な人間を書くのが本当にうまいので、
久しぶりに虚無感を抱えた不安定な女が主人公で
「金原ひとみ戻ってきた!」と嬉しくなったのは事実ですが。
ていうか金原さんかなりの確率でパーティ嫌いだよな。
大勢の人間が上っ面の笑顔で上っ面の会話を交わすあの場が。
今までの作品にもパーティに異様にストレス感じてる主人公がけっこう出てきたし。

まあ佳作です。
30過ぎると若いのに惹かれちゃうよね、金原さん。


自殺するはずのない男女が、必ず飛びおりて死に至る――。
行ってはいけない屋上とは?
強烈な謎と鮮烈な解決!これぞ本格ミステリー!
御手洗潔シリーズ50作目!
最新書き下ろし長編。

***

御手洗と石岡が馬車道にふたりで暮らしていたころの
最もよき時代が描かれている本作。
石岡の最初の独白、「ふたりで暮らしていたころのことはもう朧げだ」
には切なくなりましたが、このころの彼らを見ることが出来て嬉しかった。

が、そのふたりが出てくるまでがとにかく長い。
ある会社のビルの屋上から何故かひとが次々と落ちて死んでしまう、
その単調な描写に260P費やしたところで、やっと御手洗と石岡登場。
待ってました!を通り越して「やっと出てきたよ。。。」と
若干疲れてしまっていた。

挙げ句島田氏は会話文で「てにをは」を省略しまくるので、読んでいて不自然。
真面目な会話をしているときでさえ、聞き手が「ふうん」「へえ」と
間の抜けた相槌を打つことにも違和感。
唯一の救いは御手洗がその言葉遣いをほとんどしなかったことぐらい。
そして関西弁を喋る女性が出てくるのですが、「~だす」「~やさかい」
って。。。今時そんなコッテコテの関西弁喋る若者いないよ(舞台が
1991年だとしてもあまりにひどい)。
更に、重箱の隅をつつくようですが、91年に「イケメン」って言葉は
まだなかったんですが島田さん。。。

「読者への挑戦」が石岡らしく謙虚な書き方だったことには
好感を持ちましたが、なんせトリックがほとんど偶然で出来ているので
だいたい何が起きたかはわかっても完璧に推察するのは不可能。
それをあっさり解いてしまう御手洗は超能力者か?と思ってしまった。
その肝心のトリックさえ、脳内ではギャグ漫画の絵で再生された。
島田氏のトリックは奇抜なものが多いけど、これはあまりにも。。。と
苦笑を禁じ得なかった。
御手洗もそういうお笑い的な意味で「この事件はこれまでで1、2を争う
面白い事件だ」と言ったんだろうか。

御手洗のダンスと歌のシーンがあったことは「御手洗相変わらずだなあ」と
嬉しくなった。
が、屋上の植木鉢にまつわる怪談があまり本筋に活かされてなかったことと、
四人の人間が屋上から転落死する理由に無理があったことが残念。
いくらなんでも四人が四人、あの理由で死ぬことはないだろ。
タイトルの「屋上の道化たち」も、誰が道化なのか今ひとつよくわからなかったし。

ミステリとしてはいまいちですが、御手洗&石岡コンビの活躍と掛け合いが
見られただけでもよしとします。
「SIVAD SELIM」の直近の事件ということにも懐かしさを感じてよかった。
あの短編が大好きなので。

次の御手洗シリーズも馬車道のころの事件だといいな。
ここに来て。



長野県の宗教団体施設が燃え、不審な遺体が多数発見された。
同じ頃、静岡県山中で見つかった老婆の遺体は、光を放つ虫の大群に覆われ、
流れ出す血液は黄に変色していた。
周囲には何故か讃美歌が響き、虫は列をなし銀河鉄道のように夜空へと…。
異様な事態に、警察は法医昆虫学者の御堂玲子に調査を依頼。
また、妹を虫に喰い殺された大学生の天崎悟は感染ルートを探る。
増える犠牲者。虫の正体は?治療方法は?
第19回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞。

***

時折おっと思わせる描写はあるものの、全体的には荒削り。
序盤から虫に関する描写がグロいので、虫嫌いなひとは読まないほうが吉。
別に虫が苦手じゃない私ですら、読んでいて吐き気を催すシーンが
あったので。

そして人物の会話が下手。主人公のひとりである悟に伯母が
「甘えるな」と、久しぶりの再会な上に普段大して交流も無さそうなのに
いきなりきっつい叱責したりするし、
百万ドルの笑顔とか「ティーを淹れる」とかセンスを疑う文章も
ところどころに散見されて苦笑してしまったりもした。

あと最後までよくわからなかったのが、「虫が空にのぼっていく」という
表現。何? この虫飛ぶの? イモムシみたいな形態のはずだけど?
高い所へのぼっていくのが空へ向かって行進しているように見えるだけ?
表紙の絵とも相まって最後まで「?」でした。
私が大事なところ読み飛ばしてるだけなのか?

そして主人公の悟、のんきすぎ。恋人が明らかに病気の兆候を示しているのに
まあいいやという感じでのほほんとサークルの大会に遠距離まで
出かけていってしまう。
「いや、おまえ悟れよ!」と突っ込まずにはいられなかった。
名前が悟なのが皮肉に思えたほど。
悟の恋人・めぐみも、悟に愛してると言われたぐらいで
婚約者気取ったり子供は何人ほしいとか言い出したり避妊なしで悟と致したり。。。
悟まだ大学生だぞ? 現実にこんな女がいたら男に引かれること必至。

同じ虫ミステリなら貴志祐介氏の「天使の囀り」のほうがずっと面白かった。
構成力も遥かに上だし。まあ、あっちも恋愛描写は下手だったけど。。。

何より突っ込みたいのは、この著者、グルウ(虫の通称)を
結局どういう存在として読者に提示したかったのかということ。
驚異? 人間を超える、人間に倫理観や死生観を考えさせる存在?
はっきりしてほしかった。

というかこんな虫が現実にいたらもっと世界中大パニックになるだろうし
罹患したひとは発狂もんだと思うんだけど、収容された患者たちは
危機感皆無でのほほんとしてて大丈夫かこいつらと別の意味で心配になった。

刑事の安達がいい味出してたころがまあまあの救いかな。

悪い作品ではないんだけど、テーマが見えてこなかったのが残念。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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