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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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きっとそれ、届くから。



母に連れられ田舎の古びた庵にやってきた悟が出会ったのは、
不思議な力を持つ美少女と生意気な少年。
女と子供しか入ることのできないこの庵の役割とは?
そして、殴りつけたまま家に残してきた悟の父の消息は?
懐かしいのに新しい、切なくて優しい新感覚青春ミステリ、誕生。
第三回新潮エンターテインメント大賞受賞作。

***


文体の微妙な癖が私には合わず、読みづらかった。
超能力めいたものが出てくるもそれが本筋に絡むわけでもないので
いったいなぜそんな能力を作中に出したのかも不明(ノスタルジック・ファンタジーにするため
だったのかもしれないけれど、その能力があまり雰囲気の演出にひと役買ってない)。
内容もそれほど面白くなく、当時の選考委員である宮部みゆきさんが
なぜ本作を受賞作に推したのかわからなかった。

。。。と、敢えて素直な感想を書いてみましたが、
第一稿脱稿後妹さんが病気に倒れ、その後二十代の若さでこの世を去り、
さらには受賞の連絡がその妹さんの誕生日にきたという著者のエピソードを知っている身としては
書いていて僅かながら罪悪感が。
でもだからといってわざとらしく持ち上げレビューを書くのはもっと失礼かと思い書きました。

朱川湊人氏と恒川光太郎氏が好きなひとにはおすすめの一作(雰囲気が似ているので)。
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その調子だ。



大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。
ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。
バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。
そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。
第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。

***

純文学というジャンルの中ではかなり好きな作家さんなのですが、
本作はデビュー作で若書きであるせいか明確なテーマが見えて来ず
物語の流れもどこかぎこちない。
ラスト一行でゾクっときたからまだそれなりに評価出来るものの、
「終わりよければすべてよし」感が拭えなかったのも事実。

今後著者が連発することになる名作たちの片鱗は窺うことが出来るので、
そういう意味ではおすすめ。併せて読んでみると楽しいかもしれない。

ところで本作、本当は〝マンイーター〟というタイトルであったのを改題してこうなった
そうですが、確かに改題後のほうが圧倒的にいいよなー。
ていうか〝マンイーター〟が本筋のどこに絡んでつけられたタイトルなのか微妙だし。。。

まあまあおすすめ。
そうしていくうちに、見えてくるものもあるだろう。



コードネーム『久米』『輪島』『宮古』のテロリスト三人。
彼らは一般人の仮面をかぶりながら、政府転覆をめざすテロ組織の一員である。
組織は、暴力や流血によらない方法で現政府への不信感を国民に抱かせようとしていた。
彼らに下された任務は、組織が用意したレモン三個をスーパーのレモン売り場に置いてくるなど、
一見奇妙なものであった。
任務の真の目的とは何か。
優秀な三人の遂行ぶりが引き起こす思わぬ結果とは。
テロ組織の正体は。
そして彼らの運命を翻弄していく第四の人物の正体は――。

***

全三部からなる本作。
個人的には、一部のあとに三人の主人公をもっと掘り下げた物語を入れて、
二部をラストにして「その後のことは読者の想像にまかせるよ」的なオチにしたほうが
よかったのではと思う。

というか本作に出てくるテロを実際にやったら
誰もテロとは気づかないと思う、正直。
今の世知辛い世の中を変えたいという信念のもとに結成された組織なら、
その信念というものをもっとリアルに書き込んでほしかった。
(一番ラストにちょこっとそれらしき思想が出てくるだけだし。
それも個人的には賛同出来るけど、こんなしょぼいテロで達成出来るものでは到底ないし)

終わり方を多少衝撃的にしたのも、ちょっと唐突感があって蛇足に感じた。
読者を驚かせればいいってものでもないだろ。。。
自制心が人一倍利くはずのテロリストがたかが恋愛(とも呼べるかどうか。。。)で
容易に感情的になってしまうのもどうかなと。

と、相変わらず突っ込みポイント満載の石持作品ではありますが、
それなりには楽しめたかな。
推理パートが〝心臓と左手〟、オチが〝月の扉〟とかぶってたので
次回作はかぶらないものを書いてほしい。
私は信じる。

 

幼い頃に理不尽な災害で両親を失って以来、家族で信仰していた神に不信感を抱くようになった
和久優歌。やがてフリーライターとして活動を始めた彼女はUFOカルトへ潜入取材中、
空からボルトの雨が降るという超常現象に遭遇する。しかしこれは、「神」の意図をめぐる
世界的混乱の序章に過ぎなかった――。
UFO、ボルターガイスト、超能力など超常現象の持つ意味を大胆に検証、
圧倒的情報量を誇る一大エンタテインメント。

***

面白かったー!
長いけど一気読み。
神というものに対する本作のような概念は既に別の作家が書いていて
決して目新しいものではないけど、
綿密な取材とこの著者独特の魅力溢れるストーリーテリング力で
最後まで非常に楽しく読めた。

よく小説の人称の区分けとして〝神の視点〟というものが出てくるけれど、
神=読者であることをここまで自覚させられた作品はほかになかった。
小説というものは作中の登場人物と自分を重ねて読むことがひとつの醍醐味だけど、
なら本作は読者が〝神〟という登場人物になりきって読むことが出来る稀有な物語だと思う。

上巻にちょっとうんちくがしつこい章があったり
知っていることが多く書かれていて軽く食傷気味になるパートはあるものの、
総じてみればかなりハイレベル・ハイクオリティなエンターテインメント小説です。

おすすめ。
多分、永遠に忘れないわ。



異国風の彫りの深い顔立ち。すんなりと伸びきった肢体。ジーンズにナップ・サック。
ながい髪、おおきな瞳、そしてわずかなそばかす――。
彼女はエマノン、ぼくが出会った不思議な少女。
彼女は言った、「私は地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶しているのよ」と。
彼女の口から紡ぎだされる、母から娘へと伝えられたさまざまな『地球』のおもいでたち。
表題作から、初収録の最新作までをおさめたピュアSF連作。
「この作品の絵は、他の人に渡したくなかった」という鶴田謙二がイラストを担当。

★収録作品★
 
 おもいでエマノン
 さかしまエングラム
 ゆきずりアムネジア
 とまどいマクトゥーヴ
 たそがれコンタクト
 しおかぜエヴォリューション
 あしびきデイドリーム(徳間デュアル文庫版のみ収録)

***

本作は簡単には語れない。
物語も、登場人物も、世界観も、すべてがあまりに魅力的で安易に言葉にしたくないから。
アカシックレコードをその脳内に記憶する少女・エマノン(No Nameの逆つづり)が
まずもう同性の私さえもどきりとするような人物で、
各話で彼女と出会うほかの登場人物が非常に羨ましくなる、と同時に
それら登場人物と出会えるエマノンがこれまた羨ましく思えたり。

〝さかしまエングラム〟だけは正直微妙だったけど、
それ以外はいちいちその壮大さと切なさに唸りながら読めた。

読むのは今回が初めてではないですが、自分の中ではかなり大事な作品。
おすすめです、を通り越してもう頼むから読んでくれ、ぐらい素晴らしい作品です。

ところで梶尾氏の著作〝この胸いっぱいの愛を〟に出てくる青年が
本作最終話の少年と同姓同名なのですが、何か関係があるのかな?
非常に気になるところ。
あした、晴れればいい。



決して恋ではない。この想いは、なに?

「おまえら、いつか結婚するぜ」――未来を「予報」されてしまった僕と彼女は、
それきり視線を合わせられなくなった。そして数年後、再会した僕らは?
胸にしみる乙一流ファンタジー!

★収録作品★

 未来予報
 手を握る泥棒の物語
 フィルムの中の少女
 失はれた物語

***

読むのはこれで二度目なのに、ぞくっとした。
〝未来予報〟ラスト一行に、言い知れない感動をおぼえた。
これどう考えても二十代前半の人間に書ける物語じゃないだろ。。。
〝経験よりも想像力〟、乙一氏の小説を読むと必ずといっていいほどそんなことを感じる。

〝手を握る泥棒の物語〟と〝失はれた物語〟は
若干大人向けの短編集として出ているこちらにも収録されていて
これもすごくおすすめなのですが、



やっぱり〝未来予報〟が入っているスニーカー文庫の本作を個人的には推したい。
かなりおすすめです。

そして本筋には関係ないけど
表紙の折り返しの著者コメント、
乙一氏のやってることが自分と同じで笑った(ものすごいヘタレエピソードだけど。。。)。
私も道を変えるか逃げる。たまに茂みに隠れてやりすごす笑
さあ、これからどうする?



高原に建てられた災害用のシェルター。その近くで“僕”は暗闇の中、何者かに襲われて
崖から転落し、頭を打った。包帯が取れたとき目の前に広がったのは、一面、白い霧の世界。
脳を損傷し、動くものを認識できなくなってしまったのだ。そして、密室のシェルターの中からは
女性の死体が発見されて…。
本格推理の最先端をいく著者の最新作。霧は最後に晴れ渡る。

***

読みやすい&面白いで半日で読破。
登場人物が少ないので犯人には早い段階で目星がついてしまいますが、
それでも終盤の、主人公が相手を追い詰めるくだりは読んでいて爽快感を味わえた。
あくまで平凡な主人公なのにやたら周囲の人間に想われているのには
ちょっと違和感を覚えたけど。
あと各キャラ(特に志保)の浅はかな行動っぷりにも(いくら話を進める上で
そうせざるを得ないのだとしても、もうちょっとそこらへんをナチュラルに進行させてほしかった。
目がまったく見えないのに車かっ飛ばして無事目的地に着くのもどうかと。。。)。

ラストはちょっぴり黒い終わり方で個人的には好み。

割とおすすめです。
ここはどこだろう、
なぜこんなに果てしないのだろう。




罪を犯した男に囚われていく女。
怒りと赦しを背負いながら生きる使用人の哀しみ。
姿の見えない彼の妻に翻弄される不倫女の叫び…。
暗い水底に引きずり込まれるような9つの哀しみと絶望の物語。
『小説宝石』掲載作品を書籍化。

★収録作品★

 林檎曼陀羅 
 レイピスト 
 ヤモリ 
 沼毛虫
 テンガロンハット
 TAKO 
 普通じゃない
 クモキリソウ
 エトワール

***

読み進めるごとに面白くなっていく短編集。
この作者に鬱陶しいオバサンとキモいおじさんを書かせたら右に出る者なしです。
文章力もすごいし。

〝テンガロンハット〟は終盤までは薄ら寒さが、でもラストはしんみりオチ、という
不思議な構成の物語(なのにまったく違和感がない。著者の筆力のほどが窺える)。
〝TAKO〟はまさかそのネタをここで、というか今更持ってくるか!という驚きが。
ありふれすぎていて逆に(先が)読めなかったよ。

ちょっと文体が所帯くさいのを抜きにすれば(いまどき女性の感嘆符に「アッ!」って
カタカナを持ってくるのはどうかと。。。あと笑い声の「ウフフフ」とかも)
かなり良質の短編集です。
ホラーもミステリも純文も、あらゆるテイストの物語が楽しめる。

おすすめ。
僕ってそんなにお人好しですか?



人の頼みを断れないお人好し青年・白戸修。いつも事件に巻き込まれる彼は、
「No!」と言えない草食系男子!? 
クスッと笑えて、ほろっと泣けるハートウォーミングなミステリー。
『小説推理』などの掲載作品を単行本化。

★収録作品★

 ウォールアート 
 ベストスタッフ 
 タップ 
 ラリー 
 ベストスタッフ2 オリキ

***

前作〝ツール&ストール〟に比べて、主人公のお人好しっぷりに拍車がかかってて
笑った。
でも正直個性はそれだけ。
同じドタバタ系ミステリなら、加藤実秋氏の〝インディゴの夜〟シリーズのほうが
キャラの立ち具合も文章の軽妙さも格段に上だと思う。
本作はどこか華がないというか。。。
本作最終話〝オリキ〟も、調べたこと丸写しって感じだったし。。。

もっと個性的なサブキャラとか出してくれれば楽しくなるのに。

とかいろいろ書いたけどまあまあ面白いです。
本書の値段はあり得ないけど。。。

聞こえる?



青森で農業をする陽人は、東京から来た幼稚園の先生・町子に恋をする。
その一途な恋心は、やがて大きな奇跡を生んでいく! 
究極の片思いが起こすミラクルいっぱいのハッピーファンタジー。
2009年6月公開同名映画の原作。

***

本作が面白いかどうかは、
タイトルが示すとおりの〝ウルトラミラクル〟な設定を読者が受け入れられるかどうかに
かかっている。
現実離れしていない普通のラブストーリーが読みたいひとには
この物語はおすすめできない。

まあそういうのを差し引いても、
何で町子先生がああも唐突に陽人に惹かれていったのか、
ラストで何の伏線もなく唐突にクマが現れたのか、
と、腑に落ちない点は多いんだけど。

エンターテインメントとしては面白さに欠け、
純文学としては若干筆力が足りない、
率直に言ってどっちつかずの、何が言いたいのかわからない内容だった。

先日本作の映画版を借りてきたのでそれを観てまたレビューを書くとします。
(それにしても最近若手女性監督増えたよな。西川美和然り、(こっちは舞台じゃないけど)
本谷有希子然り。かっこいいわー)



追記:
映画観ました。
津軽弁聞き取れねえ~!(特に松ケン)
そして原作を読んでなきゃまず理解できないだろう内容。
これなら小説のほうがいいな。。。

プロフィール
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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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