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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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もう一人のわたしへ。



霊媒師・アーネストのもとに持ち込まれたのは、
十六年前、画家・藤村透基の屋敷から消えた少女の捜査依頼。
屋敷には渦巻き状の奇妙な回廊があり、最深部には
「持ち主の運命を狂わせる」と噂される人形が飾られている。
依頼を引き受けた友人のことが気にかかって、
若き喫茶店店主の佐貴も藤村邸に同行することに。
年に一度開かれる紫陽花観賞会に招かれた二人の前で、
新たな殺人事件が発生してしまい――。

***

最近のメフィスト賞ってこういうのばっかりだな。
ちょっと不思議を織り交ぜて、ラノベテイストもちょこっと入れて、
でもよくよく読んでみるとあまり大したことないっていう。
霊媒探偵アーネストも、思わせぶりな言動をさんざんしておいて
実際やったことはただのイタコだし。
もっと霊感があるところをバンバン雰囲気たっぷりに描いてほしかった。
それに犯人が「こいつが犯人でもなあ。。。」っていう
さして驚きを感じない人間なので、そのへん綾辻行人氏あたりを
見習ってほしいと思う。
トリックも、クローズドサークルものでは御法度とされている
○○だし。
辻村深月さんや舞城王太郎氏みたいな独特の個性を持つ
メフィスト作家を今後は是非輩出してほしいものです。
まあ本作もミステリとしては一応よくまとまってはいたけど
(ご都合主義なところも多いけどそれはミステリの常だから
まあ眼をつぶるとして)
メフィスト賞を獲るほどかな?という感じだった。
それなりに楽しめた、ぐらいです。
続編が出るらしいですがたぶん読みません。
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忘れません。



小学校四年生の中尾文吾が自宅で襲われた。
補助教員の谷村梢は文吾から、スーパーで教師の万引きを目撃したと聞いていた。
だが襲われる直前、梢の名前を呼ぶ声を近所の人が聞いていたという。
疑惑の目を向けられた梢は……。
「日常の謎」を描く珠玉のミステリー集。

★収録作品★

 波形の声
 宿敵
 わけありの街
 暗闇の蚊
 黒白の暦
 準備室
 ハガニアの霧

***

この著者の短編集は一作の中で話がかぶることがよくあるな。
本作も「相手との勝負」を描いた作品が三つもあって
正直飽きた。
けれど表題作「波形の声」は非常によくまとまっていて
面白かったし、
「黒白の暦」もオチがそう来るとは思わなくてはっとさせられた。
「宿敵」「ハガニアの霧」はオチが読めてつまらなかったけど、
ライトなミステリを楽しめる短編集でした。
(まあ扱うテーマは殺人とか不妊とか結構深刻なモノが多いけど)
つい最近読んだ同著者の「教場」よりは楽しめた。
でも、いくら読みやすいとはいえ
どうしてこの著者が結構人気作家なのかはいまいちよくわからない。
決して嫌いではないのですが。
「訊くが、君にとって警察学校とはどんなところだ」
「篩、でしょうか」
 


君には、警察学校を辞めてもらう。
この教官に睨まれたら、終わりだ。
全部見抜かれる。誰も逃げられない。
前代未聞の警察小説!

***

以前、警察学校に入校した二十代の男性に密着取材、
というのをテレビでやっていて、
その男性がつらさで泣いていたのを見て「情けないな」などと
思っていたのですが、本作を読んで前言撤回。
警察学校厳しいです。
もちろん小説だから大袈裟に書いてはいるのだろうけれど、
軍隊にも似て生半可なところじゃない。
話のほとんどが、誰かが誰かにされたことの仕返しをする、という
ネタなのは食傷気味だったけど、興味深く読めました。
交番のおまわりさんとか見る目が変わってしまった。
警察学校という真面目な場所を舞台にはしていますが、
内容はエンタメしていて面白かった。
警察うんちくもへえ、と思わされることばっかりで
雑学が増えました。
まあおすすめかな。
「……私を、殺さないでね」



目覚めると7角形の部屋にいた中学時代の同級生7人に、
仮面をかぶった人物が告げる。
「皆様方のチャクラには悪しきカルマが蓄積しています。
7人に共通する罪を告白して浄化するとともに、
罪の主犯を多数決で決めてください」
7色の椅子に拘束され、迎えた1回目の投票、最多得票の元同級生は
首を吊られて殺された――。
戦慄の心理戦の先に浮かび上がる真相とは!?
驚愕のラストまで、一気読み必至のシチュエーションホラー!!

***

映画「CUBE」「SAW」好きなひとなら食指が動くような
シチュエーションスリラー。
ただ。。。うーん。。。この手の物語の常として突っ込みポイントは
かなり多いです。
伏線が未消化な部分も多いし、オチも簡単に読める。
ネタバレになるので多くは語れませんが、
ラストのあれ、いやいや拒絶反応とかあるだろ、と思うし。
赤星が見たものは結局何だったんだよ?と疑問も残る。
シチュエーションスリラーに慣れてないひとなら
それなりに楽しめると思いますが、本読みにとってはレベルの低いC級作品。

著者の美輪さんは小説学校の先輩なので(面識はないですが)
あまり悪く言いたくないけど、私は楽しめませんでした。
これならデビュー作「強欲な羊」のほうがずっと面白かった。
止められない。



これが、私の、復讐。私を見下したすべての男と、そして女への――。
一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。
彼らは親密になるほどに、肥大した自意識に縛られ、嫉妬に狂わされていく。
そう、女の美醜は女が決めるから――。
恋に堕ちる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、息苦しいまでに突きつける。
醜さゆえ、美しさゆえの劣等感をあぶり出した、鬼気迫る書下し長編。

***

いきなり個人的な話をすると
私には恋人がまったく出来なかった時期が長くあり、
そういう時期に知り合った女友達に異様に執着してしまい
レズビアンでもないのに恋心に近いものすら抱いてしまったことがあるので
(今にして思えばそれは本作の主人公と同じ「憧憬」に近いのだけど)
留利絵の気持ちは非常によくわかった。
漫画でいえば「NANA」のナナがハチに執着して自分の元に繋いでおこうと
するのにも似てるんだよな。
結局孤独がそうさせる。
そのへんがうまく描写されているところはさすが深月さん、と思った。

でも。。。
こんなに筆致陳腐だったっけ?
なにこのヘタなポエムみたいな句読点と改行の多い文章。
初期のひりひりするような文体は一体どこへいったのか。
オチは普通に想像出来るし。
本作を何かの新人賞に出したらおそらくは受賞しないんじゃないかという
レベル。
知人が「辻村深月は才能が枯れた」と辛辣なことを言っていたけど、
最初のころの作品と比べると同意せざるを得ない。

ところどころ初期の輝きを残した文章は散見されるので
また復活してくれることを願うばかりですが、
何で女性作家って結婚・出産を経ると才能が枯れてしまうひとが
多いんだろう。。。
満たされてしまうから執筆へのモチベーションが下がるのかな。

「水底フェスタ」あたりから振るわなさは感じていたので
「やっぱり。。。」という感じでしたが、
大好きな作家さんなので悲しい気持ちも拭えない。

あまりおすすめしません。
女の友情を書いた話なら「ツナグ」収録の「親友の心得」のほうが
よく描けているし、
恋愛なら「鍵のない夢を見る」収録の「芹葉大学の夢と殺人」のほうが
よっぽどいいです。
私は死を選んでいた。



時は一九七四年、京都大学医学部に在籍していた御手洗潔は、
毎日、午後三時に、進々堂に現れた。
その御手洗を慕って、同じ時刻に来るサトルという予備校生がいた。
放浪の長い旅から帰ったばかりの御手洗は、世界の片隅で目撃した光景を、
静かに話し始める…。
砂漠の都市と京都を結ぶ幻の桜、曼珠沙華に秘められた悲しき絆、
閉ざされた扉の奇跡、そして、チンザノ・コークハイの甘く残酷な記憶…。
芳醇な語りが、人生の光と影を照らし出す物語。

★収録作品★

 進々堂ブレンド 1974
 シェフィールドの奇跡
 戻り橋と悲願花
 追憶のカシュガル
 
***

最近の御手洗シリーズを読んでいると
「ドラえもんふりかけ」「ポケモンふりかけ」の類を思い出す。
中身は普通なのにラベルに大層な名前付けて売ってますよー、みたいな。
本作も御手洗潔シリーズじゃなかったら読まない、とまではいかないけど
そこまで魅力はなかっただろうなーというもの。
語り部がただ御手洗というだけで彼が全然活躍しないんだものな。
でも、「戻り橋と悲願花」「追憶のカシュガル」の戦争話は感動的です。
中期以降から社会派の様相を帯びてきた島田荘司氏ですが、
社会派小説にありがちな大仰さ、堅苦しさがなく
その目線はどこまでも人間的で温かい。
なんだかんだ言ってどの話も楽しませてもらいました。
でもやっぱり御手洗シリーズは石岡くんとの掛け合いが
一番面白いってところは譲れないけど。
 
彼がずっと見ていてくれる。



こんな男のどこがいいのか。 ほろ苦く痛がゆい、著者会心の成長小説。
それぞれに魅力的な5人の女性を振り回す、伊藤誠二郎、27歳。
見た目はいいが、自己中心的。自分は傷つくくせに、人は平気で傷つける。
彼女たちが伊藤に抱く恋心、苛立ち、嫉妬、執着、優越感――。

A 伊藤に長い間片思いするが、粗末に扱われ続けるデパート勤務の美人
B 伊藤からストーカーまがいの好意を持たれてブチ切れる、バイトに身の入らないフリーター
C 伊藤の童貞を奪う、男が切れたことのないデパ地下ケーキ店の副店長
D 処女を理由に伊藤にふられるも、売れっ子放送作家を初体験の相手に選ぶ大学職員
E 伊藤が熱心に勉強会に通う、すでに売れなくなった33歳の脚本家

***

女は男が思ってるほど外見で男を選ばないってことだな。
と、本作を読んで改めて思う。
ここまでだめんずだといっそすがすがしいというほど伊藤くんはだめんずで、
著者の身近にこういうイケメンがいたのかと思うほどリアルで笑える。
でもそんなだめんずに恋してしまったり、恋じゃなくても近付いてしまう
女の気持ちもわかるのでうんうんと頷きながら読んでしまう。
最終話の伊藤くんの演説にはちょっと洗脳されそうになったけど、
冷静に考えるとそれも超のつくだめんず理論で、
でもそれでプロの脚本家を説得しかけてしまう彼は
何かしらの吸引力、ある種の魅力は持っているのだと思う。
彼が化けるかどうかはわからないけど、珍獣を見守る感じで
ちょっと離れたところから観察していたいような好奇心を、
こんな男性が近くにいたら掻き立てられるだろうなと思った。

エッセイを読んでるみたいにすいすい読めます。
面白かった。
おすすめです。
夜が明けていく。



友人がビルから飛び降りようとしている現場で、
霧子は黒ずくめの不思議な男と出会った。
彼の名前は椿林太郎。学習障害児の教育に才能を発揮する、
優秀ですこし変わった小学校教師。
霧子は彼に魅かれていくが、実は彼には知られざる能力があって…。
生への根源的な問いを放つ、傑作長編。

***

ジャンルの区切りが悪い意味で曖昧。
夫婦愛を描きたいのか、林太郎の不思議な魅力が描きたいのか、
子供にはどう接するべきかを描きたいのか、何だかもう
そういうのが皆中途半端でぼやけた印象を受けた。
何よりヒロイン・霧子の不躾で自分勝手な性格が好きになれない。
達観しているというよりどこか冷めた印象の林太郎も。
そしてよりにもよって最後は○○オチかい!と
読んだことを少し後悔すらした。
最後の霧子の言葉はちょっとよかったけど。
可もなく不可もなく、といった小説でした。
読み終えてタイトルの意味がわかったときだけ少し感動したかな。
二度とは戻れない、僕の愛した世界のために。



5年前、湖で見た「光」が、すべての始まりだった。
高校2年生の夏休み――憶えのない「記憶」が僕の頭に流れこんできた。
いったい、君は誰なんだ?

***

知人の作家さんの最新作。
欲目抜きでここ最近で一番のヒットだった。
タイトルからすると純愛ものが想像できそうだけれど、
SF系の青春小説。
この物語を思いついた発想力と、書き上げてしまう筆力に感嘆。
物語も次から次へと興味深いエピソードが出てくるので一気に読める。
お涙頂戴では絶対泣かない私が涙しそうになったシーンが
いくつかあるのも、本作が薄っぺらくないからなんだろうな。深みがある。
ラストの、主人公の頷きにすべてが込められているのがわかって、
心が痺れたようになってしまい読み終えるのがもったいなくて
なかなか本を閉じられなかった。
非常におすすめです。
ただ、SFをまったく読まないひとはちょっとこんがらがるかも。
本作にも名前が登場する乾くるみさんの「リプレイ」を読んでから
読むといいかも知れません。
きっと十年後、この毎日のことを惜しまない。



いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。
あるはずの文集をないと言い張る少年。
そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実――。
何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、
なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、
日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。
さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!
第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。

***

著者のデビュー作にして古典部シリーズ第一弾。
22,3でここまでのものが書けるってすごいなあ。
日常の謎系ミステリなので派手さはありませんが
よく練られている良作でした。

それにしてもこの主人公がねえ。。。
私は本シリーズをあとのほうから読んでいるのですが、
このやる気のない省エネ少年が今は。。。と思うと
にやにやが止まらないのです。
本作を読んで気に入ったひとは、
「遠まわりする雛」(シリーズ続編)あたりを読むのを
是非ともお楽しみに。

「私たちもいずれは古典になっていく」
この台詞が読み終えた今も忘れられません。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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