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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ほかのところがあるのなら。



おまえが死ぬのを見たい――男はそう言ってアレックスを監禁した。
檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、
ここまでは序章にすぎない。
孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、
最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。
イギリス推理作家協会賞受賞作。

***

翻訳ものを死ぬほど読む読書ホリックの知人に勧められて手にした一冊。
日本人ならではの文体を大事にして読みたい私は翻訳ものは好きでは
なかったんですが。。。

いやー、面白かった。

訳者の橘明美さんの腕がいいのか、翻訳ものを読んでいる感じがしない。
文章もわかりやすく、内容もエンタメエンタメしていて先が読めず
どんどん読み進められる。
アレックスには最初からどこか寂しい空気があって、どうしてだろうと
思っていたらあのラスト。
爽快感と哀しさが全身を貫いたな。

妙な男に誘拐され、拉致監禁されてひどい目に遭ったアレックスが、
実は。。。
という、ちょっとでも内容を明かせば即ネタバレになってしまうこの物語、
多くは語れませんが、ミステリファンには是非おすすめの一作。
手に取ってみてください。

個人的にはラストのアルマンが好きだったなあ。そっちにも感動。
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死刑台から連れ戻す。



犯行時刻の記憶を失った死刑囚。
その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に
調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。
処刑までに残された時間はわずかしかない。
2人は、無実の男の命を救うことができるのか。
江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。

***

発売当初に読んだのですがほどよく内容を忘れていたので再読。
一気に読みました。面白かった。
死刑制度の是非という深いテーマを孕みつつ、しっかりエンタメしていて
さすが「幽霊人命救助隊」を書いたひとだと思わせられるユーモアも
織り挟まれている。犯人も最後まで読めない。
非常に楽しく物語世界に没入することが出来た。

ただ、何でそうなる?と首をひねるところや、
これ現実世界だったら即バレだろ、と突っ込みたくなるところなど
瑕疵は多々あったけれど。
そして主人公のひとりである南郷。夢に見てうなされるぐらい
自分のしたことに苦しんでいるくせにラストであれはおかしいだろ、と
ちょっと心理がわからないところもあったり。

でもそんなのも気にならないぐらいしっかりがっつり書かれた物語で、
今まで読んだ乱歩賞受賞作の中では抜きん出た出来の作品だと思う。

おすすめです。
再読してよかった。
君たちは狂っている。



妻は言った。「あたしが殺したのよ」
―湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。
四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。
親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。
が、事件の周囲には不自然な影が。
真相はどこに?
そして事件は思わぬ方向に動き出す。
傑作ミステリー。

***

技巧やトリックで魅せる作家さんだと思うのですが、
本作は登場人物の心理描写が細かくされていて新鮮だった。
けっこう昔にはこういう作品も書いてたんだな。

冒頭から主人公の肩こり描写がけっこう出てくるので
これは何かの伏線だろうなと思っていたらラストでこう来るとは。。。
後味は悪いかも知れないけれど私的にはとても好きなラストです。

前にこれの映画版をぼんやりと見てて途中で寝たのだけど
それでよかったと思う。
知人が映画は駄目だと言っていたしこの衝撃は原作でしか
味わえないと思うから。

おすすめです。
忘れない。



その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。
見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。
あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、
一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。
そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。
嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。
だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日―。
直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

***

黒人の歌うブルースに似た話だと思う。
恵まれない境遇の自分を慰めるために、
「母親は美人で父親は金持ち」と歌うブルース。

物語の冒頭にはバラバラ死体で発見された海野藻屑の新聞記事が
提示され、
物語はその結末に向けて淡々と、けれど確実に進行していく。
苦しい境遇に立ち向かうために、藻屑は自分の痛ましい環境を
「自分は人魚だ」と言い張ることでかろうじて乗り越えていく。

藻屑が最後になぎさと出会えてよかったのだとは思えても、
結末はやはり、やるせない。
自分が過去に出したヒット曲に縛られた父親による虐待から、
どうしても逃げ切ることが出来ない。

私は小学生の塾の講師をしているけれど、中には
どこかまっとうでない母親の配下で怯えている子もいたりして、
どうにかして救えないものかとせめて目いっぱい愛情を注ぐように
しているけれど、私の手の届かないところでこういう目に遭い
それでも生き抜くために藻屑のような悲しい想像をして自分の世界を
誤魔化している子がいるかと思うと胸が痛かった。

起伏のほとんどない物語だけど、読んでよかったと思えた。
こういう子が少しでも救われればいいと思う。
「それが嫌なら、火星にでも行って、住むしかない」
 


住人が相互に監視し、密告する。
危険人物とされた人間はギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも。
交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。
この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが…。
今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、
ついに刑に処された。
こんな暴挙が許されるのか?そのとき!
全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、
平和警察の前に立ちはだかる!

***

「死神の精度」を読んでいたので、また、
これまでの伊坂氏の著作の傾向から、
「犯人」とオチには即刻見当がついてしまった。
トリックに騙されることはなかった。
構成はよく寝られているけれど、練り込みすぎていて
若干わかりにくく、真相がわかったときも「そうだったのか!」と
驚くことはなかった。
蘊蓄が多く読むのが面倒くさくなってきて読書スピードも落ちた。
要するにあまり面白くなかった。
ちょっと特殊な日本が設定なので現実味がなかったというのも
リーダビリティを失わせた要因になっていた(その点で言えば
私は「オーデュボンの祈り」もあまり好きではない)。
もっと初期のころの、普通の日本を舞台にした、でも一風変わった
ミステリを書いてほしいものだと思う。
「終末のフール」は隕石が三年後に落ちてくる日本、という世界観で
書かれていたけれど面白かった。。。のは、登場人物の描写や
迫り来る終末がしっかりと書かれていてその世界に容易に入っていくことが
出来たからなんだろうな。
悪を捕まえる平和警察がいいひとばかりを捕まえて
本当の悪人を誰ひとり捕まえてないのも違和感があった。
いいひとを捕まえるからこそ平和警察の「悪」が目立つのだから
伊坂氏はそれを狙っているんだろうけど、一応警察なんだから
普通に悪人も捕まえとかなきゃおかしいだろ。
それとも捕まえてるんだけど敢えて描写されてないだけなんだろうか?

伊坂氏は大好きな作家さんですが今回は楽しめなかった。
次回作に期待。
けれど、今は眠ろう。



二〇〇一年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、
知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、
事前取材のためネパールに向かった。
現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、
王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。
太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、
そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…。
「この男は、わたしのために殺されたのか?あるいは―」
疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?
『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、
太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。
二〇〇一年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、
米澤ミステリの記念碑的傑作!

***
 
よく言えばリアル。ドキュメンタリーでも読んでいるような
真に迫るものがある。
でも悪く言えばその分ドラマがない。小説を読んでいるという感じがしない。
読書家の知人が著者のことを「サラリーマン小説家」と言っていたけれど、
確かにそうなんだよな。真面目で固くて大胆さがなく、こぢんまりとまとまっている。

ところどころにはっとさせられる言葉は確かにあるものの、
先が気になってページを繰る手が止まらない、というリーダビリティは
なかった。
巧いとは思うけど、読書で得られるカタルシスもなし。
繰り返すけれど、本当にドキュメンタリーを読んでいる感じ。

物語のほとんどが主人公のモノローグというのもきつかった。

カトマンズの街をよく描けているということと、著者が記者という職業について
びっくりするぐらい深く理解している、ということだけは称賛に値するけれど。

良作ではありますが感動するほどではなかったな。
ドキュメンタリーに興味があるひとは読んでみてもいいかも、ぐらい。
彼女は計算して奇跡を起こす。



円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、
行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、
疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。
検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。
価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
作家デビュー30年、80作目の到達点。

***

密室で硫化水素を発生させて殺人をするならまだしも、
大自然の空の下でそれが出来るのか?
しかも偶然に頼ることなく二回も。。。
という導入には非常に惹かれましたが、真相が。。。
そりゃ実際誰にでもこんな犯罪が可能なら小説になんか出来ないけどさ。
でも何だかがっかりしてしまった。

ラストであのひとが自殺した原因も、何となくわかりはするんだけど
説明不足。読者の想像に委ねるには想像力を必要としすぎている感があった。

あと大元の黒幕の殺人動機が陳腐すぎ。
人間は「完璧」などではなく「歪み・欠落」にこそ魅力があるのに、
そんなこともわからないでよくそんな職種に就けたなあんた、って感じだった。

構成の妙はさすがだと思ったけど、
この著者の著作に限っていえば私の中で「白夜行」を超す作品は
未だ生み出されていません。
あれほどの傑作をまた書いてほしい。そう願ってやみません。

東野氏の作品にしてはふるわないな、というのが感想。
あまりおすすめしないかな。
死の淵が見える。



峰岸晄は五歳で伯父夫婦に引き取られ、空腹を抱えながら育った。
母は死に、父は人を殺したからだった。
学校では、椅子に画鋲が置いてあったり、いじめに遭った。
幼なじみの木下怜菜は万引きまでさせられる晄をただ一人、
案じてくれる存在だった。
まったき孤独の闇の中で、晄が向かう先は――。
驚愕のラストが待ち受ける、心に迫る傑作長編!

***

もうダメだヌッキー。
というのが読後最初の感想だった。
淡々と、淡々と、淡々と、もういいだろってぐらい淡々と進む
起承転結のない、似たような章立てのストーリー。
やってる犯罪もショボすぎる。ヌッキーどんだけ犬のフン好きなんだよ。
犬のフンは「乱反射」だけで十分だよ。
しかもこの著者、フィクションの掟みたいなものを軽々と打ち破る。悪い意味で。
「いやそこでその展開にしちゃまずいだろ。。。」みたいなのがけっこう多い
作家さんで、本作でもラストでやらかしてくれたのでああ。。。みたいな。
真相も、まっっっっったく主人公に感情移入出来ない。
「ああそうだったんだ。。。切ない」って言わせるのを狙ったんだろうけど
「いくらなんでもそりゃないだろ」としか思えなかった。
ラストで無駄死にしたあのひとの立場って一体。

まったくおすすめしません。
実はこの作品、図書館で借りたもののつまらなくて一回途中で返してて、
でもヌッキーだし最後で感動させてくれるんじゃないかと信頼して
もう一回借りてきたのですが、信頼した私が馬鹿だった。

ヌッキー作品を読むたびに「。。。いやいや次こそは」と思って
持ち堪えてきたけど、いい加減限界がきそうだよ。
どんだけ読者を舐めてるのか、それとも自分の才能が枯渇していることに
自分で気づいていないのか。
ただ手を抜いているだけで、そろそろ本気出してくれるっていうのが
ベストなのですが。

自作に期待は。。。しません。正直。
優しさで満たされている。



深瀬和久は平凡を絵に描いたようなサラリーマンで、
趣味らしいことといえばコーヒーを飲むことだった。
その縁で、越智美穂子という彼女もできて
ようやく自分の人生にも彩りが添えられる。
と思った矢先、謎の告発文が彼女に送りつけられた。
そこにはたった一行、『深瀬和久は人殺しだ』と書かれていた。
深瀬を問い詰める美穂子。深瀬は懊悩する。
ついに“あのこと”を話す時がきてしまったのか、と。

***

「絶唱」があまりにつまらなくて途中で読むのをやめたぐらいなので
本作も「どうなんだろう。。。」と警戒していたのですが。。。
面白かった。
まっとうなミステリだった。

死んでしまった友人のことを、周りのひとに訊いて回る、
そのひとが生前どんな人間だったのかを確かめていく、という流れは
漫画「彼女が死んじゃった。」に似ているものがあった。余談ですが。
読み進めるほどに、故人が魅力的な人間だったことが伝わってきた。
それだけに彼の死という事実が切なくなる。

コーヒーがキーワードとして散りばめられている話なので
コーヒー関係で何かトリックがあるだろうと思ってはいたのですが、
オチは読めなかった。
ラスト一行で「うわあ。。。」となった。
何このやるせない話。
このあとの主人公の気持ちを思うと、どうにもやりきれない。

良質のミステリでした。
おすすめ。
久々に湊かなえさんの作品で面白い、と納得がいったな。
まあ、ところどころに腑に落ちない点はあるのですが眼をつぶります。


出産を巡る女性の実状を描く社会派ミステリー

親子3人で平和に暮らす栗原家に突然かかってきた一本の電話。
電話口の女の声は、「子どもを返してほしい」と告げた――。

***

まず、著者のことから述べると、
直木賞受賞の際のインタビューで至るところで
「私出産したんですけど。。。」と嬉しそうに受賞と関係ないことを
語っていたひとが書く話とは思えなかった。
50代ぐらいのベテラン女性作家が書くならまだしも
まだ子供も小さくて可愛い盛りで、新婚と言ってもおかしくない彼女が
こういう話を書くとどうしても上から目線感が拭えない。
だって不妊の夫婦の話だよ?
我が子を見て「あーこの子可愛いなあー私もしこの子が養子でも愛せるな。
あ、そういう話書いてみよー」とか考えてそうなある種の余裕みたいなものを
持って書いたような気がしてならない。そのことが不快だった。穿ち過ぎかも
知れないけれど。

そして肝心の内容は面白くない。
第二章、子供の産みの親が何故出産するに至ったかという話は
面白くなくもなかったけど、これまでの著者の心理描写力を思うと
陳腐にすら感じた。
何が言いたかったのかもよくわからないし、産みの親と育ての親の
両方の心理を中途半端に書き込んでるからどっちにも感情移入出来なかった。
「朝が来る」という陳腐なタイトルからだいたいの内容の察しはついたけど
ここまで薄っぺらいとは。

明らかにレベル落ちたよな、このひと。
女性作家で一番好きで著作は全部持っているぐらいだったけど
今後は買わずに図書館で借りて読むことにします。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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