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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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かまわない。生きている。



―愛を失くした中年男の再生物語―
 
諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子が
コツコツ貯めた1千万円の貯金とともに蒸発してしまった。
人生に躓き挫折した夫、妻も仕事も金も希望も、すべて失った中年男を救うのは、
ヤクザ者の義弟とソープ嬢!?
胸を打ち、魂を震わせる「再生」の物語。
吉川英治文学新人賞受賞作品。

***

ラストのひと言(モノローグ)を言いたいがための390Pだったなーと思う。
そこに至るまでの経緯は正直あまり面白くない。
萬月氏のお約束とでも言うべき
ヤクザ
娼婦
暴力
性(主にスカ○ロ)
農業
といったキーワードでマンネリに埋め尽くされている。
萬月氏の作品にしてはコミカルで読みやすかったけど。
性描写を抜きにして荻原浩氏あたりがリライトしたらより面白くなるかもしれない。
主人公の義弟・アキラのキャラクターは魅力的でしたが。

作中に登場する石川力夫が実在の人物だということに驚いた。
格好いい人もいたもんだ。
そういえばだいぶ前の話だけど、某ニュース番組の暴走族ドキュメンタリーで、
自殺しようとする子を抱いて「一人では死なせない」と一緒に飛び降りたリーダーのことを
やっていたけど、そのときと同じ感動を覚えた。
いつまでも人の心に残る人間というのは存在するんだ。
他人の核に成り得る人間というのは。

そういう人物が私にとっては〝王国記〟シリーズの主人公・朧だった。
第一部最終回、読みました萬月さん(と突然私信)。
朧を支えにここまで来たのでかなり辛かったですが、あの生き様は正に朧だった。
彼を生み出してくれてありがとう。
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貴方は私のサイコーのダチ。



四方八方田んばだらけの茨城県下妻。そんな田舎で浮きまくりのバリバリロリータ少女・桃子は、
大好きなお洋服欲しさに始めた個人販売で、これまた時代遅れなバリバリヤンキー少女・イチコと
出会う。見た目も趣味も全く違うこの二人。わかり合えるはずはないのに、やがて不思議な友情が
芽生えて…。
ギャグぶっちぎり! 思いっきり笑ってほんのり泣ける爆走青春ストーリー。
刺激的でエンターテイメント・センスがたっぷりなコマーシャルで知られる
ディレクター・中島哲也氏が惚れ込み、自ら監督を名乗り出た素敵な映画化原作。

***

映画が面白すぎたので読んでみた。

読んでよかった。

文句なしに面白い。

こりゃ映画の監督じゃなくても(上記参照)惚れ込むわ。

嶽本作品は初体験だったのですが、
この独特の文体。語感。センス。リズム感。
ひっじょーに心地よかった。爆笑のツボも盛りだくさんだし。

だいたいが(私的ネタで恐縮ですが)物語の舞台にもなっている下妻が
うちの最寄駅から一本で行ける場所にあったりするので
臨場感がもうハンパじゃなく「そうそうギャハハ」の大連発。
(常総線とかうどん屋兼キオスクとかジャスコとかコンテナ型のカラオケBOXとかもう。。。)

もちろん地元が田舎じゃない人も楽しく読めます。
独特の価値観を持ったヒロイン二人に
「あー人生こういう構えで生きてくやり方もあるんだ」と眼からウロコを落としながら
どうぞ読んでみてください。

非っ常におすすめ。
あの世行きを祝しまして。



師匠が死んだ。百年に一人といわれた咄家橋鶴、最期までオチをつけてのあの世行きだ。
今夜の通夜は酔った者勝ちの無礼講、何も起こらないわけがない!? 
笑いのアナーキスト、らもテイスト満喫の全9篇。

★収録作品★

 寝ずの番(1~3)
 えびふらっと・ぶるぅす 
 逐電 
 グラスの中の眼 
 ポッカァーン 
 仔羊ドリー 
 黄色いセロファン

***

らもさんだなあ。。。
読めば読むほどらもさんだなあ。。。
話が進むごとにフィクションがノンフィクションになってくし(〝グラスの中の眼〟の
らもさんが考えたとんでもないキャッチコピーは実話です)。
シモいしエロいし登場人物は飲んでばっかりだけど、
中島らもという人物のひととなりを知りたいなら本作はうってつけ。
〝仔羊ドリー〟のラストはあまりにらもさん節炸裂すぎて吹き出した。
(主人公の最後の台詞の抑揚まで聞こえてくるようだった)
「ポッカァーン」のギャグを知らない世代なのが悔しい。

故・らもさんは未だ物語の中に健在です。ちゃんと生きている。
あの世でも何やかんやおもしろいことやってんだろうなー彼は。

らもさんのあの世行きを祝しまして、かんぱぁい

映画版もおすすめ。
そして、すべてが終わる。

 

人気ゲームソフトをプレイした日本中の子どもが、
黒いマントの男の幻影に魅入られ、次々に自殺行為に走る…。
潜在意識下に持つ恐怖を人為的に表面化させることは可能か? 
サイコ・サスペンスの書き下ろし巨編。

***

これだけのページ数を割いてまで書く物語じゃないのでは。。。
さんざん引っ張っておいてこの納得のいかなすぎるオチは一体。。。
ラストのほうでは禅問答みたいなもんまで出てきてそれまでの世界観ぶち壊しだし、
基本的に身勝手な連中ばかり出てくるので読んでてイライラするし。。。
正直読んだ時間返してほしい。

10年前の作品なのにそこまで違和感のないゲーム&パソコン描写ができるのは
素直にすごいと思いましたが、それだけ。
せめてオチが、
世の中には寂しい子供が多いから、噂に便乗して親の気を引くための演技として
騒動を起こした
、だったらまだ納得いったのに。
普通子供にとって〝怖いもの〟といえば黒いコートの男なんかじゃなくて
鬼とかオバケとかだと思うんだけどなあ。。。

おすすめしません。
見届けろ。



4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦『きりしお』の
隊員が見た時、喧噪は悲鳴に変わっていた。巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、
次々に人を「食べている!」自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか
「歪んでいた」。
一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく――。
ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンタテインメント。

***

自衛隊三部作、最後の一作。
個人的には、
塩の街>>(超えられない壁)>>海の底>>>空の中
かな。
そもそもこの歳で「巨大ザリガニ、日本を襲撃!」とか読んでてちょっとキツかったし。
でも警察や自衛隊の対応は非常にリアルかつ細かく描写されていて、
(まあ実際こんな事態に陥ったとき政府はここまで悠長だろうか、という疑問はさておき)
潜水艦の中に閉じ込められた子供たちのやり取りも
一人ひとりのキャラが立っているせいで楽しく読むことができた。

ただ本作、
福井晴敏的超絶自衛官エンターテインメント+横山秀夫的警察ドラマに
子供の好きそうなSF&冒険要素(&恋愛もか)が入っているという謂わばごった煮作品なので、
一体どういう読者層に照準をあてているのかがちょっと謎だった。
ザリガニとの対決も「え? そういうオチなの? さんざん引っ張っといてそれなの?」的な感じだし。

やっぱり〝塩の街〟が文句なしに一番のおすすめ。
この手が、届けば。



怪盗・無貌…それは世界が畏怖する生ける怪異。
探偵・秋津とその助手・望は、宿敵無貌逮捕の報を受け、夏原ホテル――
別名「夢境ホテル」へと向かった。そこには、殺人鬼探偵をはじめ、
一癖も二癖もありそうな宿泊客ばかりが…。
やがて、ホテルの一室で刺殺死体が発見される!
探偵たちを嘲笑うかのように繰り返される殺人。
「夢境」の彼方に隠された事件の真実を、望は追う。
新世紀の探偵小説として華々しくデビューをかざり、各方面から絶賛された
無貌伝』の続編がついに刊行!!

***

待ち望んでいた続編ですが。。。
ファンタジーとして捉えるなら著者の想像力に脱帽ですが(本場ファンタジーは除く)、
ミステリとしてみると起承転結に乏しく謎自体もインパクトがないので
いまいち読み応えに欠ける感じ。
だいたいが舞台が夢の中なので何でもありといった感もあるし。
デビュー作は越していないな、というのが感想。
というかデビュー作のほうが圧倒的に面白いです。
〝無貌〟もだんだんおどろおどろしさというか得体の知れない恐怖のオーラが剥がれてきてて
あんまり怖くなくなってるし。
助手である主人公の推理をいたずらに撹乱する探偵も正直どうかと思ったし。

社交ダンス踊りながら謎解きする主人公というのは初めてお目にかかったので斬新だった。
&ラストで出てくる魔縁の名前に笑った(明らかにオリエント急行@)。

ミステリよりファンタジーが好きな人ならまだ入り込めるのかな、この世界観は。。。

ほら、あなたも食べませんか?



「猫」が「コウモリ」を呼び、「コウモリ」が「芸人」を呼ぶ!?
たった一言のキーワードが次の物語へと引き継がれ、思いがけない展開を呼ぶ
このリレー短編集には、冒険心と遊び心がいっぱい。
個性豊かな凄腕ミステリ作家たちが勢ぞろいしたこの本には、
最高に愉快な体験がつまっています。
豪華執筆人によるチーム力もまた絶妙。「あとがき」までリレー形式にこだわった
欲張りな一冊が出来上がりました。

★収録作品★

  『くしゅん』北村薫
→『まよい猫』法月綸太郎
→『キラキラコウモリ』殊能将之
→『ブラックジョーク』鳥飼否宇
→『バッド・テイスト』麻耶雄嵩
→『依存のお茶会』竹本健治
→『帳尻』貫井徳郎
→『母ちゃん、おれだよ、おれおれ』歌野晶午
→『さくら日和』辻村深月

***

よりによってトップバッターがかなり苦手な北村氏だったのはキツかったけど、
それ以降は見事全員が前の話を汲んでストーリーを創り上げていて
プロの交換日記を見せてもらっているみたいな楽しさを終始味わうことが出来た。
基本的に後味の悪いオチが多い中ラストに辻村さんを持ってきたのは正解。
でなきゃドロドロアンソロジーになってるところです本作は。

本編はもちろん、一遍一遍の合い間に挟まれたコメントやあとがきで
作家諸氏の交友関係を知ることが出来たのも興味深かった。

おすすめ。

その枠を外れる異常。



"30歳"という岐路の年齢に立つ、かつて幼馴染だった二人の女性。
都会でフリーライターとして活躍しながら幸せな結婚生活をも手に入れたみずほと、
地元企業で契約社員として勤め、両親と暮らす未婚のOLチエミ。
少しずつ隔たってきた互いの人生が、重なることはもうないと思っていた。
あの"殺人事件"が起こるまでは……。
何かに突き動かされるように、警察の手を逃れ今なお失踪を続けるチエミと、
彼女の居所をつきとめようと奔走するみずほ。
行方を追う中、不可解な事件とその真相が明らかに……!!

***

 このタイトル絶対〝NANA〟のハチとナナから来てるよなあ。。。
女の友情話だし。

相変わらずの〝合コン〟〝児童会長〟といったキーワードにはちょっと食傷気味ですが、
著者久々のほのぼの系ではないまっとうなミステリ。
内容的には〝太陽の坐る場所〟とよく似てるので二番煎じな感もあるけど、
人間心理を「ここまで書くか」ってほど剥き出しに描写してしまう筆力と
ラストのやるせない温かさはさすが辻村さん、という感じ。

ヒロイン二人がどうしてそこまで相手に執着するのかが(特にみずほのほうが)
いまいちよくわからなかったので物語にそこまで入り込めなかったのが残念。

それにしてもこの作家さんの小説は怖いです。
リアルすぎて。
普通の作家の書くものがリアルさを排除したフィクションなのだとしたら、
この人の書く物語はリアルさをデフォルメしてよりリアルにした上でのフィクションだから。

特に著者とは完全に同い年だからなあ。。。
同年代の書くものは価値観や思考がかぶっている場合が多くて読んでいてつらくなる率が高い。

それにしても、
恋するみたいに同性の友人を好きになることがなくなったのって
一体いつ頃からだったろう。

さあ、復讐が始まる。



短編ホラー映画主演女優としてロケ現場にやってきたマリア。
そこで監督に意味ありげに言われる。「きみ、羅針盤にいた子だよね」と。
マリアに忘れさりたい過去が甦る。伝説の女子高生劇団「羅針盤」。
監督はさらに言う。「一人、死んでるんだよね」
羅針盤はメンバーの死と共に活動を停止した。マリアが殺したのだった。
監督はいったいどこまで知っているのか。疑心はふくらむ。
そして物語は四年前、羅針盤の誕生と死へと移ってゆく。
島田荘司選第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作受賞作!

***

面白かったー!
特に気張って推理しなくても犯人やその動機は比較的簡単に読めてしまうけど、
(ついでに言えばトリックもかなりバレバレの感はあるけど)
作家の乙一氏も言っていたとおり
「伏線がバレてもドラマ部分がしっかり成立していればそれでよし」
的な感じで許せてしまう。それぐらい面白かった。

ところで本作がデビュー作の水生さん、女性かな?
告白〟の湊かなえさんに似た性別を感じさせない中性的な文体に物語、
でも女性の心理描写が非常にきめ細かくリアルなところなんかがそう思わせるのですが。
もし男性なんだとしたらすごいな。

ちなみに最後の島田荘司氏の選評、
「え? そうかな? そんなことないと思うけど」という評価ばかりで、
本の評論には割かし自負のある私を一度はへこませたものの、
追記部分にてその選評のあと著者がかなり内容に手を加えたことがわかりひと安心。
物語を読む眼はちゃんと養われているようでよかった。

でも確かに島田氏の言うとおり、本作の元のタイトルが〝罪人いずくにか〟はないよなあ。。。
自分も最初知ったときびっくりしたもん。
ライトな文体の本作とは全然合ってないし、芝居をテーマにした物語なんだから
それに絡めたタイトルをつければいいのに。
と思っていたら最終的には〝少女たちの羅針盤〟。最高です。
このタイトルに惹かれて本作を手に取ったと言っても過言じゃない。
やっぱりタイトルは大切だよなー。

むちゃくちゃおすすめ。

破綻が近づいてくる。



リストラにおびえる父親・秀吉、
若い大工と密会を重ねる母親・昭子、
引きこもりの長男・秀樹、
10歳年上の元引きこもりの男と交際する長女・知美。
ある日、向かいの家で男に髪をつかまれて引きずられる女を目にした秀樹は、
それがDVだと知り、いつしか女を救うことを夢想しはじめるが…。
過酷な現実にさらされた内山家の人々に生き延びる道はあるのか? 
家族について書かれた残酷で幸福な最後の物語。
テレビドラマ化もされたベストセラー。

***

4年前半年間自室に引きこもって母親を死ぬほど心配させ、
市の相談所や心療内科に通わせた親不孝の私から見て、
秀樹のキャラはリアルすぎて正直読んでいてつらかった。
他人の幸せが怖い。
楽しげな集団が怖い。
人の多いところが怖くて行けない。
何でわかってくれないのだと親を責め、そのあとで必ず後悔する。が長くはもたない。
秀樹は生きがいを見つけることでそこから脱したわけだけど、
生きがいを持つ私はどうして相変わらずそういった性癖を留めたままなんだろう?

と突然個人的な話になってしまってすみません。

今まで読んだ龍作品の中では一番面白かったと思う。
内容にぐいぐい引き込まれ、あっという間に読み終えてしまった。
母、父、息子、娘、それぞれの心理的葛藤が細密に描写されていて
とてもフィクションとは思えなかった。
いや、でも思えないというのは、やっぱり今の世の中こういう家族が実際に多いからだとは思う。
リストラ、引きこもり、そういった要素は、本作が書かれた8年前に比べて悪化の一方を
たどっているし。
本作のラストは、そんな厳しい世の中の中で家族が取り得る最高の在り方を示した。

ただ不満なのが、秀吉と知美の描写。
母親の昭子と息子の秀樹はラストで明示される生き方にたどり着くまでが
しっかりと描かれていたのに対し、あとの二人はそうでもないのでどうしてその道を選んだのかが
どうにもしっくり来なかった。とってつけっぽかった。特に知美。何でその道を選択したのか、
途中で最低限の伏線が張ってあってもよかったんじゃないかと思う。
あんたいつから家具に興味持ったのよ?
(まあよくよく考えたら、全員やけにタイミングよく揃って自立しすぎだしな)

作中で書かれる事柄に「え? そうかな?」と首を捻るものが多かったのも気になった。
たとえば〝寂しいほうが悲しいほうよりまし〟というような表現。
それはないだろ。悲しみは泣くことや自分を哀れんで自己陶酔することでどうにか
誤魔化せるけど、寂しさはどうにもならない。
自殺者のほとんどだって悲しみより寂しさが原因で死んでる。
悲しみに耐えられる人間はいても、孤独に耐えられる人間はいない、それが私の持論なので、
かなり違和感があった。
あと引きこもりはプライドが地に落ちているので、基本家族とは口をきかない。
姿も見せない。でも秀樹はそうでもない。これも読んでいていまいち納得がいかず。

とかいろいろ書いたけどなかなかの傑作と思う。
お父さん、お母さん、その子供たち全員におすすめです。
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kovo
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自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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