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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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ここだよ。



引きこもりの少女・江利子は、拾った犬に「絶対」と名付けた。
「絶対に自分の味方」となることを求め、その犬の世話をする江利子。ところが、
電車の横転事故の跡を見たとき、事件が起きた(表題作)。
人間の深奥に潜む、悪意、ユーモア、想想力を、鋭い感性で描いた3作品。
文学界に衝撃を与えた鮮烈なるデビュー作。

★収録作品★

 江利子と絶対
 生垣の女
 暗狩

***

ああもうほんと大好きだ本谷さん。
デビュー作から毒炸裂&個性全開。
しかも新人作家にありがちな〝収録されてる短編が皆似ててバリエーションに欠ける〟を
微塵も感じさせない見事にテイストの違う三篇。
あー前回の芥川賞、彼女に獲ってほしかったなあ。。。(特に受賞作〝終の住処〟が
微妙すぎたいせいもあり)。

〝江利子と絶対〟は「これ自分か?」ってほど江利子のキャラがリアルだし(まあ
犬にあれはちょっとやりすぎだけど、あれは彼女の病んだ部分の描写ってことで。。。)、
基本明るい性格なのにいやってほどひしひしと伝わってくる彼女の孤独。
話自体は面白いので爆笑しつつも胸が痛かった。合わせ鏡を見ているようで。
ラストの江利子とまったく同じ行為(電車でのアレ&最後の姉のひと言に対するリアクション)を
ぶちかましたことのある自分としてはとても他人事とは思えなかった。
ていうかラストといえば江利子の姉ちゃん、空気読めよ。マジでむかついた。
(あーダメだ、江利子に感情移入しすぎて客観的にレビューが書けない。。。)

〝生垣の女〟は相当シュールで、読む人によっては不快感さえ感じるかも。
〝レンジで猫チン〟に耐えられる人だけ読んでみてください。。。
それにしても、敢えて描写しないからいいんだろうけど、
本編のヒロインをあそこまで狂わせる「本間くん」、一度は出してほしかった。

最終話の〝暗狩(くらがり)〟、これは、打って変わって純文というよりホラー。
(まあ人間の深遠を覗き込むという意味では、純文学とホラーって似てるけど)
むちゃくちゃハラハラしたし、泣けた。
この世で一番残酷で切ないかくれんぼ。
乙一氏の〝ZOO〟に収録されている某短編とかなり内容が似てるけど、
それはそれ、これはこれで違う味わいがあるのでどちらもおすすめ。
誰かこの話映像化してくれないかなー。
と、そう思うのはやはり本谷さんが舞台作家でもあるからなのでしょうか、やっぱり。

めちゃくちゃおすすめです。
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それはたぶん永遠に終わることのない美しい耳鳴りのような。



五分のずれで現われた、もうひとつの日本は人口126万に激減していた。
国連軍との本土決戦のさ中で、アンダーグラウンド兵士の思いは…。
自分の中の情報を自覚を持って言葉にしたという著者の、472枚の力作。

***

北野武監督の〝キッズ・リターン〟がラストのあの会話のために創られた映画だとしたら、
本作はラスト一行のために書かれた小説なのだと思う。
〝ここで生きる〟、そんなテーマが、これでもかと伝わってくる。
この場所で、この生き方で、たとえ過酷でも自分自身の生を歩もう。
そう決意した人間の、そこに至るまでの過程を〝戦争〟というモチーフに絡めて表現したもの、
本作の内容をひと言で言うならこうだ。

浅倉卓弥氏の〝君の名残を〟が、序盤だけSFという疑似餌をばら撒いておいて
その実完全な大河小説で、SF・ファンタジー好きの読者に肩透かしを食らわせたのと似て、
本作も「何これ、SF小説かと思ったら戦闘描写ばっかりじゃん」と思わないでもないのだけど、
要所要所に差し挟まれたエピソードが、SFだの戦争小説だのといった垣根を越えた
〝純文学〟としての感銘を読む者にちゃんと与えてくれる。

正直著者があとがきで言うほど傑作とは思わないけど、
音楽家のワカマツのキャラや音楽描写を初めとしてとても楽しませてもらった。
村上氏は音楽を文章に変換するのが本当にうまく、
音楽ミステリを書く身としては心から尊敬してやまない。

ある種村上春樹氏の〝1Q84〟と通じる部分があるので、
二つ併せて読んでみるのもまた一興です。Wムラカミ。
「じゃあな。また間違えようね」



連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、
無為な日々を消化する北原結平・19歳。
自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。
だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。
正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”の出現。
過去の出来事のフラッシュバック。
暴走する感情。
溢れ出す抑圧。
一連の事件の奥に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!
第34回メフィスト賞受賞! 子供たちのダークサイドを抉る青春ノワールの進化型デビュー。

***

作中に出てくる岡山弁が広島弁と兵庫弁混ぜたような感じだなーとか思ってたら
ちょうどその間の県だったのか。。。そりゃ似てるはずだわ←究極地理音痴
中間といえばメフィスト賞受賞作である本作、
同じくメフィスト出身作家の佐藤友哉氏と舞城王太郎氏を足して2で割ったような作風だった。
インモラル&バイオレンス。この二大要素さえ入ってれば受賞できるんじゃ? と
思えるほど(もちろんそうじゃない受賞作もあるけど、結構その手の話である確率が高い)。

ていうかいくらフィクションだからって主人公のこの行動じゃ普通絶対に捕まるだろ。
そのへん最低限のリアリティはほしかった。
(舞城氏の作品も結構そういうところはあるけど、あの人は彼独特の世界観で
「まあ何でもありだろ」みたく読み手を納得させちゃうからなー)
主人公がヒロインのせいで狂っていったのかそれとももともとおかしかったのか
そのへんの描写も曖昧だし。
真相があまりに突飛すぎて違う意味で「え!? そうだったの!?」と驚いたし。
文章に〝――〟が頻発するのもちょっと鬱陶しかった。

でも文章表現の端々にはっとするものは感じられる作家さんなので(って何で選評口調?)
今後を楽しみにしておきます。

関係ないけど著者近影、smart系のモデルっぽいなーこの人。
「地獄があるとしたらここだし、
天国があるとしたらそれもここだよ。
ここがすべてだ。
そんなことにはなんの意味もない。
そして僕はそれが楽しくて仕方がない」




春、「しるし」を身にまとう少女と出会った。
痛みを抱えた少年の目に映る風景とは――

***

川上未映子さんの著作=歌うようなリズム感のある関西弁の一人語り口調。
そんな観念を吹き飛ばされた。
最新作である本作は、少年の一人称ではあるものの標準語で書かれており
文体もごくオーソドックス。彼女にしては非常に珍しいことなので初めは驚いたものの
次第に書き方のスタイルを変えても健在なその文章の達者さのほうに驚かされた。

いじめの描写は正直リアリティがない。
確かにこういういじめは存在するんだろうなというのはわかっても、
眼を背けたくなるまでの凄惨さは伝わってこない(田中慎弥氏の〝冷たい水の羊〟は
読んでいて知らず顔が歪むほどだったけど)。
そもそも小学生時代いじめを受けていた立場から言わせてもらえば、
いじめられて自尊心が地にまで落ちている子供が
自分と同じ立場の子と仲良くすることはプライドの面から考えられない。
でも本作の主人公はとても素直で優しい子なので、同じいじめられっ子であるコジマを
あるがまま受け入れたのかもしれない。

主人公は幼いころから斜視で、視界に入るものすべてが二重に見えてしまうのだけど、
その焦点の合わなさ、物事を凝視しない曖昧さが、
結果的にはこの子を真の闇から救ったのかもしれないと思う。
腕に負った傷に動揺することなく、笑って誤魔化した彼の母親のように。
己の痛みに過剰に真っ直ぐに向き合ってしまったコジマは、結局ああいうことになってしまった。
ラスト、世界の本当の姿を知った主人公が、これからどういう道をたどるのか、
コジマと同じ道を行かずに済むのか、いや決して行かずに済むよう、心から願ってやまない。

いじめに立ち向かえと世間は言うけど、
もしまともに対峙すれば下手をすると潰されてしまう。
場合に応じて逃げたり媚びたり、臨機応変に流すのがきっと一番いい。
いじめは本作の登場人物である百瀬が言うとおり一時的な波のようなものなので、
終わるときが必ずくる。それまで無闇に波に立ち向かったりするようなことはしないで、
その波の中にたゆたっていればいい。時には大波をかぶることがあっても、
それもずっとは続かない。
浮き輪やボートがなきゃもう無理だと思えば素直に救助を求めればいい。
皆超能力者じゃないんだから「助けて」は口に出さないと伝わらない。

いじめはブームだ。
一人を集中していじめていても、しばらく経てば皆飽きる。
そしてまた新たなターゲットを探す。
やるせないけどどうしようもない残酷なブームだ。

。。。それにしても作中の百瀬、序盤から描写にやたら気合が入ってるなと思っていたら、
川上さんが一番こだわったという台詞を言うのもやはり彼だったか。
たぶん川上さんは彼が一番のお気に入りなんだろうな。
私も本作で百瀬が一番好きで、でも本作で百瀬が一番怖い。

ちなみにその台詞、初めはこうだったそうです。

「地獄があるとしたらここだし、
天国があるとしたらそれもここだよ。
そしてそんなことにはなんの意味もない」

誰かと二人で地獄にいるのと、
たった一人で天国にいること、
いったいどちらが幸せなのか。
本作を読み終えてから、ずっと考えているけど答えが出せない。
「あなどれないぞ、平成のじじいのテンションは」



映画の撮影現場で主演老優の一挙手一投足を賭けの対象にする共演者たち――
話題作〝クワイエットルームにようこそ〟から四年、現代演劇の鬼才が、
人間の悪意と尊厳をユーモアとアイロニーに包んで描ききる問題作。

***

クワイエットルームにようこそ〟が傑作すぎたせいか、
どうしても凡作の粋を出ない印象だった。
語り口、
キャラ立ち、
物語の深み、
どれをとっても前作には遠く及ばず。
唯一勝っているものといえば笑いの部分ぐらいですが、それも数箇所ぐらいだし。

不謹慎ギリギリの題材をギリギリ寸止めで不快感を与えずユーモラスな作品に仕上げる、
前作はそれに成功しているものの、今回は「いくら何でもちょっと大人げなくない?」と
読んでいて微妙に嫌な気持ちに。
本作を通して何を言いたいのかも一応はわかったものの、「んー、だから?」といった感じで
これならいっそ「何が言いたいのかわからなかった」オチのほうがまだましだった気が。

主人公も、序盤の数行からもう眼が離せなくなるぐらいこちらを惹き込んでくるくせに
それ以降はただの語り部、無個性、いないも同然。
せっかくの顔立ちや体格の設定もほとんど活かされてないし残念だった。
(設定といえば、セカンドバッグとか「がちょーん」とか、この物語の時代設定はいつなんだ?)

演劇界に携わっている著者だからこそ描ける役者世界の裏側は
興味深く読めましたが。

ていうか練習しちゃったよ、あの早口言葉(そして言えない。。。)。

ところで作中の登場人物の海って女の子、明らかに絢香(歌手の)がモデルな気が。。。

魂まで殺してやりたい。



自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、
今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。
決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。
自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、
その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。
この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。
実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。
『天使のナイフ』で江戸川乱歩賞を受賞した著者が、
犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を正面から切り込んで描いた、
衝撃と感動の傑作社会派ミステリ連作集。

★収録作品★

 悪党
 復讐
 形見
 盲目
 慟哭
 帰郷
 今際

***

「どうして被害者遺族に、出所した加害者に復讐する人間がいないんだろう。。。」
と一度でも思ったことのある人にはおすすめの一冊。

著者初の連作短編集ですが、ミステリアンソロジー等に収録されている
氏の短編は面白いものの、本作はそれには及ばず、といった印象。
決してつまらなくはないんですが、全体的に淡々としているというか、
登場人物にリアリティがない。
やはり被害者遺族や刑務所を出たあとの加害者の内面を描くというのは
相当に難しいことなんだろうなあと。

〝悪党〟の元犯罪者の男の恋人、あそこまで主人公を責める権利まったくないのに
主人公の傷つくこと言いたい放題でムカついたし(だから男にホレてる最中の女は嫌い)、
〝復讐〟に出てくる青年も、親のことであれだけのトラウマを抱えているのに
無計画に子供を作って出来てから不安がってるなんて正直どうなんだと思うし、
〝形見〟の女性も気が変わるのが早すぎ。はっきり言ってご都合主義。
主人公の周りがみんな何かしらの被害者であるというのもちょっと不自然すぎるし、
だから重いテーマに対して内容が浮いてしまっていた。
ラストでの〝彼女〟のリアクションも、そこでその表情はおかしいだろと突っ込んでしまったし。
(もっと戸惑ったり困ったり気まずがったりするだろ普通)

そもそも自分の身内を殺した相手を赦せるか赦せないかの酌量を
赤の他人に任せるっていうのがどうもなー。。。人によって考え方なんて偏りがあるのに。
(ってこれを言っちゃ本作そのものがなりたたないんですが)

話のネタ元がほぼわかってしまうのにも醒めた。

発想は非常に面白い作家さんなので今後に期待します。
きっと人は狂う。



作家の横田卓郎は妻の三沙子を亡くし、娘の千秋と二人で暮らしていた。
千秋は三沙子の死後、奇妙な絵を描くようになる――人ではない、異形のものを。
千秋には、普通の人間には見えないものが見えていた。
ある日をきっかけに、千秋は「青い顔の女」ばかりを描くようになった。千秋はその絵の中の顔を
「ママ」と呼び、その絵を描くことに異常に執着する。そしてもう一つ執着すること。それは、
夜の散歩だった。
そんな中、佐久間美樹が卓郎の新しい担当として家にやってくる。
千秋は「青い顔の女」を使って美樹を拒んだ。
千秋にとって不必要な人間が次々と死んでいく。まるで死神が味方をしているように――。

***

やたら文章がうまいと思ったら、やっぱりまるっきりの素人じゃないんだな(プロフィール参照)。
基本的にホラーと名のつくものは映画でも小説でもゲームでもちっとも怖くない私でも
結構怖かった。たぶんそれは本作が、外的なものじゃなく人の心にじわじわと進入してくる
〝内的な恐怖〟を描いているからこそなのでしょうが。
幽霊や化け物は逃げれば済むけど自分の精神からは逃げられないしな。
(そういう意味では篠田節子〝イビス〟がめちゃくちゃ怖いですが)

前半はホラー、後半はミステリと、物語が(悪い意味で)きれいに二分してしまっているのが
気になった。
主人公が娘の奇行に関してあまりにのん気すぎることも(普通すぐ病院に連れていく。
あと、細かいけど〝アスペルガー症候群〟は厳密には心の病気じゃないのでは?
あくまで先天的なもので、脳の器質障害と定義したほうがまだ近い気がする。
あの描写では精神疾患である、と誤解を招く恐れがある)。
真相も唐突でちょっと面食らってしまった(そしてちょっと貴志祐介氏のこの作品に似てる)。

ラストも、きれいにまとまってはいるけど〝あの二人〟が何を目的にそういうことをしてるのか
わからないままで尻切れトンボ。
ていうか三沙子、そんなに旦那のことが好きならいっそあのとき助けないで
自分と同じ世界に引き込んじゃえばよかったんじゃ?

いろいろ腑に落ちない点はありますが結構楽しく読めました。
ちなみに(どうでもいいけど)最後の選評の岩井志麻子さんテンション高すぎ。
彼女のキャラは知ってるけど(そして好きだけど)、ある意味あのテンションは
本編より怖かった笑
「お前に選択肢はないよ」



お前は、運命を信じるか?
東京を仕事場にする天才スリ師。彼のターゲットはわかりやすい裕福者たち。
ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎――かつて一度だけ、
仕事を共にしたことのある、闇社会に生きる男。木崎はある仕事を依頼してきた。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。もし逃げれば……
最近、お前が親しくしている子供を殺す」
その瞬間、木崎は彼にとって、絶対的な運命の支配者となった。
悪の快感に溺れた芥川賞作家が、圧倒的な緊迫感とディティールで描く、
著者最高傑作にして驚愕の話題作。

***

単行本を待ちきれず、雑誌に掲載されたものを紹介。
中村氏の著作はすべて読んでいるけれど、私的には本作がダントツで一番かもしれない。

ミステリの要素が強い純文学なので、普段純文を読みつけない人でも
惹き込まれること間違いなし。
深いテーマを孕んでいながら、純粋に読み物としても面白い、
まさに「これぞ小説!」といった物語です。

読んでいくうちにどんどん主人公に惹かれていく自分を感じた。
物語の登場人物としてではなく、現実に存在する相手に感じるような気持ちで。
ラストシーンで胸に満ちた感情、これは悲痛さとかいたたまれなさとか悲哀とかそういうんじゃなく、
〝祈り〟と表現するのが一番近いかもしれない。
たぶん私は心の中で掌を組んでいた。何を祈っていたのかは自分にもわからないけど。

単行本化が非常に待ち遠しいです。



あー主人公スリだけどほんとにスラれちゃったよもうカリオストロの城状態だよこれ。

銭形「奴はとんでもないものを盗んでいきました。 あなたの心です」

スローライフ、してみませんか。



作家志望で失業中の僕。父は二度の離婚で慰謝料に追われているが、あまり働かない。
そんな父と息子が携帯も届かない標高1100メートルの山荘で、
アンチ・スローライフな日々を過ごすことに…。
父との関係をジャジーに描く。

★収録作品★

 ジャージの二人
 ジャージの三人

***

 これが小説なんかじゃなく個人のブログとかだったら面白くてつい何となく毎日
見てしまってただろうと思う。
でもひとつの物語としてはあまりに淡々としすぎてる。
長嶋氏の著作の中では異例の心に響かなさだった。
(なのに映画化までしてるのは何で?)

環境音楽というのがあるけど、本作は例えるなら正に〝環境小説〟だった。
主題・主張がない、というか。
ぼくのなつやすみ〟をプレイしているときと同じ気持ちになった(いや、あれは
よくできたゲームだけどね)。

氏の著作の中ではあまりおすすめできません。

おすすめといえば上に紹介しているのは文庫版の表紙なのですが
単行本の表紙のほうが圧倒的におすすめです。
理由は読めばわかります。

変態でもいいじゃん。なんでもいいじゃん一人よりは。



“前代未聞のカタルシス。著者初の友情小説”
岸田&鶴屋南北賞受賞の気鋭が拓く小説の新境地。
汚い日田とおっぱいだけが取り柄の巡谷、おかしな二人のヘンテコで切ない共同生活。

***

相変わらず本谷さんの小説はヘタな娯楽小説より面白い。
純文なのにすごいと思う。
脚本家が本業の人だから読み手を楽しませる術に長けてるんだろうなー(もちろん
生来の才能もあるけど)。

女の性(さが)や汚い裏側を、驚くぐらいむき出しに(むしろ誇張して)描き出した本作、
読んでるほうが恥ずかしく(&恐ろしく)なってしまった。
女はいろんな意味で汚いし臭いしうざいしややこしい。
自分を含めて敢えて見ないようにしていたそんな部分をここまで赤裸々に書かれると
対処に困ってしまう。

〝精神的処女を奪う〟表現には本気で唸らされましたが。
今の時代なんて肉体的処女を捨てる年齢は早くても心までは他人に踏み込ませたことのない
精神的処女の子がむちゃくちゃ多いと思うし、そういった意味では本作の二人の関係は
結構理想的だと思う。
遭難、〟を読んだときと同じ、「さすが本谷さん!」と衝撃&感銘を受けた。
(序盤のPTSDのくだりは冗談にしてもちょっと言いすぎだろと思ったけど)

コジコジのモノマネは笑った(脳内で再現されてしまった。ちなみに余談ですが私の親友は
コジコジの次郎くんのモノマネが得意です)。

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kovo
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女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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