忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
[71]  [72]  [73]  [74]  [75]  [76]  [77]  [78]  [79]  [80]  [81
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ぼくは叫んでいたのだろうか?



詩誌『エウロペ』の編集者で詩人、井崎修一。
類い稀な美貌と傲岸さを併せ持つ少年詩人、月原篤。
篤の作品投稿をきっかけに二人は出逢い、互いに奇妙な愛憎を抱きながらも、
次第に打ち解け合っていく。
やがて篤は「世界の果て」を求めて、単身イタリアへ旅立つ。
遙か異邦の地より、井崎に届けられる篤の私信。
しかし、一年ののち、彼は一通の手紙を最後に消息を絶ってしまうのだった。
若き詩人が異国で見出した「世界の果て」とは、果たして何だったのか。
井崎は篤の残した詩と私信から、彼の生の軌跡を「小説」に刻もうと試みるが――。

***

大好きな作家さんなのですが。。。
今回は〝小説〟というか、その前段階のプロットや資料をまとめて「はい」と渡された印象が
あった。
もともと実験的な小説を書く人ではあるのですが、今回はそれが過ぎて
前衛的に過ぎる、というか。

中盤のあるシーンには、女には想像もつかない男性ならではの性的妄想の極致を見た気がして
それは素直にすごいなと思ったけど、
全体的にはよくある話を難しい言葉を多様して衒学的に飾り立てたようにしか思えなかった。

アサッテの人〟〝りすん〟のほうがずっと心に響いたな。

現実と虚構の壁を取り払おうとする作風が諏訪氏の持ち味だとは思うのですが、
今回は狙いすぎだった気がする。
パゾリーニ監督のエピソードには、本当に現実と虚構の壁が取り払われてる! と驚いて
ちょっと感動もしたけど、これは諏訪氏のオリジナルではないから評価の対象にはならないし。

次はもうちょっとシンプルなものを、
テーマがどんなに複雑でもいいから〝小説として〟シンプルなものを書いてほしいなと
個人的には思う。
PR

まだ何も終わってはいない。



柳川享子は、大学時代の友人・真弓が失踪したことを知る。
フリーライターだった真弓は、山梨で起きた死体損壊遺棄事件に関心を示し、
取材に出かけたまま行方がわからなくなったという。
真弓の行方を探し始めた享子だったが、次々と不審な現象に遭遇する。
やがて幽霊や、前世の因縁が渦巻く怪奇の世界に足を踏み入れることに。
そして、霊的な知覚を可能にする“第三の眼”をめぐる大きな企みに巻き込まれていく。
『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回優秀賞受賞作。

***

うーん。。。
総合的に高得点はつけづらい。

まずヒロインの性格が受け付けないし、
何がしたくて行動してるのかいまいちよく分からない(亡き夫や親友のため、とか言ってるけど
どれだけ読み進めてもそれが感情として伝わってこないというか。。。)。
殺人トリックには〝ナイチンゲールの沈黙(by海堂尊)〟のとき並みに脱力。
せっかくの〝第三の目〟もあまり効果的に使われてないし、
ホラーサスペンスにしたいのかSFファンタジーにしたいのかも最後までよくわからなかった。
文章も、台詞が「うがががが」「あわわわわ」等と、小説ではまず見ない漫画的表現の連発に
思わず吹いたし、
ラスト一行には、思わず「どんだけ~」と心で叫んだ(この言葉あんまり好きじゃないのに)。

何というか、失敗した道尾秀介氏、みたいな印象を受けた(〝背の眼〟とかと一見した雰囲気や
表紙の絵も(ってこれは関係ないか)似てるし)。

醜い人間の美しい者への嫉妬なら貴志祐介氏の〝ISOLA〟のほうがよほどうまく書けているし
〝第三の目〟〝トレパネーション〟ネタならこのマンガのほうが遥かに深みがあって面白い。

 ほんと最近、小説がマンガに負けてる気がして悲しい。。。
(単に自分のセレクトが悪いだけ?)

恥ずかしいな。でも、消さない。



いっそ命に関わる病気だったらよかったのに――
6年前に別れた恋人・静佳にはある事情があった。
彼女を一度は受け入れると決めたのに、突き放す形になってしまった過去。
ユキヒロはその謝罪をしたいと思っているが、なかなか一歩を踏み出せないでいる。
そんなユキヒロのところに、父親を雪山の事故で亡くした甥っ子の葎が預けられることに。
葎との生活のなかで、少しずつ前へ進み始めたユキヒロは、静佳に手紙を書こうとするが――。
2008年『空で歌う』が芥川賞候補となった期待の新鋭、初の書き下ろし長編。

***

デビュー作〝さりぎわの歩き方〟では〝青春の終わり〟が描かれていたのに対し、
本作は〝青春の終わり、そしてそれから〟が前向きな視点で描かれている。
大人に踏み出すのも悪いものじゃない。
幻想から逃れて現実と向き合うのは厳しくて寂しいことだけれど、
あらゆることに責任を負うぶん、ほんの少しのことも子供だったときに比べてより輝いて見える。
「大人になるのも悪くないな」と思わせてくれる物語だった。

〝ナルニア国物語〟を彷彿とさせる設定や、
どこかで読んだ感が否めない描写もいくつかあったし、
病気の元彼女とそれを忘れられない主人公、というのもありふれているけれど、
どのエピソードも最後には納得できる場所に着地しているので読後はとてもさわやかだった。

個人的に一番好きなのは、主人公の友人が元恋人に宛てて書いた手紙。
それと最初の導入部だけで、本編より感動してしまった(中山氏には失礼ですが。。。)。
案外この作家さんはコピーライターとか向いてるのかもしれない(一つ一つの文章がすごく
きれいだし、後半のスノードームの描写はそれだけで一本の物語になりそうなほど
印象的だったので)。

静かで優しい物語です。
できるだけ遠くまで行こう。



誰もが不安を抱えて歩き続ける、未来への“道”。
子どもが感じる無力感、青春の生きにくさ、幼さゆえの不器用…。
それぞれの物語を優しく包み込んで真正面から描く。
「冷たい校舎の時は止まる」から生まれた珠玉の3編を収録。

★収録作品★

 ロードムービー 
 道の先 
 雪の降る道

***

まずは以下の二冊を読破してから読むことをおすすめします(本作はこれの外伝的なものなので)。

 

〝ロードムービー〟では
へぇ~、この二人こうなるんだー。。。とにやにやさせられ、
〝道の先〟では
すっかり立派な大人になって。。。とホロリとさせられ、
〝雪の降る道〟では、
そりゃこんな過去があれば〝ロードムービー〟のオチになるよなあ、と
またしてもにやにやさせられ、さらに最後の数行に仕掛けられたちょっとしたサプライズに
はっとさせられる。

〝冷たい校舎の~〟の彼らの後日談、前日譚を知って、
何だか友人と更に一歩仲良くなったときのような嬉しさを感じた。
個人的には桐野景子の恋愛話を読んでみたかったのでそれがなかったのが少し残念。

乙一氏が書くような温かみのある物語ばかりなので、
彼が好きな人にも向いている作品です。
〝雪の降る道〟の〝彼〟の言葉には、うっかり泣きそうになってしまったし。

それにしても著者は教育学部にいただけあって、〝絵本〟をガジェットに持ってくることが多い。
それに子供の描写がうまくて文体が児童書みたいにやわらかい。
やっぱそういうのって出るんだな。好きです。
(本多孝好氏の著作と一緒で、やたら話に学歴が絡んでくるのだけはちょっとうざいけど)

ミステリの要素はあまりないけど、満喫できた一冊でした。
人間がいなくなるしかない。



13時13分からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われるという。
何が起こるか、論理数学的に予測不可能。
その瞬間――目前に想像を絶する過酷な世界が出現した。
なぜ我々だけがここにいるのか。生き延びるにはどうしたらいいのか。
いまこの世界の数学的矛盾を読み解かなければならない。

***

タイトル負け、テーマ負け。
東野氏は好きな作家さんですが、こればっかりははずしてしまった感が否めない。
駄目な点を以下に箇条書き。

★インフルエンザの描写長すぎ。
100P余りを費やしている。
超常現象が起きてるんだから、もうちょっといい意味で非現実的な危機を描写してほしかった。
今は実際インフルエンザがすごいので臨場感だけはやたらありましたが、
本作においてはわざわざそこまでのページを割いて書くほどのことじゃないと思う。
★誠哉のキャラが微妙。
もっともらしいことをいかにももっともらしく言って周囲を丸め込む彼が
どうしても好きになれなかった。
たまたま見つけた赤ん坊を、「こんな過酷な世界で生きさせるのは忍びない」みたいに
言うくせに、「人類は滅びちゃいけない」って子供作ろうとするし。
その子供たちを過酷な世界に産み落とすことは忍びなくないんだろうか?
ていうか子作りうんぬんなんてもうちょっと落ち着いてから考えろよ。
★フラグ立ち過ぎ。
このキャラはこうなるんだろう、という予測がほぼ的中する。
要するにキャラの人間性がペラい。
特に冬樹と明日香。やったら一緒にいるなと思ったら、案の定ですかという感じ。
弟の兄へのコンプレックスもありがちだし、
狂った世界観の描写が駄目ならせめて人間を深く書いてほしかった。

正直本作を読むんだったら〝ドラゴンヘッド〟〝漂流教室〟のほうがよっぽどおすすめ。
(ところで本作の終盤に、ドラゴンヘッドのラストまんまの台詞が出てくるんだけど。。。
偶然だよなぁ?)

まあ、読み終えたあとにじわじわと何とも言えない寂しさがこみ上げてくる作品ではあるけど。

それにしても、最近小説よりマンガのほうが内容的にレベル高いことが多くて
作家志望としては悲しい。。。
それって、すごいと思わない?



東京下町の貸しスタジオと共に、複数の賃貸物件を伯母の遺産として相続した武原耕太。
勤め先を辞め、スタジオ経営に専念する彼だが、同じビル内の会社「デプラ」が
夜逃げしたことを知る。
また、それと前後して、「デプラ」の関係者と思われる男たちが、次々と耕太の前に現れ始めた。
伯母の名を言いながら「たすけてくれ」と繰り返す彼らと「デプラ」の正体、そして、
亡き伯母の秘密……。
それらを調べ始めた耕太の下へ、ある日、潤という少年が伯母を訪ねてきた――。
国家とは、愛の在り方とは何かを問う著者渾身の書き下ろし長篇ミステリ。

***

微妙でした。。。
既にもう本編があって、本作はそのサイドストーリーみたいな感じ。
あまりに内容が薄すぎるし、著者がテーマにしたかったことが上滑りして全然こっちまで
届いてこない。
理屈としては理解できても、心にまでは響かない。
読後、「。。。で?」と思ってしまった。

登場人物それぞれの抱える思いも彼ら同士の間の絆も
ほとんど描写がないもんだから物語の中の人たちだけで盛り上がっててついていけないし
ミステリの肝である人探しもアホみたいにポンポン簡単に見つかっちゃうからスリルがないし
主人公が後半まで事件のキーである大事なものをご都合主義に忘れ去ってるし
主人公の、少年・潤に対する心理描写も〝せつない〟〝いじらしい〟ばっかりで
ほかの表現はないのかよと思わせられたし(それに少年に過去の自分を重ねるってベタすぎだし)
タイトルが〝くにもり〟にも関わらずそれに見合ったスケールの大きさがないし
最終章のタイトルは〝青年は荒野を目指す〝のパクリかいって感じだし
もうグダグダでした。
似た物語なら垣根涼介氏〝午前3時のルースター〟のほうが遥かにおすすめ。

ソジンてキャラをもうちょっと掘り下げて書いてくれれば
本作に対する印象もいいほうに違ったと思うのですが。

五條さんは好きな作家さんなだけに残念。



余談ですがヤモリは漢字で守宮。
じゃあクニモリは守国??
そこから全てが始まる。



あなたの街の不思議を取材します!
人間界には摩訶不思議な事件がおこるんだにゃ~。
幽霊屋敷、未確認生物、トイレの花子さん…オカルト専門放送局員、
百太郎(元エリート)&ミサ(元ヤンキー)の迷コンビが、アブない謎を追って大活躍!?
抱腹絶叫の連作超知ミステリー。

★収録作品★

 FOAF
 ジョニーの涙 
 繋がる闇 
 スノウホワイト

***

加藤氏の今までの著作の中では一番楽しめなかった。
キャラはあまり好きになれず、
ミステリパートはあっけないぐらい簡単に読めてしまう、
だからといってストーリーパートが面白いかといえばそうでもない。
ギャグも面白くない上にくどい。
作者今回はふるわないなあ、というのが読後の率直な感想。

本編よりも付録〝オカルト&ヤンキー用語辞典〟のほうが面白いって一体。。。
(どうでもいいけど〝オバケの声が入ってる曲一覧〟には、ドリカムの〝SWEET DREAM〟も
入れてほしかった)

本作で一番すごいのはオバケでも主人公コンビの活躍でも何でもなく、
黒猫・ヤマトの活躍でしょう。
施設で訓練したわけでもないのに何あの警察犬以上の活躍っぷり。
彼の存在が何より超常現象でミステリで事件だよ。
主人公たち、オカルトネタ追っかけるより先に自分たちの猫をまず研究しろよ、と
突っ込みたい。

。。。加藤氏には次回作に期待(本作の続編だけはやめてほしいけど。。。)。
ずっと昔に放たれた光を。



妻に内緒で、兄の彼女と旅に出た。その行き着くところは…。
現代人に特有の「自転からはぐれたみたいな」孤独を描き出す。
表題作のほか「木曜日に産まれた」を収録。
『群像』『文学界』掲載作品をまとめ書籍化。
第138回芥川賞候補作。

★収録作品★
 
 空で歌う
 木曜日に産まれた

***

二日連続中山氏の著作のレビュー。あー、すっかりほれ込んでしまいました。

表題作〝空で歌う〟を読んで思うのは、
光(記憶)というものは強ければ強いほど真っ直ぐにどこまでも突き進んでいって、
敢えて振り返らなくても眼の前に幸せな、もしくは悲しい過去を
まざまざと浮かび上がらせるのだということ。
空にある星の光はずっと昔に放たれたものであるという事実に
人間の過去を重ね合わせる描写はうまい! と唸らせられた。
主人公が故人である兄の元恋人に執拗に性的な関係を迫るのは、
眼の前に浮かぶ〝兄の死〟という過去が怖くて母性としての女性に縋りつきたかったのか、
彼女と交わることで自分の知らない兄の片鱗が掴めると思ったのか、
女である私には把握しづらかったけれど、個人的には前者が強い両方だったのでは、と
解釈しています。

「月が地球のまわりをまわってるように、地球が太陽のまわりをまわってるように、
そのあいだには力が働いてる。空っぽに見えるところにも作用してる。
関係があるんだ。ぜんぶがつながってる。どれかひとつ欠けても
全体が変わってしまうぐらい。
だからそんなふうに、自分から切り捨てる必要はないと思うんだ。
誰もいなくてもいい、というふうに」
この言葉もありふれてはいるけど、こういうことを周りの人が言ってくれなくなっている昨今、
堂々と口にしてくれるのは〝物語〟だけだと思うので、読んでいて励まされた。
中村文則氏の〝何もかも憂鬱な夜に〟の台詞、
「アメーバとお前と繋ぐ何億年の線、その間には、無数の生き物と人間がいる。
どこかでその線が途切れていたら、何かでその連続が途切れていたら、今のお前はいない。
いいか、よく聞け。現在というのは、どんな過去にも勝る。そのアメーバとお前を繋ぐ
無数の生き物の連続は、その何億年の線という、途方もない奇跡の連続は、
いいか? 全て、今のお前のためだけにあった、と考えていい」
と共通するものを感じた。
妙に凝った言葉よりも、ありふれたひと言のほうが人を救うことはある。
それに小説の場合、こういう台詞はどんなシチュエーションで使うかによってだいぶ印象が違うから、
その点この二人の作家は、一番いい場面にこの台詞を持ってきたんじゃないかと思う。

〝木曜日に生まれた〟はタイトルも含め表題作より好きな作品。
男の人が、女性の妊娠について、こんなにもリアルで、普通の女性よりもずっと複雑な感情を
抱けるということに驚かされた。
驚くといえば、中盤のトイレのシーンは当分忘れられないだろうと思う(行為よりも、主人公が
そこまで思いつめているということにインパクトを受けた)。
最後はベタながらもちょっと泣けてしまった。
この物語の主人公みたいな人と結婚できれば、万が一にこの物語のような不幸があっても、
奥さんはきっと幸せだろうと思う。
離れていく曖昧な輪郭。

  

「いまどき、まっとうな青春小説」がミリオンセラーになってゆく夏、
結婚を控えた29歳の「僕」は、「青春の終焉記念」一泊合コンに出かける。
怪しげな新ビジネスを立ち上げる奴の行く末、昔の友人の転落と自殺。
「こういうのがお望みなんだろ?」とシニカルにうそぶくほろ苦い日々を描くデビュー作。

★収録作品★

 さりぎわの歩き方
 長い名前

***

読みやすいのに単語の選びかた一つ一つが新鮮で
ほんの些細な日常の物語もひどく印象深いものとして読み手に刻み付けてくる、
そんな確かな力を持った作家さんだと思う。

私は個人的には、読み終えたあとに自分でもどう表現したらいいかわからない感情が
こみ上げてくるものが本物の小説だと思っているのですが(「面白かった」「悲しかった」
「切なかった」等とひと言で表せないもの)、本作の表題作が久々に〝それ〟だった。
苦笑いしながらも心のどこかがやるせないような。
腹も立つけどこの世の無常さに脱力して泣きたくなるような。
とにかく読後、脳の奥がぞっと痺れた感じになるような物語だった。
最近の〝文學界新人賞〟の受賞作の中では一番肌に合っていて好きだ。

〝長い名前〟は、主人公の恋人への接し方、愛し方が
とても温かく、拙いながらも人間味に溢れているので、ヒロインが羨ましくなってしまった。
終わり方もすごく好き。
こちらの言葉を「要するに~ってことだろ」みたく勝手に省略したり決め付けたりせず、
その全部を〝長い名前〟として心の中に持っていてくれる、
恋人・友人問わず、そういう人に私も会いたい。

いい作家さんに出会えた。
今後中山氏の作品はしっかりチェックしなきゃな。



おまけ:
〝パップラドンカルメ〟。初めて知った笑
「やれやれ、あんなんに狙われたら、犯人もたまらんで」



鑑識不在の状況下、警備会社社長と真っ向勝負(「マックス号事件」)、
売れっ子脚本家の自作自演を阻む決め手は(「失われた灯」)、
斜陽の漫才コンビ解消、片翼飛行計画に待ったをかける(「相棒」)、
フィギュアに絡む虚虚実実の駆け引き(「プロジェクトブルー」)――
好評『福家警部補の挨拶』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第二集。

★収録作品★

 マックス号事件
 失われた灯 
 相棒
 プロジェクトブルー

***

たとえば新幹線とか飛行機とか、長時間拘束されるときに読むミステリとしては最適だと思う。
よくも悪くもドラマっぽい内容なので。
ほどよく面白い、でも後をひくものがない。
シリーズ一作目は実際にドラマ化してますが、それを観た母も
「つまんないってことはないけどさして面白くもなかった」と言ってたし。
(自分も、〝オッカムの剃刀〟(原作のほう)はあまり面白いと思わなかった)

犯人が予め分かっている倒叙ものは、探偵役のキャラクターの面白さが最大の魅力だと
思うんだけど、福家警部補にはコロンボや古畑みたいな個性がないから
どうにも心から楽しめないんだよな。
あと、雑誌に連載されていたものを一気に読むから尚更気になるんだろうけど、
聞き込みの相手が福家を刑事と思わない→福家が警察バッヂを出す→驚きつつも信じてもらえる
ってパターンにもいい加減飽きたし(でもだからこそ最終話はちょっと驚きましたが)。

そして著者の大倉氏は落語小説も書いていてそっち方面には造詣が深いようなので、
〝相棒〟の漫才のシーンも自分で考えて書いてみてほしかった。興味あったのに。。。
(まあ落語と漫才は別物ですが)

彼の小説では〝聖域〟がいつものおとぼけ風味の小説と違ってスケールが大きそうなので、
次はそれを読んでみようと思う。

余韻がほとんど残らない物語っていうのはあまり好きになれないので。。。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]