それでいい。
友人、家族、世界、愛――すべてを置き去りにして、
鬣の生えた少年スプリンター・成雄は、速さの果てを追う!!
そこに何があった?
何が見えた??
――誰がいた。
***
月並みな表現になるけど、走る、という行為を通して「生きるとは?」ということを描いた物語。
「動いて動いて動きまくれ! そしたらあとから結果はついてくる」、
そんな単純だけど難しいことが、舞城氏独特の感性で表現されている。
各章ごとに主人公・成雄のたどる人生や人間関係が微妙にズレているのは、
たぶん彼の足が速すぎて光速超えちゃって四次元に突入することで
何度もパラレルワールドに足を踏み入れている、ひとりでいくつもの人生を生きている、
そういうことなんじゃないかなと個人的には解釈している。
でもその中のどの世界にも、成雄にとって最愛の女性(同一人物)との出会いはあるわけだけど。
。。。まあ、動きまくってればいやでも出会える、
出会いたいなら動きまくれ、
異性だけじゃなく友人でも何でも、手に入れるための手段はそれだということなんでしょう。
その出会いが必ずしもいいものであるとは限らないけど。
そういえば前に音速で走るマシンを発明して自らそれに乗ってたおじさんが外国にいたけど、
マシンが飛び出して停まったときにおじさん鼻と耳から血ー出してたな。
本作に登場する音速ランナーたちは大丈夫なんだろうか。
唯一それだけが気になった。
「結果はあとからついてくる」をモットーに掲げつつ、その結果さえも置き去りにしてしまうほど
俊足のランナー・成雄。
その速さは彼が本来持ってるであろう人間らしい感情も追いつけないほど。
しょっちゅう何かと不要なもの(特に自分の気持ち)に追いつかれてはのしかかられてる
自分には憧れの存在。成雄はすごい。
読んでてスカっとする物語。
友人、家族、世界、愛――すべてを置き去りにして、
鬣の生えた少年スプリンター・成雄は、速さの果てを追う!!
そこに何があった?
何が見えた??
――誰がいた。
***
月並みな表現になるけど、走る、という行為を通して「生きるとは?」ということを描いた物語。
「動いて動いて動きまくれ! そしたらあとから結果はついてくる」、
そんな単純だけど難しいことが、舞城氏独特の感性で表現されている。
各章ごとに主人公・成雄のたどる人生や人間関係が微妙にズレているのは、
たぶん彼の足が速すぎて光速超えちゃって四次元に突入することで
何度もパラレルワールドに足を踏み入れている、ひとりでいくつもの人生を生きている、
そういうことなんじゃないかなと個人的には解釈している。
でもその中のどの世界にも、成雄にとって最愛の女性(同一人物)との出会いはあるわけだけど。
。。。まあ、動きまくってればいやでも出会える、
出会いたいなら動きまくれ、
異性だけじゃなく友人でも何でも、手に入れるための手段はそれだということなんでしょう。
その出会いが必ずしもいいものであるとは限らないけど。
そういえば前に音速で走るマシンを発明して自らそれに乗ってたおじさんが外国にいたけど、
マシンが飛び出して停まったときにおじさん鼻と耳から血ー出してたな。
本作に登場する音速ランナーたちは大丈夫なんだろうか。
唯一それだけが気になった。
「結果はあとからついてくる」をモットーに掲げつつ、その結果さえも置き去りにしてしまうほど
俊足のランナー・成雄。
その速さは彼が本来持ってるであろう人間らしい感情も追いつけないほど。
しょっちゅう何かと不要なもの(特に自分の気持ち)に追いつかれてはのしかかられてる
自分には憧れの存在。成雄はすごい。
読んでてスカっとする物語。
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つまり、幻滅からの逃避。
50年前、日本画家・香山風采は息子・林水に家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残して
密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、
現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。
二つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。
***
ミステリパートは今まで読んだS&Mシリーズの中で最低だった。
アンフェア過ぎるにもほどがある。
何だ、記憶の混乱って?
何だ、子どもの言い回しの妙って?
ていうかこんなの正直ミステリじゃないし。
560P読んだ時間と体力と精神力返してほしい。
(犬が吠えた理由だけはまあ評価できるけど。。。)
。。。と、言いたいところなのですが、
それを補うかのようにストーリーパートにかなりの進展があったので、
まあ±0というところでしょうか。
いやー、(萌絵も言ってたけど)犀川助教授があんなにも単純だったとは。。。
萌絵の計略には正直ムカつきましたが(自分も一度友人にやられてぶち切れた経験があるので)
それであの面白い展開になったのだからまあいいか、というところ。
犀川先生、自分の気持ちに少しずつ気づき始めています(というか気づくことを自分に
許し始めています)。
事件のほうのトリックはさておき、鍵のトリックは面白かったなー。
でんじろう先生に頼んで是非あれを作ってみてほしい。
ミステリとして読まなければ楽しめる一作。
単純に犀川&萌絵のコンビが好きな人にはおすすめです。
50年前、日本画家・香山風采は息子・林水に家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を残して
密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、
現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。
二つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。
***
ミステリパートは今まで読んだS&Mシリーズの中で最低だった。
アンフェア過ぎるにもほどがある。
何だ、記憶の混乱って?
何だ、子どもの言い回しの妙って?
ていうかこんなの正直ミステリじゃないし。
560P読んだ時間と体力と精神力返してほしい。
(犬が吠えた理由だけはまあ評価できるけど。。。)
。。。と、言いたいところなのですが、
それを補うかのようにストーリーパートにかなりの進展があったので、
まあ±0というところでしょうか。
いやー、(萌絵も言ってたけど)犀川助教授があんなにも単純だったとは。。。
萌絵の計略には正直ムカつきましたが(自分も一度友人にやられてぶち切れた経験があるので)
それであの面白い展開になったのだからまあいいか、というところ。
犀川先生、自分の気持ちに少しずつ気づき始めています(というか気づくことを自分に
許し始めています)。
事件のほうのトリックはさておき、鍵のトリックは面白かったなー。
でんじろう先生に頼んで是非あれを作ってみてほしい。
ミステリとして読まなければ楽しめる一作。
単純に犀川&萌絵のコンビが好きな人にはおすすめです。
たいせつでやわらかなもの。
仲良しだったコジマとキジマ、愛犬と共に野原を駆けめぐった少年の日々。
やがて二人は別の道を歩むようになるが、決して忘れない言葉があった。
幼いころ、森に住む老人に聞いた「盾、シールドが必要だ」という謎の言葉が意味するものとは――。
自分で自分を守るしかないのか、それとも…?
不安と希望をあわせ持つすべての人に贈る、心温まる物語。
***
巷では村上春樹氏の新作〝1Q84〟が騒がれている今日この頃ですが、
一方の私はWムラカミの龍氏のほうの著作である本作が気になり手に取った次第。
一応は童話ですが、どちらかというとやや大人向け。
ちっちゃい子は普通に理解が難しい内容かも(でも大きくなるにつれて「あのときのあの文章は
そういうことだったのか!」と気づくだろうから読んでおいて損はないですが)。
シールド=自分を守るもの。
自分の何を?
それは心だったり、プライドだったり、身体だったりと様々ですが
RPGゲームに出てくる様々な盾の中から自分に合ったものをセレクトするように、
どの盾が今の自分に一番必要なのかを自覚しながら生きていくんだよ、というのが
本作の基本テーマです。
それはとても難しいことだし、そのときは最強の盾だと思ってもあとになって要らなくなったりと
〝唯一の盾〟が存在しない以上必要に応じて自分で取り替えていかなきゃならないのですが、
そこは自分の中心にある〝たいせつでやわらかなもの〟の声をちゃんと聞いて
選び取っていく必要があります。
でも本当に理想的なのは、盾が要らないぐらい自分の〝たいせつでやわらかなもの〟を
鍛えることなのですが。
でもそこまで強くなってしまったら、
盾=大切な人
も不要になってしまうので寂しいか。
自分を強くしてくれる温かなものはやっぱり手放したくないものです。
因みに余談ですが私は剣はたくさん所持してるのですが盾はひとつも身につけてないので、
〝たいせつでやわらかなもの〟が一撃でやられてしまうのでちょっとヤバめです。
今必要な盾はもうわかってるから探さなきゃな。
仲良しだったコジマとキジマ、愛犬と共に野原を駆けめぐった少年の日々。
やがて二人は別の道を歩むようになるが、決して忘れない言葉があった。
幼いころ、森に住む老人に聞いた「盾、シールドが必要だ」という謎の言葉が意味するものとは――。
自分で自分を守るしかないのか、それとも…?
不安と希望をあわせ持つすべての人に贈る、心温まる物語。
***
巷では村上春樹氏の新作〝1Q84〟が騒がれている今日この頃ですが、
一方の私はWムラカミの龍氏のほうの著作である本作が気になり手に取った次第。
一応は童話ですが、どちらかというとやや大人向け。
ちっちゃい子は普通に理解が難しい内容かも(でも大きくなるにつれて「あのときのあの文章は
そういうことだったのか!」と気づくだろうから読んでおいて損はないですが)。
シールド=自分を守るもの。
自分の何を?
それは心だったり、プライドだったり、身体だったりと様々ですが
RPGゲームに出てくる様々な盾の中から自分に合ったものをセレクトするように、
どの盾が今の自分に一番必要なのかを自覚しながら生きていくんだよ、というのが
本作の基本テーマです。
それはとても難しいことだし、そのときは最強の盾だと思ってもあとになって要らなくなったりと
〝唯一の盾〟が存在しない以上必要に応じて自分で取り替えていかなきゃならないのですが、
そこは自分の中心にある〝たいせつでやわらかなもの〟の声をちゃんと聞いて
選び取っていく必要があります。
でも本当に理想的なのは、盾が要らないぐらい自分の〝たいせつでやわらかなもの〟を
鍛えることなのですが。
でもそこまで強くなってしまったら、
盾=大切な人
も不要になってしまうので寂しいか。
自分を強くしてくれる温かなものはやっぱり手放したくないものです。
因みに余談ですが私は剣はたくさん所持してるのですが盾はひとつも身につけてないので、
〝たいせつでやわらかなもの〟が一撃でやられてしまうのでちょっとヤバめです。
今必要な盾はもうわかってるから探さなきゃな。
それぞれの場所へ。
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。
開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。
凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。
でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。
第31回メフィスト賞受賞作。
***
とにかく登場人物一人ひとりを丁寧に描写する作家さんだと思う。
だからこの人の書く物語に出てくるキャラを、読後一人として忘れたことはない。
そしてそれぞれのキャラに纏わるエピソードづくり、それがもう本当にうまい。
非常に印象的で、それだけでひとつの独立した物語になってしまうような挿話を
次々と持ってくる想像力、これだけで上中下巻(文庫版は上下巻)飽きることなく一気に読める。
最初から最後まで読んでいて本当に楽しかった。
辻村作品は「ああこの世界を離れたくないなあ」と、いつだって自分に思わせる。
ただ彼女の著作に総じて見られる欠点として、
〝ヒロインが守られすぎ〟ということがある。
ヒロインの周囲には常に見た目もよく人間性も兼ね添えているナイトが必ず複数存在する。
それも男として女を守るというだけならまだしも、本来理解できるはずのない
〝異性の心理〟を見事読み取ってその上でヒロインを心配したりするものだから、
「同性ですら難しいそれを異性がやるのはちょっとなあ」と違和感を感じる。
叙述トリックもちょっと食傷気味。実力は十分にある人なのだから、もうそろそろ違う手法で
読み手を驚かせてみてほしい。
女同士が付き合う上での精神的葛藤の描写のうまさは相変わらず鳥肌が立つほど。
きっと著者自身がかつてそういうことに悩んできた繊細な人なのだと思う(まあ繊細じゃなきゃ
小説なんて書けないけど。。。)。
女ならではの精神の弱さ・ずるさ・したたかさ。。。そういったものが本作の〝犯行〟の動機に
なっているのはなかなかに面白かった。まあ〝犯人〟はちょっと詰めが甘いけど、
そこはまだ高校生で子どもだったからということで納得しておきます。
ラストのお祭りシーンでの二人の会話には青臭さを感じてしまい
読んでいてちょっと恥ずかしくなりましたが、それを抜きにすればすごくよくできた
物語だと思う。
人は誰でも常に何かに囚われて生きていて、だけどその見えない檻を
誰にも見せずに生きている。
本作の校舎みたいな場所に閉じ込められれば、人間はもっと相手を(特に嫌いだったり
苦手な相手を)違った視点で見れるのに、と、少しやるせなくなってしまった。
ところで一番最後のあのシーンは、幽霊、もしくは幻、そういう解釈でいいのかな。
こんな風に突き詰めるほうが野暮なのかな。
何にせよ気持ちのいいシーンだった。
因みにこのマンガに収録されている〝Field of dreams!〟および〝Escape from!!〟は
本作とまったく同じ趣旨の物語なので、本作が面白く読めた人には非常におすすめ。
追記:2018年再読。
ラストのあのシーンは、「死んだあのひと」が精神世界から解放されたのだと
今更ながらわかる。
そして深月と景子にイラっときた。ひとの迷惑を微塵も考えないメンヘラと
男っぽさを前面に出しながら実は誰よりも「女」が強いあいつに。
でもやっぱりいい物語であることに変わりはない。
辻村氏の最新作「青空と逃げる」はつまらな過ぎて読むのが苦痛で
早々にほっぽりだしたので、このころみたいな物語をまた書いてほしいなあと
切に願う。
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。
開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。
凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。
でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。
第31回メフィスト賞受賞作。
***
とにかく登場人物一人ひとりを丁寧に描写する作家さんだと思う。
だからこの人の書く物語に出てくるキャラを、読後一人として忘れたことはない。
そしてそれぞれのキャラに纏わるエピソードづくり、それがもう本当にうまい。
非常に印象的で、それだけでひとつの独立した物語になってしまうような挿話を
次々と持ってくる想像力、これだけで上中下巻(文庫版は上下巻)飽きることなく一気に読める。
最初から最後まで読んでいて本当に楽しかった。
辻村作品は「ああこの世界を離れたくないなあ」と、いつだって自分に思わせる。
ただ彼女の著作に総じて見られる欠点として、
〝ヒロインが守られすぎ〟ということがある。
ヒロインの周囲には常に見た目もよく人間性も兼ね添えているナイトが必ず複数存在する。
それも男として女を守るというだけならまだしも、本来理解できるはずのない
〝異性の心理〟を見事読み取ってその上でヒロインを心配したりするものだから、
「同性ですら難しいそれを異性がやるのはちょっとなあ」と違和感を感じる。
叙述トリックもちょっと食傷気味。実力は十分にある人なのだから、もうそろそろ違う手法で
読み手を驚かせてみてほしい。
女同士が付き合う上での精神的葛藤の描写のうまさは相変わらず鳥肌が立つほど。
きっと著者自身がかつてそういうことに悩んできた繊細な人なのだと思う(まあ繊細じゃなきゃ
小説なんて書けないけど。。。)。
女ならではの精神の弱さ・ずるさ・したたかさ。。。そういったものが本作の〝犯行〟の動機に
なっているのはなかなかに面白かった。まあ〝犯人〟はちょっと詰めが甘いけど、
そこはまだ高校生で子どもだったからということで納得しておきます。
ラストのお祭りシーンでの二人の会話には青臭さを感じてしまい
読んでいてちょっと恥ずかしくなりましたが、それを抜きにすればすごくよくできた
物語だと思う。
人は誰でも常に何かに囚われて生きていて、だけどその見えない檻を
誰にも見せずに生きている。
本作の校舎みたいな場所に閉じ込められれば、人間はもっと相手を(特に嫌いだったり
苦手な相手を)違った視点で見れるのに、と、少しやるせなくなってしまった。
ところで一番最後のあのシーンは、幽霊、もしくは幻、そういう解釈でいいのかな。
こんな風に突き詰めるほうが野暮なのかな。
何にせよ気持ちのいいシーンだった。
因みにこのマンガに収録されている〝Field of dreams!〟および〝Escape from!!〟は
本作とまったく同じ趣旨の物語なので、本作が面白く読めた人には非常におすすめ。
追記:2018年再読。
ラストのあのシーンは、「死んだあのひと」が精神世界から解放されたのだと
今更ながらわかる。
そして深月と景子にイラっときた。ひとの迷惑を微塵も考えないメンヘラと
男っぽさを前面に出しながら実は誰よりも「女」が強いあいつに。
でもやっぱりいい物語であることに変わりはない。
辻村氏の最新作「青空と逃げる」はつまらな過ぎて読むのが苦痛で
早々にほっぽりだしたので、このころみたいな物語をまた書いてほしいなあと
切に願う。
きみはいったい、だれなんだ?
第3回本格ミステリ大賞受賞のほか「このミステリーがすごい!」第2位など話題をさらい、
合計100万部を誇る乙一の代表作「GOTH」。
2008年12月20日に全国公開された映画「GOTH」の試写を観て
インスピレーションを受けた乙一が、急遽、「GOTH」の後日談と言える新作小説を書き下ろした。
単行本刊行から6年、執筆時から7年ぶりのことであり、
旧作を振り返らないことで知られる乙一にとって、今回の書き下ろしは非常に稀有なことといえる。
***
〝GOTH〟はマンガ版まで持っているぐらい大好きな作品で
それの番外編ということで大喜びで手にとったのですが。。。
あまりカタルシスは得られなかった、というのが正直なところ。
〝GOTH〟という物語の軸であるミステリ部分はなりを潜め(犯人も全然猟奇的じゃないし)、
文章もまだ頻繁に作品を発表していたころの乙一氏のそれに比べて
やや理屈っぽくなってしまっている(&冒頭が〝ZOO〟とかぶってる)。
感性で物語を書く作家さんだったのに、この変化は一体? と首を捻ってしまった。
どちらかというとミステリというより、主人公の〝僕〟〝森野〟そして〝犯人〟、
それぞれの内面を描くことに重きを置いていたような印象を受けた。
まあ犯人の心理の掘り下げはなかなか興味深かったものの、
〝僕〟と〝森野〟の人間性についてはオリジナルのほうで既に書かれているので
それの再確認をしただけ、といった感じでしたが。
ていうか本編よりも彼女↓の存在のほうがインパクト強かった。こんな子が存在するとは。。。
ちなみに今回のこの番外編は、オリジナルの〝GOTH〟単行本のカバー裏の写真に
乙一氏は着想を得て書いたものではないかと踏んでるんだけど。。。どうかな?
いやーそれにしても、本作は本当に〝森の夜〟の話だったなー(ていうか森野の夜?)。
もちろん狙ってるんだろうけど。。。
第3回本格ミステリ大賞受賞のほか「このミステリーがすごい!」第2位など話題をさらい、
合計100万部を誇る乙一の代表作「GOTH」。
2008年12月20日に全国公開された映画「GOTH」の試写を観て
インスピレーションを受けた乙一が、急遽、「GOTH」の後日談と言える新作小説を書き下ろした。
単行本刊行から6年、執筆時から7年ぶりのことであり、
旧作を振り返らないことで知られる乙一にとって、今回の書き下ろしは非常に稀有なことといえる。
***
〝GOTH〟はマンガ版まで持っているぐらい大好きな作品で
それの番外編ということで大喜びで手にとったのですが。。。
あまりカタルシスは得られなかった、というのが正直なところ。
〝GOTH〟という物語の軸であるミステリ部分はなりを潜め(犯人も全然猟奇的じゃないし)、
文章もまだ頻繁に作品を発表していたころの乙一氏のそれに比べて
やや理屈っぽくなってしまっている(&冒頭が〝ZOO〟とかぶってる)。
感性で物語を書く作家さんだったのに、この変化は一体? と首を捻ってしまった。
どちらかというとミステリというより、主人公の〝僕〟〝森野〟そして〝犯人〟、
それぞれの内面を描くことに重きを置いていたような印象を受けた。
まあ犯人の心理の掘り下げはなかなか興味深かったものの、
〝僕〟と〝森野〟の人間性についてはオリジナルのほうで既に書かれているので
それの再確認をしただけ、といった感じでしたが。
ていうか本編よりも彼女↓の存在のほうがインパクト強かった。こんな子が存在するとは。。。
ちなみに今回のこの番外編は、オリジナルの〝GOTH〟単行本のカバー裏の写真に
乙一氏は着想を得て書いたものではないかと踏んでるんだけど。。。どうかな?
いやーそれにしても、本作は本当に〝森の夜〟の話だったなー(ていうか森野の夜?)。
もちろん狙ってるんだろうけど。。。
さあ、引き金を引こうか。
妹が首を吊った、とイカレた母親からの電話。愉快そうな侵入者は、妹の陵辱ビデオを見せたうえ、
レイプ魔たちの愛娘がどこにいるか教えてくれる。僕はスタンガンを手に捕獲を開始。でも街には
77人の少女を餌食にした“突き刺しジャック”も徘徊していた――。
世界を容赦なく切り裂くメフィスト賞受賞作。
***
【flicker】…揺らぐ光。点滅。ちらつき。
純文学寄りになってからの著作しか読んでなかったので、
佐藤氏のデビュー作である本作を読んで「うおーこんなん書いてたのかー!」と
違和感ありまくり、でもかなり楽しかった。
って、「楽しい」なんてうかつに言っちゃいけない内容ではあるんですが。。。
そもそもどうして本作だけ未読だったかというと、図書館に唯一これだけが置いてなかったからで、
何でデビュー作なのにこれだけないんだよ、続編は普通にあるのにこれは一体どういうことだよ、と
常々思っていたんですが本作を読み終えて納得。
一応ラノベのカテゴリーに入る、子供がすぐ手にとれちゃうこれを、
図書館に置いておいたら確かにまずいわ。
あらすじを読んでもらえばその意味はだいたいわかると思うけど、
読む子によっちゃ潜在意識下のやばいスイッチがONになっちゃう可能性がなきにしもあらず。
今さらそういうものにアイデンティティを揺るがされる心配もない私としては
非常に面白く読めましたが。
突き刺しジャックの殺人の動機なんか斬新でインパクト強くてしかもかなり切ないし。
主人公が傷ついた犬と自分をクロスオーバーさせるクライマックスには
現在の佐藤氏の純文学性が垣間見えた気がしておっと思わせられたし。
ラスト一行なんて最早どうリアクションしていいかわからないし(読み終えた本に対する
リアクションに困ったことなんて初めてかも)。
佐藤氏と同じメフィスト作家である辻村深月さんの某作品を先に読んでしまっていたせいで
後半のある〝真相〟にはあまり驚けませんでしたが、
「あーメフィスト作家って考えつくネタまでかぶるんだなー」と妙な感動をしてしまったりもした。
(上のふたりと同じネタ使ってたメフィスト作家が実はあと一人いたりする)
読者にすり寄ってこず、どこまでも突き放して「ついてきたけりゃついてくれば?」的な
スタンスを常に崩さないメフィスト作家の著作はもう本当に心底好きです。
人を選ぶかもですがおすすめ。
余談:
ていうかなんか本作にすごいFFⅩと似てる部分あるんだけど(パクリとかそういうことじゃなく
作中で連発されるある台詞がかぶってる)、
発売したの同時期だしたぶん偶然なんだろうなあ。。。でもすごいな。
妹が首を吊った、とイカレた母親からの電話。愉快そうな侵入者は、妹の陵辱ビデオを見せたうえ、
レイプ魔たちの愛娘がどこにいるか教えてくれる。僕はスタンガンを手に捕獲を開始。でも街には
77人の少女を餌食にした“突き刺しジャック”も徘徊していた――。
世界を容赦なく切り裂くメフィスト賞受賞作。
***
【flicker】…揺らぐ光。点滅。ちらつき。
純文学寄りになってからの著作しか読んでなかったので、
佐藤氏のデビュー作である本作を読んで「うおーこんなん書いてたのかー!」と
違和感ありまくり、でもかなり楽しかった。
って、「楽しい」なんてうかつに言っちゃいけない内容ではあるんですが。。。
そもそもどうして本作だけ未読だったかというと、図書館に唯一これだけが置いてなかったからで、
何でデビュー作なのにこれだけないんだよ、続編は普通にあるのにこれは一体どういうことだよ、と
常々思っていたんですが本作を読み終えて納得。
一応ラノベのカテゴリーに入る、子供がすぐ手にとれちゃうこれを、
図書館に置いておいたら確かにまずいわ。
あらすじを読んでもらえばその意味はだいたいわかると思うけど、
読む子によっちゃ潜在意識下のやばいスイッチがONになっちゃう可能性がなきにしもあらず。
今さらそういうものにアイデンティティを揺るがされる心配もない私としては
非常に面白く読めましたが。
突き刺しジャックの殺人の動機なんか斬新でインパクト強くてしかもかなり切ないし。
主人公が傷ついた犬と自分をクロスオーバーさせるクライマックスには
現在の佐藤氏の純文学性が垣間見えた気がしておっと思わせられたし。
ラスト一行なんて最早どうリアクションしていいかわからないし(読み終えた本に対する
リアクションに困ったことなんて初めてかも)。
佐藤氏と同じメフィスト作家である辻村深月さんの某作品を先に読んでしまっていたせいで
後半のある〝真相〟にはあまり驚けませんでしたが、
「あーメフィスト作家って考えつくネタまでかぶるんだなー」と妙な感動をしてしまったりもした。
(上のふたりと同じネタ使ってたメフィスト作家が実はあと一人いたりする)
読者にすり寄ってこず、どこまでも突き放して「ついてきたけりゃついてくれば?」的な
スタンスを常に崩さないメフィスト作家の著作はもう本当に心底好きです。
人を選ぶかもですがおすすめ。
余談:
ていうかなんか本作にすごいFFⅩと似てる部分あるんだけど(パクリとかそういうことじゃなく
作中で連発されるある台詞がかぶってる)、
発売したの同時期だしたぶん偶然なんだろうなあ。。。でもすごいな。
「その先」の未来を。
ロボットメーカーに勤務する水沢依奈は、特装機体開発室の秘書を命じられた。
室長である佐原シンの変人ぶりに頭を悩ませる依奈だったが、
佐原の作る「ロボット」の秘書となってしまう。
実はそれは兵器であったのだ…。
***
機械が書いた小説だ、そう言われれば信じてしまったかもしれない。
いい意味で無機質でメカニカルな文体。新しい。
SFの賞を受賞している割りに内容は結構淡々としていて、
ロボットをモチーフに据えて人間と比較することで、〝人類〟という生き物の抱える
性や葛藤、汚さや美しさを丁寧に描き出した秀作だった。
登場人物たちもそれぞれに個性があり、一度出てきたキャラは絶対に忘れない。
特に佐原室長のキャラは奇天烈すぎてかなりの愛着を抱いてしまった。
そんな彼と主人公の、第三章における攻防戦はあまりに面白くて爆笑。
でもそのユーモアが、悲しい結末をより際立たせるスパイスとなって終盤に活きてくるのが
作者の巧い、そして残酷なところだよな。。。
綿の詰まった布を〝ぬいぐるみ〟だと言って可愛がることができる。
死んだ大切な生き物の一部や写真を〝お守り〟だと言って大切にすることができる。
すべてのものには魂があるという八百万の神信仰がまかりとおったこの日本という国の人間が、
本作に一番感動できる素質を持っているのではと思う。
人間味溢れるラストは決して嫌いじゃないけれど、ああいうオチを持ってくるなら
もうちょっとあのふたりの絡みがほしかったところ。ちょっと唐突に思えたので。
でも、主人公が突然転属になった理由、主人公の認知症の父親の叫び声の本当の意味、
それがわかったときには自然と頬が緩んでしまった。
いつの時代も人間が一番に必要とするものは進んだ技術でも便利な道具でもなくやっぱり
〝これ〟なんだよなあ。
ロボット工学にも詳しいけれど、人間の心もとてもよく知っている作家さんだと思う。
もりみくれさん。
あなたの書いたこの物語にもっと長く浸っていたかった(本作は短いので。。。)。
しばらくしたらまた読み返します。
ロボットメーカーに勤務する水沢依奈は、特装機体開発室の秘書を命じられた。
室長である佐原シンの変人ぶりに頭を悩ませる依奈だったが、
佐原の作る「ロボット」の秘書となってしまう。
実はそれは兵器であったのだ…。
***
機械が書いた小説だ、そう言われれば信じてしまったかもしれない。
いい意味で無機質でメカニカルな文体。新しい。
SFの賞を受賞している割りに内容は結構淡々としていて、
ロボットをモチーフに据えて人間と比較することで、〝人類〟という生き物の抱える
性や葛藤、汚さや美しさを丁寧に描き出した秀作だった。
登場人物たちもそれぞれに個性があり、一度出てきたキャラは絶対に忘れない。
特に佐原室長のキャラは奇天烈すぎてかなりの愛着を抱いてしまった。
そんな彼と主人公の、第三章における攻防戦はあまりに面白くて爆笑。
でもそのユーモアが、悲しい結末をより際立たせるスパイスとなって終盤に活きてくるのが
作者の巧い、そして残酷なところだよな。。。
綿の詰まった布を〝ぬいぐるみ〟だと言って可愛がることができる。
死んだ大切な生き物の一部や写真を〝お守り〟だと言って大切にすることができる。
すべてのものには魂があるという八百万の神信仰がまかりとおったこの日本という国の人間が、
本作に一番感動できる素質を持っているのではと思う。
人間味溢れるラストは決して嫌いじゃないけれど、ああいうオチを持ってくるなら
もうちょっとあのふたりの絡みがほしかったところ。ちょっと唐突に思えたので。
でも、主人公が突然転属になった理由、主人公の認知症の父親の叫び声の本当の意味、
それがわかったときには自然と頬が緩んでしまった。
いつの時代も人間が一番に必要とするものは進んだ技術でも便利な道具でもなくやっぱり
〝これ〟なんだよなあ。
ロボット工学にも詳しいけれど、人間の心もとてもよく知っている作家さんだと思う。
もりみくれさん。
あなたの書いたこの物語にもっと長く浸っていたかった(本作は短いので。。。)。
しばらくしたらまた読み返します。
馬鹿みたいだったけど、
あれが恋愛じゃなかったらあたしは恋愛を知らない。
あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。
25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に
割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが…。
誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。
芥川賞候補の表題作の他、その前日譚である短編「あの明け方の」を収録。
★収録作品★
生きてるだけで、愛。
あの明け方の
***
まず言いたいのは、この話の主人公はうつ病じゃないだろってこと。
精神疾患っていうのはどの病気でも根っこは繋がってるから
もちろんうつに似た症状も作中で描写されてはいるんだけど、
基本的にこのヒロインはうつではなくて〝境界例(ボーダーライン)〟。
たとえ軽度だとしても、うつ病の人間はここまで他人を責めたり外出したりできません。
まあ多少苦しさから人に八つ当たりしたり攻撃的になったりするけど、このヒロインはちょっと凄すぎ。
むしろ自分を認めてくれない相手への執拗な攻撃や自分と人の間に異常なまでの隔絶を感じるのは
まさにボーダーの人の特徴。
本谷さんは大好きな作家さんですが、そのへんはちょっと認識不足な気がした。
でもやっぱり、この著者は本業が戯曲作家であるせいか
文章のリズムがとても心地よく表現がいちいちクソ面白い(汚い表現すいません)。
しょっぱなからもうずっと、ページを繰るたびに腹を抱えて笑わせてもらった。
(特に最近、映画〝シャイニング〟を観たばっかりだったので、作中にそれが出てきたときは
笑いすぎて腹がねじ切れるかと思った)
そしてヒロインの恋人である津奈木、彼のキャラが秀逸。
ものすごく普通の人なのに実はそうじゃないんだよというオーラが彼の内面から滲み出していて、
そんな風に彼の秘められた魅力を読者に伝えられる本谷さんの力量にはただただ舌を巻くばかり。
ふたりの(たった一度しか出てきませんが)デートの際の会話もものすごく好きです。
私はこんな会話をしてくれる人と(冗談抜きで)結婚したい。
(ちなみに読んでいる間中、脳内では津奈木がずっと加瀬亮さん(左)↓で再現されてました。
もし本作が映画化されるなら、キャストは是非彼でいってほしい)
終盤の屋上でのシーンはちょっと芝居がかっている気もしたけど、
ラブストーリーを北斎の〝富嶽三十六景〟と絡ませて収束させる手腕は大したもの。
今度からあのザッパーンな絵を見るたびにこの物語が浮かぶ気がする。
ヒロインの「津奈木はあたしと別れられていいね。あたしはあたしと別れられないのに」という台詞や、
ラストはちょっと切ないですが、津奈木の台詞が一条の光となって
暖かい終わり方になっています。
人は他人にわかってもらえなくても、わかろうとしてくれる人がいるだけで
生きていける生き物なんだと思う。
ヒロインの内面を照らし出すべく灯されたほのかな光は、最後には消えてしまったけれど。
それでも彼女はこれからも生き続けていけるのだと、個人的には確信しています。
かなりおすすめ。
(ただ、同時収録の〝あの明け方の〟を読むとヒロインのあまりの恵まれっぷりと
その割りにひどいわがままっぷりに殺意が湧くので、
もしまた読み返すとしてもたぶん表題作だけだろうな)
おまけ:
シャイニング笑い(笑)。
あれが恋愛じゃなかったらあたしは恋愛を知らない。
あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。
25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に
割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが…。
誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。
芥川賞候補の表題作の他、その前日譚である短編「あの明け方の」を収録。
★収録作品★
生きてるだけで、愛。
あの明け方の
***
まず言いたいのは、この話の主人公はうつ病じゃないだろってこと。
精神疾患っていうのはどの病気でも根っこは繋がってるから
もちろんうつに似た症状も作中で描写されてはいるんだけど、
基本的にこのヒロインはうつではなくて〝境界例(ボーダーライン)〟。
たとえ軽度だとしても、うつ病の人間はここまで他人を責めたり外出したりできません。
まあ多少苦しさから人に八つ当たりしたり攻撃的になったりするけど、このヒロインはちょっと凄すぎ。
むしろ自分を認めてくれない相手への執拗な攻撃や自分と人の間に異常なまでの隔絶を感じるのは
まさにボーダーの人の特徴。
本谷さんは大好きな作家さんですが、そのへんはちょっと認識不足な気がした。
でもやっぱり、この著者は本業が戯曲作家であるせいか
文章のリズムがとても心地よく表現がいちいちクソ面白い(汚い表現すいません)。
しょっぱなからもうずっと、ページを繰るたびに腹を抱えて笑わせてもらった。
(特に最近、映画〝シャイニング〟を観たばっかりだったので、作中にそれが出てきたときは
笑いすぎて腹がねじ切れるかと思った)
そしてヒロインの恋人である津奈木、彼のキャラが秀逸。
ものすごく普通の人なのに実はそうじゃないんだよというオーラが彼の内面から滲み出していて、
そんな風に彼の秘められた魅力を読者に伝えられる本谷さんの力量にはただただ舌を巻くばかり。
ふたりの(たった一度しか出てきませんが)デートの際の会話もものすごく好きです。
私はこんな会話をしてくれる人と(冗談抜きで)結婚したい。
(ちなみに読んでいる間中、脳内では津奈木がずっと加瀬亮さん(左)↓で再現されてました。
もし本作が映画化されるなら、キャストは是非彼でいってほしい)
終盤の屋上でのシーンはちょっと芝居がかっている気もしたけど、
ラブストーリーを北斎の〝富嶽三十六景〟と絡ませて収束させる手腕は大したもの。
今度からあのザッパーンな絵を見るたびにこの物語が浮かぶ気がする。
ヒロインの「津奈木はあたしと別れられていいね。あたしはあたしと別れられないのに」という台詞や、
ラストはちょっと切ないですが、津奈木の台詞が一条の光となって
暖かい終わり方になっています。
人は他人にわかってもらえなくても、わかろうとしてくれる人がいるだけで
生きていける生き物なんだと思う。
ヒロインの内面を照らし出すべく灯されたほのかな光は、最後には消えてしまったけれど。
それでも彼女はこれからも生き続けていけるのだと、個人的には確信しています。
かなりおすすめ。
(ただ、同時収録の〝あの明け方の〟を読むとヒロインのあまりの恵まれっぷりと
その割りにひどいわがままっぷりに殺意が湧くので、
もしまた読み返すとしてもたぶん表題作だけだろうな)
おまけ:
シャイニング笑い(笑)。
そこは、なにごとかの境界を越えた、どこか。
仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。
地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。
千葉県北部を旅する天才幼児の物語。
東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、
奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女――。
物語に没入した“俺”は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。
***
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。
第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞。
第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞。
第15回電撃大賞銀賞受賞。
。。。なんかもう正直やる気失せますね、こういう人に出てこられると。
こういう人は創作の才能はもちろん、各賞ごとの傾向やカラーを読むのがうまいんだろうな。
それもかなり重要な才能だから。
というわけでどんなもんだろうと手にとってみた本作。
結論から言うと、そこらのプロよりずっとうまいです。
たまーに入る若者言葉が(私も一応二十代なのですが)鼻につきますが、それも
地図男の〝語り〟であって地の文ではないからまあ許容範囲。
ダ・ヴィンチ文学賞はミステリの賞じゃありませんが、
多分にミステリ要素を含んでいるのでミステリ好きの人にもおすすめ。
終わり方もさわやかでとても好きです。
本作や〝火薬と愛の星〟みたいな、遠回りな、あまりに遠回りな恋愛話はすごく好き。
ただ。。。著者の真藤氏、おそらく影響受けてるよね?
古川日出男と舞城王太郎に。
特に前者の。
だって古川氏の著作〝ロックンロール七部作〟に文体が激似なんだもん(そして会話のノリは
舞城氏)。
最近の新人さんは、筆力はすごいんだけど新鮮味がないって人が多いので
そこだけはちょっと残念。
彼の別の著作も読んで改めて判断したいところですが。
余談:
東京23区合戦で皆が自分の身体に入れてる刺青だけど、
どれがオリジナルでどれが勝利の結果入れたものだって
どうやって判断するの? それだけが疑問。
仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。
地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。
千葉県北部を旅する天才幼児の物語。
東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、
奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女――。
物語に没入した“俺”は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。
***
第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。
第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞。
第3回ポプラ社小説大賞特別賞受賞。
第15回電撃大賞銀賞受賞。
。。。なんかもう正直やる気失せますね、こういう人に出てこられると。
こういう人は創作の才能はもちろん、各賞ごとの傾向やカラーを読むのがうまいんだろうな。
それもかなり重要な才能だから。
というわけでどんなもんだろうと手にとってみた本作。
結論から言うと、そこらのプロよりずっとうまいです。
たまーに入る若者言葉が(私も一応二十代なのですが)鼻につきますが、それも
地図男の〝語り〟であって地の文ではないからまあ許容範囲。
ダ・ヴィンチ文学賞はミステリの賞じゃありませんが、
多分にミステリ要素を含んでいるのでミステリ好きの人にもおすすめ。
終わり方もさわやかでとても好きです。
本作や〝火薬と愛の星〟みたいな、遠回りな、あまりに遠回りな恋愛話はすごく好き。
ただ。。。著者の真藤氏、おそらく影響受けてるよね?
古川日出男と舞城王太郎に。
特に前者の。
だって古川氏の著作〝ロックンロール七部作〟に文体が激似なんだもん(そして会話のノリは
舞城氏)。
最近の新人さんは、筆力はすごいんだけど新鮮味がないって人が多いので
そこだけはちょっと残念。
彼の別の著作も読んで改めて判断したいところですが。
余談:
東京23区合戦で皆が自分の身体に入れてる刺青だけど、
どれがオリジナルでどれが勝利の結果入れたものだって
どうやって判断するの? それだけが疑問。
「不在」だけが、本当なのだ。
時間のねじれた村と大学街を往還する「わたし」の生活誌。
村と街のあいだにある計りきれない距離と時間を、繊細極まる文で綴る。
表題作ほか、「冬待ち」の全2作品を収録。
***
〝言葉〟というものに、とてもこだわる作家さんだと思う。
文章表現が凝っているという意味じゃなく、
〝言葉〟について常に深く考え、哲学している人に思える。
語れば語るほど、自分が口にするその対象が薄っぺらくなっていってしまう、
マガイモノになってしまう、その概念は例えるなら、
役者やミュージシャンの人気が上がれば上がるほど、そして
多くの人間がその存在について語るほど、
彼らが俗物化していく、本当の姿が見えなくなる、
その感覚に近い気がする。
私は常に物語を書いている人間なので、そういう感覚は
自分の脳内にあるキャラクターやストーリーを
文字にしてパソコンの画面上に打ち出したときに一番感じる。
頭の中では完璧だった物語や人物たちが、一文字一文字キーボードで打ち出すたびに
本来あるべきはずの姿からどんどんかけ離れていく。
下手をすると二度と手の届かない場所へ消えてしまう。
あのもどかしさと喪失感を思い出させられた小説だった。
現実にはあり得ないファンタジックな世界観に設定することで、
そういった〝大切なものを自分の手でニセモノにしてしまう、ときには失ってしまう悲しみ〟を、
著者は童話のように柔らかく、直感的に語りかけてくる。
おすすめです。
(二作目〝冬待ち〟は少し文章に気合が入りすぎというか気取りすぎな表現が目立ちますが
こちらも表題作とは違った味わいがあります。
どちらの話も、主人公が同性の友人に異常なまでの執着心を見せるのは
著者の心情の反映なのかな?
確かに女の友情は基本的には孤独であてにならないものだけど。。。)
時間のねじれた村と大学街を往還する「わたし」の生活誌。
村と街のあいだにある計りきれない距離と時間を、繊細極まる文で綴る。
表題作ほか、「冬待ち」の全2作品を収録。
***
〝言葉〟というものに、とてもこだわる作家さんだと思う。
文章表現が凝っているという意味じゃなく、
〝言葉〟について常に深く考え、哲学している人に思える。
語れば語るほど、自分が口にするその対象が薄っぺらくなっていってしまう、
マガイモノになってしまう、その概念は例えるなら、
役者やミュージシャンの人気が上がれば上がるほど、そして
多くの人間がその存在について語るほど、
彼らが俗物化していく、本当の姿が見えなくなる、
その感覚に近い気がする。
私は常に物語を書いている人間なので、そういう感覚は
自分の脳内にあるキャラクターやストーリーを
文字にしてパソコンの画面上に打ち出したときに一番感じる。
頭の中では完璧だった物語や人物たちが、一文字一文字キーボードで打ち出すたびに
本来あるべきはずの姿からどんどんかけ離れていく。
下手をすると二度と手の届かない場所へ消えてしまう。
あのもどかしさと喪失感を思い出させられた小説だった。
現実にはあり得ないファンタジックな世界観に設定することで、
そういった〝大切なものを自分の手でニセモノにしてしまう、ときには失ってしまう悲しみ〟を、
著者は童話のように柔らかく、直感的に語りかけてくる。
おすすめです。
(二作目〝冬待ち〟は少し文章に気合が入りすぎというか気取りすぎな表現が目立ちますが
こちらも表題作とは違った味わいがあります。
どちらの話も、主人公が同性の友人に異常なまでの執着心を見せるのは
著者の心情の反映なのかな?
確かに女の友情は基本的には孤独であてにならないものだけど。。。)
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80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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