まるで静かな狂気のような。
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。
静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。
あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。
それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた……。
第10回電撃大賞<大賞>受賞作にて有川浩のデビュー作でもある『塩の街』が、
本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた大ボリュームでハードカバー単行本として刊行される。
***
カテゴリーとしてはライトノベルに属する作品なので、漫画的表現&恋愛には
(既に二十代も後半の私としては)読んでいて時おり顔が赤らみますが、
扱われているテーマやストーリー展開、世界観の深みは(決してラノベを馬鹿にして
言うのではなく)一般小説になんら引けをとらない秀作です。
塩と化した世界で二人暮らす秋庭と真奈、そしてそんな彼らとその前を次々に通り過ぎていく
様々な人間たちとの邂逅を描き出した本作、そのひとつひとつのエピソードが
読みやすい筆致と抑えた表現で書かれているにも関わらずものすごいインパクトをもって
胸の深い部分にまでしみ込んでくる。
本作の一番初めに登場する青年のエピソードは、ふだんラブストーリーを「へっ」と
小ばかにしている私が読んでも思わず目が潤んでしまった。
(そもそもがこの著者の〝Story Seller〟というラブストーリーにいたく感動したため
本作を手にとった次第なのですが)
文庫がハードカバーになるにあたって加筆された〝その後〟は正直ないほうがよかった気が
するので(何だか想像の余地が奪われてしまったようでつまらなかった。
マンガ〝ときめきトゥナイト〟〝ぼくの地球を守って〟(知らない人はすいません)も
続編にかなり幻滅させられたので。。。)、私は文庫版を読んだのだということにしておきます。
それにしても、本作で何度も繰り返される〝失った代わりに得られるもの〟、
それがあるから人間は辛うじて生きていられるんだよなあ。。。
因みに以下の作品が好きな人は本作は特におすすめです。
終末のフール/伊坂幸太郎
キノの旅/時雨沢恵一
最終兵器彼女/高橋しん
ドラゴンヘッド/望月峯太郎
蛇足:本編中に出てくる過呼吸発作の止め方は実際にやるとかなり苦しいので
もしなったら紙袋を口にあててゆっくりと呼吸する、というやり方でおさめてください。
実際にその病気持ちである管理人からのおせっかいな忠告です。
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。男の名は秋庭、少女の名は真奈。
静かに暮らす二人の前を、さまざまな人々が行き過ぎる。
あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。
それを見送りながら、二人の中で何かが変わり始めていた……。
第10回電撃大賞<大賞>受賞作にて有川浩のデビュー作でもある『塩の街』が、
本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた大ボリュームでハードカバー単行本として刊行される。
***
カテゴリーとしてはライトノベルに属する作品なので、漫画的表現&恋愛には
(既に二十代も後半の私としては)読んでいて時おり顔が赤らみますが、
扱われているテーマやストーリー展開、世界観の深みは(決してラノベを馬鹿にして
言うのではなく)一般小説になんら引けをとらない秀作です。
塩と化した世界で二人暮らす秋庭と真奈、そしてそんな彼らとその前を次々に通り過ぎていく
様々な人間たちとの邂逅を描き出した本作、そのひとつひとつのエピソードが
読みやすい筆致と抑えた表現で書かれているにも関わらずものすごいインパクトをもって
胸の深い部分にまでしみ込んでくる。
本作の一番初めに登場する青年のエピソードは、ふだんラブストーリーを「へっ」と
小ばかにしている私が読んでも思わず目が潤んでしまった。
(そもそもがこの著者の〝Story Seller〟というラブストーリーにいたく感動したため
本作を手にとった次第なのですが)
文庫がハードカバーになるにあたって加筆された〝その後〟は正直ないほうがよかった気が
するので(何だか想像の余地が奪われてしまったようでつまらなかった。
マンガ〝ときめきトゥナイト〟〝ぼくの地球を守って〟(知らない人はすいません)も
続編にかなり幻滅させられたので。。。)、私は文庫版を読んだのだということにしておきます。
それにしても、本作で何度も繰り返される〝失った代わりに得られるもの〟、
それがあるから人間は辛うじて生きていられるんだよなあ。。。
因みに以下の作品が好きな人は本作は特におすすめです。
終末のフール/伊坂幸太郎
キノの旅/時雨沢恵一
最終兵器彼女/高橋しん
ドラゴンヘッド/望月峯太郎
蛇足:本編中に出てくる過呼吸発作の止め方は実際にやるとかなり苦しいので
もしなったら紙袋を口にあててゆっくりと呼吸する、というやり方でおさめてください。
実際にその病気持ちである管理人からのおせっかいな忠告です。
PR
『覚えててくれる?』
ある日突然、日本に「自殺自由法」が施行された。
しかし、国民は相変わらずの無関心だった。
それぞれの目的で、公共自殺幇助施設「自逝センター」に向かう人の群れ。
そして、それを取り巻く人間たちの思惑…。
「死ぬ自由」を得た人間たちの姿を、著者独自のビターテイストな文体で描く問題作。
***
ブラックユーモアを受け付けない人、または
自殺をネタにすること自体を笑い飛ばせない性質の人以外は、
まあそれなりに楽しく読める内容になっているのではないかと思います。
ですがいくらジャンルがユーモアでもそれが小説である以上一貫したひとつのテーマが
必要なわけで、でも本作は大勢の自逝者(本作では自殺希望者をそう呼びます)の顛末を
ただ淡々と書き綴っているだけで、本来そこから浮かび上がって見えてくるはずの
著者の言いたいことが見えてこない。〝自殺〟なんて重いものをテーマに書かれた小説である
以上、ただ面白ければいいってものじゃないと思うのですが。
それともあの〝彼女〟の生き様が全体を貫くひとつの教訓になっているのかな。。。
オチは今の日本社会を見事に風刺していて思わず苦笑してしまいましたが。
「ほんと、そんなもんなんだよなあ」と。
笑いネタやグロネタだけじゃなくちょっと真面目な自逝者エピソードでも入れてくれれば
もっと本作はいいものになったんじゃないかと個人的には思うのですが、まあでもそうしたら
ブラックユーモアじゃなくなっちゃうから無理か。
私は今ちょっと精神を病みがちなので、こんなもん読んで大丈夫かと軽く不安に思いながら
本作を手にとったのですが(じゃあわざわざ読むなよって感じですが)、読後逆に
〝自殺〟という行為がバカバカしく思えるようになってしまった。
自らを殺す、という行為にはやはり最低限の自己陶酔と自己憐憫、ドラマ性が必要ですが
これ読んだらそんなもの吹き飛んだもんな。
〝死〟に酔っているような人は読んでみると結構自分を客観視できていいかもしれない。
もちろん個人差はあるだろうから万人にはおすすめしませんが。
誰か、あたしを、罰して――。
お姉ちゃんは殺された、同級生の男子に。
偶然のバイク事故に見せかけて、殺されたんだ。
美しくて、優しくて、心の真っ白な人だった。
お姉ちゃんの死の真相は、あたしがはっきりさせる――。
あとを追うように、姉と同じ都立高校を選んだ結花。
だがそこには、覗いてはならない姉のおぞましい秘密が――。
***
誉田氏の著作を読むのは初めてなので何とも言えませんが少なくとも
本作に関しては。。。
〝駄作〟。少なくとも私のカテゴリーの中では。
まず文章が稚拙。
陳腐な表現、同じ言い回しの使いまわし、挙句
言葉の使い方が間違っているところすらあるし(プロとしてこれはあまりにも。。。)、
正直ストーリーを追う以前に文章を読むのが苦痛だった。
しかもそのストーリー自体もありきたり。でも何より最悪なのは
登場人物たちの心理描写があまりに拙いこと。
説明してくれないとわからないところも説明してくれていなかったりするので(もし著者が
『行間を読め』とでもいうつもりで敢えて描写を省いているなら無理難題にもほどがある)、
なぜ〝姉〟が主人公である妹をそこまで大事に思っていたのかが未だにわからない。
そしてそんな〝姉〟のことを心から大事に思っていたらしき妹が、クライマックスで
〝姉〟にまつわるある残酷な真相を知らされても、
その後大してショックを受けた様子もなく振舞っているその不自然さ。
東京創元社の〝ミステリ・フロンティア〟シリーズは(私から見ると)かなり当たり外れの大きい
シリーズだけど、その〝外れ〟のほうをうかつにも読んでしまったときの脱力感を思わず覚えた。
(ちなみに実際の上記シリーズで私が「ハズした。。。」とうなだれたのは、ほしおさなえの
〝ヘビイチゴ・サナトリウム〟だったりする)
読み終えたあと思わずベートーヴェンの〝月光〟↓を聴いて口直ししてしまった。
本当に、音楽のほうは傑作なのにさあ。。。
もう言わずともおわかりでしょうが、決しておすすめできない作品。
教師と生徒の恋愛モノor拉致監禁陵辱モノが好きな人は読んでみれば? といったところです。
お姉ちゃんは殺された、同級生の男子に。
偶然のバイク事故に見せかけて、殺されたんだ。
美しくて、優しくて、心の真っ白な人だった。
お姉ちゃんの死の真相は、あたしがはっきりさせる――。
あとを追うように、姉と同じ都立高校を選んだ結花。
だがそこには、覗いてはならない姉のおぞましい秘密が――。
***
誉田氏の著作を読むのは初めてなので何とも言えませんが少なくとも
本作に関しては。。。
〝駄作〟。少なくとも私のカテゴリーの中では。
まず文章が稚拙。
陳腐な表現、同じ言い回しの使いまわし、挙句
言葉の使い方が間違っているところすらあるし(プロとしてこれはあまりにも。。。)、
正直ストーリーを追う以前に文章を読むのが苦痛だった。
しかもそのストーリー自体もありきたり。でも何より最悪なのは
登場人物たちの心理描写があまりに拙いこと。
説明してくれないとわからないところも説明してくれていなかったりするので(もし著者が
『行間を読め』とでもいうつもりで敢えて描写を省いているなら無理難題にもほどがある)、
なぜ〝姉〟が主人公である妹をそこまで大事に思っていたのかが未だにわからない。
そしてそんな〝姉〟のことを心から大事に思っていたらしき妹が、クライマックスで
〝姉〟にまつわるある残酷な真相を知らされても、
その後大してショックを受けた様子もなく振舞っているその不自然さ。
東京創元社の〝ミステリ・フロンティア〟シリーズは(私から見ると)かなり当たり外れの大きい
シリーズだけど、その〝外れ〟のほうをうかつにも読んでしまったときの脱力感を思わず覚えた。
(ちなみに実際の上記シリーズで私が「ハズした。。。」とうなだれたのは、ほしおさなえの
〝ヘビイチゴ・サナトリウム〟だったりする)
読み終えたあと思わずベートーヴェンの〝月光〟↓を聴いて口直ししてしまった。
本当に、音楽のほうは傑作なのにさあ。。。
もう言わずともおわかりでしょうが、決しておすすめできない作品。
教師と生徒の恋愛モノor拉致監禁陵辱モノが好きな人は読んでみれば? といったところです。
助けて。
臨床心理士・嵯峨敏也はある小学校の女性教諭に注目する。
彼女は独自の音楽療法を用いて不登校の児童たちを立ち直らせ、文部科学省からも
教育者として高い評価を受けていた。
が、彼女の一家を襲った惨劇が、彼女の人生を大きく変えてしまった。
凶悪な犯行に及びながらも決して罰せられることがない犯罪少年に、
彼女は激しく憎悪を燃やす。
やがて復讐の一線を越えたとき、彼女のなかに冷酷な“もうひとりの自分”が宿り始めた…。
「催眠」の本格的サイコミステリーに立ちかえりつつ、より一層のリアリズムに満ちた
精神医学と臨床心理学の世界を背景に、嵯峨の知識と能力の限りを尽くした活躍を描く
新機軸スリラー最高傑作。
***
面白かったー!
と、えらく単純な感想ですが、本当に面白いものを読むと案外
こんな言葉しか出てこなかったりするものです。
〝催眠〟〝後催眠〟に続く臨床心理士・嵯峨敏也シリーズの三作目にあたる本作、
私の中では他二作とは比較にならないほどダントツトップの面白さ。
〝催眠〟のように映画化とまではいかなくても、二時間ドラマぐらいには是非してほしい。
主人公・嵯峨が猟奇殺人犯と化してしまった女性に犯行を自白させるために仕掛けたトラップも、
その中身は多少読めてしまってはいたものの、それでも彼女が見事それにかかるシーンでは
あまりの爽快感(というより快感?)に思わずおお、とうめき声がもれてしまった。
古畑任三郎or杉下右京ばりの犯人への引っ掛けのうまさ。嵯峨かっこいい。
&ここまで良質なエンターテインメントを書き上げた著者の松岡氏、見事です。
まあひとつだけ難を言うなら、冒頭で〝彼〟が自殺してしまったのはちょっと
ご都合主義だったけどね。それ以外は心底楽しませてもらったので目をつぶります。
シリーズものではありますが、これだけ読んでも十分に楽しめます。
非常におすすめの一冊。
ていうかこの小説の表紙。。。ファーゴ?
臨床心理士・嵯峨敏也はある小学校の女性教諭に注目する。
彼女は独自の音楽療法を用いて不登校の児童たちを立ち直らせ、文部科学省からも
教育者として高い評価を受けていた。
が、彼女の一家を襲った惨劇が、彼女の人生を大きく変えてしまった。
凶悪な犯行に及びながらも決して罰せられることがない犯罪少年に、
彼女は激しく憎悪を燃やす。
やがて復讐の一線を越えたとき、彼女のなかに冷酷な“もうひとりの自分”が宿り始めた…。
「催眠」の本格的サイコミステリーに立ちかえりつつ、より一層のリアリズムに満ちた
精神医学と臨床心理学の世界を背景に、嵯峨の知識と能力の限りを尽くした活躍を描く
新機軸スリラー最高傑作。
***
面白かったー!
と、えらく単純な感想ですが、本当に面白いものを読むと案外
こんな言葉しか出てこなかったりするものです。
〝催眠〟〝後催眠〟に続く臨床心理士・嵯峨敏也シリーズの三作目にあたる本作、
私の中では他二作とは比較にならないほどダントツトップの面白さ。
〝催眠〟のように映画化とまではいかなくても、二時間ドラマぐらいには是非してほしい。
主人公・嵯峨が猟奇殺人犯と化してしまった女性に犯行を自白させるために仕掛けたトラップも、
その中身は多少読めてしまってはいたものの、それでも彼女が見事それにかかるシーンでは
あまりの爽快感(というより快感?)に思わずおお、とうめき声がもれてしまった。
古畑任三郎or杉下右京ばりの犯人への引っ掛けのうまさ。嵯峨かっこいい。
&ここまで良質なエンターテインメントを書き上げた著者の松岡氏、見事です。
まあひとつだけ難を言うなら、冒頭で〝彼〟が自殺してしまったのはちょっと
ご都合主義だったけどね。それ以外は心底楽しませてもらったので目をつぶります。
シリーズものではありますが、これだけ読んでも十分に楽しめます。
非常におすすめの一冊。
ていうかこの小説の表紙。。。ファーゴ?
大丈夫、もう僕たちしか残っていない。
楽しもう。
どこまでもはてしなく、リズムとともに続くブルー。
どこまでも細く、蛇のようにうねるスモーク。
これが僕たちの場所。あれが僕たちの墓。
飛ぶために生まれてきた子どもたちの果てしない物語、「スカイ・クロラ」シリーズ完結。
***
。。。わからない。
シリーズ最終巻の本作、全作丹念に読み込んできた私でも理解に難い。
まず語り部が誰かわからない。
巻ごとに語り部が変わる本シリーズ、これまでの語り部は
カンナミ・ユーヒチ、クサナギ・スイト、クリタ・ジンロウの三人のいずれか一人だったのに、
本作ではシーンごとに〝語り部〟の記憶や行動、台詞がその三人にシフトするので(特に
カンナミとクリタにその傾向が顕著)、誰が本作を語っているのか判断できない(皆一人称は
〝僕〟だし)。
敢えてそう描写することで物語とその読み手との間の壁を取り払い、
〝自分が誰かわからない、あいまいな存在の僕〟、つまりは〝僕=読者〟という風に
読み手に思わせたかったのかとも一瞬思ったけど、まさかそんな
ネバーエンディングストーリー的な狙いで著者が本作を書いたとも思えないし。
ラストでソマナカが〝僕〟に言いかけた台詞の続きも情けないことに予測できない。
映画〝スカイ・クロラ〟における解釈を原作である本書にも当てはめれば
何がどうなっているのかを理解することは可能だけど、できれば原作だけで
著者の言わんとすることを悟りたかったな。まだまだ修行が足りないようです。。。
本作を正しく理解できた方は是非ご一報ください。
それにしてもこのシリーズは、最終巻を読んだあと第一作目を読みたくなる小説だよなー。
(時系列的には一作目がエンディングなので、当たり前ではあるんだけど)
読めばこの漠然とした読後感が目からウロコに変わるでしょうか。
もう一度読んでみよっと。
でも、本作のタイトルに〝Cradle(ゆりかご)〟という単語が使われていることを踏まえて考えると、
やはりクリタは全作のラストで死んでいて(どうにも読んでいてそう思えた)、その代わりに
〝製造〟されたクリタの生まれ変わりとしてのカンナミが本作の語り部であり、
時おり記憶がクサナギとリンクするのは〝製造〟の際の些細なミス、もしくは製造者が意図的に
カンナミに織り込んだものであるのかもしれない、という気がしないでもないけど。。。
楽しもう。
どこまでもはてしなく、リズムとともに続くブルー。
どこまでも細く、蛇のようにうねるスモーク。
これが僕たちの場所。あれが僕たちの墓。
飛ぶために生まれてきた子どもたちの果てしない物語、「スカイ・クロラ」シリーズ完結。
***
。。。わからない。
シリーズ最終巻の本作、全作丹念に読み込んできた私でも理解に難い。
まず語り部が誰かわからない。
巻ごとに語り部が変わる本シリーズ、これまでの語り部は
カンナミ・ユーヒチ、クサナギ・スイト、クリタ・ジンロウの三人のいずれか一人だったのに、
本作ではシーンごとに〝語り部〟の記憶や行動、台詞がその三人にシフトするので(特に
カンナミとクリタにその傾向が顕著)、誰が本作を語っているのか判断できない(皆一人称は
〝僕〟だし)。
敢えてそう描写することで物語とその読み手との間の壁を取り払い、
〝自分が誰かわからない、あいまいな存在の僕〟、つまりは〝僕=読者〟という風に
読み手に思わせたかったのかとも一瞬思ったけど、まさかそんな
ネバーエンディングストーリー的な狙いで著者が本作を書いたとも思えないし。
ラストでソマナカが〝僕〟に言いかけた台詞の続きも情けないことに予測できない。
映画〝スカイ・クロラ〟における解釈を原作である本書にも当てはめれば
何がどうなっているのかを理解することは可能だけど、できれば原作だけで
著者の言わんとすることを悟りたかったな。まだまだ修行が足りないようです。。。
本作を正しく理解できた方は是非ご一報ください。
それにしてもこのシリーズは、最終巻を読んだあと第一作目を読みたくなる小説だよなー。
(時系列的には一作目がエンディングなので、当たり前ではあるんだけど)
読めばこの漠然とした読後感が目からウロコに変わるでしょうか。
もう一度読んでみよっと。
でも、本作のタイトルに〝Cradle(ゆりかご)〟という単語が使われていることを踏まえて考えると、
やはりクリタは全作のラストで死んでいて(どうにも読んでいてそう思えた)、その代わりに
〝製造〟されたクリタの生まれ変わりとしてのカンナミが本作の語り部であり、
時おり記憶がクサナギとリンクするのは〝製造〟の際の些細なミス、もしくは製造者が意図的に
カンナミに織り込んだものであるのかもしれない、という気がしないでもないけど。。。
「ガキでいいんだよ。いずれ嫌でも大人になる、誰だってな」
1968年12月10日。
東京・府中。
雷雨の朝、白いオートバイ。
18歳の少女。
1968年12月10日。
東京・府中。
雷雨の朝、白いオートバイ。
18歳の少女。
あの「三億円事件」の秘密の扉が、今静かに開かれる。
***
登場人物たちがほぼ全員ステロタイプで面白みがない、
岸が強奪事件を計画した理由は自分自身の〝復讐〟のためなのに
自分はあくまで客観に徹し過ぎ・主人公にすべてをまかせすぎ、
全体的な雰囲気は悪くないのに主人公の喋り口調がスケバン調(まあ本作の
時代背景を考えればある意味リアルですが)で興醒め、
といろいろと突っ込みたいポイントはありますが、なかなかの良作なのではと思います。
ただ、〝三億円事件の犯人が実は女子高生だった!〟というあらすじのインパクトが
あまりに強く期待し過ぎたためか、読後「なんだ、こんなもんか」とちょっとがっかり。
強奪事件そのものよりも、終盤で明らかになるある人物二人の隠された人間関係のほうに
よっぽど驚かされました。
まあただ、三億円騒動の顛末には著者の皮肉を感じて苦笑してしまいましたが。
「そんなもんだよな」と少し笑えた。
純文とエンタメとミステリがほどよく混ざった、良質な青春小説だとは思う。
ページ数もそんなにないので三億円事件を知っている人、興味のある人は
一度手にとってみてほしい一冊です。
ふしぎ、大好きなのにいつか逃げ出せる日を夢見てる。
チャイルドモデルから芸能界へ。幼い頃からテレビの中で生きてきた
美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…。
成長する少女の心とからだに流れる18年の時間を描く待望の長篇小説。
***
小説って間を置いて読み返してみると、ぜんぜん違った読み取り方ができるんだよなー。。。
発売当初に本作を読んだときは、主人公の夕子の生き様に対して(そしてそれを書いた
著者の綿矢さんに対しても)あまりに浅はかで薄っぺらだという印象しか受けなかったのに、
再読すると夕子の精神が植物のように悲鳴もあげず誰にも気づかれずにゆっくり、ゆっくりと
崩壊していく過程が痛いほどに伝わってきて読んでいて苦しくなった。
よしもとばななさんの〝アムリタ〟にも幼少時から芸能界入りして少しずつ壊れていく
人物が登場するけど、その人物がふいに死んでしまうシーンを思い出してやるせなくなった。
造花の観葉植物をそうとは気づかず「元気をもらった」と言ってしまうほどに蝕まれた夕子。
〝夢〟を大勢の他人に〝与える〟ほどに、自分自身の夢が削り取られていっていることに
気づかないところまで追い詰められてしまった夕子。
激流に流されそうなギリギリの状態なのに必死にそのことに気づかない振りをして微笑み、
それでもその手のひらだけは今にも千切れそうなワラをしっかりと掴んで離さない夕子。
飲み込まれるのは時間の問題。
でも夕子には一縷の希望がある。
その〝希望〟と再会することで、もう一度彼女が本来の心を取り戻すよう願ってやまない。
激流の中から救い出されることを願ってやまない。
〝アムリタ〟の彼女と同じ運命を、夕子が辿らずに済むように祈りたい。
それにしても今回みたいに〝物語〟を前面に押し出すような作風より、
綿矢さんなりの感性やセンスを主体に置いた〝インストール〟〝蹴りたい背中〟のほうが
レベルが高い感は否めなかったな。
でも彼女もまだまだ若いし、これからどんな風に作風が変化していくのかを
ファンとして見守り続けるのもまた楽しみでもあります。
(顔のほうは変化させないでほしかったけど。。。元のままで十分可愛いのに。。。(TT))
チャイルドモデルから芸能界へ。幼い頃からテレビの中で生きてきた
美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…。
成長する少女の心とからだに流れる18年の時間を描く待望の長篇小説。
***
小説って間を置いて読み返してみると、ぜんぜん違った読み取り方ができるんだよなー。。。
発売当初に本作を読んだときは、主人公の夕子の生き様に対して(そしてそれを書いた
著者の綿矢さんに対しても)あまりに浅はかで薄っぺらだという印象しか受けなかったのに、
再読すると夕子の精神が植物のように悲鳴もあげず誰にも気づかれずにゆっくり、ゆっくりと
崩壊していく過程が痛いほどに伝わってきて読んでいて苦しくなった。
よしもとばななさんの〝アムリタ〟にも幼少時から芸能界入りして少しずつ壊れていく
人物が登場するけど、その人物がふいに死んでしまうシーンを思い出してやるせなくなった。
造花の観葉植物をそうとは気づかず「元気をもらった」と言ってしまうほどに蝕まれた夕子。
〝夢〟を大勢の他人に〝与える〟ほどに、自分自身の夢が削り取られていっていることに
気づかないところまで追い詰められてしまった夕子。
激流に流されそうなギリギリの状態なのに必死にそのことに気づかない振りをして微笑み、
それでもその手のひらだけは今にも千切れそうなワラをしっかりと掴んで離さない夕子。
飲み込まれるのは時間の問題。
でも夕子には一縷の希望がある。
その〝希望〟と再会することで、もう一度彼女が本来の心を取り戻すよう願ってやまない。
激流の中から救い出されることを願ってやまない。
〝アムリタ〟の彼女と同じ運命を、夕子が辿らずに済むように祈りたい。
それにしても今回みたいに〝物語〟を前面に押し出すような作風より、
綿矢さんなりの感性やセンスを主体に置いた〝インストール〟〝蹴りたい背中〟のほうが
レベルが高い感は否めなかったな。
でも彼女もまだまだ若いし、これからどんな風に作風が変化していくのかを
ファンとして見守り続けるのもまた楽しみでもあります。
(顔のほうは変化させないでほしかったけど。。。元のままで十分可愛いのに。。。(TT))
「だが、本物だ」
インチキ催眠術師の前に現れた不気味な女性。突然大声で笑い出しては、
自分は宇宙人だと叫ぶ彼女が見せる予知能力は話題となり、
日本中のメディアが殺到した。その頃、二億円もの横領事件の捜査線上には、
ある女性が浮かび上がっていた。
臨床心理士・嵯峨敏也が超常現象の裏を暴き巨大な陰謀に迫る松岡ワールドの原点。
***
うーん。。。
多重人格系の話なら〝ISOLA〟(貴志祐介)とか〝39〟(永井泰宇)のほうが
よっぽど面白かったなあ。。。
本作は心理学をテーマに扱っている割に精神病理についての説明があまりにもアバウトというか
いい加減というか。。。これがけっこう昔の作品だということを差し引いて考えても、
これは統合失調症や解離性同一性障害(いわゆる多重人格)という病気に対して
読み手に間違った解釈を与えかねない小説のような気がする。
ミステリとしても冗長で、やたら長い割りにはありきたりな結末だったし。
ただ、〝催眠〟というものに対して抱いていた私の偏見(というか思い違い)を
修正してくれたことには感謝。恥ずかしながら催眠ってものは、よくテレビでやってる類の
うさんくさいものだと思っていたので。
(でも実際〝催眠療法〟と銘打っている病院にもヤブなはかなりあるので
受診する人はよく下調べをしてから治療を受けるのが賢明です)
で、最後に言いたいのは。。。
あとがきで解説を書いていた某氏が「そんなことは突っ込むだけ野暮だ」と書いてはいたけど、
敢えて突っ込ませてもらう。
こんな臨床心理士いねえよ!
一人の人間にここまでいちいち時間割いて心砕いてたら(しかも無料で)身がもたんわ。
まあ私自身が今カウンセリングを受けている身なのでやっかみも多少ありますが。。。
因みに蛇足ですが〝統合失調症〟〝解離性同一性障害〟等の精神病について
正しい知識を得たい人には〝症例A〟(多島斗志之)がおすすめ。
かなりリアルに精神病理の実情が書かれており、小説としても面白いです。
インチキ催眠術師の前に現れた不気味な女性。突然大声で笑い出しては、
自分は宇宙人だと叫ぶ彼女が見せる予知能力は話題となり、
日本中のメディアが殺到した。その頃、二億円もの横領事件の捜査線上には、
ある女性が浮かび上がっていた。
臨床心理士・嵯峨敏也が超常現象の裏を暴き巨大な陰謀に迫る松岡ワールドの原点。
***
うーん。。。
多重人格系の話なら〝ISOLA〟(貴志祐介)とか〝39〟(永井泰宇)のほうが
よっぽど面白かったなあ。。。
本作は心理学をテーマに扱っている割に精神病理についての説明があまりにもアバウトというか
いい加減というか。。。これがけっこう昔の作品だということを差し引いて考えても、
これは統合失調症や解離性同一性障害(いわゆる多重人格)という病気に対して
読み手に間違った解釈を与えかねない小説のような気がする。
ミステリとしても冗長で、やたら長い割りにはありきたりな結末だったし。
ただ、〝催眠〟というものに対して抱いていた私の偏見(というか思い違い)を
修正してくれたことには感謝。恥ずかしながら催眠ってものは、よくテレビでやってる類の
うさんくさいものだと思っていたので。
(でも実際〝催眠療法〟と銘打っている病院にもヤブなはかなりあるので
受診する人はよく下調べをしてから治療を受けるのが賢明です)
で、最後に言いたいのは。。。
あとがきで解説を書いていた某氏が「そんなことは突っ込むだけ野暮だ」と書いてはいたけど、
敢えて突っ込ませてもらう。
こんな臨床心理士いねえよ!
一人の人間にここまでいちいち時間割いて心砕いてたら(しかも無料で)身がもたんわ。
まあ私自身が今カウンセリングを受けている身なのでやっかみも多少ありますが。。。
因みに蛇足ですが〝統合失調症〟〝解離性同一性障害〟等の精神病について
正しい知識を得たい人には〝症例A〟(多島斗志之)がおすすめ。
かなりリアルに精神病理の実情が書かれており、小説としても面白いです。
「あたりまえですよ。俺は……ミュージシャンですから」
唐島英治クインテットの面々が遭遇した不思議な出来事や謎。
テナーサックス奏者・永見緋太郎の鮮やかな名推理は――。
ライヴ感溢れる文体が魅力の“日常の謎”的ジャズミステリシリーズ、第二弾。
名古屋のライヴハウスに現れたという伝説のブルースマンにまつわる謎、
九州地方の島で唐島と永見が出合った風変わりな音楽とのセッションの顛末、
“密室”から忽然と消失したグランドピアノの行方、など七編を収録。
田中啓文おすすめのジャズレコード、CD情報付。
★収録作品★
苦い水
酸っぱい酒
甘い土
辛い飴
塩っぱい球
渋い夢
淡白な毒
***
あまりに好きで、図書館で借りてきたものを読んだ直後に購入してしまった
↓の続編となる音楽ミステリ。
音楽ミステリ作家を志す者として音楽をテーマにした様々な小説を読み漁ってきた
私ではありますが、初めて〝落下する緑〟に出会ったときには、大きな衝撃を感じると共に
「うわーこんなものを書く人が先達にいるんじゃ自分が音楽ミステリ作家として大成するのは
難しいなあ。。。」
と焦りを感じた記憶があります。
文体も非常にテンポがよくて読みやすく、登場人物も全員一癖ありつつも
魅力溢れる人物ばかり。特に探偵役の天才サックスプレイヤー・永見には、
一時期本気で惚れていた時期もあったほど。
それだけ著者の生み出すキャラが見事に立っているんだよなー。
たぶん永見は男性から見ても友人になりたいタイプなんじゃないかな。
それか直接的には関わりたくないけど遠くから見守っていたいような笑。
収録されている短編も、それぞれに音楽ミステリならではのトリックが仕掛けられていて
読むたびに「うおー音楽をそうトリックに使ってくるかあ!」とうならされます。
シリーズ二作目になる本作は、一作目に比べてやや永見のキャラが弱いことと、
彼と狂言回しの唐島との掛け合いがあまり面白くなかったことが少し残念でしたが、
一話一話のクオリティは相変わらず保たれていて最後までとても楽しく読めた。
特に表題作〝辛い飴〟は、現実にはあり得ないことだろうとわかってはいても
思わず鳥肌が立ってしまいました。
でもやっぱり何より本シリーズの一番すごいところは、読んでいると
サックスやピアノ、トランペットの音が実際に聴こえてくるその表現力&臨場感。
まさに〝読む音楽〟です、これは。
ちなみに蛇足ですが、本作のある短編のトリックが
今自分が考えているものと若干かぶっていてやばい。。。と焦り中。
尊敬する作家と考えがかぶったというのは栄誉だけどでもそれじゃあなあ。。。
。。。ま、いっか。自分は自分だし偶然だし。
とにかくおすすめのシリーズ。
是非是非是非、読んでみてください。
唐島英治クインテットの面々が遭遇した不思議な出来事や謎。
テナーサックス奏者・永見緋太郎の鮮やかな名推理は――。
ライヴ感溢れる文体が魅力の“日常の謎”的ジャズミステリシリーズ、第二弾。
名古屋のライヴハウスに現れたという伝説のブルースマンにまつわる謎、
九州地方の島で唐島と永見が出合った風変わりな音楽とのセッションの顛末、
“密室”から忽然と消失したグランドピアノの行方、など七編を収録。
田中啓文おすすめのジャズレコード、CD情報付。
★収録作品★
苦い水
酸っぱい酒
甘い土
辛い飴
塩っぱい球
渋い夢
淡白な毒
***
あまりに好きで、図書館で借りてきたものを読んだ直後に購入してしまった
↓の続編となる音楽ミステリ。
音楽ミステリ作家を志す者として音楽をテーマにした様々な小説を読み漁ってきた
私ではありますが、初めて〝落下する緑〟に出会ったときには、大きな衝撃を感じると共に
「うわーこんなものを書く人が先達にいるんじゃ自分が音楽ミステリ作家として大成するのは
難しいなあ。。。」
と焦りを感じた記憶があります。
文体も非常にテンポがよくて読みやすく、登場人物も全員一癖ありつつも
魅力溢れる人物ばかり。特に探偵役の天才サックスプレイヤー・永見には、
一時期本気で惚れていた時期もあったほど。
それだけ著者の生み出すキャラが見事に立っているんだよなー。
たぶん永見は男性から見ても友人になりたいタイプなんじゃないかな。
それか直接的には関わりたくないけど遠くから見守っていたいような笑。
収録されている短編も、それぞれに音楽ミステリならではのトリックが仕掛けられていて
読むたびに「うおー音楽をそうトリックに使ってくるかあ!」とうならされます。
シリーズ二作目になる本作は、一作目に比べてやや永見のキャラが弱いことと、
彼と狂言回しの唐島との掛け合いがあまり面白くなかったことが少し残念でしたが、
一話一話のクオリティは相変わらず保たれていて最後までとても楽しく読めた。
特に表題作〝辛い飴〟は、現実にはあり得ないことだろうとわかってはいても
思わず鳥肌が立ってしまいました。
でもやっぱり何より本シリーズの一番すごいところは、読んでいると
サックスやピアノ、トランペットの音が実際に聴こえてくるその表現力&臨場感。
まさに〝読む音楽〟です、これは。
ちなみに蛇足ですが、本作のある短編のトリックが
今自分が考えているものと若干かぶっていてやばい。。。と焦り中。
尊敬する作家と考えがかぶったというのは栄誉だけどでもそれじゃあなあ。。。
。。。ま、いっか。自分は自分だし偶然だし。
とにかくおすすめのシリーズ。
是非是非是非、読んでみてください。
私を見ないで。
東京でカメラマンとして活躍する弟。
実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。
対照的な兄弟。だがふたりは互いを尊敬していた。あの事件が起こるまでは…。
2006年7月公開映画を、監督自らが小説化。
***
様々な人の証言から意外な真相が導き出されていく――
〝愚行録〟(貫井徳朗)や〝Q&A〟(恩田陸)っぽい構成の小説です。
ただ、映画のノベライズであるせいか、上記二作と比べると、文章や構成がうまい割りに
小説と呼ぶにはどこか薄っぺらであっけない印象を受けた。
けれど、その後の展開を敢えて書かず読み手の想像に委ねるラストシーンには
感動と心地よい焦燥感がこみ上げてきて、思わず主人公二人のために祈ってしまった。
〝ハイドラ〟(金原ひとみ)のラストでも感じたけど、こういう
「え、結局どっちに転ぶの?!」というところで終わってしまう話というのが
切なくてスリリングで自分的にはすごく好きです。
おすすめですが、でもやっぱりこれはまずは映画を観るべきかもな、と思う。
今度借りてくる予定です。
◆後日談◆
映画観ました(10/14)。
オダギリジョーの演技が微妙だったことをのぞけば、終始淡々とはしているものの
良質な映画だった。
ラストの兄弟を隔てる道路が〝川〟を暗示しているようで、そこに橋がかかるかどうか
思わず息をつめて見守ってしまうのはやはり〝映像〟ならではの効果。
でもラストシーンの緊張感と余韻は小説のほうが好きかな。
映画はその後〝兄〟がどうするかなんとなく予測できてしまう感じだったし。
でも全体的には映画のほうがよかった。
東京でカメラマンとして活躍する弟。
実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。
対照的な兄弟。だがふたりは互いを尊敬していた。あの事件が起こるまでは…。
2006年7月公開映画を、監督自らが小説化。
***
様々な人の証言から意外な真相が導き出されていく――
〝愚行録〟(貫井徳朗)や〝Q&A〟(恩田陸)っぽい構成の小説です。
ただ、映画のノベライズであるせいか、上記二作と比べると、文章や構成がうまい割りに
小説と呼ぶにはどこか薄っぺらであっけない印象を受けた。
けれど、その後の展開を敢えて書かず読み手の想像に委ねるラストシーンには
感動と心地よい焦燥感がこみ上げてきて、思わず主人公二人のために祈ってしまった。
〝ハイドラ〟(金原ひとみ)のラストでも感じたけど、こういう
「え、結局どっちに転ぶの?!」というところで終わってしまう話というのが
切なくてスリリングで自分的にはすごく好きです。
おすすめですが、でもやっぱりこれはまずは映画を観るべきかもな、と思う。
今度借りてくる予定です。
◆後日談◆
映画観ました(10/14)。
オダギリジョーの演技が微妙だったことをのぞけば、終始淡々とはしているものの
良質な映画だった。
ラストの兄弟を隔てる道路が〝川〟を暗示しているようで、そこに橋がかかるかどうか
思わず息をつめて見守ってしまうのはやはり〝映像〟ならではの効果。
でもラストシーンの緊張感と余韻は小説のほうが好きかな。
映画はその後〝兄〟がどうするかなんとなく予測できてしまう感じだったし。
でも全体的には映画のほうがよかった。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
[11/21 LaraGonzalez]
[02/24 kovo]
[02/24 稀乃]
[01/10 kovo]
[01/10 ゆうこ]
最新トラックバック
最新記事
(02/13)
(01/15)
(01/07)
(12/26)
(12/17)
ブログ内検索
最古記事
(09/14)
(09/14)
(09/15)
(09/25)
(09/29)