苦しみと引き替えの才能と、安らかな凡庸と、どちらが幸せなのかと」
華々しい経歴を持ちながら、訳あって自分の絵筆がとれない洋画家の本庄敦史は、
師の勧めにより知的障害者更生施設「ユーカリ園」でアートワークグループの指導を
することになった。
初めて訪れた「ユーカリ園」の園庭で敦史は、妖精のように美しくあどけない、22歳の
河合真理亜と出会う。真理亜は少女時代に崖から転落、頭部を打った後遺症による
精神発達遅滞のため「ユーカリ園」で暮らしていた。
敦史に絵画の指導を受け始めた真理亜は、たちまち驚異的な画才を発揮する。
真理亜は、後遺症と引き替えに、高度な直観像記憶・カメラアイを獲得していたのだ。
真理亜の絵は、瞬く間に評判となるが、あるとき彼女が描いた一枚の絵が、
真理亜と敦史の運命を激しく変えていく。
その絵こそ、時効を目前に控えた虐殺事件の「目撃証言」だった。
芸術によって結ばれた至高の純愛。
欲望と悪意と謀略が支配する世界に生まれた、あまりにも儚い無垢な心を
過酷な運命が翻弄する。
真理亜は、深い記憶の底から追ってくる恐怖の刃から逃れ、
聖なる未来へと辿り着けるのか。
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作家が、
圧倒的なリアリティと壮大なスケールで描きだす現代の『神曲』。
今、新たなる伝説が始まる──
***
主な感想としては、〝四日間の奇跡〟(浅倉卓弥)とかなり似てるよなあ、ということ。
知的障害&トラウマを持ちつつも天才的な芸術の才能を宿した少女と、それを世話する
心の傷&罪悪感を抱えた、かつては天才と呼ばれたが今はもうそのころの栄華を
完全に手放してしまっている男、そんな二人が主役だというところもそうだし、
文章はむちゃくちゃうまいんだけどあまりに整いすぎていて教科書を読んでいるような
気にさせられる文体も共通してる。
あとは〝異様に長い〟。ここまでページ数割かなくても。。。ってほど長い。
そのせいでちょっと中だるみしてしまっていたように思えた。
そして〝四日間~〟のほうがあくまでファンタジーに徹していたのに対して、
本作はポエティックな描写が延々続いたかと思えば突如福井晴敏ばりのアクションが
炸裂するシーンがあったりして、物語の空気感が分裂してしまっている気がした。
主人公が絵を描けなくなった理由というのも予想より陳腐だし、
作中のある登場人物の恋心がラストではご都合主義的になかったことになってるし、
悪役が全然悪役らしくなくて(というかステロタイプすぎて)、主人公たちが
危機に瀕するシーンもまったく手に汗握れなかった(ただし〝一矢〟という悪役の狂気っぷりは
ハンパじゃなくてうっかりホレそうになった。一本キレてるキャラが好きなんだよ私は。。。)。
でもなんだかんだ書いたものの、私的には〝四日間~〟よりも本作のほうが
何倍も面白かったですけどね。500P近くの長編ですがおすすめです。
個人的に本作を読んで思ったのは、「私もハイパーグラフィア(病名)に罹りたい。。。」。
スランプに陥っている身としては^^;
あの病気はあれはあれでつらいに決まってるんですが。
因みに〝四日間の奇跡〟や本作のような物語が好きな人には、
このマンガ↓もおすすめです。コンセプトが似てるし、中学のときに読んで以来
大人になった今でも好きでよく読み返しているので。
歌が、始まる。
誰にでもその人だけの歌(ストーリー)がある――
恋人に、友達に、きっと伝えたくなる7つのやさしい物語。
『東京バンドワゴン』の著者が描く珠玉の短編集!
★収録作品★
クラプトンの涙
左側のボーカリスト
唇に愛を
バラードを
笑うライオン
その夜に歌う
明日を笑え
***
著者の既刊に〝歌〟がやたらタイトルやモチーフに出てくるものが多いので
たぶん音楽好きな作家さんなんだろうなとは思ってましたが、ついに
音楽だけをテーマにした短編集を出してきましたねー。
歌をやっている私としては嬉しい限り。
全体的にちょっとクサめですが(そして文体が甘くてやわらかい感じなので
どちらかというと小説というより童話っぽいですが)なかなかの良作でした。
〝クラプトンの涙〟はほどよくミステリ要素が入っていてラストであっと驚かされるし、
〝左側のボーカリスト〟も登場人物二人の運命的な絆の深さにじんとさせられる。
多少ネタやオチがかぶっている話があったり、〝バラードを〟のように
「それはちょっと無理があるだろ」的な話も中にはあるし(ネタばれにならない程度にいうと、
もしこの話が現実にあったら、書かれる曲はバラードではなくレクイエム、あるいはもっと
絶望的な旋律になるはず)、クサすぎて思わず失笑してしまった話も(すいません性格歪んでて)
いくつか収録されていますが、読んで決して損はしないはず。
それにしても、作中のある登場人物が奏でる曲のタイトルに
〝HEART BEAT〟(小路氏の既刊)が使われていたのには
氏の遊び心を感じてファンとして嬉しかったなー。
おすすめの一冊です。
ただ細かい難をいえば、氏の作品って語尾が「~なんだ。」「~だったんだ。」が多くて
しかもその使い方が不自然なので、そこさえ直してくれればなーと読むたび毎回思ってしまう。
善悪ってなに? 何を基準に誰が決めるの?
医学部合格の太鼓判を押されている桂木涼子が始めた「悪魔の実験」。それは、
最愛の母親に劇薬タリウムを飲ませることだった…。
『ポンツーン』連載を加筆・修正し単行本化。
***
面白いといえば面白いんだけど、
実際にあった事件に多少の色づけをして書いているだけ、という点では
著者の力量を素直に認めづらい作品ではある(〝東京タワー〟(リリー・フランキー)や
〝フラッシュバック〟(永井泰宇)と同じような)。
それにやっぱり実話となるとさすがに面白いと思っている自分に嫌気がさして
どうにものめりこみづらいんだよな。。。(じゃあ読むなよという話ですが)
ヒロインが猟奇的行動に走るに至った理由や経緯も、とりあえず作中で
説明されてはいるもののどこか輪郭がぼんやりしていて掴みづらいし、
彼女が何度も声高に叫ぶ〝主張〟も、ありがちな上にちょっと宗教がかっていて
賛同しにくかった(って賛同しちゃまずいんだけど)。
しかもところどころに、彼女は統合失調症を発症しているのではと匂わせる描写があり、
一体ヒロインは独自の論理に基づいて冷静に行動しているのか、それとも病が彼女に
そうさせているのか、最後までよくわからなかった。
最後といえば、オチの会話ベタすぎて冷めた。
決してつまらなくはないんだけど。。。
おすすめはしづらい作品です、いろんな意味で。
読むもんじゃないなと思い知らされた一冊だった。
「それは犯罪っていうんだ」
女房の尻にしかれ、毎日の小遣い500円でカツカツの生活を送る須賀啓一、50歳。
彼が通勤電車の中でみかけた美しい女子高生に恋をする。
人生の半ばを過ぎながらも、生まれて初めてとも言える恋に燃えた啓一は、
女子高生を陰ながら支える守護天使になることを決意する。
その一方的、盲目的、騎士道的な恋は成就なるのか?
ネットブログの書き込みから変質者に誘拐されてしまった女子高生を
彼は救うことができるのか?
笑いとペーソスに満ちた、爆笑ハートフルラブストーリー!
***
〝空中ブランコ〟(奥田英朗)・〝神さまからひと言〟(荻原浩)以来だなあ。。。
小説を読んでここまで爆笑したのは。
もうほんと、うだつのあがらない主人公・啓一のやることなすこと裏目に出っぷりと
彼と登場人物たちとの絡みが、本作がデビュー作の新人作家が書いたとは思えないほど
面白いので、絶対に他人がいる場所では読まないほうがいいです。たぶん恥かきます。
それにしても著者の上村氏のこの筆力・表現力・構成力。。。言われなきゃ到底新人だなんて
信じられない。本作が大賞を射止めた〝日本ラブストーリー大賞〟はプロも応募可能な賞であり、
作者も経歴を見る限りもちろんまったくの素人ではないみたいですが、それにしてもすごい。
次の作品がとても楽しみな作家さんです。
冒頭から主人公がぶちかます数々のバカエピソードが実は重大な伏線になっており、
それがラストで一気に一つに収束する様も爽快&圧巻。
「伏線を読者に気づかれたくなければそれらを笑いの中に紛れ込ませればいい」と
外国の某有名ミステリ作家が言っていましたが、ほんとそうだなあと
こんなところで実感することになってしまった。
本大賞受賞作は映画化するそうなので、絶対に観に行きたいところです。
一人の作家を別の作家と比較して語るのは失礼かとも思いますが、
荻原浩氏や金城一紀氏の作品とテイストが似ているので、彼らのファンには特におすすめの
一冊です。
僕の命も、
君の命も、
すべてがここにある。
ここにあった。
永遠の命を持ち、戦い続ける子供たちキルドレ。
戦闘機乗りのクリタは、上司クサナギの幼馴染によって、
彼女が今や、キルドレでなくなっていると知らされるが……
大好評シリーズ急展開!
***
シリーズ最終章〝クレィドゥ・ザ・スカイ〟への橋渡しともいうべき第四作。
本作ではある一つの重大な秘密が明かされますが、それ以外は淡々と、
とりたてた起承転結もなく物語は進んでいきます。
唯一印象深かったのは、本作の語り部であるクリタにとっての〝花束〟という
ファクターが、最後の最後でその意味を変えるシーン。
そして人間的感情というものをほとんど持っていないかに見えるクリタが、
〝愛情〟とは何かについて、彼なりの答えを導き出すくだり。
月並みな表現ですが、ああやはりキルドレも一人の人間なのだなと。
そしてそれに気づくためにはやはり常人と同じように第三者への特別な感情が必要なのだなと
痛感させられた作品でした。
最終章を読むのが心から楽しみでもあり、
「もう次で終わりなのか。。。」と寂しい気持ちでもあります。
あともう少しこのシリーズの世界観に浸っていたかった。
思ってたよりずっとこの物語に惹かれていたんだな、私は。
他に、何を、どうすればよかった?
いわゆる女たらし系の「おれ」は、いろんな女性をナンパしつつ、
一人の恋人に出会ってここで「死のう」と思う…。
現代文学版「100万回生きたねこ」。第46回群像新人文学賞受賞作。
***
。。。駄目だ冷静な感想が思い浮かばない。
なんで?
なんで?
なんでここまで痛々しいほどに切ないラブストーリーが書ける?
主人公の男の最愛の女性は作中に一度も出てこないのに。
その見えない透明な存在が、ギリギリ胸と涙腺を締め付けてくるのはなんで?
たくさんの女と寝てばかりの主人公が(性格だってちゃらんぽらんで
美徳や魅力なんていったものは少しも感じられないこの男が)
この世で一番誠実な人間に見えてくるのはなんで?
主人公がある一人の女に向けた愛情があまりに本物であまりに純度が高すぎて、
感動したり涙することすら憚られた。むしろその崇高さに畏怖の念さえ感じた。怖かった。
彼の〝彼女〟に対する心理描写なんて一行も出てこないのに、
彼の思いの強さだけはもういいよってほど伝わってくる、この不思議な物語は一体なんだ?
〝彼女〟についての描写は、メール文のみで構成された17章だけ。
それ以外の〝彼女〟にまつわることには、主人公は口を閉ざしすべて隠してしまっている。
この世界の誰もからかばうように、触れさせないように。
〝彼女〟の描写がない、というのはつまりはそういうことなんだろう。
ほかのその他大勢の女性とは違って、唯一主人公に「君」と呼びかけられる〝彼女〟。
三人称ではなく二人称で。
私もそんな風に心で呼びかけてくれる人と出会いたいなと正直心底思ってしまった。
今まで読んだ(or映画で観た)どんなものよりも憧れる物語だ。
今まで出会った中で最高のラブストーリーだった。
〝彼女〟になりたい。
〝彼女〟が羨ましい。
本作を読んで泣けるとしたらその思いからくる悔しさと妬ましさだけだ。
↑ちなみにこれが知る人ぞ知る〝100万回生きたねこ〟。
読んだのだいぶ子供のころなのに未だに憶えてるんだよなあ。。。
それにしても私の好きになる純文作家はどうして愛知の人が多いんだろう。。。どうでもいいけど
戦後最大規模の鼓笛隊が襲い来る夜を、義母とすごすことになった園子の一家。
避難もせず、防音スタジオも持たないが、果たして無事にのりきることができるのか――。
表題作ほか書下ろし1編を含む全9編。
眩いほどに不安定で鮮やかな世界を見せ付ける、贅沢な傑作短編集。
★収録作品★
鼓笛隊の襲来
彼女の痕跡展
覆面社員
象さんすべり台のある街
突起型選択装置(ボタン)
「欠陥」住宅
遠距離・恋愛
校庭
同じ夜空を見上げて
***
誰もが一度は経験したことのある出来事や抱いたことのある感情を、
ファンタジーの要素を絡めることで遠まわしに、けれど直球で表現するより遥かに
心に響く形で描き出している本作。
それは胸に染みるものであったり薄ら寒くなるようなシュールなものだったりと
話によって様々ですが、三崎氏の作品を読むたびに「ふざけんな」と
壁本(=壁に本をぶん投げること)かましてた私にしてみれば異例ともいえる
太鼓判的良作でした。
〝となり町戦争〟と同じく、描写があまりに抽象的すぎて結局何が言いたいのか
わからない、読者の想像に委ねるにもほどがあるだろ的作品も中にはありましたが、
全体的に筆者の持つ独特な価値観・世界観がうまく物語に昇華されていて
偉そうに言えばなかなかの成功作なんじゃないかと思う。
〝遠距離・恋愛〟はクサすぎて「ハッ」とか鼻で笑ってしまったけど(三崎さんごめんなさい)、
〝彼女の痕跡展〟はなんともいえない(細かい&一部の人しかわからない例えをすれば
貴志祐介氏の〝クリムゾンの迷宮〟のラストシーンを読んだときのような)切ない気持ちになるし、
最終話〝同じ夜空を見上げて〟はそのタイトルから「どうせまたクサいんだろ」と
なめてかかっていたら読み終えた瞬間思わず涙が滲んでしまった。
多少の感性は要求されますがおすすめの短編集です。
私がこの著者の小説すすめたのそういや初めてだな。。。(ふだんはボロクソなので==;)
母に捨てられ、残された10万円で幼い弟とサバイバルを続ける少年、晴臣・13歳。
家庭に蝕まれ、日常的に家出を繰り返す少女、三葉瑠・16歳。
リストラされて鬱になり、妻も家を出ていったタクシー運転手、原田悟・41歳。
交錯する3人のハルの運命。
そして一挺の拳銃を軸に、新たな物語が動き始める……。
★収録作品★
ハル、ハル、ハル
スローモーション
8ドッグズ
***
うまいなあ。。。と言わざるを得ない。
物語の、そして何より〝言葉〟の伏線の張り方。最初に出てきたときは意味のなかった単語が、
ストーリーが進むにつれて途端に重大な意味を持つ言葉に変わる。
どういう脳みそしてるんですか? とあくまで厳粛かつ真剣に訊いてみたい。
筆致も物語の書き方も独特で、〝ロックンロール七部作〟を初めて読んで以来のファンですが、
本作でますます好きになってしまった。
笑えるのに泣けるってすごい。
ありがちなのに斬新ってすごい。
この著者は本当にすごい。
著作に犬ばっかり出してくるところと巻末で自作について自分で語っちゃうところは
正直どうかと思うけど。でも好き。
そういえばもうひとつこの作者すごいなあと思うのが、既存の物語(エピソード)を説明する文章が
むちゃくちゃ面白いということ。
〝ロックンロール~〟のときはエルビス等のミュージシャンについての実話を延々書いてるくだりが
あるんだけどものっすごい面白くて惹きつけられたし、本作にも某超有名小説について主人公が
言及するシーンがあるんだけど、ちなみに私はその小説の中身を知ってたんだけど、にも関わらず
それはもう楽しく読んだ。ひょっとすると実物を読むよりも。
こういう人っているんだよなー。既存の話をより輝かせて表現してみせることのできる人が。
あとひとつ、この年代の著者が若者を書くと、必ず喋りや行動が「うわー無理して書いてんなー」
って感じになっちゃうのが常なのに、古川作品からはそれを感じない。もう今年で42なのに。
これもかなり大したことだと思う。「そんなもんかあ?」と思う人は、一度荻原浩氏や朱川湊人氏の
小説を読んでみてください(いや、どっちも大好きな作家なんだけど)。
何はともあれこの小説に出会えてよかったなー。
〝健全なる絶望は健全なる肉体に宿る〟
私もこれを信条にしよう。
ギャ―――――!!!
(註:狂ったわけじゃありません笑)
走る道がないから走らないんだ――
人間魚雷「回天」。
発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。
ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、
みずから回天への搭乗を決意したのか。
命の重みとは、青春の哀しみとは――。
ベストセラー作家が描く戦争青春小説。
***
原作で号泣し映画まで観ました(主演の海老蔵の演技は微妙でしたが。。。)。
メインテーマ曲(これがまた最高)を延々垂れ流しながら小説のプロットを立てていた記憶もある。
それだけ私には影響の強い物語でした。
ストーリー自体はとりたてて斬新なところもなくだいたいこちらの予想通りに進んでいくのですが、
エピソードの一つ一つ、そして登場人物一人ひとりの内面や思考が実に細かく書き込まれていて、
彼らの存在や戦時下という世界観にすんなりと溶け込むことができます。
特に主人公の優しく誠実な性格には読み進めるごとに惹かれていき、ラストで彼が
ある大切な人に宛てて書いた手紙を読んだときにはまるで自分がそれを受け取ったかのように
苦しくなってボロボロに泣いてしまいました。
ちなみに私的に一番好きなのは、主人公と同じ〝回天〟乗りの、
いつも鏡ばかり見てる青年のエピソードかな。
本作を読んでいると、若い世代にはいかにも格好いいことのように思われている〝特攻〟と
いうものが、どれだけ無意味で無機質で虚しい行為なのかがわかって何とも言えない気分になる。
決して映画〝アルマゲドン〟や〝ディープインパクト〟のラストシーンみたいな
ダイナミックかつヒロイックなものじゃないよと言いたい。
もっと地味で、もっと残酷だ。
もちろんそれら特攻兵器に乗り込んだ青年(もしくは少年)たちの意志の力には
畏敬の念を抱いて止みませんが。。。
むちゃくちゃにおすすめの一冊です。
余談ですが〝回天〟を扱った物語、マンガだとこれ↓もおすすめ。
天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は
愛した女を守るため完全犯罪を目論む。
湯川は果たして真実に迫れるか?
数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ。
***
これまで長編ミステリは腐るほど読んできたけど、トリックがここまでシンプルかつ簡潔なものには
かつて巡り合ったことがない。
絵が下手な人はごてごてとキャンバスを塗りたくることで、
歌が下手な人は歌い方に癖のある奇妙な節をつけることで、
文章が下手な人は一文一文をヘンに小難しく過剰に飾り立てることで
自分の実力をごまかそうとするけど、それでいえばこの東野圭吾という著者は本当に
真の実力を持ったミステリの書き手なんだなあ、と思う。
同じプロのミステリ作家の中には
「読み手に真相を推理させる最低限の手がかりを敢えて作中から省いておりアンフェアだ」
と苦言を呈する人もいたけど、本作はジャンル的には〝本格推理〟の枠中に入るものじゃ
ないと思うからまあいいんじゃないの、というのが私の感想。
シンプルさで相手を感動・驚嘆させるということは本当に難しいこと。
それをやってのけただけでも東野氏はすごいと思う。
ただ、話の筋が薄っすら〝白夜行〟とかぶってしまっていることだけがちょっと残念。
まあ同じ作家が毎回まったく違うテイストで物語を書くというのがどだい無理な話なんだけど。
何はともあれ、来月の映画版は観にいくつもりなので楽しみです。
12 | 2025/01 | 02 |
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