忍者ブログ
読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「スイッチ・オフだ。草薙」
 


深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。
とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張。その証拠は、
男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。
常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する、
人気連作ミステリー第二弾。


★収録作品★

 夢想る(ゆめみる)
 霊視る(みえる)
 騒霊ぐ(さわぐ)
 絞殺る(しめる)
 予知る(しる)

***

最近ドラマの再放送をやっていたので思わず読み返してしまった本作。
読み終えての感想。
「ドラマのほうが面白い。。。」
〝手紙〟も映画のほうがクオリティ高かったし。。。普通映画は原作を超えられないはずなのに。。。

なんてことはさておき、それでもやっぱり面白いです。
東野氏が「好き勝手書いた」と言うだけあって、理系大学出身の彼の知識がふんだんに
トリックに盛り込まれていてものすごく楽しい(森博嗣氏も理系トリックを使った話を書きますが、
あちらは多少癖があって好き嫌いがかなり分かれる。その点東野作品は読む人を選ばないという
利点があります。言うなれば〝模範的〟。なのでキャラやストーリーの奇抜さや個性を重視する
人には向かないですが)。
逆に理系の知識がないとトリックの推測のしようがないという虚しさも多少ありますが(笑)、
そこは割り切って読むしかないな。

最終話のラストがドラマとは違う終わり方になっていて
「あーあ、湯川教授、どうすんだこれ」と思わずほくそえんでしまったので、
ドラマ版を見た人は読み比べてみると面白いかも。

ちなみに本作はシリーズ二作目になるので、初めて読むという人は
こちら↓からどうぞ。

PR
生き切ることを――。



恋人の変死、BSE疑惑牛の白骨体、天才外科医の父の入院……
獣医師・内海綾子に迫る異変の連鎖。
全てを解く鍵は、勘当された父から消えゆく記憶と意識だった。
父娘の絆は甦るか――最先端医療サスペンス。

***

前作〝東京ダモイ〟よりは全然面白かったのですが。。。
やっぱりこの著者はあんまりミステリ向きじゃない気が。
Amazon引用の上記のあらすじだって正直ウソだし。
どんどん消え行く父の記憶、その前に何としてでも謎の鍵を彼から引き出さなければならない、
まさに時間との勝負、彼の娘である主人公はどう機転をきかせてそれを成し遂げるのか――?!
みたいなのを期待してたら、父親の握る鍵なんて微々たるものだししかもそれだって
後半になって付け足しみたいに出てくるだけだし。

あとこれはいちゃもんみたいになってしまいますが、デビュー作でさんざん読まされた〝俳句〟が
本作にまで登場するとは。。。俳句や短歌は決して嫌いじゃないんだけどいい加減うんざりした。
著者はよっぽど好きなんだなあ。。。
前著は最初からそれがメインになっていたからいいけど、今回はそうじゃないので正直浮いてた。
ただでさえスリルもスピード感もない物語がさらに間延びしちゃってた印象。
出来るものなら次回作ではもう出さないでくれと言いたい。

物語に言及すれば、犯人は早い段階で読めてしまうし犯行の動機も火サス並みに陳腐だし
終盤なんだかうっすら白い巨塔のパクリ入ってるしタイトルの〝屈折光〟もとってつけたように
ラスト1ページにちょろっと出てくるだけだし。てっきり
〝皆が皆、相手を間違って解釈していてその本性に気づけなかった、
屈折して届いた光がそれぞれの網膜に相手の歪んだ人間像を伝えていた〟
とかいう意味でもあるのかと思ってたら、そんなことどこにも書いてないし。

ミステリ好きにはおすすめしません。
正直この著者はミステリじゃなく、純文とエンタメの中間小説を書いたほうがよっぽど持ち味が
発揮できると思う。
「いらっしゃーい」



人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病のプロ野球選手。
困り果てた末に病院を訪ねてみれば…。
ここはどこ? なんでこうなるの?
怪作『イン・ザ・プール』から二年。トンデモ精神科医・伊良部が再び暴れ出す。


★収録作品★

 空中ブランコ
 ハリネズミ
 義父のヅラ
 ホットコーナー
 女流作家

***

直木賞受賞作品。

月に一度、2時間かけて病院に通院している母の出掛けに手渡し、
帰宅した母に「電車で吹き出しそうになるの何度もこらえるハメになって大変だったわよ」と
怒られたといういわくつきの(笑)一作。

通常では考えられない方法で
自分の心をうまくコントロールできなくなってしまった患者たちを完治させていく、
そもそも親の七光りで精神科医になったというだけで患者を治療しようなんて気は
まるでない伊良部医師がどうしてここまでの腕を発揮できるのかといえば、
〝医者である自覚がない〟イコールで〝患者とまったく同じ目線に立てる〟つまりは
〝友人のように相手といられる〟からに他ならないでしょう。
同じアドバイスや励まし的なひと言でも、医者目線で言われるのと友人や身内ににさらっと、
それでいて人間味溢れる言い方で言われるんじゃ雲泥の差があるからなー。

以前、心療内科の医師に〝すべてが汚く思えて何も触れない強迫神経症の患者が、
大震災に見舞われてその対処に精一杯になり、ふと気づくと極度の潔癖症が治っていた〟
という話を聞いたことがあるのですが、本作の患者たちも、ストーカー並につきまとってきて、
行く先々で破天荒すぎる問題行動を起こす伊良部医師のフォローに追われるうちに、
もしかしたら自分の病気を忘れてしまうのかもしれません。

基本的にコメディの本作ですが、表題作〝空中ブランコ〟のラストはなんか不思議と泣けた。

かなりおすすめです。
シリーズ三部作のはじめから読みたい人はまずは↓の〝イン・ザ・プール〟からどうぞ。
本作ほどじゃないですが面白いです。
〝町長選挙〟は。。。メインキャラの伊良部医師&看護師の性格がいやなほうに
変わっちゃってるからなあ。。。私の中では三作目はなかったことになってますが、
別に駄作というわけじゃないのでまあ読んでみてもいいんじゃない? といったところです。

 

「あのね、矢部君の考えてることは、星を見るよりも明らかなんだ」
「星じゃなくて、火だ」



あと3年で世界が終わるなら、何をしますか。
2XXX年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。
犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、
いかにそれぞれの人生を送るのか?
傑作連作短編集。

★収録作品★

 終末のフール
 太陽のシール
 篭城のビール
 冬眠のガール
 鋼鉄のウール
 天体のヨール
 演劇のオール
 深海のポール

***

〝アルマゲドン〟〝ディープインパクト〟〝インデペンデンス・デイ〟を最近立て続けに
観たせいか(とはいえ最後の一つは隕石モノじゃないけど)、
本作を数年ぶりに読み返してみて、同じ隕石モノでもどこに焦点をあてるかで
まったく別物になるなあ、と新鮮味を感じてしまった。演出の違い、というか。

本作には隕石の脅威やその被害、パニックに陥る人々といった描写はまったくなく、
怯え、騒ぎ、暴れることにも既に倦んだ、一時的な小康状態の最中にある人間たちの
暮らしぶりと心理がただ淡々と描かれている。
その気になればいくらでもドラマチックに(悪くいえば大げさ&お涙頂戴的に)表現し得る
〝人類滅亡〟というモチーフも、伊坂氏の手にかかるとただ悲しいほどに静謐で透き通った、
現実味溢れる物語になるのだなと感心した。

同じ痛みを抱えるもの同士は否が応にも惹かれ合い分かりあうことができるけど、
本作の登場人物たち全員にはっきりとした絆が感じられるのは〝もうすぐ滅ぶ〟という
共通した痛みを抱えているからなんだろうな。
数年前、私の地元にミカン大のヒョウが降って町中の車の屋根がボコボコになるという
惨事が起きたのですが、その際表を出歩くたびに見知らぬ人たちとも苦笑いを交わしながら
「すごいことになりましたね」と当たり前のように気さくに言葉を交わせていたことを思い出した。

同じ辛い目に遭うから心が近づく。
もう時間がないから本音で語れる。
天災も悪くないかも、とこういう物語を読むたび思う。

因みに本作、マンガ版があるそうです↓
小説のマンガ版は乙一氏の〝GOTH〟だけ読んだことがあるけどあれは出来がよくて
思わず買ってしまったほど。
これはどうなんだろ。今度本屋で探してみよ。

 
「――死ね。」

 

デビューから10年、平野啓一郎が連続殺人に挑む、新たな代表作誕生!

2002年10月全国で犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。
容疑者として疑われたのは、被害者の兄でエリート公務員の沢野崇だったが……。
〈悪魔〉とは誰か? 〈離脱者〉とは何か? 止まらぬ殺人の連鎖。明かされる真相。
そして東京を襲ったテロの嵐!“決して赦されない罪”を通じて
現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。

***

本作を読んだ率直な感想。
私は今までこの著者を誤解していた。
いい方向に。

ひと言で言うなら〝ものすごく頭のいい中二病患者が書いた小説〟だった。
ここ何年間の社会問題をこれでもかと詰め込んで一つの物語にしたよう。
主題がまったく見えてこない。著者が一番言いたかったことがわからない。
作中に『〝リアル〟と〝ミステリー〟の間』という本が出てくるけど、まさに本作が
レベルの低いそれだろう、と思ってしまった。

出だしからびっくりしたのが、著者の三人称で書かれた地の文のヘタさ。
読み進めるにつれてましになっていくものの、これが芥川賞を獲った人の文章? というほど、
場面場面の挙動や思考が誰のものなのかわかりにくい。
〝崇〟という、(登場人物たちの会話によって)並々ならぬ才覚を持った
いかにも一癖ありそうな人物として表現されていた男も、実際出てきてみれば
あまりに普通のあんちゃんだし(敢えてそう振舞っている、という風には到底見えない)、
彼が〝言葉〟というものに過剰にこだわる性格であることを表すシーンが警察の取調室での
徹底した黙秘だけって。。。
そもそも〝言葉〟にそんなにこだわるなら、いい歳して女たちにあんなアホなメール打つなよ。。。
(まあこれは「彼女たちには本気の言葉を使う必要なんかない」と思ってやってるのかもしれないけど。。。
それにしてもひどすぎな気が)

これじゃラストの崇の行動もよっぽど勘のいい人が深読みできる人じゃないと
「まさか。。。?!」と思えないよ。
〝崇〟の悪魔性が(彼が本当にそれを秘めているのだとしたら)あまりに描かれてなさすぎる。
登場人物たちの口を借りて今の世の中に対する自分の意見なんか振りかざさなくていいから、
そういうところをもっと書き込んでほしかったよ、平野さん。。。(世論の論議はテレビでやってほしい。
あなたは喋りがうまくてしょっちゅうテレビに出てるんだから。。。)

タイトル決壊、中身は崩壊。
。。。うまくねえー。。。(私も、平野さんも)

まあ最低限は面白くて割と一気に読めちゃったのですが。
あんまり人に薦める気にはなれないなあ*
飛べるようになるまで。
あるいは、
飛べないと諦めるまで。




人間って、空から墜ちてきたものかもしれない。それじゃあ、死んだら、上がっていく?
――戦いを生きる子供たち。著者渾身のシリーズ第三弾。

***

シリーズ全五作の中では〝繋ぎ〟ともいうべき本作。
一・二作目では明かされていなかったある事実に「あ、そうだったのか!」と驚かされたり、
物語の結末がどういう方向へ向かっていくのかその片鱗が垣間見れたり。
そのぶん単品として見ると全体的に大きなエピソードもテーマもなくただ淡々と話が
展開していくだけなのですが、シリーズを通して本作まで読み進めてきた人は
続きが気になってもう後戻りはできなくなること必須でしょう(私がまさにそうなので)。

ちなみに先日映画〝スカイ・クロラ〟を観てきましたが、
ネット上で言われているほどひどいと思わなかった。私的には満足できた作品でした。
BGMもすごくいいし、キャラのルックスもほぼ原作で思い描いていた通りだったし。
(まあ突っ込みどころはいろいろあったけどそれでも)。

ではさっそく今日借りてきた続編〝フラッタ・リンツ・ライフ〟に取り掛かるとします。
みんな去っていく。



十一月七日、水曜日。女子大生の藍は、秋のその一日を、何度も繰り返している。
毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、
再び十一月七日が始まる。
彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。
この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。
まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる精緻な文体。
心地良さに導かれて読み進んでいくと、思いもかけない物語の激流に巻き込まれ、
気付いた時には一人取り残されている――。

★収録作品★

 秋の牢獄
 神国没落
 幻は夜に成長する

***

やっぱり恒川氏はすごいです。
図書館で借りた氏のデビュー作〝夜市〟であまりに心を揺さぶられ単行本まで購入し、
続く二作目〝雷の季節の終わりに〟では夜市の二番煎じか、と軽く失望した私ですが、
本作でまたもやしてやられました。
この作家さんは文体的にも物語的にも長編じゃなく短編のほうが向いてるのかもしれない。

登場人物のものの考え方や世界観が明らかに現実から外れているのに
それにまったく違和感を抱かせない、そんな不思議な作風と筆力は乙一氏に通ずるものがある。
なので片方の作家が好きな人はもう片方も好きなんじゃないかな。

以前読んだ小説に
「作家には二種類ある。経験したことしか書けない作家と、
経験していないことでも想像で書ける作家だ」
というような言葉がありましたが、恒川氏は明らかに後者。それでいて
「いやこれ絶対作者の体験談だろ」と訝りたくなるほどのリアリティ溢れる描写は本当にすごい。
たまに読んでいて「この人の頭の中どうなってるのか覗いてみたい」と思わせる作家がいるけど、
この著者も紛れもなくその一人。

残念ながら本作が私の中で〝夜市〟を超えることはなかったけど、なかなかの傑作短編集です。
表題作〝秋の牢獄〟のラスト一行なんて鳥肌もの。
なので(ベタだけど)これからちょうど秋も来ることだし、是非一度手にとってみてください。
ちなみに〝同じ一日を繰り返してしまう〟というリピートものが好きな人は
↓もおすすめ(本作に比べて内容が軽い上に出てくる人間全員が身勝手でむかつきますが
話としてはまあまあ面白いです)



北村薫氏の〝ターン〟はあれもリピートものだけど。。。
文体が生理的に肌に合わず数ページ読んだ時点で挫折しました。
なのでもし最後まで読んだ人がいたら感想教えてください。
(大昔に古本で買ったのでがんばって読みます笑)
無駄にするな。



存在を秘匿された組織、市ヶ谷・防衛庁情報局で過酷な任務に身を投じる
工作員の男たち、女たち…。
「いまできる最善のこと」「畳算」「サクラ」等、全6編を収録した初短篇集。

★収録作品★

 いまできる最善のこと
 畳算 
 サクラ
 媽媽(マーマー)
 断ち切る
 920を待ちながら

***

直木賞候補にもなった福井氏初短編集。
上下巻組の大長編を執筆することが主な彼の、短編ならではの魅力を堪能することができます。
(とはいえ〝断ち切る〟は〝媽媽〟の後日談だし、〝920を待ちながら〟は
同著者の某長編と主人公がかぶっていたりするので、正確には連作といったほうが
いいのかもしれませんが)

福井氏の長編は〝暗い過去を抱え心を閉ざした青年の心をうだつのあがらない中年主人公が
行動を共にしていくうちに徐々に開いていく〟というパターンが多いですが、
この短編集はそのマンネリパターンを(一話をのぞいて)見事に一掃しているので、
長編モノしか読んだことのない人でも新鮮に読むことができるはず。

ちなみに私的には〝媽媽〟が本作中で一番琴線に触れた物語なのですが、
ヒロインの性格が自己中で軽くメスっ気(汚い言葉ですいません)が強くて
どうしても好きになれずそれだけが残念。
それ以外の主人公はほぼ皆好印象なのですが。

福井作品の入門書としてor〝亡国のイージス〟ファンにおすすめの一冊です。

因みに蛇足ですが、上記で紹介した文庫版じゃなくハードカバーのほうが
表紙も帯も無茶苦茶かっこいいです。
なので私は敢えてそっちを買ってしまった。



本作と〝亡国のイージス〟の時間軸的にちょうど中間になる物語↓
もおすすめ(福井氏原作のマンガですが)。

二度と、こんなもんか、なんて思わない。



私の憧れの女性だった家庭教師の彩子さんが自殺!?
後悔なんかするもんか。岡本佳奈子、16歳、真面目で平凡な女子高生。そして――。
家庭教師の謎の死+ザ・ゾンビーズ+憎むべき敵+赤い車=初めての冒険!

註:本作を読まれる前(or後)に、必ず↓収録の〝永遠の円環〟をお読みください。



***

ゾンビーズ・シリーズはやっぱり面白い!
ノリのいい作品ていうのは得てして中身が薄っぺらい場合が多いですが、
金城氏の著作は別。
ものすごいライトタッチで書かれているにも関わらず、笑いや泣きのツボをしっかり押さえてくるから
読み終えたあとに単に爽快感を感じるだけじゃなくいつまでも内容が心に残ってるんだよな。

今回はゾンビーズの中では朴舜臣よりアギーや南方のほうが目立っててちょっと残念だったけど、
語り部のヒロインが平凡ながらもすごく魅力的な女の子なので満足。
男性作家の書く女ってどうにもニセモノくさくなりがちであまり好きじゃないんだけど、
本作主人公の佳奈子はかなりかわいかっこよくて好きです。
ラストの皆で駆け出すシーンでの佳奈子のある〝悔しさ〟も、同じ女としてすごくわかって
なんか涙出そうになった。

思わず宇多田ヒカルの〝You Make Me Want To Be A Man〟↓を口ずさんでしまった。


あなたは私を「男になりたい」と思わせる♪

それにしても、出てくるキャラ皆が皆魅力的な小説って稀だよなー。
すごくオススメの一冊です。
できればゾンビーズシリーズは順番どおりに読んでほしいので、
興味ある人にはまず下記の二つを先に手にとってもらいたいなー。

 
「そんなァ。あたしはただ、長い間解決できなかった猟奇殺人事件を解決しただけですから」



ぼく花山仁は迷宮入り事件を捜査する特捜班に配属された。
憧れの刑事になれたと喜んだのも束の間、他のメンバーを知って愕然とする。
囮捜査で左遷された前泊ナナ、定年間近の久保主任…。要は警視庁のお荷物軍団なのだ。
極めつけは波田煌子とかいう犯罪心理分析官。
野暮な容姿と惚けた言動。プロファイルはおろか心理学についての知識さえ覚束ない。
「エレベーターガール生首ゴロリ事件」「プロ野球スモール人形殺人事件」など、
立ちはだかる七つの難事件をぼくらは解決できるのか。

★収録作品★

 涙の赤い薔薇 
 涙の冷蔵庫殺人
 涙の海岸物語
 涙のエレベーターガール
 涙の少女人形 
 涙のクニタチーゼ
 涙のサヨナラホームラン

***

なみだ研究所へようこそ!〟の続編。
心療クリニックから警察へと場を変えて、波田煌子がまたしても大活躍です。

。。。が、一時期デスノート第二部でのニアの推理が「超能力推理」と揶揄されていたのと
似て、「いくらなんでもそれだけの情報でそこまでわかるわけないだろうよ」と
突っ込みたくなってしまう部分がけっこう多かったかな。
シリーズ一作目は辛うじて真っ当な推理によってたどり着ける地点に答えがあったし。

でも猟奇殺人を犯す人間の心の動きはリアルに描写されていて全部面白く読めた。
毎回時事ネタがギャグとして入るのにもくすりとできる(まあ、数年後に読み返したら
「うわ、ネタ古っ!」と思うんでしょうが。。。)。
オチが一作目と同じになるかと思いきや斜めに逸れていったのにも笑えた(一作目のラストは
正直「ケッ」と思ってしまったもので)。

天才ながらものほほんとした煌子のボケへの語り部・花山くんのツッコミも、
いささかお高くとまっていて自信過多だった一作目の語り部と比べるとほほえましいし
息も合ってるし楽しく読み進められた。

やっぱり鯨氏はこういうコメディっぽいミステリを書かせたほうが圧倒的に面白いよなー。
(前回読んだ同著者の〝MORNING GIRL〟には正直キレかけたし)

おすすめです。
因みに前もってこれ↓を読んでおくと、本作がより面白くなること請け合い。

プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
Copyright © 【イタクカシカムイ -言霊- 】 All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  Material by ラッチェ Template by Kaie
忍者ブログ [PR]