『そのケータイはXXで』が映画化され、いまもっとも注目を浴びている気鋭の作家・上甲宣之の
『コスプレ幽霊 紅蓮女』が早くも文庫化です!
人づきあいに臆病で内気な主人公・史代の生きがいは、ちまたで有名な「紅蓮女」と呼ばれる
幽霊の変装をして、人を驚かすこと。
夜な夜な、「紅蓮女」の仮装に身を包み、怪奇スポットや自殺の名所を徘徊、
その場に居合わせた人々を怖がらせることに悦びを感じていた。
口裂け女、都市伝説パーティー、生き神信仰、呪いの手紙、電話男――
さまざまな怪奇スポットで遭遇する事件に、「紅蓮女」が立ち向かう。
(註:本作を手に取る前に、必ず上甲氏のデビュー作〝そのケータイはXXで〟↓をお読みください)
***
〝そのケータイはXXで〟は映画化されたの知ってたけど、
本作がドラマ化されてたのは知らなかったな。。。
ミステリ読みの人からは「山田○介と同種」などと(著者には失礼ですが)敬遠されがちな
作家さんですが、文体がマンガっぽいだけでかなりの筆力を持った人だと思う。
少なくとも私は好きです。
〝――っ!〟みたいなマンガ的な表現が頻発するのは、小説として違和感を覚えるというよりも
「こんな書き方しなかったらもっと緊迫感出るし感動も増すのに」と勿体無く思ってしまう。
著者がそういう筆致が好きなら仕方ないけど、もっと小説らしく物語を書けば絶対彼の評価
上がるのにな~。
少年マンガ的ノリが楽しくて一気に読み終えてしまいました。
連作短編集ではあるものの、序盤の話で張られた伏線がクライマックスで驚きの真相と共に
明かされたりと、ミステリとしてもしっかり成り立っているのでミステリ好きの人にもおすすめ。
本作は時間軸的には〝そのケータイはXXで〟と〝地獄のババぬき〟の中間の物語になるので、
まずは上記でも触れたとおり上甲氏のデビュー作を読んでから読むのが○です。
ちなみにこの手の都市伝説ネタミステリが好きな人は、朱川湊人氏の著作
〝都市伝説セピア〟もおすすめ。
芥川賞受賞後、初の長篇小説!
「アサッテ」実践編!
「あなた!そうです、あなたのことです!あなただって、『書かれている』のですよ。
他でもない、あなた自身の手によって……。それを、あなた自身に『聴かせる』ために。」
――作者より
遠い親戚だけど兄妹のように育った2人。妹は骨髄癌におかされ長期入院している。
病室で繰り広げられる2人の会話。ある時、2人は同室の女性患者が
自分たちの会話を盗聴していることに気づく。
2人は彼ら固有の生を求め、物語の紋切り型と小説の作為とに抗い続けるが――。
小説とは何か、言葉とは何か、小説を書くという行為とは何か。
さまざまな問いを底流におきながら、兄妹の切ない物語として、リズミカルな言葉で描かれた
待望の長篇。
芥川賞受賞後、初の小説!
***
ある意味第一作〝アサッテの人〟の外伝、もしくは続編にあたる作品なので、
まずは諏訪氏のデビュー作を読んでから本作を手にとったほうが何倍も楽しめるし
テーマも深くまで見えてきます。
それにしても、〝アサッテの人〟を読んだときにも思ったけど、
この人の著作は(私的な話で恐縮ですが)私にとってこの世で一番の恐怖の対象である
〝平凡〟を見事に打ち砕いてくれるから(とはいえここでいう〝平凡〟の定義は
外見が普通とか何の才能も個性もないとかいったことじゃなく、
自分なりの言葉・行為・ルール・美学を持たずただ誰かの受け売りの言葉を喋るだけ、
他人の価値観に流されているだけ、という意味)
読んでいてとてもほっとするし本作を読んで私と同じ感想を持ってくれる相手となら
ものすごく気が合うんじゃないかと思う(ていうか著者と友人になりたい)。
ミステリやショートショート(もしくはマンガ)でこの手法(読めばわかります)で書かれた小説を
読んだことはけっこうあるけど、まさか純文学でこれをやらかす作家がいるとは思わずびっくりした。
「よくやった!」と喝采を送りたい気持ち。
同じ病気モノだったら〝恋空〟なんて読んでる間にこっちを読んだほうがよっぽどいい。
本作を理解できる中高生のほうがよっぽど格好いいと思う(まあ、十代でこれを理解できちゃったら
それはそれで老成し過ぎでちょっとやばいかもしれないけど)。
諏訪氏はストーリーよりもそれを織り成す言葉そのものに重きを置く作家さんなので、
物語で心を揺さぶられる、ということを求めている人には向かないかもしれないけど、
ラストの見開きは思わず泣きそうになってしまった。
それもこれまでに経験したことのない、感動とも何ともつかない感情に衝き動かされて。
かなりのおすすめ。えらそうに言えばちょっと読み手にそれなりの読解力が要求されるけど、
著者の言わんとすることを理屈ではなく感覚で、まさに〝聴く(Listen)〟ことができたときには
深い感銘を抱くこと間違いなしの作品です。
今度は諏訪氏が言葉じゃなく〝物語〟にこだわって書いた小説を読んでみたい。
切実にそう思った。
PS:ちょっと独り言
。。。あの献辞は実在の人物に向けて書かれたものなのかな。それとも
架空→現実に姿を変えた〝彼女〟に向けて書かれたものかな。。。
望みどおりの結末になることなんて、現実ではめったにないと思いませんか?
小説の企みに満ちた、アンチ・ハッピーエンド・ストーリー。
前人未到のミステリ四冠を達成した偉才が仕掛ける未曾有の殺意!
★収録作品★
おねえちゃん
サクラチル
天国の兄に一筆啓上
消された15番
死面
防疫
玉川上死
殺人休暇
永遠の契り
In the lap of the mother
尊厳、死
***
先の読めてしまう話もいくつかはあったけど、これだけの物語が収録された短編集で
ほとんど外れがないっていうのはなかなかすごいことなんじゃないかと思う。
あらゆる賞を総なめにした〝葉桜の季節に君を想うということ〟は、トリックもオチも
序盤で読めてしまって「これが何でこんなにも大評判なんだろう?」と不思議に思ったものだけど、
本作には非常に満足。むしろ本作が何かしらの賞を受賞すべきなのになー。わからないもんだな。
ミステリ好きにもホラー好きにもおすすめの一冊です。各ストーリーの筋もゴテゴテしてなくて
さらっと読めてしまうから(それでいてオチのインパクトはなかなかにすごいものがあるので)、
ショートショートが好きな人にもいいかも。
久しぶりにただ純粋に「面白い!」と思えた一冊だった。
――罪とはなんだね。
両親の離婚後、母と弟の3人で暮らす小学6年の杉原美緒。
無理をしてきた母はアルコールに依存し、入退院を繰り返すようになってしまった。
弟とともに母の従妹の薫に引き取られた美緒は、ますます内にこもっていく。
そんな折、薫が経営する喫茶店の常連で元検事という初老の男と知り合いになる。
美緒は徐々に心を開いていくのだが、彼は過去に娘を誘拐され、
その事件は未だ解決されていないことを知る。
数年後、成長した美緒は何かに背中を押されたかのように未解決の誘拐事件を探りはじめ、
その裏に複雑な人間関係と驚愕の事実が隠されていたことを突き止める――。
***
前作〝146gの孤独〟の主人公の人間性がギリギリだったため
今回はどうなのだろうと危ぶんでいたんですが。。。
やはりギリギリだった。
メイン登場人物のほとんどが、一見普通の人間のようでいて
よくよく見ると心の動きや行動が常人と違うような。
しかも著者が狙ってそういうふうに書いているという感じではなく、
書き手の性格が無意識ににじみ出てしまってるんじゃないかというような
そんな印象を受けるんだよなあ。
一人一人の人間は個性があってすごくよく書けてるんだけど
どこか生理的な嫌悪を微かに感じてしまって近づきがたい、的な。
物語としては前著より面白かった。
偉そうに意見すれば構成力が今ひとつで、
「えっ今ここでそれを明かしちゃうの?」みたいな突っ込みどころも多少あったし
起こるエピソードの何もかもが突飛に感じられたりはしたけど、
文章はうまいし長編にも関わらず最後までスラスラ読めた。
ラストで明かされるある〝事件〟の真相や仕掛けられたサプライズはありきたりで
読めてしまったけどそれでも楽しめた。
読んで損はないです。
ちょっと暗い世界観の中にもほんの少しの、でも確かな温もりと希望を感じ取れる良作だった。
十五歳の僕と十四歳にして名探偵のルンババは、家も隣の親友同士。
中三の修学旅行で東京へ行った僕らは、風変わりな姉妹と知り合った。
僕らの冒険はそこから始まる。地元の高校に進学し大学受験――
そんな十代の折々に待ち受ける密室殺人事件の数々に、ルンババと僕は立ち向かう。
***
女性の子宮から島田荘司ばりの一大建築物まで――少ないページ数の中に
ありとあらゆる密室を詰め込んだ本作。
ただし探偵をはじめとした登場人物たちのキャラ&トリックはかなり舞城節というか
〝本格〟からははずれているので、いや、はずれてはいないのかもしれないけど
謎を解いて真相にいたるまでの過程がかなりトントン拍子すぎて伏線も何もあったもんじゃないから
徐々に真実に近づいていく醍醐味がない。
だから正統派の本格好きにはあまりおすすめしなません。
まあそれが舞城節っちゃあ舞城節なので私的には非常に楽しく読めましたが。
あくまでストーリーの奇抜さやキャラの奇矯さ、独特の文体を楽しみの主体として読んだほうが吉。
でも作中に登場するある密室の光景を思わず自分の将来に当てはめて考え込んでしまう語り部の
ラスト1ページの〝祈り〟の言葉は純文チックでちょっと感動。
ちなみに舞城氏のデビュー作を読んでから読むとニヤリとできるシーンが終盤にあります。
それにしても舞城氏は絵がうまいよなあ。。。
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。
吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。
我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。
「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、
彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ! 先輩、奇遇ですねえ!」……
「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。
二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。
天然キャラ女子に萌える男子の純情! キュートで奇抜な恋愛小説in京都。
***
いたって地味なエピソードも独特の文体と圧倒的な表現力で臨場感たっぷりに面白く読ませる、
逆に「そりゃないだろ」というファンタジーな展開もリアリティ溢れる描写で違和感なく読ませてしまう、
この著者は本当に〝書ける〟人だなあと思う。20代にして直木賞候補に挙がるだけはあるなー。
ヒロインの性格は一歩間違えればぶりっ子だし(「オモチロイ」とか普通に言うし)、
ヒーローの性格も一歩間違えれば(いや、間違えなくても相当)自己中野郎なのに、
それを崩す魅力的な個性で気づくと好意を持っている。「がんばれ」と応援してしまっている。
ラスト一行のヒロインのひと言が物語全体を見事なまでにまとめきっていて、
思わず背筋が寒くなった。同世代の作家がここまで書けるのは(プロと比べるのも
おこがましいですが)もう本当に尊敬の一念。
東野圭吾氏〝白夜行〟をコメディタッチにしたら本作みたいになるのかも。
なんとなくそんな風にも感じた。
ラブストーリーが苦手な人でも非常に楽しく読める内容になっています。
ミステリ好き(本格は除く)の人にもおすすめ。
あーそれにしても〝火鍋合戦〟、是非私も参加したい(超辛党としては。。。)。
高3の夏、復讐は突然はじまった。
中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく…。
犯行予告からトロ吉が浮び上がる。
4年前クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉。だが、
転校したトロ吉の行方は誰も知らなかった。
光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが――。
やるせない真実、驚愕の結末。高3の終らない夏休みを描く青春ミステリ。
***
荻原浩氏は文体がのほほんとしてるので、こういうどちらかというとシリアスな話は
内容と文章が一致してなくて違和感がある上にスリルを感じられなくて
のめり込みづらいんだよな。。。
しかもたぶんミステリ読み慣れてる人なら最初の段階でオチが読めます。
そのオチの読めっぷりときたら、(わざわざ名前を挙げるのも失礼ですが)東野圭吾氏の
〝ゲームの名は誘拐〟に相通じるものがある(敵役がなかなか姿を現さないところなんか特に)。
挙げ句、筆者の〝いじめはよくないよ〟という教訓が透けて見えてしまっていて、
仮に子どもが読んだとしても
「うわー、人をいじめるとこんな目に遭うんだ。いじめなんてやめておこう」
とビビるよりは
「うわー、この本、ホラー小説かと思ってたら『イジメはやめましょう』ってお堅い教科書みたいじゃん」
と見透かされてしまう確率のほうが高い。
(だいたい、いじめの筆頭だった少年が、ラストでさんざんな目に遭いながらも支えてくれる彼女が
そばにつきっきり、なんて設定じゃ温い上に全然悲壮感がないし)
また、一人一人の復讐のされ方もなんだか地味で(とはいえ二人も死人が出ているので、やっぱり
荻原氏の描写ののほほんぶりにやはり問題があるのでしょうが)ホラーサスペンスの割りに
手に汗握るといったことがまったくなかった。
荻原氏は好きだけど、本作はあんまりおすすめしません。
特にミステリ好きの人には。
人類の睡眠時間は日ごとに減っていった。
地球では放射能汚染が広まり、オゾンホールからは紫外線が容赦なく降り注ぐ。
スペースアイランド〝飛翔〟でも、睡眠時間減少は変わらなかった。
そこで科学者たちが集まってその謎を解こうとするのだが…。
すべての鍵は「眠り」にあった。
***
。。。この著者がSF作家だってことを忘れてた。。。
瀬名秀明氏や貴志祐介氏が書くような、フィクションではあってもあくまで現実の域を逸脱しない
科学ミステリを想定して読んだのがそもそもの間違いだった。。。
人間の睡眠時間が減少するのはなぜか、それを解明するために集まった学者たちも
それぞれの得意分野を発揮するためにいるにも関わらず、話す内容といえば
ちょっとした科学マニアなら誰でも知ってるようなチンケな推論ばかりだし、
その推論を戦わせるシーンすらほとんどなく、内容の大部分はヒロイン・ダイアンを中心とした
面白みもなく話の筋に関係があるとも思えない男女間の陳腐極まりない愛憎劇、
何より主人公・ダイアンが自己中・自信過剰・ナルシストと三拍子揃っていて
どうしたって好きになれない。
ていうか思い返してみれば、本作の中に好感を持てたキャラは一人もいなかった気が。
オチも多少ロマンチックではあるもののいい歳した大人には拍子抜けはなはだしい。
小中学生だったら中には素直に感動する子もいるかもしれないけど、
スレた私は思わず(物語の途中経過にもイラついていただけに)鼻で笑ってしまった。
本作を読むぐらいなら、冗談抜きでマンガ〝ぼくの地球を守って〟を読んだほうがずっと
感動できる。
物語のコンセプト(作者の言わんとすること)もちょっとかぶってるし(レベルは
天と地ほど違いますが)。
そして本作の最後に登場するある存在にひと言言いたい。
「これ以上ゴミを宇宙にまき散らかすな」
このひと言の意味を理解&共感してくれる人は、きっと私と気が合うでしょう。
あー、鯨統一郎氏好きなのにな。〝オレンジの季節〟以来(以上)にがっかりだった。
周りには空気しかない。何もない。空の底で生き、戦う「僕」は、空でしか笑えない――。
職業として戦闘を選んだ人間たちのドラマ。
2001年刊〝スカイ・クロラ〟に続く第2弾。
***
今劇場で公開中の映画〝スカイ・クロラ〟
の続編。
けれど時間軸的にはシリーズ中最古・すべてのはじまりを記した物語。
物語のインパクトは第一作目ということもあってスカイ・クロラのほうが上でしたが、
過剰なクサさや薄っぺらさが抜け、そのぶん淡々としつつも登場人物たちの個性・ドラマ性が増した
本作のほうが、私としては好感が持てた。
ストーリーも全体を通してシンプルかつスピーディでテンポよく読み進めることができるし
一つ一つのエピソードも大げさな描写があるわけでもないのにどこか強烈で惹きつけられる。
一作目のヒロイン・クサナギスイトの過去が明らかになるのも非常に興味深いところ。
また、(蛇足ではありますが)彼女のものの考え方、人との距離の置き方が
私と相当似通っていて(私は彼女ほどその部分をあからさまに表に出さず
愛想の下に隠しているけど)
「ああ自分と同じ人間がいた」と読んでいてどこかほっとさせられ精神的に救われた。
それにしても森氏はタイトルがうまいなあ。。。
〝何もない、ただ空だけがある〟=〝None But Air(ナン・バット・エアー)〟=〝ナ・バ・テア〟。
爆撃機の名前とかに普通にありそうだし。
このシリーズはできれば十代のときに読みたかった気がする。
でもそうじゃないほうがよかったのかな。
さもないと「自分もキルドレになりたい」とか言い出しかねないしな私は(今でもちょっとそう思うし)。
おすすめです。
舞台は、急成長の途上にある宗教団体の聖地、神倉。
大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。
室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして
就職活動中の望月、織田も同調、4人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。
〈城〉と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。
外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、
その間にも事件は続発し……。
江神シリーズ待望の書き下ろし第4長編。
***
「優等生的なミステリだなー」というのが唯一の感想。それもあまりよくない意味で。
前作〝双頭の悪魔〟と設定が似すぎていて新鮮味がなく、
犯人も影が薄いため真相が明かされたときのインパクトが弱い。
著者は格好いいつもりであろう某アクションシーンも何だか昭和のにおい漂う古めかしさで
「いまどきこれは。。。」と微苦笑してしまったし。
大自然や建築物を使った大掛かりなトリックはやはり島田荘司氏のほうが圧倒的にうまいなと
思ってしまった。
唯一興味深かったのは探偵役・江神の過去がようやく(氷山の一角ほどではあるけど)
明かされる点、
その仲間であるミステリ研の面々の個性(特に望月&織田)が
前3作に比べて際立ってたところぐらい。
全体的に、構成もストーリーもすごくきれいにまとまっていて決してつまらなくはないんだけど、
これだけのページ数&しかもこれほど期間を空けて出版されたシリーズ最新作にしては
あまりにミステリとして面白みが欠けるのでは。楽しみにしていただけに残念。
もっとこっちをあっと言わせる遊び的仕掛けがあってもよかったのにな(せめて麻耶雄嵩氏の
10分の1くらいは笑)。
だから本作がミステリ大賞を獲ったのも個人的には微妙。。。もちろん決して
駄作ではないんですが。
むしろミステリ小説としてより、中盤で貼られたマリア×アリスの会話の伏線が
ラストで見事に生かされていたところにドラマ的感動を覚えてしまった。
以前有栖川氏に、某ミステリ新人賞の選評で
「ドラマ部分は書きなれている印象なのにミステリ部分が拙い」
と評された私ですが、奇しくも本作では私が氏の小説に対して同じ感想を抱いてしまった。
そろそろこのシリーズも終わりに近づいているようなので、
完結巻までは見限らずに新刊の刊行を待ち続けるし絶対に読むつもりだけどね。
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
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