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読書&執筆ホリックの書評&書き物ブログ。
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あなたを逃がさない。



十二歳の野宮朔は、舞踏家の父と二人暮らし。夢は、物語を書く人になること。
一風変わった父の仲間たちとふれ合い、けっこう面倒な学校生活を切り抜けながら、
一歩一歩、大人に近づいていく。
そんな彼女を襲った、突然の暴力。そして少女が最後に選んだ、
たった一つの復讐のかたち――。
『ナラタージュ』から二年、新たな物語の扉が開く。

***

文章がですますで書かれているせいもあり、序盤の時点で
物語がどう展開するか、オチはどうくるかは
ある程度予測できてしまったのですが、それでも登場人物たちの造形がリアルで
すんなり世界に入り込むことができた。
〝100%ではない微妙な狂人〟というものをここまでさり気なく、それでいて
説得力を持ったインパクトの強さで描ききれる筆力もすごいと思う。
主人公の少女の、12歳ならではの繊細さと鈍感さを表現する手腕も。

そしてラストシーン。色々な意味でゾクリとはするものの、
その光景を想像してみればどこか切なくてきれいで、やたら印象に残った。好きです。
読前と読後でタイトルの印象が見事に変わったことにも驚かされました。

敢えて難(というほどの難でもないけど)を言うなら、ごくたまに
こなれていないイモくさい文章表現があること、あと(これは難というより不満だけど)
主人公の友人の鹿山さんの描写がもっとほしかったということ。
(まあでもこれは、彼女を描きすぎることで主人公の存在が希薄になる、そして
物語の方向性も変わってきちゃうってことを著者が危惧したためかもしれませんが)

おすすめです。

そして蛇足ですが、
(初版だけかもしれませんが)本作一番最後の新刊紹介のページ、
一番右の作家名と一番左の作家名を見て
「狙っただろ、新潮社」とほくそ笑んだのは絶対私だけじゃないはず
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闇に満たされていく。



東京創元社から依頼された長編のため、三津田信三は核シェルターの取材に赴く。
奇矯な富豪が自邸の庭に造り上げた生垣迷路、その下にシェルターの入口は用意されていた。
迷路を抜け、他のシェルター見学者たちと入口の前に立った途端、空に巨大な閃光が。
慌てて中に逃げ込んだ見学者たち。外の様子はまったく分からない。
果たしてあの巨大な光は核爆発だったのか。
滅亡の予感に怯える彼らを更に連続密室殺人が襲う。
何の動機も発生するはずのない初対面の人間同士のなかで、いったいなぜ殺人は続くのか――。
極限状況下での圧倒的な恐怖と謎解きを描いた、鬼才による終末のミステリ。

***

。。。そりゃないだろ、というのが読後の率直な感想。
そもそも出だしから「なんかこれ小説っていうより三津田信三氏のエッセイだよな。。。」と
嫌な予感はしていたのですが(文章も〝~の如き~もの〟シリーズに比べてあまりに
やっつけっぽいし)、設定に興味を惹かれそのまま読破。
結果→後悔。
伏線があまりにアンフェア過ぎてオチには呆然、というよりあ然。
あの伏線でこのオチが読める人がいたら正直お目にかかりたい。
ある意味夢オチよりひどい。〝実は主人公はパラノイアでした〟って。。。読者をなめてるとしか
思えない。

三津田氏の趣味志向とこれまでに出した本の宣伝小説でした。
というかこの小説の存在そのものが終末だろ。

東京創元社の人はこの原稿を渡されたとき「あ、うちの出版社なめられてる。。。」とは
思わなかったんだろうか。是非訊きたい。

言うまでもないですがおすすめしません。
悪い意味で興味を惹かれた方はどうぞ。

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また会おう。



お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。
契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ
世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。
第140回芥川賞受賞作。

★収録作品★

 ポトスライムの舟
 十二月の窓辺

***

主人公が(著者も)同世代なので、〝この年代ならではの心の機微〟が
地味ながらも細やかに描かれているのには感心(しかも同じ鬱なので
「寝て起きたときにやる気がなくなってたらどうしよう」というヒロインの不安にはかなり共感できた)。
ただ、どうせ芥川賞を獲るなら〝ミュージック・ブレス・ユー!!〟で獲ってほしかったなー。
あっちはラストのゾクゾク感がハンパじゃなかった。純文バンザイと叫びたくさえなった、
個人的には津村さんの最高傑作だと思うのですが。
本作はあまりに地味で終わり方もベタで、これなら田中慎弥氏の
神様のいない日本シリーズ〟のほうがよっぽど受賞に値するものだったと思う。
受賞作の〝ポトスライムの舟〟、同時収録の〝十二月の窓辺〟、共に
中身とタイトルが合っていないことにも違和感をおぼえた。

会社勤めとか結婚に疑問を持っている女性なんかにおすすめの小説です。
あと、二十代後半という、友人関係が微妙になってくる年代にも。

〝ポトスライム~〟は終わり方がさわやかなのでこれからの季節にはよく合う物語だと思う。

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ここはどこだ?

 

時間感覚、現実感覚、美的感覚…。
様々な「感覚」を喪失し、暴走する現代人たち。
巧緻なトリックと目眩く謎が感覚を惑わせる、先端科学ミステリーの旗手による傑作7編を収録。

★収録作品★

 風の誘い
 幻の男
 蜜の味
 侵入者
 僕はモモイロインコ
 告白シミュレーション
 完璧な塑像

***

信用できる登場人物がいない、そこからくるスリルを十分に堪能できた短編集。

たとえば普通の小説なら、語り部的存在が必ず一人はおり、彼(もしくは彼女)は
決して読者を裏切る言動をしないので、その人物をパートナーに周囲を見渡し、
誰が犯人か、何が起こっているのかを冷静に観察することができますが、
作中の誰もが怪しいとなるとそうすることもままならない。

たとえば道を歩いていたらうしろから血まみれの男とそれを追うナイフを持った男が
走ってきて、血まみれのほうが「助けてくれ」と言ってきたとして、けれどナイフ男は
「あなた、危ないからどいててください。そいつはさっき街中で暴れ回り何人もの人を
殺傷した凶悪犯なんです。その血もその被害者たちの血です」と主張する。
すると血まみれが「その凶悪犯てのはあいつ自身のことだ。あんたも逃げろ。
殺されるぞ」と応酬する。
いったいどちらを信じたらいいのか。運命の分かれ道は猛スピードで迫ってくる。。。
そんなスリルを味わわせてくれる。

まあ、多少展開に無理のある話もあったけど。
〝世にも奇妙な物語〟でドラマ化とかしたら絶対に面白そう。

おすすめです。

ちなみにモモイロインコというのはこういう鳥です↓
我が家の愛鳥ルイカ。蛇足までに。

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さあ、どうする?



大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの――
日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。
それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。
美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、
リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、
自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。
屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で
“屋上部”を結成することになった四人。
屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、
殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。
それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた!
『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。

***

この山下貴光という人はものすごい才能の持ち主だと思う。
トレース(パクリ)の。
絵で言うなら贋作を描く能力。

物語のモチーフや展開、
使う単語や文章表現、
台詞回しに句読点の打ち方、
まんま伊坂幸太郎。

これを賞に出して恥ずかしくはなかったんですか? と問いたい。
私なら遊び半分で出してしまったとしても受賞が決まったら即辞退する。
この人は伊坂氏の作品しか読んだことがないんだろうか?
伊坂幸太郎という作家の創り上げたテンプレートを元に執筆をして
自分で自分に疑問を抱くことはなかったんだろうか?
この人に己を作家と名乗る資格は断じてない。
伊坂氏の作品を読んで初めてミステリ作家を目指そうと思った私が許さない。

『捻る』
『~のようでもある』
『顎を突き出す』
「~だってば」
「~だっつうの」
伊坂氏がよく使う単語の、花火のような連発、連発(ほかにもいろいろ)。
中には真似を通り越して、伊坂作品に出てくるフレーズをそのままパクっている箇所も
あった。
挙げ句、伊坂氏の特徴である〝最後の一行を現在進行形で終わらせる〟まで一緒だったし。

この賞は応募作の文学的クオリティよりも〝売れるかどうか〟を頭に持ってくる傾向が
あるので、二番煎じでも売れればいいや、という結果の受賞なのだとおそらくは思う。
私はそういう出版社のスタンスも軽蔑する。

私も最初は個性の強い伊坂氏の文体に引きずられがちで
文章が似てしまうのを、時間をかけて必死で矯正したというのに。

山下貴光さん、そんなに伊坂氏が好きなら、
彼が雑誌のインタビューで言っていたひと言を送ります。

『僕はあまりほかの作家さんの作品は読まないですね。
だって人の書くものに影響されるのって悔しいじゃないですか』

大好きな作家さんの、作品より先にこの志を学べば?
もし伊坂氏を顔を合わすことがあって、堂々と胸を張って彼と挨拶ができますか?
ああ、あと金城一紀氏にも。彼の作風も多少取り入れているようなので。

おすすめしません。
この作品には一片も読む価値なし。
暗い夜の中にこそ。



幻の夜を行く男と女。息もつかせぬ傑作長編!
阪神淡路大震災の直後に、出会った男と女。男が犯した殺人を知る女は、彼を徹底的に利用し、
野心を実現していく。だが彼女にも恐るべき秘密が・。
名作『白夜行』の興奮が再び!

***

本作を〝白夜行〟の続編ととるか否かは読者の手に委ねられるところですが、
私は素直に続編と捉えます。
でもそうすると、いやでも前作と本作を比べて読んでしまうわけで、
その上で評価を下すと本作は〝白夜行〟には遠く及ばない。
主人公もただヒロイン(あれをヒロインと称していいのかどうかはさておき)に流されているだけで
独自のポリシーを持たず魅力に欠けるし、
前作の亮司と雪穂にあった絆がない(まああの二人には共有する暗くて重い過去があったから
比べるだけ野暮なんだけど)。
ストーリーの進行スタイルもまんま〝白夜行〟の踏襲で、読んでいて飽きがくることもしばしば。
いや、踏襲というか、最初に謎を提起しといてあとになって思い出したように
〝実はあのときのあれはこういうわけだったんですよ〟と突然説明しだす展開の多さは
むしろ劣化ともとれる。
(劣化といえば、「何があっても彼女を守る」とどんな目に遭いながらも言っていた主人公が
突如考えを変えたり、←まあさすがにあそこまで徹底的に裏切られれば宗旨替えもやむないか?
「これからは男も自分を磨いて美しくする時代」と言っていたヒロインが
途中から「男が求める美は美しい女だけ」と全然違うことを言い出す等、
矛盾が多い点も気になった)
ラストも、主人公がなぜそこまでヒロインに入れ込むのかがわからず納得のいかないまま
読み終えてしまった(ヒロインの魔性がそうさせる、といってしまえばそれまでなんだけど)。

あと、ヒロインが雪穂かどうかをわからないままにしておくという著者の意図上
仕方ないことなのかもしれないけど、彼女が亮司のことをカケラも匂わせないのは
正直悲しかった。あれだけの絆で結ばれていた二人なだけに。。。
一応〝白夜〟の意味を持つ店を構えてはいるけどそれもだいぶ昔のことだし。
太陽を失くしても生き抜いている彼女の心に今も亮司は息づいているんだろうか。
彼の死を無駄にせず〝生きている〟そのこと自体が、まだ彼女が彼を忘れてはいない
何よりの証拠なんだろうか。

もし本当にヒロイン=雪穂なのだとして、もう既に40手前。
美を一番の武器にしている彼女も、次第に整形では追いつかないほど容貌が衰えてくる。
そう考えると〝幻夜〟というのは、主人公だけじゃなく彼女自身をも表す
タイトルなのかもしれない。
美しさが幻のように消えてなくなり本性が晒されたとき、彼女のたどる道は
よりいっそう険しいものになる。自らを支える男もおらず、生きる糧になるものもない。
どうしても憎めない彼女のそんな行く末を想像すると戦慄すら覚えてしまう。
けれど同時に、そんな局面さえも切り抜けていきそうな彼女の能力への期待も高まってしまう
わけだけど。
東野氏はもうさすがに続編は書かないだろうから、これこそ読者の想像に委ねられている部分
なんでしょう。

偽りの太陽も幻も消え、真の闇に対峙したとき、彼女は一体どうするのか、が。
音楽を聴いたという記憶だけで生きていける。



アザミよ、ヘッドホン1個耳に引っ掛けてどこへ行く――。
オケタニアザミは「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な
高校3年生。
髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。
数学が苦手で追試や補習の連続、進路は何一つ決まらない「ぐだぐだ」の日常を支えるのは、
パンクロックだった!
超低空飛行でとにかくイケてない、でも振り返ってみればいとおしい日々…。

***

「主人公は音楽が好き」。
このたったひとつのことを、地球規模で見れば非常に瑣末なこのたったひとつのことだけを、
著者はただ淡々と書いているだけなのにどうしてこんなに心動かされるんだろう。
いや、本作に限らず、それは純文学というジャンルすべてに共通して感じることだけど。
大きなものから小さなものまで   ym.gif










それがどんなテーマであっても、
そのテーマ自体は終始裏側に隠したままで決して表に出すことはなくても、
読み手に共感を抱かせ、動かす力を持っている。それはあたかもヤンマーディーゼ(rya←ごめんなさい

本作の主人公ほど魅力的なKY見たことない。
実際顔を突き合わせてたらきっとイラつくことも多いんだろうけどかなり友達になりたい。
(音楽好き&ヘッドフォンと同化している&たまに言っちゃいけないこと言って相手をキレさせる&
数学の成績がひどすぎて高3進級時は仮進級で補講受けさせられてたとこまで同じだし
気はかなり合うはず)
というか本作に登場する女の子たちはみんな魅力的。
主人公・アザミの友人のチユキも大好き。私がこうありたいと思う女性像そのまんま。
そうまで思わせるほど素敵な子なのに、ホレる相手はどうしようもないクソ男ってところも
リアルでいい(いい子ほどそういう傾向が強いんだよなあ、ほんと。。。)。

私は〝聴く人(リスナー)〟ではなく〝演る人(プレイヤー)〟なので
アザミほどCDを買い漁ったり音楽を聴きまくることにそこまで喜びは見出せないけど(それより
断然歌ってるほうが多いし)、ここまで音楽を聴くことを愛せる人は正直格好いいと思う。
恋愛や友情や家族等の人間関係以外に愛しいものがある人は幸せだ。
私は歌も小説も金稼ぎの手段、というか将来の目標になってしまっているから
ただ純粋に慈しめて愛しいと思える何かがないからな。。。

アザミ、頼むからあんた音楽評論家になれ。
あなたの記事なら読んでみたい。

そして。。。たまたま最近通販で買って食ってたところだったので
作中にロイズのチョコポテチが出てきたときは笑った。
まじうまいんです。皆さん、是非私の故郷の銘菓をよろしく。

chopote.jpg













それにしても、ラストのアザミみたいな体験、私は一度しかしたことがないから
正直彼女が羨ましくてならない。



追記:
ほんとにあんだねカラー矯正器。

cm.jpg



おもろい



でも、人間、生まれて死ぬまで正しいことだけをやっている人なんていないんだよ。
違う?




一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。
だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。
人生は、薔薇色のお菓子のよう…。
またひとり、彼女は人を殺す。
何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?
あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。

***

フジコが殺人鬼と化すまでの心理描写は(多少大げさではあるものの)大したもの。
そうそう、子供ってこういう計算して生きてるんだよなーとふと昔を思い出してしまった。
ただ、ずっと「あなたは(人間的に最低な)母に似ている」と叔母に言い続けられて
そうなることを恐れてきたフジコが、まさにその〝母〟のように変貌していく様が
あまりにも唐突で、「その過程こそをもっと細密に書き込んでくれよ」思わず突っ込み。
〝余は如何にして殺人鬼フジコになりしか〟的な部分をもっと描写してほしかった。
これじゃ「遺伝だからしょうがないね」のひと言で終わっちゃうじゃん。

そしてさんざん読み手の好奇心を煽ってきたラストの〝仕掛け〟。
こんな仕掛け、10年ぐらい前からとっくに存在するんですけど。。。
しかも、その仕掛けはともかく内容が納得のいくものならまだしも、
伏線が一切作中にないのにあの突飛なラストはあんまりだろ。予測できたら超能力者。

私の愛するメフィスト賞の受賞作家だから期待してたのになあ。。。

あらすじの
〝何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?〟
こっちが訊きたい。真梨さん、早く答えを教えてください。



↑〝夢見るシャンソン人形〟。
たぶん聴いたことない人はいないはず。
しかし、ジェーン・バーキンが歌ってた〝無造作紳士〟もそうだけど、
ゲンスブールは〝アクヮボン〟て歌詞が好きだよな~。。。って単にフランス語に
よくある単語なだけ?
会えてよかった。



私って、死んじゃったんですか?――新米の坊さん・海生の目の前に突然現れた、
死んだはずの女子大生。
誰にも見えない彼女と海生は同居することになるが!?
『野ブタ。をプロデュース』から4年!! 待望の文藝賞受賞第一作。

***

〝野ブタ〟のときは著者も二十歳かそこらだったし内容も内容だから
あえてポップさを狙ってあんな風に書いているのかと思ったけど。。。
4年経って二十代も半ばになった彼の著作をこうして読むと、
「ああ、天然なんだなあ。。。と思わずにはいられない。
とにかく文章が幼い。拙いんじゃなく、幼い。たとえるなら童話に近い。
かわいらしさすら感じてしまう(悪い意味じゃなく)。

そもそも今どき幽霊になった女の子とそれに恋する男の子、なんて
よっぽど中身が面白くないと誰も食いつかないでしょう(主人公の男の子が
お坊さん、という設定はちょっと個性的だったけど)。
中高生は読んでいてほんのり感動できるかもしれないけど、
二十代後半の私には食傷気味な物語だった(著者とはそんなに年齢
変わらないのになあ。。。)。

ただ、〝檀家にピンポンダッシュする坊主〟〝「照らすねぇ、君は」〟等のギャグには
かなり爆笑させられたので、今はシリアス主体のものより
デビュー作みたいなコメディタッチのものを書いてほしい。
シリアスなものを書くには彼はまだ若すぎるような気がするし、
笑いのセンスは加齢と共に消えていくものだから今のうちに活かしたほうがいい気がする。

次の作品に期待します。
長い放課後になりそうだ――。



校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。
先生を2人だけの旅行に誘う問題児、
頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、
先生をナンパするアーチェリー部の主将――犯人候補は続々登場する。
そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が……。
乱歩賞受賞の青春推理。

***

〝殺害動機がものすごい小説〟ということで有名な一冊。
有名すぎてその〝動機〟は既に知ってしまっていたのですが、
犯人は運よく知らなかったので手にとってみた。

。。。東野氏、今より文章うまいし(新人賞応募作だから気合入ったのか?)。
時代的なこともあるんだろうけど最近の著作よりずっと本格ミステリしてるし。
最近の東野作品を読みなれていた身には新鮮だった。

中盤の体育祭の事件は「主人公、鈍いよ。。。そうなる可能性ぐらい
考えておけよ」と思いましたが(たぶん読んだ人皆そう思っていると思う)、
そして密室のトリックもちょっとリスクが高すぎると思いましたが、
前者はともかく後者はやっぱり高校生の若さや浅はかさからくるトリックなんだろうなあ、と納得。

最近のどんでん返し系ミステリは登場人物や彼らの行動がごちゃごちゃしすぎていて
読み手がけむに巻かれているうちに事態が突然あさっての方向にいくものが多くて、それを
「どんでん返し」と錯覚させられるものが多いですがそんなものはただ単に
急カーブで乗ってる車の中ですっ転ばされて驚いているだけ的なしょうもないもので、
その点本作のどんでん返しは、東野氏の運転する車にのほほんと乗っていたら
ふいにやたら急勾配が続いて、とどめに崖から転落させられた感じ。
バウンドして裏、バウンドして表、またバウンドして最後にひっくり返った車。まさにこれこそが
〝どんでん返し〟。
さらに言うなら崖から落っこちた先は道路でダンプカーが迫ってくるような。。。
最後までスリル溢れる物語で一気に読めた。

本作執筆当時27歳とはいえ、様々な年代の女性の心の機微をよくわかっているなあ、と
女の私でも思わされました。

おすすめです。



ちなみに蛇足ですが、私が最近東野作品ばかり読んでいるのは、
彼の文章は癖がないので自分が書く小説に影響がないからなのです(単純に
好きってこともありますが)。
今は執筆期間の私です。
プロフィール
HN:
kovo
性別:
女性
自己紹介:
80年代産の道産子。本と書き物が生きる糧。ミステリ作家を目指し中。
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